真空含浸
概要  コアレスモータに用いるような、中空コイルはコアが無いので、何らかの方法で固めなくてはなりません。
 このとき、コイルの隅々まで樹脂を行き渡らせることによって、コイルが強固に固まり、強度、放熱、寿命などが向上します。
 工業的には、樹脂に浸したコイルを真空状態として、内部の空気を追い出す「真空含浸」という方法が一般的です。
 この真空含浸が、家庭用の真空保存装置を使って、意外と綺麗に出来たので報告します。


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コイル
 コアレスモータ用のコイルです。外側には、熱処理してヒステリシスを押さえた鉄線が磁気回路として巻きつけられています。
 芯になっているアルミの円筒は、含浸した後に、化学的にエッチングして取り去ります。

樹脂を調合
 キャスト用のエポキシレジン(低粘度のものが適します)の2剤を正確な重量比で混合します。
 混合比が正しいと、パリッと固まります。
 写真は、家庭用の1g分解能のデジタルはかりに、天秤棒を取りつけて、感度を20に高めた秤です。
 写真左のポリ袋に指定の重量比で硬化剤と主剤を滴下します。

混合
 袋のファスナーを閉じて、袋の外から、指でウニウニと混合します。実に良く混じります。
 良く混合したら、袋の角をハサミで切って、好みの穴をあけ、通常の接着剤のように、搾り出して使います。
 この方法だと、2液型の接着剤を一液型のように搾り出して使えるので、この場合以外でも、非常に便利でお勧めです。


真空引き
 家庭用の真空保存装置で、含浸したコイルを真空引します。真空を引くと、どんどん泡が出ますから、様子を見ながら、徐々に引いてゆきます。さもないと、ビールのように泡だって、レジンがこぼれるときがありあます。
 利用している真空保存装置は、ポンプと蓋のみが販売されていて、手近にある瓶で真空保存できるという便利な商品です。
 泡が出なくなったら、ポンプを外して、常圧に戻します。このとき、レジン内部に残されていた僅かな気泡も、キュッと縮んでしまいます。
 ひょっとしてこの方法、シリコン型でのキャストにも応用できるかも知れません。

出来あがり
 エポキシ樹脂は、オーブンなどで70〜80℃程度に加熱すると、短時間でパリッと固まります。
 レジンが固まったところです。分解してみると、コイルの隅々まで樹脂が行き渡って、完全に含浸されていました。
 強度もかなり出るので、コイルに構造体としての役割も期待できます。