久島諦造『ミニ旋盤を使いこなす本』
@ISBN4-416-39031-9
AISBN4-416-39609-0(応用編)
概要  趣味で旋盤を使うなら、必須の書です。とはいえ、工作機械愛好家の間では、あまりにも有名な本なので、いまさら紹介するの恥ずかしいくらいです。しかし、当たり前すぎで、見落とされてはこまるので、あえてご紹介します。

 基礎編とも言える一冊目があれば、趣味で必要な旋盤仕事は十分に出来ます。さらに応用編では、様々な工夫が紹介されて、読むだけでも面白いですし、読めば、必ずやってみたくなります。

 一読すると、作者が「工作をこよなく愛している」ことが良く分かります。なぜなら、本に書かれている内容のすべてが、自分のやってみた事だからです。作者は、これらの本に記載した内容の10倍も100倍も、様々な工作を試みているでしょう。その中から、一般向けな内容を取り出して、書いていることが明らかです。
 下手なハウツウ本のように、自分が試してもいないのに、適当に記事を寄せ集めて本にしたのとは違って、自分の工夫や苦労を書き綴ってあるので、実に役に立ちます。





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ミニ旋盤を使いこなす本
 「ミニ旋盤とは」に始まって「準備」「バイト」「グラインダ」「チャック」と切削の原理と操作方法を説明したあとで、「基本的切削」について述べられています。
 続いて、「ドリルとリーマ」「両センター削り」「ネジ立て」「テーパー削り」と応用的な作業に入ってゆき、「その他応用」で多少特殊な切削についても説明しています。
 普通ならここで、おしまい、というところなのですが、ここからが凄い、「割り出し」「ミーリング」「歯車」と”ここまで旋盤でやるか!”という領域まで平易に解説し(なんと大部分実例写真がある)、続いて各種冶具を工夫しての(これが堪らなく楽しい)「小規模量産の工夫」また、自分で切削工具を作ってしまうという「バイト、カッターの自作」そして、最後に、「刃物の熱処理」となっています。
 とにかく、旋盤を使う上で必要なことが、殆ど網羅されているだけではなく、旋盤を使う楽しみがどこにあるのか、ということが、行間にぎっしり書かれています。

ミニ旋盤を使いこなす本(応用編)
 この本を手にしたときに、一冊目でトコトン応用的なところまで説明したのに、まだ書くことがあるのかな、ひょっとして、重複部分の多い退屈な2冊目かな?と思ったのですが大間違いでした。
 先ずは、「旋盤仕事」「ミーリングのノウハウ」で一冊目では説明できなかったさらに応用的な切削を説明した後に、「ミニ旋盤を使いやすくするアクセサリー」「能率を上げるアクセサリー」で、冶具にとどまらず、旋盤本体の改良工夫を解説し、最後に、「ラッピング」で最高の仕上げを得るところまで言及しています。
 非力で剛性の低いミニ旋盤の限界を熟知した上で、様々に工夫されているので、どの方法も、実際にミニ旋盤で利用することが出来るものばかりです。

おたくトーク:工作機械は男のロマン
 鋼鉄のカッターなりバイトなりが、強靭な鉄材を切削し、キラリと輝く部品になる。その部品を組み立てて、しっかりとした、多分半永久的にさえ使える、頑丈で便利な機械が出来る。そして、それを使う。そのすべての過程が男のロマンであります。

 工作機械は、普通の機械とは違って、機械を生み出す機械(マザーマシン)です。自動車は自動車を作ることが出来せんが、旋盤は(うまくすれば)自動車はもとより、旋盤自身を生み出すことさえ可能です。
 旋盤には、このような、再帰的な自己再生能力があります。また、旋盤は、自分自身の弱点を、自分で工作して補って、より能力の高い機械になることが出来ます。
 男には無い「自己再生能力」や、どこか魔法じみた「再帰的な能力向上」といった不思議な能力、また、あらゆる機械の母として君臨する一種の「権威」として、男が工作機械に惹かれるのかも知れません。
 ちなみに、細君には、工作機械は「ザライコ(面倒な削り屑)」を生み出すだけの、生活の敵の様です。ただし、ミシンの部品を再生する、と言う働きをしてからは、一定の評価を得ています。