オージー牛、ウデ肉のローストビーフ(パストラミもどき)の作り方
 オーストラリア牛のウデ肉は安価に手に入ります。これを使って、 ジューシーなローストビーフ(パストラミもどき)を作ります。
先に、表面をバーナーで先に焼き固め、肉汁が漏出しないようにして から、低温(80度)でゆっくり火を通すのがポイントです。
平行して、ウデ肉をカタマリで購入して、筋や脂まで無駄なく食用する方法を解説します。今回の料理で捨てるものは、お肉の入っていたトレーとポリ袋だけです。肉は筋まですべて食べてしまいます。

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素材
 100g89円のオーストラリア牛ウデ肉カタマリです。 通常、スライスして売られていますから、店員さんに行って スライスしてないものを用意してもらいます。

裏側は筋膜に脂がたっぷりついています。今回の調理法では、 脂が付いているとやりにくいので、外します。

筋膜と脂の剥離
癒着した組織を剥がす要領で、脂肪層と筋膜を持ち上げながら、 間に包丁を入れて、これを剥離します。

分解したところ
赤身、筋、脂を分解したところです。脂は筋膜と くっついたままです。

赤身の断面
ウデ肉は中央に平らな筋が通っています。比較的堅い筋 ですが、加熱調理すると、問題なく食べられます。逆に 歯ごたえと旨みがあって、美味しいです。

端面を焼く
柔らかくジューシーなローストビーブにするには、低い温度(75℃〜85度くらい) でゆっくり火を通し、赤味が残るくらいに仕上げる必要があります。
しかし、低い温度で加熱すると、美味しい肉汁が大部分漏出して、カスカスに なってしまいます。
そこで、加熱前に、表面をバーナーで焼き固め、肉汁が漏出しないようにします。
まずは、一番肉汁の漏出しやすい端面(筋繊維を垂直に切った面) を焼きます。表面が狐色を通り越して、黒くなるくらいまで焼きます。

側面と裏面を焼く
同様に側面を焼き、続いて、肉を裏返して、反対側の側面も焼きます。

焼き上がり
一見真っ黒に焼けていますが、中は殆ど生です。
手軽に作るときは、オーブンの100〜130℃で1時間 程度加熱すれば、出来上がりです。大変簡単です。
今回は「肉はジューシー」かつ「筋はゼラチン化」という オーブン加熱では難しい仕上がりにこだわり、きっちり温 度管理して、仕上げてみます。
このためには、80度前後で1〜2時間程度加熱する必要 があるのですが、我が家のオーブンは最低温度が100度 なので電磁調理器の保温モードを使って加熱します。

ポリ袋に入れる
表面を焼き固めておいても、やはり低温長時間加熱を行うと多少の 肉汁が出ます。これをソースに使うと美味しいので、肉汁を回収 するために、肉をポリ袋にいれて口を封じます。
これからローストするのに、ポリ袋に入れて大丈夫なのか?と思いま すが、加熱温度が80度ですから、ポリエチレンでも持ちます。

鍋の準備
鍋の中にスペーサーを置き、スペーサーより低い位置まで水を 入れます。

鍋の準備2
続いて、セパレーターを入れます。蒸し器であれば、このような 手順は不要です。

肉を入れる
セパレーターの上にポリ袋に入れた肉を置きます。

蓋をする
蓋をします。写真では圧力鍋を使っていますが、普通の鍋でも 問題ありません。エネルギーのロスを抑えるために、ポットカバー のような保温具を作って鍋に被せると効果的です。

加熱開始
電磁調理器を「保温」モードにし、温度を設定しま す。
今回は、しっかり焼き込んで、筋を透明に(ゼラチン 化)に仕上げたかったので、85度と高めに設定しました。
80のランプが光っていますが、もう少しで90が光る、 というあたりです。

温度と時間の目安は…
75℃−1時間(レアな感じ)
85℃−2時間(ウエルダンな感じ)

加熱時間設定
タイマーを2時間に設定します。このタイマーは電磁調理器と 換気扇に連動しており、時間が来ると、電磁調理器と換気扇の 両方がとまります。ただし、この調理では(沸点以下なので) 湯気や臭いは出ません。

焼き上がり(蒸し上がり?)
2時間85度(高い目で長時間)で加熱したところ です。 温度を高い目にしているので、いつもより肉汁 が多く出ています。

肉汁の行方
肉汁はジャムの瓶に半分くらい出ています。 低い温度(75度)でやる、あるいは、時間を短く する(1時間)と、大匙1杯くらいしか出ません。
低温短時間加熱の場合、肉汁が少ないので、ソース が足りなくて困りそうですが、摩り下ろし玉葱、 ガーリック、塩、水溶き小麦粉を攪拌加熱したものを 作っておき、ポン酢と合わせてソースにしても美味しいです。)

ソースを作る
肉汁をソースパンに入れて、塩コショウ、ガーリック、 玉葱1/4個の摩り下ろし、好みによってウスター ソースや赤ワインを入れて加熱します。今回はワインも ウスターをもれていません。

とろみ付け
水溶きした小麦粉(大匙1くらい)を入れて、良く攪拌して、 ソースにとろみをつけ、肉に絡むようにします。

ソースを保存
フライパンを洗い桶に浮かして、荒熱を取ったら、瓶に入れて 冷蔵庫に保存します。

スライスする
薄くスライスします。今回は温度が高い目なので、 すが、筋肉には赤味が残っており、筋もゼラチン化 しています。狙い通りに出来上がりました。(筋が白色 ではなく、半透明になっているのか観察できます。 この筋の部分が結構いけるのです)
ローストビーフを包丁で薄くスライスするのは、 結構難しいですが、薄い方が不思議と旨く感じます。 このため、王室では薄くスライスする専門の職人を 雇っていたとか…

保存する
味付けと殺菌の目的で、周囲にたっぷりと塩コショウをして、 (予めスプレーでスピリタスを吹き掛けておくとより効果的) ポリ袋に入れて冷蔵します。内部は概ね無菌なので、2週間 くらいかけて、少しずつ酒のアテにしても、大丈夫です。

食べる
スライスしたものを皿に盛って、ソースを掛けて供します。



筋と脂の処理
筋と脂は加熱して、ヘッド(牛脂)とカス(油カス)を取ります。 まずは、適当な幅に切ります。

鍋で加熱
適当に切った筋や脂を鍋にいれて、弱火で加熱します。脂が酸化し ないように、蓋をします。

脂が出る
しばらく加熱していると、脂身から脂が出て、脂身が縮みます。

カスを取り上げる
カスも食えるので、鍋から取り出して、別容器に移します。

ヘッド
かなり大量のヘッド(牛脂)が取れました。水を張った 洗い桶に鍋を漬けて、50度くらいまで冷まします。 ヘッドで揚げたカツレツは結構美味しいです(八重勝も ヘッドで揚げてます)

瓶に移す
ジャムの瓶に入れて、荒熱が取れたら冷凍します。冷蔵 でもかなり持ちます。野菜炒め等に美味しく使えます。

脂カスの行方
別容器に取り置いた脂カスはこんな感じです。もう、 殆ど脂は残っていません。
あまり旨いものではありませんが、カレーに入れるか、 味噌で煮るかすると、食べられます。

味噌等で煮る
味噌(液体味噌汁の元)砂糖、醤油、酒、唐辛子、カラシ、と 水カップ1.5位を入れて、じっくり煮詰め、土手焼き状態に します。酒のアテになります。