VOCALOID入門

コントロールトラック その2

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 コントロールトラックと合成される音声の関係を 実際の分析結果に沿って説明します。とは言え、合成は 多くの条件を総合して行われますので、場合によっては ここに示すものとは異なる動作を行います。

ブライトネス

 ブライトネスは母音部の中〜高域成分を制御し、 明るい感じを出します。 子音は影響を受けません。エンベロープやピッチに も影響を与えません。




「か」をブライトネスを変化させながら発声(0、32、64、96、128)

 ブライトネスが大きくなると、母音に含まれる高域 成分が強調されます。 強調される周波数はそれ程高くはなく、3〜6次高調波を 中心とした辺りです。 この点ではフィルタと類似の効果といえます。 しかし、スペクトルを見て分かるように、ブライトネス を小さくしても、先頭部の子音の成分には変化がありません。 つまり、ブライトネスを小さくしても、子音ははっきりと 発音されます。 このため、ブライトネスを小さくすると、逆に、 子音が強調される面もあります。

クリアネス

 クリアネスは高域の成分を制御し、透き通った 感じを出します。 子音への影響は未確認です。エンベロープやピッチに も影響を与えません。




「か」をクリアネスを変化させながら発声(0、32、64、96、128)

 クリアネスが大きくなると、音声に含まれる高域 成分が強調されます。 強調される周波数はかなり高く、13〜30次高調波 以上に渡る範囲です。 この点ではフィルタと類似の効果といえます。 確信はありませんが、子音、母音ともに影響を受けて いるように観察されます。

オープニング

 オープニングは中域の成分を制御し、口の開き方を 変えたような効果を出します。 子音への影響は未確認です。エンベロープやピッチに も影響を与えません。




「か」をオープニングを変化させながら発声(0、32、64、96、128)

 オープニングは通常最大値が適用されています。 オープニングを下げると、3次、4次の高調波が 抑制され、代わりに、基本波と2次高調波が強調され ます。
この点ではフィルタと類似の効果といえます。 確信はありませんが、子音、母音ともに影響を受けて いるように観察されます。


オープニング128

オープニング0(3次、4次高調波が抑制されている)
「か」のスペクトラム


ジェンダーファクター

 ジェンダーファクターは声道の長さを変化させ、 年齢、性別による声の違いを作り出します。




「か」をジェンダーファクターを変化させながら発声(0、32、64、96、128)

 ジェンダーファクターは通常中間の値(64)が使用 されています。  声は声帯の振動が喉から口、鼻で構成される声道が フィルタとして機能して作られます。このフィルタの 周波数特性のことを「フォルマント」と呼んでいます。
 ジェンダーファクターは、このフィルタの周波数を 変化させ、つまりフォルマントの形状を変化させて、 声道の長さが変化したのと類似の効果を生じます。
 ジェンダーファクターを下げると、声道の長さは 短くなり、強調される周波数が高くなり、子供の声の ようになります。逆に上げると、声道の長さが長く なり、強調される周波数が低くなり、成人男性の 声のようになります。
 とはいえ、VOCALOIDは完全な「声道シュミ レーション」型の音声合成ではなく、音素片合成と 声道シュミレーションのアイノコですので、ジェンダー ファクターを変化しても、元になった声の特徴が消え去る 訳ではなく、完全にキャラクタを変える事はできない ようです。(類推)

ポルタメントポジション

 ポルタメントポジションは音程変化のタイミングを前後させます。




「ぱ」をポルタメントポジションを変化させながら発声(0、64、128)

 ポルタメントポジションは通常中間の値(64)が使用 されています。  ポルタメントポジションが小さくなると、音程変化のタイミング は前にズレて、音が終わる前に後続音への音程変化が開始されます。
 ポルタメントポジションが大きくなると、音程変化のタイミング は後ろにずれて、後続音が始まった後に音程の変化が開始されます。
 通常、子音を持った音は「上行形でポルタメントを付加」ある いは「下行形でポルタメントを付加」を設定しなければ滑らかな 音程変化を生じません。(迅速に音程変化を行います) しかし、ポルタメントポジションを 64以外に設定すると、強制的にポルタメントが行われます。  ポルタメントの速度はこの場合も「ベンドの長さ」で制御 されます。

ピッチベンド、ピッチベンドセンシビティー

 この2つは対になったパラメータで、任意のカーブで 音程を変化させることができます。



同様の音程変化を、ポルタメント(左)とピッチベンド(右)で行った例
ピッチベンドセンシビティーは12に設定 ピッチベンドは中心値(0)から+の最大値までスイングしている

 上の図に示す通り、ポルタメントの機能を使っても、 ピッチベンドと類似の音程変化を行うことができます。
 しかし、この場合は新しい音符に遷移するたびに 音量が初期化され、ひとつの音として表現するのが難しく なります。このような場合に、ピッチベンドで音程を変化 させれば、ひとつの音符の中で音程を変化させることが可能 です。
 ピッチベンドは軽く利用すれば、ビブラートのような効果を、 強く利用すれば、音程変化のような機能に利用できます。
 効果の強さを設定するのが、ピッチベンドセンシビティーで、 値1が半音に匹敵します。ピッチベンドセンシビティーを 12に設定しておけば、ピッチベンドで±1オクターブの ピッチベンドが可能になります。 ですから、ベンドしたい深さに応じたセンシビティーを指定して から、ピッチベンドのカーブを描くのが標準的な使い方と 思われます。



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