全布製球体関節人形(DMX91)
概要  布製の人形はビスク製等の高級人形にくらべて、耐用年数も短く、ディテールの表現も大雑把となり、人形としては、低位に位置しています。
 しかし、衝撃に強く、抱き心地が柔らかい、など、子供の遊びには適した性能があり、こういった用途で広く用いられています。
 とはいえ、一般には、関節の自由度が低く、希望のポーズを取らせる事が難しく、その遊び方が、抱き遊び等に限定されているのも確かです。

 そこで、ここでは、布製人形に球体関節を設けて、布製人形の柔らかさと肌触り、及び、耐衝撃性はそのままに、着せ替えやポージングで遊ぶことが出来るように工夫しました。加えて、人体の関節が可能な屈曲を大部分可能とする工夫も行っています。

 布製関節人形については、すでにさまざまな試みがなされており、実際の商品もあったやに記憶しおります。たとえば、Runo doll 手芸教室の「布関節人形」などでも、優れた試みが詳細に報告されていますが、本人形は、これとは多少異なるアプローチで布製関節に挑戦したものです。


ソファーで寛ぐDMX91



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足を組んで座る
 股関節に2つの自由度があるために、自然な姿勢で、足を組んで座ることができます。

 ヘッドには、Mars氏の45センチ抱き人形キットに付属のものを用いています。
 このヘッドは、かなり大きいので、80〜90センチの人形にも使用できます。
 また良質の素材が使用されており、加工しやすいにもかかわらす、強度もあり、変色も少ないです。

 カツラは黒色釣り糸1号を元にして作った自家製で、あまり程度の良いものではありません。


正座する
 膝関節は、球体関節による90度の屈曲と、布製であることによる屈曲を加えて、180度まで屈曲し、正座が可能です。

構造図
 一般的な球体関節人形と同様の構造ですが、素材は綿を充填した布です。関節部に布製の球体を配置し、接合される手足を、関節球の回転軸部に縫い付けて接合しています。
 体は、左右2本の大根状構造物を縫い付けて構成されています。この構造は、綿による張力がよくバランスし、型崩れを起こしにくい特徴があります。

ボディー全体図
 関節球を含めて、すべて布で組み立てます。試作品なので、罫書き線が残ったままです。

 内部には、張力バランスを取りやすい「つぶ綿」を充填しています。これは、綿を、5ミリ程度の綿玉の集合体に加工したもので、流行のパウダービーズにあるような、流動性を綿に与えたものです。個人的には、パウダービーズよりも高く評価しています。

 生地は、生成りのシーチングを使用しています。シーチングは、ブロードよりも伸びがあって、融通が利き、バリバリせずにふっくらとした風合いに仕上がりやすいです。

ボディーカバーを縫い付け
 胴体が、大根2本だと貧弱なので、前後から布でカバーして、綿を詰めます。


肘関節の屈伸



 肘関節は蝶番状に一方向(一軸性)にのみ運動が可能です。(人間の腕尺関節は螺旋状に回転します。)

股関節の屈伸(外側面)


 股関節は、屈伸と、内・外転が可能で、回旋はしません。しかし、布製性の大腿部が変形して、結果的には回旋も可能です。

 屈伸と内・外転の2軸の回転を可能にするために、関節球の水平面上にある直角な2つの軸で、骨盤と太腿をそれぞれ関節球と接合しています。

 関節の回転によって、110度まで屈曲が可能で、さらに、大腿部の変形によって、180度まで、屈曲できます。

股関節の外転(前面)



 股関節が外転する様子です。関節による回転で、約90度まで、さらに、大腿部の変形で、190度まで外転します。

肩関節
 肩関節は、関節球を胴体に内蔵した関節枕とピンで固定して、矢状面で上腕部を360度屈伸させます。
 このピンは、書類を綴じる目的で使用するピンで、座金状の円盤(左図黒色の円盤)をピン(左図黒色のピン)に差しこむと、任意の位置で固定でき、抜けなくなるという便利なものです。
 さらに、上腕部は、関節球の矢状軸で結合して、前頭面上で、180度の外転を行います。

ボディーの型紙
 関節の構造は複雑そうですが、工夫して、型紙を簡単にしています。
 関節球と接合する部分は、封筒のように矩形の袋構造となっており、ここに綿を詰めることで、関節球と勘合する鞍状の構造が形成されます。

ワンピースの型紙
 このワンピースはMars氏の抱き人形用のワンピース(オープンリソース)を元にして、さらにこれを簡素化して作成しています。
 襟の見返しや、リボンなどが省略され、野郎でも短時間で製縫することができます。

(1)後身頃CDを三つ巻きに始末して、肩パット用の面ファスナーを縫い付けます。
(2)前身頃と後身頃の肩線ABを縫います。(左右共に)
(3)襟MNにレースを縫い付け、端を始末します。
(4)袖口にレースを縫い付け、端を始末します。(左右共に) (5)袖口付近KLに平ゴム紐を引っ張って縫い付けます。(左右共に)
(6)袖ぐりFHAGFに袖FIAJFを縫い付けます(左右共に)
このとき、FI間とFJ間はフラットに縫い付け、残る部分を均等にギャザ寄せします。
均等にギャザ寄せするには、先ず、中間点Aに待ち針を打ち、さらに、その中間点に待ち針を打つ、という作業を繰り返せば簡単です。
(7)前身頃と後身頃の接合部EFから、袖接合部FKMを一気に縫います。(左右共に)
(8)スカート下端を3つ巻きに始末します。
(9)身頃下端にスカートを均一にギャザ寄せして、縫い付けます。
(10)スカート後端を縫い合わせます。