PINフォトダイオードによるガンマ線検出器
放射線検出器の作り方


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ご案内

 PINフォトダイオードを使用して、直接γ線を検出することができます。シンチレータが不要なので、アマチュアの工作に適しています。
フォトダイオードメーカーのアプリケーションノート
 PINフォトダイオードは放射線を受けると、接合面に僅かな電荷を発生します。電荷の発生は非常に短時間に起きるので、速度の速い増幅器で小さな電流を測定する必要があります。
 速度こそ必要ではありますが、電離箱に比べれば大きな電流が得られますから、特別な絶縁等が必要なく、比較的手軽に動作させることができます。
 初段は多少高速で低雑音のオペアンプが必要になるので、流石に安価な汎用オペアンプでは力不足ですが、300円程度奮発すれば、余裕をもってパルスを検出することができます。
このセンサの感度は、時間さえ掛ければ、50nSv(平均的なバックグラウンド)以下であっても検出可能です。なぜなら、ガイガーカウンタと同じく、パルスが「来るか、来ないか」を検出するので、信号がノイズに埋もれるという事が無いからです。
 但し、使用しているPINフォトダイオードの面積が5mm角程度と小さいですから、この中に飛び込んだ(そして運良く空乏層の原子と衝突した)放射線しか検出できません。直径の大きなガイガーカウンターや、大きな結晶を使ったシンチレーターには検出率で劣ります。(だから時間を掛けて測る訳ですね)。なお、感度を上げようとして、大面積のPINフォトダイオードを使用すると、検出された電荷がダイオードの容量成分に吸収されるので、パルスの高さが小さくなり、次第に検出が難しくなって行きます。


検出結果の例

 検出結果の例を示します。図の右側のグラフが、バックグラウンドから得られたパルスの度数(灰色の線)と、1.6μSvの目安線源から得られたパルスの度数の分布を表したものです。
 バックグラウンドも明確に、また、実験線源もそれなりに検出されています。
 横軸がパルスの大きさ(対数)、縦軸がパルスの回数(対数)です。測定は40分程度行っています。右側のグラフの左部分はアンプ等のノイズで、中央から右が放射線を検出した部分です。
 また、図の左側のグラフは、本機のピーク検出出力の電圧をそのまま表示しています。(実験線源のもの)PINフォトダイオードがγ線を受けて出した電流パルスを増幅して、測定しやすいように幅を広げたものです。
全体の構造


本機の様子

 本機は主に2つの部分から構成されています。放射線を検出するPINフォトダイオードとアンプを収めた「検出部」と、電池を格納した「電源部」です。その他にも、アンプの出力電圧をPCに読み込む「インターフェイス(232C機能付きテスター)」やPCで動作してパルスを検出する「検出ソフト」を使用しています。もちろん、インターフェイスやソフトが無くとも、クリスタルイヤフォンや、アンプ付きスピーカーにピーク検波出力を接続すれば、プチプチと飛来音を聞くことができます。

検出部



検出部を開いたところ

 空き缶(ホテイのやきとり(辛口))の開口部が両面ベーク基板で塞がれており、これを外すと、内部の回路を見ることができます。


基板の裏側

 基板の裏には、PINフォトダイオードと増幅器がが組み立てられています。PINフォトダイオードは本来光を検出する素子なので、光があたると大きな電流を流します。ですから、放射線を検出する場合には光を遮ってやる必要があります。ここでは、黒色ホットメルトとアルミテープで後ろから覆っています。


フォトダイオードを貼り付ける

 ベーク両面基板の中央に大きめの穴をあけ、表面からアルミテープを張って、裏側から足を曲げたフォトダイオードを貼り付けます。アルミテープは100均セリアで売っているものが薄くてよろしい。(でも、剥がした後にベタベタが残ります)フォトダイオードの足は、足の根元をラジオペンチで挟んで、足の先に力を加えて曲げます。素子を持って曲げると、モールド部が小さいので割れる恐れがあります。一本500円もするフォトダイオードが「パキッ」と割れたら、すぐには立ち直れないでしょう。


ホットメルト(黒)で遮光する

 貼り付けたPINフォトダイオードの上から、黒色ホットメルトを隙間無く注入します。本当ならこれで遮光できる筈なのですが、黒色ホットメルトは多少光を通します。このため、さらにホットメルトの上からアルミテープを貼り付けます。このとき、アルミテープにはリード線の出る穴を開けておきます。良質の遮光樹脂があれば、アルミテープは必要ありません。


検出器の内部

 検出器の空き缶内部の部品は、ミニステレオジャックだけです。ステレオの一方には検出信号がそのまま、もう一方には、検出信号のピークを検波した信号が接続されていますので、必要に応じて使い分けます。電源(±9V非安定)ケーブルは検出器の底面の穴を通って、電源部に繋がっています。

電源部


本機の裏側

 電源部の空き缶(ほていのやきとり(たれ味))は中央のM3ビスで検出部に取り付けられています。



電源部の内側

 M3のビスを外すと電源部が開き、内部の電池と電源スイッチが見えます。空き缶がちょっと小さいので、電池がスイッチの端子に接触しそうです。幸い電池スナップのビニールで助かって、とりあえずは動作してはいますが、チューブ等で絶縁しておく必要があります。

回路図



回路図

 行き当たりばったりに試作したので、CRの時定数が統一されていませんが、大きすぎても特に問題は無い部分です。また、本来ならもう1ランク高速なオペアンプを使用すべきところですが(鋭く高いパルスが出る筈)そこまでしなくても、充分大きなパルスが出るので、入手が容易でDIPサイズの存在する、オーディオ用のちょっとマシなオペアンプで妥協しています。結果的にはこれでも充分でした。遅いオペアンプ程、発振しにくいので、手軽に工作できます。もっと遅いオペアンプ(NJM7062)でも検出できたという報告もあります。(要出典:笑)
【回路の説明】
 PINフォトダイオードに逆電圧を加えるのが大切です。逆電圧によってダイオードの容量が小さくなって、放射線によるパルスが取り出し易くなります。
 増幅回路の初段は電流を電圧に変換する回路で、ノイズ(特に電流ノイズ)が小さく、できるだけ早いオペアンプが望ましいので、FET入力がCMOSタイプになります。ここでは、OPA604を使用しています。
 次のアプリケーションノートにオペアンプの選定や、定数の計算方法が解説されています。
トランス・インピーダンス・設計の基礎(テキサスインスツルメント)
 2段目は電圧を10倍に増幅する回路で、ノイズ(特に電圧ノイズ)が小さく、できるだけ早いオペアンプが望ましいです。ここでは、LME49710を使用しています。
 3〜4段目も電圧を10倍に増幅する回路ですが、既に振幅が大きくなっているので、ノイズは気にする必要がありません。100kHzくらいまでの信号が(できれば1MHzなんですが…)10倍に増幅できればOKです。ここでは、ちょとむごい感じもしますが、極安のLM324を使っています。
 最終段はピーク検波回路です。理想ダイオード(OPアンプと組み合わせたダイオード)は使用せず、単純な検波回路を使用して、遅いオペアンプでも動作するようにしています。その分、検波出力は少し(0.3Vくらい)マイナス側にオフセットします。


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