田中ユタカ『愛人』
@ISBN4-592-13351-X
AISBN4-592-13352-X

裏表紙より
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 「愛人(アイレン)」−−−−死に行く者への最後のなぐさめ。脳にケミカル人格、人造遺伝子のかりそめの”恋人”...

 移植医療の限界によって余命僅かとなった主人公「イクル」と、その精神支援用に(10ヶ月足らずの僅かな寿命で)再生された人造遺伝子の美少女「あい」。
 「生きること」とは程遠い環境に置かれた二人は、それゆえに、だれよりも人間らしい生を追求します。

 作者の「燃えるような志(こころざし)」と、「限りない創作意欲」、「高度なテクニック」の幸運な結合によって生まれた、心にしみる漫画です。
 あまり書店にはありませんが、クロネコブックサービスで入手できます。

 注意:以下のコンテンツは作品紹介の目的で、(ネタバレと言う程ではありませんが)多少作品の内容に触れます。今後本書の読書を予定している方で、一切内容を知りたくない方は、読まないでください。

 良い作品なので、小学校中学年向きの絵本に作り直して、子供にも読ませました。


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主人公「イクル」
 誕生まもなく、事故によって体の半分を失ったヨシミズ・イクル(生)は、体の半分を移植することで一命を取り留める。
 その後15年間、研究所(ラボ)の懸命な治療によって、拒絶反応を回避し、イクルは奇跡的に成長する。
 しかし、その間も、体内では移植された他者とイクルの命がけの戦いが続いていた。しかし、奇跡は永遠には続かない、勝っても負けてもそのときは、イクルには死が訪れる。
 ついに、余命僅かと宣告されたイクルは、激しい孤独感に苛まれ、藁にもすがる思いで、市の福祉課に「愛人(アイレン)」の取得を申請する。
 イクルの申請はあっさりと受理され、「精神的援助用再生人造遺伝子人間(AGH−RMS)」が支給される。
 海岸の高台にある、美しい自然の中の一軒屋で、「あい」と名付けたその少女とイクルの生活が始まる。

アイレン「あい」
 テロの自爆要員、犯罪組織の殺人者、ワイロ用の少女売春婦、誰かのレプリカ、等の目的で、遺伝子合成によって(多分非合法に)作られた「何かそのまま生かしておいては絶対に良くない存在」は、凍結保存されている。
 そして、余命僅かな患者の精神的救済目的に限って、再生され提供される。これが「精神的援助用再生人造遺伝子人間(俗称:愛人)」である。
 終末期患者の精神的支援目的で再生された「あい」もまた、その寿命が10ヶ月足らずと限られている。
 すべてを知っているイクル、何も知らないあい。突如、激痛を伴ってイクルを襲う死の発作、強力な鎮痛剤でこれに立ち向かいつつ、イクルとあいの生活は続く。

物語の背景
 人類の種の寿命は残すところ200年とも言われるこの時代。人々の生殖能力は次第に失われ、一見健康に見える人々も、欠陥の多い身体を医療によって補って生きている。
 このような、一種の「種の寿命」に対抗すべく人為的な進化を目指して開始した人造遺伝子人間の開発計画も頓挫し、研究施設はうち捨てられ、人類は静かな、しかし、確実な終焉の時を迎えていた。
 地球は汚染され、時には毒の雨も降る中で、巨大災害が引き金となって、全面戦争が発生しようとしたそのとき、キリトと名乗る男がこれを食い止め、竜に乗って地上に降りてくる。

その他アイレンの情報
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