絵本
概要  子供達にクリスマスにプレゼントする絵本を作りました。日常良く利用する「本」も、実は結構複雑な構造になっています。
 作ってみるとその工夫や構造が良く分かり、とても楽しめました。今回はハードバックの並装本に仕上げました。

 お題は、田中ユタカの『アイレン』です。コミックスの1巻と2巻を58ページにまとめています。
 小学校中学年向けに性的な表現を抑えて、表現を平明にしています。
 原作にとても力があるので、絵本にしてもそれをを失うことはありませんでした。
 来宅の際に、何気なく本書を読んだ近所のお母さんが、釘付けになり、遂には泣き出してしまう、と言うハプニングさえ起こりました。
 田中ユタカの作品から「エロ」を完全に抜き去っても、作品の力は全く衰えることがありませんでした。


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折帖を印刷する
 本の元になる大きな印刷物を「折帖」といいます。この絵本では、折帖一枚が見開き2ページ分になります。
 ここでは、プリンタを使って印刷しました。
 小さいプリンタでできるだけ大きな絵本を作りたかったので、A3ノビサイズのファイン用紙を210ミリ幅(A4幅)にカットして、長細い用紙を作成して利用しています。

印刷した各ページ
 今回の製本方法では、見開きの左右のページが完全につながって見えるので、左右のぺーじに跨った絵でも大丈夫です。
 作図には、コーレル・ドローを用いています。残念ながら、大容量のビットマップを含むドキュメントで、ページ数が増えると、落ちる傾向があるので、マルチページ機能は利用せず、一ページを一ファイルで作成しています。
 ページの中央上下に折り曲げ位置を示すトンボ(位置を示す小さなマーク)を印刷しておきます。

折る
 印刷した折帖を中央のトンボを目印に二つ折りにします。
 この折り曲げたものを、「折(オリ)」といいます。絵本では折一つが2ページですが、通常の製本では、32ページ程度で一つの折になります。

並べる
 折を、ページの順番に重ねて行きます。もし、間違えれると、修正ができないので、慎重に確認します。
 この順番を間違えたのを、乱丁、折りが抜けたものが、落丁です。

見返しで挟む
 頑丈な紙をページと同じ大きさに切って、中央で折り曲げます。これを、2つ作ります。これを、「見返し」と呼びます。
 この見返しで、折りをを挟んで重ねます。
 見返しは強度のある紙が望ましいので、ラシャ紙などが良いと思います。画材店で各種着色したものがあります。

固定する
 折りをきれいに整列させて、開く方(折りまげていない方)をクリップで固定します。


固定の注意
 このとき、写真の様に、折の背が、きっちりと一面に整列するようにします。


背の糊付け
 折りの背の部分を、すべて糊付けします。スプレーのりが便利です。
 糊付けは写真のように、左手で折りを持ち上げて、右手でスプレーのりの吹きかけては、折りを一枚落として、接着します。
 スプレーのりはあまりベタベタ塗る必要はありません。中央から右へ1ストロークと、中央から左へ1ストローク、「シュッ、シュッ」と塗れば良いです。
 のりが、本の天と地に掛からないように、スプレーする角度に注意します。


固定
 のり付けした部分をクリップで挟んで、乾燥させます。


背張り
 糊付けした部分に、丈夫な紙か、布で、背張りをします。背張りは、折りの背に十分密着させます。
 あまり分厚い素材で背張りをすると、本が曲がらなくなります。薄くて、柔らかくて、強靭な素材が望ましいです。
 プロの製本では、寒冷紗という目の荒いガーゼような布が用いられますが、手元にないので、ごく薄手のナイロン布を用いています。
 ここで、裁断機を使って、背以外の3面を切りそろえます。裁断機は大きなコピーショップで使わせてくれます。


表紙の作成
 800Kgくらいの厚紙で表紙の板紙を2枚作ります。今回の製本では、背中にも板紙を入れます。
 文房具店では400Kgくらいの板紙しか売っていないので、この場合は、スプレーのりに2枚張り合わせてから、切り出します。
 表表紙板紙、背板、裏表紙板紙を並べて、布性のテープ(ここではガラスクロス粘着テープ)で仮止めします。このテープは、本を補強する役割と、製本をしやすくする役割があります。このテープも薄手のものが望ましいです。
 板紙と板紙の間隔が非常に重要です。この隙間は、絵本の場合、表紙を含まない本の厚み/2+表紙板紙の厚み×3くらい必要です。足りないと、本を開くことができなくなります。


テープで固定した板紙
 テープで固定すると、表紙らしくなります。


表紙を切り出す
 板紙に、紙を張って表紙をつくります。この張る紙を切り出します。薄くて屈曲に強い紙が望ましいです。プロは専用の紙を使っているようです。ここでは、別すき和紙を用いていますが、多少強度不足です。皮装本では、この部分が皮製となります。
 とはいえ、万一破れても、テープでつながっているので、壊れません。


位置合わせ
 切り出した紙の上に、板紙を配置して、位置を合わせて、一方に錘をのせて固定します。


紙の張りつけ
 板紙の一方を持ち上げて、のりをスプレーして、紙を張りつけます。続いて、錘を載せた反対側も糊付けします。


できあがった表紙
 紙を張りつけてできあがった表紙です。もし、樹脂製の保護フィルムを張るなら、この段階で処理します。
 続いて、見返しに糊付けして、表紙に重ねた折を接着します。ずれないように注意して行います。


できあがった絵本
 プリンタが小さいので、表紙には印刷できませんでした。でも、どこからみても、ちゃんとした本です。


表紙を開いたところ
 表紙を開くと、見返しが、表紙に接着されており、ここで、表紙と折がつながっています。


ページを開いたところ
 見開きの左右のページが、常に一枚の紙でできているので、ページを横切る絵も完全につながって読み事ができます。


背の部分
 表表紙、背板、裏表紙が、「溝」と呼ばれる接合部でつながっています。ここで、ちょっと失敗がありました。溝の幅短いので、本を開くと、折にムリがかかるのです。溝の幅は、折の厚みの合計の半分は必要です。


開いたところ
 ちょっと、溝が狭かったので、ちょっとムリが掛かりますが、平らに開くことができます。