Creative ZEN MX (16GB) を
永久に再生し続けられるように改造。

簡単なリチウムイオン電池の充電器の作り方


永久再生システム

ZEN MX は再生中に充電できない

Creative ZEN MX は安価で大容量のMP3プレーヤです。しかし、充電中は再生できません。なぜなら、充電するためにUSBポートに接続すると、ファイル転送モードに入ってしまうからです。充電は面倒だし、再生し続けたいので、再生しながらでも充電できるように改造しました。

ZEN MX の充電回路は厄介

ZEN MXにはリチウムイオン電池が内臓されてます。この電池は、充電が厄介です。リチウムイオン電池の充電電圧や電流は高精度に制御する必要があり、そうしないと、容易に発火します。

永久「再生/充電」回路

 そこで、再生しながらでも充電できる回路を設計しました。この回路は、定電流、定電圧充電を行います。
 充電電圧を3.9Vに制限することで、バッテリーがフル充電されるのを防いでいます。なぜなら、リチウムイオン電池は、フル充電状態では寿命が短縮するからです。
 半分くらい充電した状態で寿命が最も長くなります。しかし、ほとんどの充電器は、最大の容量を得るために4.2Vまで充電します。しかし、今回の装置は大容量より、バッテリー寿命の長さを重視しています。なぜなら、ほとんど常にAC電源で駆動されるからです。もちろん、充電器から外して、持ち出すこともできます。この場合でも、半分の電池容量を使って15時間の連続再生ができます。充分でしょう。
 この充電器は100mA(0.2C)の定電流で充電します。ZEN MXは、再生とバックライト(弱)で概ね50mA程度の電流を消費します。ですから、この充電器は再生電流を充分に補うことができ、永久再生を実現できます。

回路の動作

先ず、この充電器は100mAの定電流充電を開始します。電池の電圧は充電に従って上昇してゆきます。そして、電圧が3.9Vになると、定電流充電は終了して、3.9Vの定電圧充電が開始されます。定電圧充電では充電電流は次第に減少して、最終的には、充電器が接続され動作していても、充電電流は無くなってしまいます。

警告!

充電器が故障すると、ZEN MXの内臓電池は発火あるいは爆発します。あらゆるリチウムイオン電池充電器は発火あるいは爆発の危険を伴うものです。このページの内容は全てあなたの自己責任で利用してください。.
電池が全く空のときや高温のときは、この充電器を使用しないでください。なぜなら、この充電器は予備充電(プリチャージチェック)や温度検出の機能が無いからです。

アダプタをコンセントに挿すとき、動作が不安定になるので、ZEN MXをOFFにしてください。

全景


永久再生装置の全景

この装置は、ZEN MX、充電器、電源、で構成されています。充電器には、充電電流計が付いています。ZEN MXは改造して、内蔵電池の電線を外部に引き出しています。電源には、USB−HUB用の5V−2Aのものを使っています。電源電圧は安定化されている必要があり、変動が2%以下のものを使います。なぜなら、リチウムイオン電池は正確な電圧で定電圧充電する必要があるからです。電源は少なくても200mAの最大定格電流を供給できるものが必要です。

電池の線を引っ張り出す

裏蓋を次のような方法、これあるいは、 これで空けます。要は薄い板でコジ開ける訳です。そして、内蔵電池から出ている線が基板にはんだ付けされている部分に、2本の電線を追加ではんだ付けして外部に引き出します。(写真に白と黒で見えている線です) 電池の電線を回路や導体に接触させないでください。たとえば、プリント基板のパターンや、電線、シャーシ、工具等です。さもないと、ZEN MX は一瞬で壊れてしまいます。ここでは、困難な外科手術のように、全ての作業を最高の慎重さで行います。裏蓋に電線の出る穴を空けます。雰囲気的には人口肛門っぽいです。


裏蓋の電線引き出し穴の周辺

電線を固定するために、穴の周囲を粘着テープで固定します。ネバネバしないように、上等のテープを使ってください。ここでは、ガラスクロス粘着テープを使用しています。ガラス繊維にシリコン系の感圧接着剤が塗布された良いテープです。


テープで電線を固定

ZEN MXの電源を入れて、動くことを確認します。もし、動かなければ素直にあきらめます。この場合、ZEN MXは既に死んでいます。折角裏蓋を外したので、ぶら下げるように、ストラップの紐を取り付けておきました。


動作を確認

Schematic

次図に本機の回路を示します。LM324(安いのが取り得、性能が悪いので使いこなしが楽しい)はC2655を制御して高精度の定電圧充電を行います。C1815は、R4の両端電圧を検出して、C2655のベース電流を制御して、定電流充電を行います。C1は交流利得を下げて発振を防止します。D1は何となく電源OFF時等の保護用に入っています。VR1で充電電圧を調整し、VR2で電流計の振れ具合を調整します。
リチウムイオン電池の充電器には50mVの電圧精度が必要と言われています。しかし、この充電器ではそのような精度は必要ありません。なぜなら、欲張って4.2Vギリギリまで充電しようとするから50mVの精度が必要なので、3.9Vまでしか充電しないなら、200mV程度の精度でも使えます。電源の変動さえ無ければこの回路の電圧変動は大きくて数mV程度です。


充電器の回路

組み立て

小さなユニバーサル基板に回路を組み立てます。基板に穴を空けてそこから電線を出すと電線がちぎれ難くなります。(図の(1))また、その穴の横に2つ小さな穴をあけて、電線を縛ると一層しっかりします(図の(2))。別の基板には四角い穴を空けて電流計を取り付けます。(図の(3))。この基板では、VR1は省略して、抵抗値を加減して調整しています。


基板の穴

3枚の基板を8本のねじ付スペーサーと子ねじで組み立てます。


基板の組み立て

裏の基板には何も部品が付いていません。この基板は中央の基板のはんだ面をカバーしているだけです。また、正面の基板には、メーターが付いているだけで、つまりは、フロントパネルです。


3枚の基板

調整

バッテリーを接続する前に、別途1kΩを回路図の(a)の部分に接続して、電源をコンセントに差込み、VR1を回して1kΩの両端電圧をデジタルテスタで測りながら3.9Vに調整します。
次に、この1kΩを外して、(a)の部分を電線でショートさせて、VR2を回して、電流計の表示を0dB(100%)に調整します。
(a)の部分をショートしていた電線を外して、慎重にZEN MXから延長した電池の線を接続します。電池の電線をショートさせないでください、電池が燃えたり、爆発したり、しねっと壊れたりすることがあります。

動作させる

SDカードの音楽を再生すると、電流計は60〜70%まで振れて、1秒に一回くらいのペースで(つまり、SDカードを読み出すタイミングで)ピクピク動きます。 動画


電流計の振れ


ZEN MXの液晶上に表示される電池残量表示は、充電器が動作していると、たとえ100時間連続再生しても、残量70%で増えも、減りもしません。.


残量は常に70%

このようにして、永久再生ができました。私のZEN MXには、2400話分のアニメの本編音声が入っており、全部聞くのに1000時間(42日間)必要なので、永久再生機能は必須です。


永久再生中