なぁんちゃって電子工学 〜 あるいは自転車と交流 〜 楽しい電子工作のための(いい加減さを極めた)電気の知識
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2017年10月25日
なぁんちゃんて電子工学882.doc
By dokunewon
本書は趣味で電子回路を楽しむ方のために作成しました。つまり、回路を理解したり設計して遊ぶ方を対象にしています。このため、本書は次の方針で作成しています。
1.数学を忘れた人でも(簡単な算数ができれば)電子回路が楽しめるようにする
正確さは潔く犠牲にして、「式」では無く「図」を使って、日常生活に喩えて説明しています。計算はExcelで行います。
2.回路図から回路の動作を感じられるようにする
等価回路に置き換えずに、回路図上で動作を説明することで、回路図から直接に動作を読み取り、回路の動作を感じながら回路図を描いて楽しめるように工夫しています。
3.理解が深まるよう構成する
解説と練習問題を交互に組み合わせ、質問に答えながら読み進めることで、理解が深まるように構成しています。
4.予備知識が無くても読めるようにする
基礎的な内容も必要に応じて紹介し、予備知識が無くても理解できるように構成しています。
本書は、分り易さを重要視しすぎた結果「不正確」なうえ、(個人が作成しており、校正が行き届かないため)「誤字・脱字・誤算等」が多いことをご了承ください。
プロのエンジニアから「こんな説明では安全に動作する機器は設計できない」と非難があるのは当然でしょう。しかし、思い出してください。あなたが子供の頃、色々な回路を作っては壊した愉快な思い出を。そのような楽しさを味わう下地を提供するのが本書の目的です。まずは「安全じゃないけど、一応は動作するように設計できる」所まで行きましょう。
本書の部分や全体は、著者の承諾なしに、任意に複写や改良を行い、用途や有償・無償を問わず配布することができます。誤りの訂正やより分かり易くするための改良は歓迎されます。但し、複写や改良を行い、配布する著作物には、本枠内のメッセージをそのまま転載し、著作物の部分や全体を、著者の承諾なしに、任意に複写や改良を行い、有償・無償を問わず配布することを許可しなくてはなりません。 by dokunewon |
本書のあらゆる関係者は、本書の情報とその運用結果及び、その影響について、かかる損害の発生可能性を了知している場合であっても、直接的、間接的、偶発的、結果的損害、逸失利益、懲罰的損害、または特別損害を含む全ての損害に対して、状況のいかんを問わず一切責任を負いません。
本書は全く新たに書き起こしたものです。つまり、私自身の過去の著作物をコピー・ペーストすることはもちろん、参照することもせずに、白紙のの状態から作成したものです。これにもかかわらず、自然科学現象を平易に説明するという性質上、私が過去に作成した書面と類似の表現が現れる可能性があります。
また筆者が若い頃に、名著『プログラム学習による半導体回路TU』(職業能力開発教材委員会)で勉強したため、一部同書と似た表現や練習問題が表れる傾向もあります。もちろん参照して引き写した部分は一切ありませんが、若い時期に刻み込まれた記憶は一生残ってしまう結果として、(同書が名著である証であると考えて)ご勘弁ください。
水道から流れ出す水のように、いつも同じ向きと大きさで電流が流れている回路を「直流回路」と呼びます。
略してオーム則とも呼びます。回路を考えるとき、オーム則は何度と無く使います。このため、瞬間的に使えるようにしておくと、スラスラと回路が読めます。
オーム則は、次のように考えることで、経験が浅くても素早く使えます。 ・電圧が出てきたら、必ず割られる ・電圧が出てこなければ、双方を掛ける |
電圧は割られる! |
の2つです。例えば、次表のように使います。
状況 |
考え方 |
計算 |
12Vで4A流れた |
電圧の12は割られる |
12÷4=3Ω |
3Ωに12Vが掛かった |
電圧の12は割られる |
12÷3=4A |
3Ωに4A流れた |
電圧が出てこない(掛ける) |
3×4=12V |
Excelに「指数」で入力することで、単位接頭語(本項と次項でのみ、単に「単位」と書きます)を手早く処理できます。たとえば、5μAなら、5E-6、と、220kVなら、220E3というように、値の後に(「単位」に対応した)「指数」(E3等)を付けて入力します。例えば「E3」は「1000」(ゼロ3つ)「E-3」なら「0.001」(1の前にゼロ3つ)を意味します。下表に、単位に対応する指数を示します。
単位を指数で入力する
単位 |
f フェムト |
p ピコ |
n ナノ |
μ マイクロ |
m ミリ |
k キロ |
M メガ |
G ギガ |
T テラ |
指数 |
E-15 |
E-12 |
E-9 |
E-6 |
E-3 |
E3 |
E6 |
E9 |
E12 |
単位を指数で入力した場合、Excelには裸の値(10kなら、10000)が入力されています。
指数を入力したセルや、指数を元に計算したセルの表示形式は、自動的に「指数」に変更されます。指数ではなく、ゼロを並べて表示したいときは、表示形式を「標準」に設定します。(但し、「標準」に設定しても、とても大きな数字やとても小さな数字は指数で表示されます)逆に強制的に指数で表示させたいときは、セルの表示形式を「指数」に指定します。
(セルの表示形式は、セルを選択して、右クリックし、セルの書式設定ショートカットメニューを選択し、セルの書式設定ダイアログボックスで、表示形式タブを選択して、分類ボックスで指定します。)
Excelの入力と表示
値 |
入力 |
標準表示 |
指数表示 |
48kΩ |
48E3 |
48000 |
4.80E+04 |
100pA |
100E-12 |
1E-10 |
1.00E-10 |
47μV |
47E-6 |
0.000047 |
4.70E-05 |
0.022nF |
0.022E-9 |
2.2E-11 |
2.20E-11 |
Excelでオーム則を計算した例を示します。まず、下表のように値を指数を使って入力します。この例では、1行目は見出しです。2行目を使って、1mVを100kΩで割って、流れる電流を求めています。
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A |
B |
C |
D |
1 |
電圧1mV |
抵抗100kΩ |
電流の値[A] |
|
2 |
1E-3 |
100E3 |
=A2/B2 |
|
Excelは結果を次のように示します。
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A |
B |
C |
D |
1 |
電圧1mV |
抵抗100kΩ |
電流の値[A] |
|
2 |
1.00E-03 |
1.00E+05 |
1.00E-08 |
|
B2セルを見ると、入力したとおりには表示されない事が分ります。(100E3と入力したけれど、1.00E+5と表示されている、どちらも値は100000)つまり、Excelは入力した形式までは覚えておらず、入力した値を覚えているだけです。
C2セルに表示される計算結果1.00E-08[A]は、そのままでは分かり難い値です。そこで、[nA]を使って表示させます。項初の「単位を指数で入力する」の表によればn(ナノ)はE-9でした。ですから逆に、裸の値に1E+9を掛けてやれば、[nA]で表示することができます。そこで、次表D2のように入力します。
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A |
B |
C |
D |
1 |
1mV |
100kΩ |
電流の値[A] |
電流の値[nA] |
2 |
1E-3 |
100E3 |
=A2/B2 |
=C2*1E9 |
すると、Excelは次のように表示します。
|
A |
B |
C |
D |
1 |
1mV |
100kΩ |
電流の値[A] |
電流の値[nA] |
2 |
1.00E-03 |
1.00E+05 |
1.00E-08 |
1.00E+01 |
指数を元に計算したので、D1セルの表示形式も自動的に指数に設定されています。D1セルの表示形式を標準に設定すると、次表のように10と表示されます。
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A |
B |
C |
D |
1 |
1mV |
100kΩ |
電流の値[A] |
電流の値[nA] |
2 |
1.00E-03 |
1.00E+05 |
1.00E-08 |
10 |
このように、裸の値に、単位に対応した指数の、Eの後の符号を逆にして掛けると、その単位で表すことができます。このような、裸の値に掛けて単位で表示する場合の指数を次表に示します。
裸の値を単位で表示する
単位 |
f |
p |
n |
μ |
m |
k |
M |
G |
T |
指数 |
1E15 |
1E12 |
1E9 |
1E6 |
1E3 |
1E-3 |
1E-6 |
1E-9 |
1E-12 |
※「単位を指数で入力する」ときの表の、Eの後の符号を逆にしただけです。
※2007以降のExcelではCONVERT関数を使った変換も可能です。
次表は、見出しに記載の2つの値を元に、オーム則で計算した値を示す表です。例えば、見出しに太枠で示す12Vと3Ωからオーム則で計算した結果が、表中に太枠で示す4Aです。
この表にはいくつか間違いがあります。間違っている値を指摘してください。
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12μV |
3kΩ |
12V |
3Ω |
12mV |
3MΩ |
4μA |
3Ω |
12mV |
3MΩ |
12μV |
3kΩ |
12V |
3MΩ |
4mA |
|
4μA |
|
4nA |
|
4A |
3μΩ |
12kV |
3Ω |
12V |
3mΩ |
12kV |
3Ω |
4μA |
|
4A |
|
4mA |
|
4mA |
3mΩ |
12V |
3Ω |
12mV |
3Ω |
12kV |
3kΩ |
4nA |
|
4mA |
|
4μA |
|
下表に、誤りのある値を下線で示します。
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12μV |
3kΩ |
12V |
3Ω |
12mV |
3MΩ |
4μA |
3Ω |
12mV |
3MΩ |
12μV |
3kΩ |
12V |
3MΩ |
4mA |
|
4μA |
|
4nA |
|
4A |
3μΩ |
12kV |
3Ω |
12V |
3mΩ |
12kV |
3Ω |
4μA |
|
4A |
|
4mA |
|
4mA |
3mΩ |
12V |
3Ω |
12mV |
3Ω |
12kV |
3kΩ |
4nA |
|
4mA |
|
4μA |
|
ここではExcelを使わず暗算で単位やオーム則を使う方法を説明します。Excelを使って計算を繰り返していると、自然とできるようになりますが、本項のコツを意識することで、より短期間で慣れることができます。
まず、数字同士計算し、次にこれとは別に、単位同士を計算します。Excelを使う方法でも使用した、各単位の乗数を下表に示します。
主な単位接頭語とその乗数
単位 |
f |
p |
n |
μ |
m |
k |
M |
G |
T |
乗数 |
(-15) |
(-12) |
(-9) |
(-6) |
(-3) |
(3) |
(6) |
(9) |
(12) |
たとえば、10kVで2mA流れた場合、抵抗はオーム則でと計算して求めますが、まず数字だけに注目して、
と計算し、次に単位だけを
と計算して、両者を合わせて5MΩと答を出します。
上で使用した等の「単位の計算」は自然と覚えますが、慣れるまでは、乗数で計算します。今回の例では下図のように、
を
と考え、分母の(-3)の符号は反転して(+3)から合算して、(6)=Mと考えます。
別の例として、3kΩ×4μA の場合なら、数字の部分は「3×4」で12です。単位の部分は「k×μ=m」ですから(覚えるまでは (3)+(-6) = (-3) = mと考える)3kΩ×4μA=12mAと暗算できます。
参考までに頻度の高い単位の計算を次表白色部に示します。もちろん意識するだけで良いので、下表を暗記する必要はありません。
単位の計算(グレーの欄はあまり使わない)
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電子系の回路図では、電源とグラウンドの配線は記号で表し、電源(電池マーク)は記入しない場合が大半です。たとえば、練習で登場した下図(a)の回路は、下図(b)のように簡素に描かれます。
また、電圧が高い部分程、回路図の上部に描くと(回路図は大きくなりますが)回路が読み易くなります。
下図の回路図を、見易く書き直してください。
回路図を読むときは、電流や電圧を書き込みながら読みます。本書では、電流は矢印 で、電圧は尻尾に棒のついた矢印
で示します。
尚、電圧を両矢印 で示す方法もありますが、この方法では電圧の方向が分らないので、本書では使いません。
本書では、交流と直流を一つの回路に示す必要がある場合、直流を実線 で、交流を点線
で示します。
複数の抵抗を接続して得られる抵抗値を、合成抵抗と呼びます。直列に接続した場合は直列合成抵抗で、その抵抗値は、各抵抗の和で求めることができます。
下図に示すように、直列に接続した各抵抗には、抵抗値に比例した電圧が発生します。
分圧で、3.3kの両端に得られる電圧を求めてください。
下図のように、回路上の一点から流れ出す電流の合計(3A+2A)は、流れ込む電流の合計(5A)と同じになります。
下図のように互いに(太線部で)接続された2つの回路では、左右の電圧が同じになる(左6V、右6V)という法則です(あたりまえですね)。「各部品の電圧を合計すると、全体の電圧になる」法則と考えることもできます。(左側が4V+2V=6V、右側が5V+1V=6V)
このようにキルヒには電流則と電圧則がありますが、本書で単に「キルヒ則」と言った場合は、キルヒ電流則を指します。キルヒ電圧則は意識せずに使える場合が多いです。
下図の回路の、@〜Bの電圧、電流、抵抗、を求めて下さい。
番号 |
答 |
ヒント |
@ |
V |
キルヒ電圧則を使用 |
A |
mA |
キルヒ電流則を使用 |
B |
kΩ |
オーム則を使用 |
番号 |
答 |
説明 |
@ |
5V |
キルヒ電圧則より、15Vと10Vの差で5V |
A |
5mA |
キルヒ電流則より、A点に注目して、20mAと15mAの差で5mA |
B |
1kΩ |
オーム則より、5Vで1mAだから1kΩ |
下図の回路の、@〜Dの電圧、電流、抵抗、を求めて下さい。
番号 |
答 |
ヒント |
@ |
mA |
オーム則を使用 |
A |
mA |
キルヒ電流則を使用 |
B |
V |
キルヒ電圧則を使用 |
C |
V |
キルヒ電圧則を使用 |
D |
kΩ |
オーム則を使用 |
番号 |
答 |
説明 |
@ |
0.6mA |
オーム則より、1kΩに0.6Vが加わって、0.6mA |
A |
1mA |
キルヒ電流則より、流れ出す電流が0.3mAと0.6mAだから、流れ込む電流は1mA |
B |
0.6V |
キルヒ電圧則より、0.6V |
C |
1V |
キルヒ電圧則より、Bの0.6VとCを加えると、1.6Vとなるから、1V |
D |
1kΩ |
オーム則より、1Vで1mA流れるから、1kΩ |
抵抗は「電流の流れ難さ」ですが、コンダクタンスは「電流の流れ易さ」です。下表に「値の例」で示すように、抵抗の値が小さい程、コンダクタンスの値は大きくなります。つまり、抵抗とコンダクタンスの値には「逆数」の関係があります。
名前 |
抵抗 (レジスタンス) |
コンダクタンス |
|
イメージ |
電流の流れ難さ |
電流の流れ易さ |
|
単位 |
Ω |
|
S |
単位の読み |
OHM オーム |
MHO モー |
SEMENS ジーメンス |
値の例 |
4Ω |
1/4S |
|
1Ω |
1S |
||
1/4Ω |
4S |
上表にあるとおり、コンダクタンスの単位は(とSの)2つあります。Ω(OHM)の逆数が
(MHO)というのは、お茶目で覚え易いため、是非使いたいのですが、
という文字が無いため、本書ではS(ジーメンス)を使います。
一本の抵抗器を「流れ難さΩ」で呼んでも、「流れ易さS」で呼んでもかまいません。つまり、部品店で4Ωの抵抗を購入する時に「4分の1ジーメンスの抵抗を下さい」と言っても良い訳です。ですから「抵抗(Ω)があれば、コンダクタンス(S)なんて要らないとや」と思い勝ちですが、実はこのコンダクタンス、並列回路でとても役に立ちます。
直列合成抵抗は合計するだけで求めることができましたが、並列合成抵抗はちょっと面倒でした。そこでコンダクタンス(通りやすさ)を使って考えてみます。コンダクタンスを使うと並列回路は合計するだけで計算できます。
下図の回路では、通りやすさ2Sと3Sの抵抗が並列に接続されています。道路に喩えれば、道幅2mと、3mの、2本の道路で目的地に繋がっている状態です。ですから、2本の道路を合わせて、道幅5mの道と同じだけの人が通れる筈です。
回路に話を戻すと、通りやすさ2Sの抵抗と3Sの抵抗が並列なので、並列にした通りやすさは5Sとなります。このように、コンダクタンス(流れ易さ)を合計するだけで、並列回路の計算ができました。答えをΩで出したい場合は、5Sの逆数を求めて、0.2Ωとなります。
さて、上図では抵抗の仕様が、流れ易さ(コンダクタンス:S:ジーメンス)で示されていました。次に、抵抗がいつも通り、流れ難さ(抵抗:Ω)で示されている場合を考えます。
下図の回路では、1Ωと4Ωが並列に接続されています。それぞれの抵抗値を、流れ易さに書き直すと、1Sと0.25Sです。流れ易さを合計して、並列接続の流れ易さ(並列合成コンダクタンス)を計算すると、1.25Sです。答えを流れ難さ(Ω)で出したい場合は、1.25Sの逆数を求めて、並列合成抵抗は0.8Ωとなります。
上図の下部に並列合成抵抗を公式で求める方法を示します。実は公式の方法も、2つの抵抗値をコンダクタンスに変換してから合計し、合計で得たコンダクタンスを、もう一度抵抗値に戻している、と分ります。
並列抵抗の計算は次のように書く場合があります。
1Ω // 4Ω = 0.8Ω
「//」は並列の抵抗値を計算する、という記号です。
下図の回路の@〜Cのコンダクタンス、抵抗、電流を回路図内に記入してください。
@0.5Sと1.5Sが並列なので、2S
A2Sを逆数にして、0.5Ω
B4.5Ωと0.5Ωが直列なので5Ω
C5Ωに10Vが加わっているので、2A
直列抵抗に分圧の考え方があるように、並列抵抗には分流の考え方があります。下図に示すように、並列に接続した各抵抗には、コンダクタンス(流れ易さ)に比例した電流が流れます。
下図の回路で、2kΩに流れる電流を回路図内に記入して下さい。
下図に示す、3つの電圧に繋がった、3本の抵抗の中点の電圧は、キルヒ則で連立方程式立てなくても、図中の公式で求めることができます。この公式は一見複雑そうですが、規則性があるので楽に覚えられます。
大文字ABCが電圧、小文字abcは抵抗値です。また、AbcはA×b×cの事です。(つまり、×は省略する場合があります)
抵抗が4本、5本と増えた場合はそれぞれ次のようになります。
下図の回路に矢印で示す点の電圧を求めてください。
下図左側の装置は、ポンプで水を送り、1秒間に3L(リットル)の水を循環させています。流れる水の量は3L/秒です。蛇口を眺めていると、1秒あたり3Lの水が通過するのが見えます。
さて、「水の量」:L(リットル)に相当する電気の量を「電荷」:C(クーロン)と呼びます。下図右の回路では、1秒間に3C(クーロン)の電荷が通過しています。つまり、3C/秒です。私たちは、これを3Aと呼んでいます。(つまり、3A = 3C/秒です)
毎秒3Lで5秒間流れると、15Lの水が通過します。これと同様に、毎秒3C(3C/秒=3A)が5秒間流れると、15Cの電荷が通過します。つまり、
通過した電荷[C]=電流[A]×時間[秒]
です。
5Ωの抵抗に10Vを加えると、1分間で何クーロンの電荷が通過しますか。
オーム則より、電流は10V÷5Ω=2A。1分は60秒だから、電荷は2A×60秒=120C通過する。
コンデンサは下図のコップが水を蓄えるように、電荷を蓄える部品です。
コップでは水面の高さとコップの大きさ(底面積)を掛けると溜まった水の量を知ることができます。上図の例では、
コップの大きさ(底面積)5cm2 × 水面の高さ2cm = 水の量10cm3
となります。コンデンサでも同様に、溜まっている電荷は、電圧の高さとコンデンサの大きさ(容量)を掛けて求めることができます。
コンデンサの大きさ(容量)5F × 電圧の高さ2V = 電荷の量10C
もしこのコップに、毎秒1cm3の勢いで、10秒間水を注ぐとと、水面が2cmに上昇しますから、
水の勢い1cm3/秒 × 10秒 / コップの大きさ5cm2 = 水面の高さ2cm
となります。水の勢い1cm3/秒は、電流1C/秒(つまり、1A)のことですから、コンデンサでは、電流と時間を掛けて(流れ込んだ電荷を求めて)容量で割れば、上昇した電圧が計算できます。
電流1A × 時間10秒 / 容量5F = 電圧の高さ(増加)2V
@12Fのコンデンサに、2Aの電流で1分間充電しました。(コンデンサに電流を流し込んでて、電荷を貯めることを充電すると言います)コンデンサに溜まった電荷は何クーロンですか。コンデンサは何ボルトに充電されますか。
A100μFのコンデンサが20Vに充電されています。一定の電流1mAで放電(コンデンサから電流を流れ出させ、コンデンサに溜まっている電荷を吐き出させることを、放電と言います)させれば、何秒で空(コンデンサの電荷がなくなる)になりますか。
@1分は60秒だから、溜まった電荷は2A×60秒=120C。12Fのコンデンサに120Cが蓄えられると、電圧は10Vとなる。
Aコンデンサに溜まっている電荷は、100μF×20Vで2mCである。1mAとは、1mC/秒のことだから、2mC÷1mC/秒=2秒でコンデンサが空になる。
下図の回路ではコンデンサは最初8Vに充電されています。ここで、SWをONにすると、1Ωの抵抗を通じて、コンデンサが放電(コンデンサに溜まった電荷が電流で流れ出す)を始めます。
SWをONした瞬間、下図回路図の@のように、抵抗には8Vが掛かり8Aの電流が流れます、その結果、グラフに@で示すように、コンデンサの電荷は8Aの勢いで放電し、速やかに電圧が下がり始めます。
コンデンサが4Vまで放電すると、上図Aのように、放電電流が4Aに減少し、放電の勢いが弱まります。このように次第に勢いを弱めながら放電が続き、例えば、1Vまで放電すると、上図Cのように、放電電流は1Aに減少し、放電の勢いは極めてゆるやかになります。
このようにコンデンサに抵抗を接続すると、電圧が低下すると、放電する電流も減少するため、上図のグラフに点線で示すように、次第に勢いを弱らせながら、放電して行きます。
下図に放電の様子を簡素に示します。コンデンサの容量がC[F],抵抗がR[Ω]の場合、下図に点線で示すように滑らかに放電します。
コンデンサの最初の電圧がE[V]の場合、スイッチONからt秒後のコンデンサの電圧Ecは、次の式で計算できます。(expは次第に勢いを弱らせる(強める)様子を計算する関数です。)
←この式は分らなくても良い
Excelでは、=E1*EXP(-T1/C1/R1)で計算できます。
E1=最初の電圧[V]、T1=時間[秒]、C1=コンデンサの容量[F]、R1=抵抗値[Ω]
たとえば、たとえば、10μコンデンサを100Vに充電して、100kΩで1秒放電した場合は、Excelに=100*EXP(-1/10E-6/100E3)と入力して、約37Vまで電圧が下がると計算できます。
逆に、コンデンサが所定の電圧に放電するまでの時間を計算することもできます。(lnはexpの逆の働きをする関数です。)
←この式は分らなくても良い
Excelでは、=-C1*R1*ln(E2/E1)で計算できます。
E1=最初の電圧[V]、E2=所定の電圧[V]、C1=コンデンサの容量[F]、R1=抵抗値[Ω]
たとえば、10μのコンデンサを100Vに充電して、100kΩで放電して60Vに電圧が下がるまでの時間は、Excelに=-10E-6*100E3*LN(60/100)と入力して、約0.51秒と計算できます。
Excelを用いて、下図の回路のスイッチをONにした後の放電の様子を10m秒毎に計算し、グラフに示してください。
Excelに下図のように入力します。A2、A4、A6のセルは絶対参照なので、F4キーを押して、$A$4等とします。
計算させ、グラフを表示させると、下図のようになります。
時定数は、じていすう、ときていすう、ときじょうすう、と読み方が様々にありますが、どれも正しいとされています。記号はτ(タウ)です。
CR回路は最初は勢い良く放電を開始し、次第に放電の勢いを弱めて行きますが、「時定数τ」は下図のグラフに太い点線で示すように、「もし、最初の勢いのまま放電し続けたら、何秒で放電が終了するか」を表しています。放電のグラフを手で書くときに、この時間τが分ると便利です。
τの値は、CとRを掛けて求める事ができます。
τ[秒] = C[F]×R[Ω]
さらに、最初の電圧を100Vとして、スイッチをONにしてからτ(=C×R)秒経過したときのコンデンサの電圧を計算すると、
100 × exp(−CR/CR)= E × exp(−1)= 約37
Excelでは=100*EXP(-1)で36.78…と表示される。
となり、τ秒経つと、コンデンサの電圧は最初の37%まで低下します。(さらにτ秒経つと、さらにその37%まで低下し、これを繰り返して放電して行きます。)このように時定数の値は、回路の動作を調べるのにとても役に立ちます。
コンデンサ容量[F]と抵抗[Ω]を掛けると、時間[秒]が求まるのは、奇妙な感じですが、容量=電荷/電圧また、電荷=電流×時間であることから、次のように考えることができます。
先の練習問題(C=100μF、R=1kΩ)の回路の時定数τを求め、放電開始からτ秒後のコンデンサの電圧を練習問題の答のグラフから求めてください。最初の電圧の何%に低下していますか?
時定数τ m秒 グラフから求めた電圧 V 電圧の割合 %
時定数τ=100μF×1kΩ=100m秒
時定数τ 100m秒 グラフから求めた電圧 3.7V 電圧の割合 37%
下図左側の回路でスイッチをONにすると、抵抗を通して電流が流れ、コンデンサが充電されて行きます。
また、下図右側に示すとおり、コンデンサ放電のグラフを上下逆にすると、今回のコンデンサ充電のグラフになります。
上下逆になったために、時定数τ後の充電電圧は、最初の電圧の63%となります。(充電されずに残っている電圧が37%です)また、コンデンサの充電電圧Ecは、電池の電圧をE[V]とすると、
Excelでは、=E1*(1-exp(-T1/C1/R1))で計算できます。
E1=電池の電圧[V]、T1=時間[秒]、C1=コンデンサの容量[F]、R1=抵抗値[Ω]
で計算できます。
下図の回路でSWをONにした後のコンデンサの電圧の変化を、1m秒毎にExcelで計算しグラフを描いてください。
抵抗が100kΩ、コンデンサが0.1μ、電源が100Vだから、Excelで、ON後の時間を時間をB2セルに入れれば、充電電圧は=100*(1-(exp(-B2/100E3/0.1E-6))で計算できる。tの値を次第に大きくして、例えば下図のようにExcelに入力し、計算させる。(下図ではCとRもセルから与えている)
計算結果は次のようになる。
本項は余談です。興味がなければ読み飛ばすことができます。
この問題は下図のシートを使えば、exp関数を使わずにシミュレーションという方法でも解くことができます。シミュレーションですから、入力電圧の変化も任意に設定できます。
A列に時間(1m秒ずつ増大)、B列に入力電圧(自由な変化が可能)を入力し、E2セルにコンデンサの電荷の初期値(ここでは0クーロン:空っぽ)を入力します。
C列の抵抗の電圧は、入力電圧とコンデンサの電圧の差ですから、=B2-F2、F列のコンデンサの電圧はコンデンサ電荷/容量なので、=E2/0.1E-6と式を設定します。
ポイントはE3セルのコンデンサの電荷です。「コンデンサの電流×時間=コンデンサに流れ込んだ電荷」という点と「流れ込んだ電荷の分、コンデンサの電荷は増える」という2点を考えて、電流のD2に(1行当たりの)時間(ここでは、A3−A2で1m秒と)を掛けてコンデンサに流れ込んだ電荷を求め、さらに直前の電荷(真上のセルE2)に加えて、=E2+D2*(A3-A2)と入力します。
入力した値や式を下方向にコピーしてシートを完成し、計算してグラフを描かせると、下図に示すとおり、充電の様子が正しく計算されました。
電圧の変化に対して、1行当たりの時間が十分細かくないと正しく計算できませんから、ゆっくりと電圧や電流が変化する程度に、1行当たりの時間(ここでは1m秒)を調節します。
実は、exp関数を使うより、こちらの方が(四則演算しか出てきませんし、電流、電圧、電荷の単純な関係だけを入力すれば良いから)分り易いのです。このような簡単な計算から、exp関数の曲線が出てくるのは、私達の代わりに、Excelが微分方程式を解いてくれているからです。(微分方程式は、フリコの構造を元に、フリコの振動を求めるような計算です)その上この方法、「倒立振子を安定させる制御を検討する」とか、相当すごい事までできるんです。
下図の回路の放電の様子をExcelでシミュレーションし、コンデンサの電圧をグラフで表示してください。
コンデンサの電荷が、抵抗に流れる電流×時間ずつ減少することを考えて、次のようなシートを作成する。
計算させてグラフを描くと下図のように放電の様子が表示される。
下図の回路でSWをONにすると、分圧の法則から、コンデンサは5Vを目指して充電されることは分ります。後は、時定数が計算できれば、充電の様子も分ります。
しかし、上図のままでは抵抗が2本あり、時定数が計算できません。そこで、上図の点線で囲んだ部分を、下図に示すテブナンの定理を使って、一本の抵抗に置き換えます。
先ず、上図(a)に示すように、電池を電線に置き換えます。すると、上図(b)のように、右側から見た抵抗値は、20kΩと5kΩが並列に見えるので、4kΩとなります。最後に、上図(c)のように、端子に加わる電圧(5V)の電池を接続し直します。
このように、電池と抵抗を複雑に組み合わせた回路も、1本の電池と抵抗の直列回路で表すことができます。これがテブナンの定理です。この置き換えを行うと、検討中の回路は下図のようになります。
上図の通り、4kΩを通して100μFを充電するので、時定数は400m秒で、充電の様子は上図右側のグラフのようになります。
下図(a)回路を端子から見た電圧と内部抵抗を、下図(b)のように単純に置き換えると、電圧と抵抗はいくらになりますか。
電圧 V 抵抗値 Ω
まず、端子の電圧を考える。下図(a)のとおり、下側の並列合成抵抗は1kΩ、従って電池の10Vが1kΩと1kΩで分圧されて、端子には5Vが出力される。
次に、電池を電線に置き換えると、上図(b)の回路となり。入力端子から見た抵抗値は、3つの抵抗の並列合成抵抗で、500Ωとなる。
電圧 5V 抵抗値 500Ω
重ね合わせの原理は、電池が複数ある回路の電流を簡単に求める方法です。「複数の電池が働いている回路に流れる電流は、それぞれの電池が1つだけ働いて流れた電流を合計すれば計算できる」という考え方です。電圧と電流が比例する(つまり、オーム則が通用する)回路であればいつでも利用できます。
具体的にはまず、複数の電池のどれか1つだけに注目し、それ以外の電池は「導線」と考えて、各部の電流を求めます。次に、別の電池に注目し、それ以外の電池は「導線」と考えて、各部の電流を求めます。このように全ての電池に順に注目して電流を求めます。最後に、これまでに求めた電流を合計すれば、全ての電池が活動したときの電流が分ります。
下図の例では6Vと12Vの2つの電池が働いています。ここでは、R1、R2、R3に流れる電流を重ね合わせの原理で求めます。
各部の電流は、下図(a)(b)(c)に示す3段階で考えます。まず(a)では6Vの電池に注目して、それ以外の(12Vの)電池は導線であると考え、各部の電流を求めます。次に(b)では12Vの電池に注目して、それ以外の(6Vの)電池は導線であると考え、各部の電流を求めます。最後に(c)で、(a)で求めた電流と(b)で求めた電流を合計すれば、電池が2つとも活動しているときの各部の電流が計算できます。
上図を見ながら下表に記入して、電流を求めます。
番号 |
問題 |
答 |
(a) |
@12Vの電池を導線と考えます |
− |
A |
R2とR3の並列合成抵抗値は、 |
Ω |
B |
電池から見た回路全体の抵抗値は、 |
Ω |
C |
R1に流れる電流は、 |
A |
D |
R2とR3に流れる電流は、(分流で…) |
A |
(b) |
@6Vの電池を導線と考えます |
− |
A |
R1とR2の並列合成抵抗値は、 |
Ω |
B |
電池から見た回路全体の抵抗値は、 |
Ω |
C |
R3に流れる電流は、 |
A |
D |
R2とR3に流れる電流は、(分流で…) |
A |
(c) |
(a)と(b)で求めた電流を合計します |
− |
@ |
R1に流れる電流は、 |
A |
A |
R2に流れる電流は、 |
上向き・下向き A |
B |
R3に流れる電流は、 |
上向き・下向き A |
番号 |
問題 |
答 |
(a) |
@12Vの電池を導線と考えます |
− |
A |
R2とR3の並列合成抵抗値は、 |
1Ω |
B |
電池から見た回路全体の抵抗値は、 |
3Ω |
C |
R1に流れる電流は、 |
2A |
D |
R2とR3に流れる電流は、(分流で…) |
1A |
(b) |
@6Vの電池を導線と考えます |
− |
A |
R1とR2の並列合成抵抗値は、 |
1Ω |
B |
電池から見た回路全体の抵抗値は、 |
3Ω |
C |
R3に流れる電流は、 |
4A |
D |
R2とR3に流れる電流は、(分流で…) |
2A |
(c) |
(a)と(b)で求めた電流を合計します |
− |
@ |
R1に流れる電流は、(2A−2A) |
0A |
A |
R2に流れる電流は、(2A+1A) |
上向き・下向き 3A |
B |
R3に流れる電流は、(4A−1A) |
上向き・下向き 3A |
コイルはコンデンサに比べると分かり難く感じる部品ですが、下図のように「電流で回るはずみ車」と考えると動作をイメージできます。
上図右側の回路でコイルの働きを説明します。下図左側のように、スイッチをONにすると、コイルに電圧が加わり、はずみ車はゆっくりと回転を始めます。つまり、電流はゆっくりと増えてゆきます。
電流が増えたところで、上図右側のようにスイッチをOFFにすると、はずみ車は勢いが付いているため、OFF後も回転を続け、上図右側の経路で電流が流れて、電球が光り続けます。
電球にエネルギを供給しているため、はずみ車は次第に回転が遅くなり、回転のエネルギをすべて電球に送り込むと停止します。
コイルの大きさ(インダクタンス)は、はずみ車の重さに対応しています。ですから大きなコイルは電圧を掛けてもなかなか電流が増加せず、小さなコイルはすぐに電流が増加します。ですから、コイルの大きさは次のように計算します。
6Vの電圧を加えて、電流が3Aに増えるまでに、2秒掛かれば、
コイルの大きさ = 6V × 2秒 ÷ 3A = 4H
Excelでは、=E1*T1/I1
ですからコイルに流れる電流は、
コイルの電流 = 電圧 × 時間 ÷ コイルの大きさ
Excelでは、=E1*T1/L1
ところで、鉄やフェライトなどの磁性体の芯(コア)に線を巻くと、コイルを小形にできます。ただし、磁性体には「これ以上強い磁石には成れない」という限度があるので、大きな電流を流すと、その限度に達して「磁気飽和」という現象が起こります。
下図に示す通り、コアが磁気飽和すると「電流がそれ以上増えない」のではなく、「電流が急激に増加する」するので注意が必要です。
つまり、上図右側のグラフ上に示すように、はずみ車があまりに激しく回転すると電線から離れてしまい(コイルが、電線に変身して)電流が流れ放題になるというイメージです。
@5Vを加えると1μ秒で10mAに電流が増加しました。このコイルの大きさはいくらですか?
A50mHのコイルに15Vの電圧を1m秒加えました。電流は何Aに増加しますか。
@コイルの大きさ = 5V ÷ 10mA ÷ 1μ秒 = 500μH =5*1E-6/10E-3
Aコイルの電流 = 15V × 1m秒 ÷ 50mH = 300mA =15*1E-3/50E-3
下図(a)の回路でスイッチをONにすると、コイルの上側に+の電圧が加わります。このため、同図(b)のようにはずみ車の回転が次第に速くなり、下図右のグラフに灰色線で示すように電流が増加して行きます。
ここで例えば電流が1Aに増加したときにスイッチをOFFにすると、すでにはずみ車は勢い良く回っており、コイルはスイッチがOFFであるにもかかわらず1Aの電流を流し続けようとします。このためコイルの下側に高い+の電圧が発生し、離れた接点を火花となって電流が流れます。接点に火花が発生すると(火花は高いエネルギーを消費するので)はずみ車の回転は短時間で停止し、電流は止まります。
このようにコイルに流れる電流を突然止めたとき、高い電圧が発生する現象を「フライバック」と呼び、発生する高い電圧を「フライバック電圧」、無理にスイッチを流れる電流を「フライバック電流」と呼びます。
フライバックによって、接点が火花で傷みますし、半導体であれば破損します。このため下図に示すような、OFF時の電流を吸収する回路(スナバ回路)を別に設け、火花の発生を止めます。
スナバ回路の働きについては、別途説明します。
下図(a)のように、4Vと書かれた電池の電圧を測定すると、確かに4Vでした。そこで、下図(b)のように、1A流れる事を期待して、4Ωの抵抗(このように電流を流すための抵抗を「負荷抵抗」と呼びます)を接続すると、なぜか0.8Aしか流れませんでした。
この理由は、上図(c)に示すように、電池の内部に(隠された)抵抗があり、その結果、合計の抵抗値が5Ωとなり、電流が減少したためです。
このような、「(必要ないのに)素子に入っている抵抗」を「内部抵抗」と呼びます。大きな電流を流す回路では、内部抵抗を考えて設計しないと、電流が思ったより小さくなってしまいます。
もちろん電池メーカーは意地悪で内部抵抗を入れている訳ではありません、電池メーカーは内部抵抗を無くそうと努力しているのですが、構造上止むを得ず入ってしまう訳です。
下図のように、内部抵抗1Ω、起電力4Vの電池を2本直列に接続し、1Aの電流を取り出すためには、負荷抵抗は何Ωにすべきですか。
負荷抵抗: Ω
内部抵抗を考えると、回路は下図左のように、各1Ωの内部抵抗があります。また、起電力(電池の電圧)の合計は8Vです。ですから、1A流すためには、回路全体の抵抗値を8Ωにする必要があります。このため、6Ωの負荷抵抗を接続すれば、回路に1Aを流すことが出来ます。
負荷抵抗: 6 Ω
下図(a)のように、3Vの電源を10kと20kで分圧すると、20kの両端には2Vが生じる筈です。そこで、同図(b)のように20kの両端電圧を測定すると、なぜか1.5Vしかありませんでした。
この現象も「内部抵抗」が原因です。上図(c)に示すように、本来は電流を流さない筈の電圧計にも、「内部抵抗」(ここでは20k)があります。
このため、回路に電圧計を接続したことで、下側の20kΩと電圧計の内部抵抗の20kΩが並列接続され、両者が合わさって10kとして作用します。結果として、上側の10kと下側の10kで分圧されたことになり、下側の20kΩの両端には、電源の3Vの半分、つまり1.5Vが生じたのです。
もちろん計器メーカーは意地悪で内部抵抗を入れている訳ではありません、メーカーは内部抵抗を無くそうと努力しているのですが、構造上止むを得ず入ってしまう訳です。今日では(通常の用途であれば)全く電流が流れないと考えて良い電圧計も増えています。(内部抵抗が1TΩ以上あります)
下図のように、100Vの電源から、10MΩを経由して電圧を測定すると、電圧計は50Vを示しました。この電圧計の内部抵抗を答えてください。
内部抵抗 Ω
100Vが50V(半分)に分圧されているので、上側の抵抗と下側の抵抗(内部抵抗)は同じです。このため内部抵抗は10MΩです。
内部抵抗 10M Ω
ここから説明する「仕事」や「仕事率」は、電気の世界と、現実の世界(温度や運動などの身近な事柄)を関連付ける上で役立ちます。たとえば「この機械には何Wくらいのモータが必要か?」などを、ざっくり計算できるようになります。ですから、エネルギや仕事については、練習もまじえてちょっと詳しく説明します。
尚、本書では分り易くするため「仕事」に関連する「良く似た」単位や考え方を「全く同じもの」として扱います。そのほうが簡単で、実用上何の問題も無いからです。
下図左側のように、102gのりんごを1m持ち上げる「仕事」が1Nm(ニュートンメートル)です。Nmの代わりに、J(ジュール)や、W秒(ワット秒)を使う事もできます。また、「仕事」は「エネルギ」とも呼びます。
持ち上げるのではなく、下図右上に示すとおり、荷物を102g(1N)の 力 で、1m横に引き摺る仕事も1Nmです。
また、上図下部に示すとおり、4200Nmのエネルギがあれば1リットルの水を1℃温めることができます。
下表の仕事を求めて答欄に、各種の単位で記入してください。
番号 |
問題 |
答 |
@ |
306gの荷物を4m持ち上げる仕事は |
Nm J W秒 |
A |
2Lの水を5℃暖める仕事は |
Nm J W秒 |
番号 |
問題 |
答 |
@ |
306gの荷物を4m持ち上げる仕事は 306g÷102g=3N 3N×4m=12Nm |
12Nm 12J 12W秒 |
A |
2Lの水を5℃暖める仕事は 4200J×2L×5℃=42000J |
42000Nm 42000J 42000W秒 |
仕事率は「1秒間にできる仕事の量」で、単位はNm/秒です。「1秒にできる」というところが、「仕事」との違いです。(Nm/秒の代わりに、J/秒や、Wを使う事もできます)
下図に示すとおり、荷物を102g(1N)の 力 で引っ張り、1秒間あたり、1mずつ引きずることができれば、仕事率は1Nm/秒(ニュートンメートル毎秒)です。1秒間に1Nmの仕事ができますから。10秒間待てば、10Nmの仕事ができます。
また、上図右側にあるように、電圧1Vで1Aの電流が流れているとき「1W(ワット)の電力が消費されている」と言います。
電力Wと仕事率Nm/秒(J/秒)は同じもので、1Wの電力を無駄なく使えば、1秒間に1Nmの仕事ができます。
電力は電圧と電流を掛けて、次のように計算して求めます。
電力 = 電圧 × 電流
例えば 20V × 5A = 100W
オーム則によれば、電圧は電流×抵抗、電流は電圧÷抵抗ですから、電力は次の計算でも求めることができます。
電力 = 電流2 × 抵抗 (電流2は電流×電流の事です)
例えば 5A2 × 4Ω = 100W
電力 = 電圧2 ÷ 抵抗
例えば 20V2 ÷ 4Ω = 100W
100Wの仕事率は、他の単位を使って表すこともできます。
100W = 100J/秒 = 100Nm/秒
(102gのりんごを、一秒で100m持ち上げます)
このように仕事や仕事率では、複数の単位が、ほぼ同じ意味で使われます。それらの単位を下表に示します。
種類 |
単位 |
呼び名 |
意味 |
仕事 |
Nm |
ニュートンメートル |
1N(102g)の力で1m引っ張る仕事 |
J |
ジュール |
||
W秒 |
ワットセカンド |
1Vで1Aの電流を1秒間流す仕事 |
|
熱量 |
kcal |
キロカロリー |
1kgの水を1℃温めるのに必要な熱量 4200J=1kcal |
仕事率 |
Nm/秒 |
ニュートンメートル毎秒 |
1N(102g)の力で 1秒あたり1m引っ張る仕事率 |
J/秒 |
ジュール毎秒 |
||
W |
ワット |
1Vで1Aの電流を流す仕事率 |
下表の仕事を求めて答欄に、各種の単位で記入してください。但し、エネルギは目的のために無駄なく利用されると考えてください。
番号 |
問題 |
答 |
@ |
4秒間に510gの荷物を20m持ち上げる仕事率は |
Nm/秒 J/秒 W |
A |
10分で3Lの水を5℃暖める仕事率は |
Nm/秒 J/秒 W |
C |
30V2Aのモータの仕事率は |
Nm/秒 J/秒 W |
C |
30V2Aのモータが、20秒間動作して行う仕事は |
Nm J W秒 |
番号 |
問題 |
答 |
@ |
4秒間に510gの荷物を20m持ち上げる仕事率は 510÷102=5N 5N×20m÷4秒=25 |
25Nm/秒 25J/秒 25W |
A |
10分で3Lの水を5℃暖める仕事率は 3L×5℃×4200=63000J 63000J÷600秒=105J/秒 |
105Nm/秒 105J/秒 105W |
C |
30V2Aのモータの仕事率は 30V×2A=60W |
60Nm/秒 60J/秒 60W |
C |
30V2Aのモータが、20秒間動作して行う仕事は 30V×2A=60W 60W×20秒=120W秒 |
120Nm 120J 120W秒 |
下図の回路の@〜Cの電圧や電力を求めてください。
@A分圧の法則により、@は10V、Aは20V
B10V×10V÷1kΩで、100mW
C20V×20V÷1kΩで、400mW
下図のように、10V500mAでモータを駆動して1.02kgの荷物を持ち上げます。このモータを10秒間動作させれば、何メートル持ち上げることができますか。下表右側の列に書き込んで答えてください。但し、モータに加えた電力は無駄なく荷物の持ち上げる事に使われるとします。
番号 |
項目 |
答 |
@ |
モータの消費電力 |
W |
A |
モータの10秒間の仕事 |
Nm |
B |
荷物を引く力 |
N |
C |
荷物を引く距離 |
m |
番号 |
項目 |
答 |
説明 |
@ |
モータの消費電力 |
5W |
10V×500mA |
A |
モータの10秒間の仕事 |
50Nm |
5W×10秒 (5Nm/秒×10秒) |
B |
荷物を引く力 |
10N |
1020g/102=10N (1N=102gw) |
C |
荷物を持ち上げる距離 |
5m |
50Nm/10N |
実際には様々なところでエネルギが(モータが発熱する等で)無駄になり、持ち上げる高さは小さくなります。
下図のように、100V、8.4Aのヒータを使って、電気ポットに入った20℃の水2リットルを、80℃まで温めるには、何分必要ですか。但し、熱は外に逃げないものとします。
番号 |
項目 |
答 |
@ |
暖めて上昇させる温度 |
℃ |
A |
暖めるのに必要なエネルギー |
J |
B |
ヒータの電力 |
W |
C |
暖める時間(秒) |
秒 |
D |
暖める時間(分) |
分 |
番号 |
項目 |
答 |
説明 |
@ |
暖めて上昇させる温度 |
60℃ |
80℃−20℃ |
A |
暖めるのに必要なエネルギー |
504000J |
2L×60℃×4200J |
B |
ヒータの電力 |
840W |
100V×8.4A |
C |
暖める時間(秒) |
600秒 |
504000÷840 |
D |
暖める時間(分) |
10分 |
600秒÷60 |
電力量は、電力(仕事率)に時間を掛けて、使用した電気エネルギ(仕事)の量を求めたものです。ですから電力量は、基本的にはJ(ジュール)やW秒(ワットセコンド)と同じタイプ(仕事)の単位です。
JやW秒との違いは、時間に「秒」ではなく「時間」(アワー:h)を使うところです。ですから単位も、Wh(ワットアワー)やkWh(キロワットアワー)です。1時間は3600秒ですから、1Whは3600W秒(3600J)です。
私たちが支払う電力料金も、電力量を元に決められます。つまり、使ったエネルギーの分、代金を取られる訳です。
下図の通り、100V8.4Aのヒータを、毎日2時間、30日間動作させると、何kWhの電力量を消費しますか?
番号 |
項目 |
答 |
@ |
ヒータの電力 |
W |
A |
2時間動作時の電力量 |
kWh |
B |
30日間動作時の電力量 |
kWh |
番号 |
項目 |
答 |
説明 |
@ |
ヒータの電力 |
840W |
電圧×電流 |
A |
2時間動作時の電力量 |
1.68kWh |
電力×時間 |
B |
30日間動作時の電力量 |
50.4kWh |
一日電力量×30 |
本書ではデシベルはしばらく(伝達関数のあたりまでは)出てきません。ややこしい割りには使う機会が少ないです。このため、本項は読み飛ばしておき、必要が生じてから読むこともできます。
さて、デシベルは「電力の倍率に付いているゼロの数を数えて10倍したもの」を表す単位です。(あとで詳しく説明します)「電力の倍率」は「利得」や「ゲイン」とも呼びます。
電力の倍率は、たとえば下表@〜Bの灰色部で示すように、1Wが10000Wに増加すれば「電力10000倍」です。当然、倍率は次のように計算できます。
つまり、
ところが、「10000倍」とゼロを沢山書くのは面倒ですから、下表C列のように、「ゼロの数」だけを書くことにして、「電力10000倍」を「4[B]」(ベル)と呼びます。電力100倍なら2[B]、電力1000000000倍でも9[B]と、短く書くことができます。
@ |
A |
B |
C |
D |
入力 電力 |
出力 電力 |
電力の 倍率 |
倍率の0の数 [B]ベル |
0の数の10倍 [dB]デシベル |
1W |
0.0001W |
0.0001倍 |
-4 [B] |
-40 [dB] |
0.001W |
0.001倍 |
-3 [B] |
-30 [dB] |
|
0.01W |
0.01倍 |
-2 [B] |
-20 [dB] |
|
0.1W |
0.1倍 |
-1 [B] |
-10 [dB] |
|
1W |
1倍 |
0 [B] |
0 [dB] |
|
10W |
10倍 |
1 [B] |
10 [dB] |
|
100W |
100倍 |
2 [B] |
20 [dB] |
|
1000W |
1000倍 |
3 [B] |
30 [dB] |
|
10000W |
10000倍 |
4 [B] |
40 [dB] |
しかし、あまり大きな倍率になると、ゼロの数を数える事さえ面倒です。このため「ゼロの数を数える関数」log10を使います。たとえば、Excelでセルに=LOG(1000000000,10)と入力すると、「9」と表示されます。式で書くと、
log10(1000000000)=9
です。ですから、電力の倍率のゼロの数[B](ベルの値)は、ゼロを数える関数log10を使って、
log10(電力10000倍)=4[B]
エクセルでは=LOG(10000,10)と入力すれば、4と表示される。
つまり、ベルの値=log10(電力の倍率)[B]
のようにして計算できます。
ところで、1[B]増えるだけで、10倍も大きくなるのは、ちょっと大胆すぎて使い難いです。たとえば、「1[B]大盛りにしてくれ」と頼むと、10人前の大盛りが出てくる」訳です。
そこで、上表D列のように、10[dB]で1[B]となる単位、[dB](デシベル)を使います。10倍にしただけですから、電力10000倍の場合は次のように計算できます。
10×log10(電力10000倍)=40dB
エクセルでは=10*LOG(10000,10)と入力すれば40と表示される。
つまり、デシベルの値=10×log10(電力の倍率)[dB]
B(ベル)の代わりにdB(デシベル)を使うのは、1.2[L](リットル)と呼ぶ代わりに、値を10倍して、12[dL](デシリットル)と呼ぶのと同じです。
1[B]は10倍ですが、1[dB]は約1.26倍です。1[dB]の大盛りは、26%増量です。3[dB]なら2倍盛り、これなら、使い勝手が良さそうです。
1mWを増幅器に入力したところ、10Wが出力された、利得は何dBか
エクセルで=10*LOG(10/1E-3,10)と入力して、利得は40dB
(1E-3は1mの意味、1E3なら1kの意味)
さて、100倍なら「ゼロ2つ」と数えられますが、例えば30倍はどうでしょう。30倍は、10倍(1個)よりは大きいし、100倍(2個)よりは小さいと思われます。幸い、log10はこのような場合にも答を出してくれます。
エクセルでは=LOG(30,10)と入力
つまり、30倍のゼロの個数は1.5個程度で、確かに1より大きく2より小さいです。
1.5mWを増幅器に入力したところ、100Wが出力された、利得は何dBか
エクセルで=10*LOG(100/1.5E-3,10)と入力して、利得は約48.2dB
下図の回路で、電圧を10倍、100倍、と大きくすると、電流も10倍、100倍と増加します。その結果、電力は、100倍、10000倍と電圧以上の勢いで大きくなります。
つまり、下表着色部で示すように、電圧の倍率のゼロの数が、1、2、3…と増加すると、電力の倍率のゼロの数(ベルの値)は、2、4、6…と2倍のペースで大きくなります。
電圧 |
電力 |
|||
倍率 |
倍率の0の数 |
倍率 |
倍率の0の数 [B]ベル |
0の数の10倍 [dB]デシベル |
0.1倍 |
-1 |
0.01倍 |
-2[B] |
-20[dB] |
1倍 |
0 |
1倍 |
0[B] |
0[dB] |
10倍 |
1 |
100倍 |
2[B] |
20[dB] |
100倍 |
2 |
10000倍 |
4[B] |
40[dB] |
1000倍 |
3 |
1000000倍 |
6[B] |
60[dB] |
電圧の倍率が1000倍のとき、電力の倍率は1000000倍になります。このため電圧の倍率100倍からベルの値を求めるには、ゼロの数を2倍して、
2×log10(電圧1000倍)=2×3=6[B]
Excelでは=2*log(1000,10)と入力すれば6[B]と表示される。
つまり、ベルの値=2×log10(電圧の倍率)[B]
と計算します。
電圧の倍率から「dBの値」を求める場合は、「Bの値」を10倍すれば良いので、
10×2×log10(電圧1000倍)=10×2×3=60[dB]
Excelでは=20*log(1000/1,10)と入力すれば60[dB]と表示される。
つまり、デシベルの値=20×log10(電圧の倍率)[dB]
と計算します。
このように、電圧からdBを求めるときに出てくる20は、ベルにするための10と、電圧比を電力比にするための2が合わさったものです。
1.5mVを増幅器に入力したところ、100Vが出力された、利得は何dBか
エクセルで=20*LOG(100/1.5E-3,10)と入力して、利得は約96.5dB
たとえば電力10000倍のゼロの個数(ベルの値)4は、次のように計算できました。
log10(10000倍)=ゼロ4個
つまり、ベルの値=log10(電力の倍率)
逆に、ゼロの個数(つまり、4[B])から、電力10000倍は、
104=10000倍
エクセルでは、=10^4あるいは=POWER(10,4)と入力すれば10000倍と表示される。
つまり、電力の倍率=10ベルの値
で求めることができます。
さて、40[dB]は4[B]でしたから、電力の倍率を40[dB]から求めるときは、デシベルの値を10で割って、ゼロの個数を求めて、
1040÷10=10000倍
エクセルでは、=10^(40/10)あるいは=POWER(10,40/10)と入力すれば10000倍と表示される。
つまり、電力の倍率 =10デシベルの値÷10
と計算できます。
26dBの利得のある増幅器に22mWの信号を入力した、出力は何Wとなるか
電力の倍率を26dBから求めて、22mWに掛ければよい、つまりエクセルで=22E-3*10^(26/10)と入力して、約8.76W
40[dB](4[B])なら電力は10000倍、電圧は100倍でした。つまり、電力のゼロの数を半分に減らすと電圧の倍率になりました。そのため、電力が40[dB]のとき電圧の倍率は、
1040÷10÷2=電圧100倍
エクセルでは、=10^(40/20)あるいは=POWER(10,40/20)と入力すれば100倍と表示される。
つまり、電圧の倍率=10デシベルの値÷20
と計算できます。
26dBの利得のある増幅器に22mVの信号を入力した、出力は何Vとなるか
26dBの電圧の倍率は、エクセルで=10^(26/20)倍、22mVを入力したときの出力電圧は、エクセルで=22E-3*10^(26/20)と入力して、約439mV
下表のデシベル値は、切りの良い倍率になるので、目安として利用できます。
デシベル |
電力 |
電圧 |
1dB |
約1.26倍 |
約1.12倍 |
3dB |
約2倍 |
約1.41倍 |
6dB |
約4倍 |
約2倍 |
7dB |
約5倍 |
約2.24倍 |
9dB |
約8倍 |
約2.51 |
10dB |
10倍 |
約3.16倍 |
10、100、1000倍のデシベルは、10、20、30と分るので、上表と組み合わせて様々な値で目安を知ることができます。
dBの足算は、倍率の掛け算になり、倍率の掛け算は、dBの足算になります。このため下表の例では、33dBの場合、30dB+3dBと考えて、30dB→1000倍、上表より3dB→2倍ですから、1000倍×3倍で2000倍と概算できます。
デシベルの世界 たし算 |
33dB |
||
30dB |
+ |
3dB |
|
倍率の世界 掛け算 |
1000倍 |
× |
2倍 |
2000倍 |
逆に、電力2000倍の場合、2倍×1000倍と考えて、2倍→3dB、1000倍→30dBですから、3dBと30dBを加えて、33dBと概算できます。
次の表の に適切な概算値を記入して、表を完成して下さい。
デシベル |
電力 |
33dB |
2000倍 |
29dB |
倍 |
16dB |
倍 |
dB |
50倍 |
dB |
8000倍 |
デシベル |
電力 |
考え方 |
33dB |
2000倍 |
30+3dB⇔1000倍×2倍 |
29dB |
800倍 |
20+9dB⇔100倍×8倍 |
16dB |
40倍 |
10+6dB⇔10倍×4倍 |
17dB |
50倍 |
10+7dB⇔10倍×5倍 |
39dB |
8000倍 |
30+9dB⇔1000倍×8倍 |
1. 交流回路
家庭のコンセントに電球を接続すると、下図に示すような、向きや大きさが(時と共に)単純な変化を繰り返す(ブルブル震えるような)電流が流れます。このような電流や電圧を「交流」と呼び、このような電流が流れる回路を「交流回路」と呼びます。
下図に直流(点線)と交流(実線)を示します。一定で変化しない電圧や電流が「直流」、単純な変化を繰り返す電圧や電流が「交流」です。
直流と交流
また、1秒間にやって来た波の数を「周波数」と呼び、単位はHz(ヘルツ)です。上の図では1秒間に3個の波が来ているので、周波数は3Hzです。
直流の1V(1VDC)でも、交流の1V(1VAC)でも、同じ1Vですから、電球が同じ明るさで光る筈です。
下図のように、交流の下側を、上側に折り返して、直流と強さを比べてみましょう。下図に示す、最大電圧が1Vの交流は、図に色を塗った部分が直流より弱く、その結果、電球は直流より暗く光ります。ですから、このような最大電圧1Vの交流は、1Vの交流とは呼べません。
そこで、2つの電球が同じ明るさで光るように交流の強さを調節すると、下図のようになりました。
上図「あ」の部分で、交流が直流より強く、交流が直流より弱い「い」の部分を打ち消して、直流と交流の強さが同じになります。
このとき、交流の最大電圧は1.41V(つまりV)です。このような交流を「1Vの交流」と呼びます。
つまり、交流の電圧を、倍(1.41倍)すると、交流の最大電圧を求めることができ、逆に、交流の最大電圧を、
(1.41)で割ると、交流の電圧を求めることができます。
交流の電圧には下表のように、複数の呼び方や書き方があります。
呼び方の 色々 |
交流電圧 AC電圧 実効値電圧 |
書き方の 色々 |
AC10V 10VAC 10VRMS |
下図は10Vの交流の例です。最大電圧は14.1V、最小電圧は−14.1Vです。
谷底(下側の山頂)から、山頂までの電圧は、(オシロ等で)簡単に測定できるので、好んで使用され、ピーク・トゥ・ピーク(山頂から山頂までの)電圧(P−P電圧)と呼ばれます。上図に示す10VACの交流のピーク・トゥ・ピーク電圧は、28.2VP−Pです。交流の電圧に、を掛けると(2.82を掛けると)ピーク・トゥ・ピーク電圧を求めることができます。
電流の場合も電圧と同様に、1Aと同じ強さの交流電流の最大値は、1.41A(つまりA)、このときのP−P電流は2.82A(つまり 2 ×
A)です。
下図は2Vの交流です。この交流の、周波数、最大電圧、最小電圧、P−P電圧を答えてください。
周波数 Hz、最大電圧 V、最小電圧 V、P−P電圧 VP−P
周波数 6Hz、最大電圧 2.82V、最小電圧−2.82V、P−P電圧 5.64VP−P
下図は11.3VP−Pの交流です。この交流の、周波数、最大電圧、最小電圧、交流の電圧を答えてください。
周波数 Hz、最大電圧 V、最小電圧 V、交流の電圧 VAC
周波数 3Hz、最大電圧 5.65V、最小電圧−5.65V、交流の電圧 4VVAC
交流電圧には、最大電圧や交流電圧、P−P(ピーピー)電圧という複数の示し方があります。電流も同様です。電圧や電流を計算する場合は、同じ示し方に統一して計算します。例えば、
という感じです。ですから、
←誤り
は間違いです。
下図の回路に流れるP−P電流と、AC電流を求めてください。
P−P電流 、AC電流 x
P−P電流 14.1AP−P、AC電流 10AACx
P−P電流は、(同じ仲間の)P−P電圧から直接求めることができます。AC電流はP−P電流を√2で割って求めます。
抵抗には、直流を加えても、交流を加えても、同じ大きさの電流が流れます。しかし、下図のコンデンサは、直流では電流は流れませんが、交流なら電流が流れます。このため、交流の「流れ難さ」や「流れ易さ」は、交流を使って測定し、直流で測定したもの(「抵抗」や「コンダクタンス」)と区別する必要があります。
そこで、下表に示すとおり、交流で測定した「流れ難さ」や「流れ易さ」を「インピーダンス」や「アドミタンス」と呼びます。
信号 |
直流 |
交流 |
||
分類 |
流れ難さ |
流れ易さ |
流れ難さ |
流れ易さ |
名前 |
抵抗 |
コンダクタンス |
インピーダンス |
アドミタンス |
単位 |
Ω(オーム) |
S(ジーメンス) |
Ω(オーム) |
S(ジーメンス) |
例 |
4Ω |
0.25S |
4Ω |
0.25S |
求め方 |
|
|
|
|
抵抗の逆数がコンダクタンスになったように、インピーダンスの逆数がアドミタンスになります。
下表の空欄部をに適切な内容を記入し、直流・交流の何れかと、流れ易さ・流れ難さの何れかを選んで下さい。
|
抵抗 |
コンダクタンス |
アドミタンス |
インピーダンス |
単位 |
|
|
|
|
単位の呼び方 |
|
|
|
|
求め方 |
|
|
|
|
交直の別 |
直流・交流 |
直流・交流 |
直流・交流 |
直流・交流 |
流れの難易 |
易さ・難さ |
易さ・難さ |
易さ・難さ |
易さ・難さ |
|
抵抗 |
アドミタンス |
インピーダンス |
コンダクタンス |
単位 |
Ω |
S |
Ω |
S |
単位の呼び方 |
オーム |
ジーメンス |
オーム |
ジーメンス |
求め方 |
|
|
|
|
交直の別 |
直流・交流 |
直流・交流 |
直流・交流 |
直流・交流 |
流れの難易 |
易さ・難さ |
易さ・難さ |
易さ・難さ |
易さ・難さ |
オームの法則は交流でもそのまま使えます。回路に加わる電圧を、回路に流れた電流で割れば、インピーダンスの大きさ(しばらくは、単に「インピーダンス」と呼びます)を求めることができます。
(交流の)インピーダンスには(直流の)抵抗とは違う、不思議な性質もありますが、この点は後で説明するとして、先ずは、直流と同じように考えることができる「インピーダンスの大きさ」について説明します。
下図の回路の、コンデンサとコイルのインピーダンスを求めてください。
コンデンサ Ω コイル Ω
コンデンサ 20Ω コイル 5 Ω
下図の回路の点線で囲んだ部分のインピーダンスとアドミタンスを求めてください。
インピーダンス Ω、アドミタンス S
インピーダンス 20 Ω、アドミタンス0.05S
回路の内部が複雑なものであっても、加えた電圧と流れた電流からインピーダンスを求めることができます。
部品店に行って「10Ωのコンデンサを下さい」と言っても、「それは抵抗でしょう」と笑われるだけです。コンデンサをインピーダンスを(10Ω等と)を指定して購入できないのは、同じ大きさのコンデンサでも周波数が変わるとインピーダンスが変わってしまうからです。コイルも同様です。
ですから、コイル(L)とコンデンサ(C)のインピーダンス(流れ難さ)やアドミタンス(流れ易さ)は、先に周波数を決めてから、コイルやコンデンサの大きさを元に計算する必要があります。
計算の方法を下表に示します。表中のLは、コイルの大きさ[H](ヘンリー)、Cはコンデンサの大きさ[F](ファラド)、fは使用する周波数[Hz]です。
周波数とインピーダンス
|
インピーダンス 交流の通し難さ |
アドミタンス 交流の通し難さ |
コンデンサC |
=1/2/PI()/F1/C1 |
=2*PI()*F1*C1 |
コイルL |
=2*PI()*F1*L1 |
=1/2/PI()/F1/L1 |
例えば、周波数f=318Hz、コイルの大きさL=10mH(0.01H)の場合、コイルのインピーダンス(交流の流れ難さ)ZLは
ZL=2πfL=2×3.14×318×0.01=20[Ω]
=2*PI()*318*10E-3
と計算します。
コイルのインピーダンスと、回路に流れる交流電流を求めてください。ただし交流の周波数は6.37Hzとします。
インピーダンス Ω、回路に流れる交流電流 A
インピーダンス 4 Ω、回路に流れる交流電流 10A
交流回路の知識(交流理論)なんて知らなくても、色々な電子回路が作れます。特にオペアンプを使った低周波の回路やマイコンを中心にした回路では、交流理論の知識はあまり必要ではありません。そのような場合は本章を読み飛ばして、一気に「アナログ回路入門」に進めば良いでしょう。
しかし、例えば無接点給電回路などのコイルや共振を利用する工作や、フィルタ、高周波を扱う工作では交流理論の知識が必要になります。また、マイコンを利用した制御装置では、交流理論を発展させた制御理論の知識が役立ちます。つまり、交流理論が分っていると「ちょっと輝く電子工作」が作れるようになります。
ところが、学校の教科書の交流理論は「正確すぎて分り難い」ため、(交流理論の理解は諦めて)交流理論が必要ない範囲で電子工作を楽しんでおられる方も多いと思います。
これに対して、学校の教科書に懲りて交流理論を諦めた方にも理解頂けるように工夫しています。「不正確でも分かり易い」説明を徹底し、身近な「たとえ話」を多用して、交流の振る舞いが感じられるように説明しています。
本書の不正確な説明であっても、それで一旦理解してしまえば勝ちで、大学の教科書だって「ああ、あの事か」「こんな事を、よくもまあ、こんなに難しく書いたもんだなぁ…」とスラスラ読めるようになります。
さてここまでは、インピーダンスを使って、交流回路でも、直流回路と同様にオーム則が使える事を説明して来ました。
しかし、交流独特の不思議な現象も発生します。例えば、下図の回路では、5Ωのコイルと、4Ωのコンデンサを直列に繋いだところ、全体として1Ωとなり、9Vの交流を加えたら、9Aもの電流が流れました。
5Ωも、4Ωも、「通し難さ」なのに、2つ直列にすると、逆に「流れ易くなる」という不思議な現象が起きています。
ここで「直列回路のインピーダンスは
だから…」と理由を考えずに公式を持ち出しては先々応用が利かなくなってしまいます。それでは「公式を覚えているだけ」で、インピーダンスの正体を感じた事にはならないからです。(電子工作に応用して、面白い回路を発想するには「正体を感じる」事が大切です)
これまで考えてきた「インピーダンス(の大きさ)」だけではこの問題は解決できません。これから説明する交流理論は、このような不思議な現象を分り易く解決するための分野です。
まず、交流理論の基本の考え方を、直流理論と比較して説明します。直流理論では下図左側の通り、例えば「4Ω」のように、1つの値で「流れ難さ」を表します。しかし、交流理論では同じ「流れ難さ」を、下図右側の通り「右に4Ωで、上に3Ω」のように、2つの値で表します。
上図を見れば分るように、直流では「左右」(直線)しか無かった世界が、交流では「上下と左右」(平面)になります。ちょっとややこしくなりそうですが心配はありません。交流理論の世界は(平らな面の上の話なので)、図に書いて、目で見て確認できますから、簡単に理解できます。
交流理論の得意分野 交流理論は予め周波数が決まっている交流が得意です。たとえば放送局の電波や、コンセントに届けられる電力は周波数が決められていて、大きく変わることがありませんから、交流理論が得意な分野です。さらに、オーディオ信号のように複雑な信号であっても、沢山の交流が合わさったものと考えて、交流理論を応用して扱うことができます。逆に交流の強さや周波数が素早く変動するような回路は、交流理論には苦手な分野です。 |
抵抗、コイル、コンデンサのインピーダンスは、何れも単位が「Ω」なので、一見同じ物に見えます。しかし部品の種類が違いますから、それぞれ別の性質がある筈です。そこで、方向で区別して、間違えないように工夫します。
上図のとおり、例えば、抵抗は右向きに4Ω、コイルは上向きに4Ω、コンデンサは下向きに4Ωと方向付きのインピーダンスで表現します。
抵抗の2Ω、コイルの3Ω、コンデンサの1Ωのインピーダンスを、下図のグラフに書き込んで下さい。また、「上5Ω」のように、方向を示してインピーダンスを答えてください。
抵抗 Ω、コイル Ω、コンデンサ Ω
抵抗 右2 Ω、コイル 上3 Ω、コンデンサ 下1 Ω
下図左側のように、例えば3Ωと4Ωの抵抗を直列に繋ぐと、7Ωになりました。ところが、(既に述べた交流の不思議な現象によって)下図右側のように、インピーダンス3Ωのコイルと4Ωの抵抗を繋いでも、7Ωにはならず、5Ωになってしまいます。
7Ωという誤った答が出たのは「方向を考えずに」インピーダンスを合計したからです。つまり、下図のようにインピーダンスの方向を考えて合計すると、正しく5Ωを求めることができます。
つまり、図の中心から出発して、上に3Ω(コイル)進み、さらに、右に4Ω(抵抗)進めば、最初の出発点(図の中心)から5Ω離れた場所(右4と上3)に到着する、と考えます。
下図の2つの直列回路を、下図右側のグラフ上で方向を考慮して合計し、直列合成インピーダンスを方向付きで求めてください。
Aの回路:方向付きインピーダンス と Ω、インピーダンスの大きさ Ω
Bの回路:方向付きインピーダンス と Ω、インピーダンスの大きさ Ω
Aの回路:方向付きインピーダンス 右3と上4 Ω、インピーダンスの大きさ 5 Ω
Bの回路:方向付きインピーダンス 右3と下4 Ω、インピーダンスの大きさ 5 Ω
「複素インピーダンス」は交流理論に良く出てくる「実は簡単な癖に、名前だけ難しい奴」です。たとえば、「子犬」に「鬼畜魔王」と名前を付けると、名前だけ聞いた人は「恐ろしい奴に違いない」と誤解するでしょう。
交流理論が難しく感じられるのは、この「鬼畜魔王」的なネーミングの奴らが跳梁跋扈している上に、こともあろうに「鬼畜魔王」の名に相応しい、魔界チックなオドロオドロしい説明が展開されるからです。
例えば、(Wikipediaより) 正確で短い素晴らしい記事ですが…本書の読者には「魔界チックなオドロオドロシイ説明」でしょう。いきなりこれを読んだら「フェーザは恐ろしい奴に違いない」と思うのは確実です。正弦信号、sin、オイラーの公式、複素数、虚数単位、絶対値、偏角、虚部、と鬼畜魔王の仲間達も跳梁跋扈しています。本書の「交流回路」を読み終えれば、上の説明が何を言いたいのか自然と分ります。 |
そこで本書では、名前はそのまま使いますが、説明は「子犬のお話」として、日常チックに説明します。(名前をそのまま使うのは、他人と回路の話をした時に、通じる方が楽しいからです)
今後も多数出没する「難しそうな名前の奴」は全て「名前だけ難しい奴」です。ですから「また鬼畜魔王が出たか…この子犬め!」と思ってナメて掛かってください。
さて、複素インピーダンスは、下表のとおり、「方向付きインピーダンス」の向きを「上」「下」と漢字で書く代わりに、「+j」「−j」と記号で書いた物です。
方向付きインピーダンス表し方 |
|||
素子 |
抵抗 |
コイル |
コンデンサ |
漢字で書く |
右4Ω |
上4Ω |
下4Ω |
記号で書く (複素インピーダンス) |
+4Ω |
+j4Ω |
−j4Ω |
以上です。
下表の複素インピーダンスを持つ素子が、それぞれ、コイル(L)、コンデンサ(C)、抵抗(R)のどれであるかを選択し、また、インピーダンスの方向を選んで下さい。
複素インピーダンス |
素子の種類 |
インピーダンスの方向 |
4.7Ω |
L・C・R |
上・下・左・右 |
−j6.8Ω |
L・C・R |
上・下・左・右 |
+j3.3Ω |
L・C・R |
上・下・左・右 |
複素インピーダンス |
素子の種類 |
インピーダンスの方向 |
4.7Ω |
L・C・R |
上・下・左・右 |
−j6.8Ω |
L・C・R |
上・下・左・右 |
+j3.3Ω |
L・C・R |
上・下・左・右 |
直流の場合と同様に、交流の流れ易さ(アドミタンス)は、交流の流れ難さ(インピーダンス)の逆数です。
例えば下表に示すとおり、上Ωのコイルのアドミタンスは下4Sとなります。また、下
Ωのコンデンサのアドミタンスは上4Sとなります。
このように、インピーダンスは「コイルが上向き、コンデンサが下向き」でしたが、アドミタンスはその逆となり「コイルが下向き、コンデンサが上向き」となります。これは「逆数にすると上下が入れ代わる」性質があるからです。
名前 |
インピーダンス |
|
アドミタンス |
イメージ |
交流の流れ難さ |
|
交流の流れ易さ |
コイル |
上 |
←逆数→ |
下4S または ーj4S |
コンデンサ |
下 |
←逆数→ |
上4Sまたは j4S |
それぞれ4Sの、コイル、抵抗、コンデンサのアドミタンス(通し易さ)を下図に示します。
下表のアドミタンスを持つ素子が、それぞれ、コイル(L)、コンデンサ(C)、抵抗(R)のどれであるかを選択し、また、アドミタンスの方向を選んで下さい。
複素アドミタンス |
素子の種類 |
アドミタンスの方向 |
4.7S |
L・C・R |
上・下・左・右 |
−j6.8S |
L・C・R |
上・下・左・右 |
+j3.3S |
L・C・R |
上・下・左・右 |
複素アドミタンス |
素子の種類 |
アドミタンス方向 |
4.7S |
L・C・R |
上・下・左・右 |
−j6.8S |
L・C・R |
上・下・左・右 |
+j3.3S |
L・C・R |
上・下・左・右 |
下表に記載の各素子の、複素インピーダンスと複素アドミタンスを記入し、方向を選んでください。
素子 |
10Ωの抵抗 |
10Ωのコイル |
0.1Ωのコンデンサ |
複素インピーダンス |
Ω |
Ω |
Ω |
複素インピーダンスの方向 |
上・下・左・右 |
上・下・左・右 |
上・下・左・右 |
複素アドミタンス |
S |
S |
S |
複素アドミタンスの方向 |
上・下・左・右 |
上・下・左・右 |
上・下・左・右 |
素子 |
10Ωの抵抗 |
10Ωのコイル |
0.1Ωのコンデンサ |
複素インピーダンス |
10Ω |
+j10Ω |
−j0.1Ω |
複素インピーダンスの方向 |
上・下・左・右 |
上・下・左・右 |
上・下・左・右 |
複素アドミタンス |
0.1S |
−j0.1S |
+j10S |
複素アドミタンスの方向 |
上・下・左・右 |
上・下・左・右 |
上・下・左・右 |
コイルやコンデンサの複素インピーダンスは、次表のように計算できます。インピーダンス(の大きさ)の計算の前に、jや−jを付けて、方向を表しただけです。
|
複素インピーダンス |
複素アドミタンス |
コイルL |
=COMPLEX(0,2*PI()*F1*L1) |
=COMPLEX(0,-1/2/PI()/F1/L1) |
コンデンサC |
=COMPLEX(0,-1/2/PI()/F1/C1) |
=COMPLEX(0,2*PI()*F1*C1) |
例えば、f=318Hz、L=10mH(0.01H)の場合、コイルのインピーダンスZLは
ZL=j2πfL=j×3.14×318×0.01=j20[Ω](上向きの20Ω)
1mHのコイルと、100μFのコンデンサの複素インピーダンスを求めて、下図に書き込んでください。ただし、周波数は796Hzとします。
コンデンサの複素インピーダンス Ω、コイルの複素インピーダンス Ω
コンデンサの複素インピーダンス −j2 Ω、コイルの複素インピーダンス +j5 Ω
下図のように、コイルL、コンデンサC、抵抗Rを直列に繋いだ回路を「LCR直列回路」と呼びます。(接続の順序が変わっても、全体の作用は同じです)この例では、5Ωのコイル、4Ωの抵抗、2Ωのコンデンサが接続されています。
さて、回路全体のインピーダンスを求めるために、抵抗と同様にインピーダンスを合計すると、5+4+2=11Ωとなりますが、これは誤りで、実際には5Ωとなります。
このように、単純にインピーダンス(の大きさ)を合計しても正しい結果が得られないのは「インピーダンスの方向」を考えていなかったからでした。インピーダンスの方向は、コイルは上、抵抗は右、コンデンサは下でしたから、下図のように、方向を考えて地図の上で3つのインピーダンスを加えます。
最初にコイルは上に5Ωなので、中心から上に5つ進みます。次に、抵抗は右に4Ωなので、右に4つ進みます、最後に、コンデンサは下に2Ωなので、下に2つ進みます。この結果、上図に斜めの矢印で示すインピーダンス(右に4、上に3)がLCR直列回路の複素インピーダンスになります。
その結果、LCR直列回路のインピーダンスの大きさ(出発地点からどれだけ離れたか)は、上図の斜め矢印の長さ(5Ω)となります。
図を描かずに考えるときは、上下を考慮して…
コイルと抵抗とコンデンサ
=上5Ωと右4Ωと下2Ω
=右4と(上5と下2) 上下が打ち消しあって…
=右4と上3Ω
あるいは「上」「下」の変わりに「+j」「−j」を使って(複素インピーダンスとして)計算することもできます。
コイル+抵抗+コンデンサ
=+j5Ω+4Ω−j2Ω
=4+(+j5−j2) +jとーjが打ち消しあって…
=4+j3Ω
4と3が求まれば、次のように、ピタゴラスの定理で斜め部分の長さ(インピーダンスの大きさ)を求めることができます。
Excelで=SQRT(4^2+3^2)と入力して5Ω
複素インピーダンスを使っているときは、次のように「絶対値」という計算(ExcelならIMABS関数)で簡単に大きさを求めることができます。
※Excelにちょっとした設定が必要です「Excelで複素数を計算する」をご覧下さい
インピーダンスの大きさ
=複素インピーダンスの絶対値
=|4+j3|
Excelで=IMABS("4+3i")と入力して、
=5Ω
下図のLCR直列回路の合成インピーダンスを図を描いて求め、複素インピーダンスと、インピーダンスの大きさを答えてください。
複素インピーダンス Ω、インピーダンスの大きさ Ω
複素インピーダンス 3+j4 Ω、インピーダンスの大きさ 5 Ω
下図のように、コイルL、コンデンサC、抵抗Rを並列に繋いだ回路を「LCR並列回路」と呼びます。(接続の位置が変わっても、全体の作用は同じです)この例では、5Sのコイル、4Sの抵抗、2Sのコンデンサが接続されています。(並列なので「通し易さ」で考えています)
さて、回路全体のアドミタンス(交流の通りやすさ)を求めるために、抵抗と同様にアドミタンスを合計すると、5+4+2=11Sとなりますが、これは誤りで、実際には5Sとなります。
このように、単純にアドミタンス(の大きさ)を合計しても正しい結果が得られないのは「アドミタンスの方向」を考えていなかったからでした。アドミタンスの方向は、コイルは下、抵抗は右、コンデンサは上でしたから、下図のように、方向を考えて地図の上で3つのインピーダンスを加えます。
最初にコイルは下に5Sなので、中心から下に5つ進みます。次に、抵抗は右に4Ωなので、右に4つ進みます、最後に、コンデンサは上に2Sなので、上に2つ進みます。この結果、上図に斜めの矢印で示すアドミタンス(右に4、下に3)がLCR並列回路の複素アドミタンスになります。
その結果、LCR直列回路のアドミタンスの大きさ(出発地点からどれだけ離れたか)は、上図の斜め矢印の長さ(5S)となります。
図を描かずに考えるときは、上下を考慮して…
下5Sと右4Sと上2S
=右4と下3S
あるいは「上」「下」の変わりに「+j」「−j」を使って(複素アドミタンスとして)計算することもできます。
−j5S+4S+j2S
=4−j3S
4と3が求まれば、次のように、ピタゴラスの定理で斜め部分の長さ(インピーダンスの大きさ)を求めることができます。
Excelで=SQRT(4*4+3*3)と入力して5S
複素アドミタンスを使っているときは、次のように「絶対値」という計算(ExcelならIMABS関数)で簡単に大きさを求めることができます。
※Excelにちょっとした設定が必要です「Excelで複素数を計算する」をご覧下さい
|4−j3|
=IMABS("4-3i)
=5S
素子の値がアドミタンス[S]ではなく、インピーダンス[Ω]で分っているときは、まず逆数にしてアドミタンスに変換し、その後加えて並列接続した値を求めます。この答はアドミタンスで出てきますから、答をインピーダンスで出すときは、再度逆数にします。
つまり、並列合成複素インピーダンスの計算は、並列合成抵抗と同じで、
=IMDIV(1,IMSUM(IMDIV(1,Z1),IMDIV(1,Z2),(MDIV(1,Z3)))
と計算します。
トランスは、一つの鉄心(コア)に2つ(以上)のコイルを巻いた部品で、下図上側のように、向かい合ったコイルの図記号で示します。図記号の中央の縦棒は鉄心を表しています。
このように、図記号がコイルと似ており、構造もコイルと同じですが(導線を巻き付けた部品ですが)、トランスの働きはコイルとはまるで異なり、理想的なトランスにはコイル成分(インダクタンス)がありません。
トランスはインピーダンスの虫眼鏡です。例えば上図のトランスの2次側に2Ωの抵抗を接続すれば1次側からは、まるで18Ωの抵抗が接続されているように見えます。ですから、1次側に18VACの電圧を加えると、1AACの電流が流れます。このとき2次側の2Ωの抵抗には、6VACの電圧が加わり、3AACの電流が流れています。
下図はトランスの電圧や電流を比較した図です。巻数が3:1なら、電圧も3:1となります。逆に電流は1:3となります。その結果、二次側に接続された2Ωの抵抗は、1次側からは(18VACで1AACが流れるので)18Ωに、つまり、9倍(巻数比2=32=9倍)のインピーダンスに見えます。
下図は、1次側200回で2次側100回のトランスを使用した回路です。1次側には2Ωの抵抗を通じて10VACの電圧を接続し、2次側に2Ωの負荷を接続しています。
上図のトランスの1次側と2次側に流れる電流を、下表に記入しながら求めてください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
巻数比は、 |
: |
A |
インピーダンス比は、 (巻数比の二乗だから、) |
: |
B |
2次側に接続された負荷の2Ωは、1次側からは何Ωに見えますか、 |
Ω |
C |
1次側のインピーダンスの合計は、 |
Ω |
D |
1次側の電流は、 (1次側の電圧は10VACだから、) |
AAC |
E |
電流比は、 |
: |
F |
2次側の電流は、 |
AAC |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
巻数比は、 |
2:1 |
A |
インピーダンス比は、 (巻数比の二乗だから、) |
4:1 |
B |
2次側に接続された負荷の2Ωは、1次側からは何Ωに見えますか、 |
8Ω |
C |
1次側のインピーダンスの合計は、 |
10Ω |
D |
1次側の電流は、 (1次側の電圧は10VACだから、) |
1AAC |
E |
電流比は、 |
1:2 |
F |
2次側の電流は、 |
2AAC |
下図(a)に示すとおり、理想的なトランスでは、2次側に抵抗を接続すれば、1次側からも抵抗に見えます。しかし、下図(b)のように、1次側巻線で発生した磁気(磁束)が全て2次側巻線の中を通らない場合は、1次側から見るとコイルの成分(インダクタンス)が生じます。
なぜなら、上図(c)のように、(1次側巻線で発生し)2次側巻線を通った磁束はトランスとして働きますが、通らなかった磁束はコイルとして働くからです。
磁束が2次側の巻線に入らずに、漏れた分がコイルの成分(インダクタンス)を発生させたので、上図(c)のコイル成分を「漏れインダクタンス」あるいは「リーケージインダクタンス」と呼びます。
無接点給電の1次側と2次側のように、磁束の大部分が2次巻線を通らない場合は、極めて大きな漏れインダクタンスが生じます。その結果、下図(a)に示すように、1次側巻線に電圧を加えても僅かな電流しか流れません。このような場合、下図(b)に示すように、リーケージインダクタンスと同等な(インピーダンスの大きさを持つ)コンデンサを直流に接続することで、リーケージインダクタンスを打ち消して、1次巻線に電流を流すことができるようになります。
ここまで、コイルやコンデンサのインピーダンスを交流理論的に(平面上で)考えて来ました。ここからは、電流や電圧を交流理論的に(平面上で)考えてみます。
さて、走っている自転車を前から見ると、下図のように、ペダルが上下運動しているように見えます。ペダルの上下運動は、交流と全く同じ、単純な変化を繰り返します。
ペダルの上下運動は交流と同じ単純な変化
ところで、同じ自転車を横から見ると、下図のように、ペダルは上下しているのではなく、実は回転している事が分ります。
単純な変化はペダルの回転から生まれる
つまり、交流の正体は回転です。(交流の振動は、ペダルの回転を前から眺めたものです。)
それでは、(交流の正体である)ペダルの回転を様々に変化させて、交流がどのように変化するか考えて見ましょう。
ここでは下図のように、ペダルは時計の3時の位置からスタートする事にします。ペダルは最初に上がり、次に下がります。その結果交流は、下図右側の波を描いて上下します。
まず、下図のように、クランク(ペダルの付いている腕)が長いと、下図のように、大きな交流が生まれます。
クランクの長さと交流の大きさ
また、下図のように、ペダルを早く回すと、周波数の高い交流が生まれます。
クランクの速さと交流の周波数
さらに、下図のように、ペダルの最初の位置が変わると、波がズレます。
ペダルを回すタイミングと交流のズレ(位相)
ペダルの最初に位置がキッチリ右向きの時を0°、上(反時計回り)にズレたらプラス(位相が進んでいる)、下(時計回り)にズレたらマイナス(位相が遅れている)と言います。上図の例では位相が60°進んでいます。「位相」とは、ここでは「ペダルの最初の角度」という意味です。
このように、「交流は、クランクの長さ(大きさ)、最初の位置(位相)、回す早さ(周波数)の3つで表す事ができます」。つまり、上図左側のペダルの絵を書いて周波数を告げれば、上図右側の波の様子を書かなくても済むわけです。とても楽になるので、この方法が愛用されています。
下図下側の交流に対応するペダルの最初の位置を、例に倣って書き込んでください。円の半径(最大電圧)は何ボルトですか。1秒にやって来る波の回数(周波数)は何ヘルツですか。
例 |
最大電圧(クランクの半径)4V 周波数(1秒にやって来る波の下図)3Hz |
最大電圧(クランクの半径) V 周波数(1秒にやって来る波の下図) Hz
最大電圧(クランクの半径) 3 V 周波数(1秒にやって来る波の下図) 2 Hz
下図の交流に対応するペダルの最初の位置を、書き込んでください。ペダルの最初の位置(位相)は真右向ききから何度ズレていますか。ズレはプラスですか、マイナスですか、それは、進んでいますか、遅れていますか。
角度のズレ(位相) 度、プラス・マイナス、進んでいる・遅れている
角度のズレ(位相) 45度、マイナス、遅れている
「フェーザ表示」も、「名前だけ難しい奴」です。フェーザ表示とは、下図左側に示すとおり(これまで何度も練習した)「クランクの最初の位置(下図左)で交流を表したもの」です。
フェーザは図に描くだけではなく、下表のように、文字を使って書くこともできます。
フェーザの書き方
大きさと角度 |
左右、上下 |
右を+、上を+j |
4.24∠45° |
右3と上3 |
+3、+j3 |
フェーザ表示は周波数を表していません。大きさとズレ(位相)だけを表しています。それなのに、交流の学問(交流理論)では良く使われます。その理由は、例えば、コンセントに供給される交流が50Hzや60Hzで一定であるように、最初から周波数が決まっている場合が多く、逆の言い方をすれば「大きさと位相だけ考えたい」場合が多いからです。
下図の交流の左側に、ペダルの最初の位置(フェーザ)を記入し、図の下に例えば4∠45°Vのように、大きさと位相を記入してください。
フェーザの大きさと位相 V
フェーザの大きさと位相 3∠90° V
下図の左側に、フェーザ表示2∠−60°Vのペダルの最初の位置を記入し、下図右側にその回転で生じる波形を記入してください。ただし、周波数は2Hzとします。
ペダルが回転する様子を、下図のように描いて来ました。
ペダルが回転する様子
ところが、この図をもっと簡単に書くことができます。なぜなら、回転する方向は左回りと決まっているので、回転方向は不要、さらに、必ず円を描いて回転するので、回転を表す円は不要、このように不要な書き込みを省略すると、下図のように書くことができます。
フェーザ
つまり、大きさと位相(最初の位置)の2つを表す矢印を一つ書けば交流を表すことができます。この矢印がフェーザの正体です。フェーザを図に描けば矢印になり、文字で書けば4∠45°等となります。
下図右側に描かれた交流をのフェーザを、下図左側に矢印で記入し、図の下に大きさと位相を記入してください。
フェーザの大きさと位相 V
フェーザの大きさと位相 3∠90°V
下図右側に描かれた交流のフェーザを、下図左側に記入し、図の下に大きさと位相記入してください。
フェーザの大きさと位相 V
フェーザの大きさと位相 4∠ー120°V
日常生活では、角度を例えば「90°」等と「度」で表します。ご存知の通り、一周が360°と決められています。ところが360と言う値には大した根拠がありません。(1年が365日なので、1日に地球が約1°公転する、という程度の理由で360に決めたようです)このように、根拠の無い値(360)が含まれていると、計算のツジツマが合わなくなります。何か、もっと根拠のはっきりした角度の表し方が必要です。
また、角度を測定するには分度器が必要です。「度」を使う限り、例えば土地を測量する場合「巻尺」と「分度器」を用意する必要があり面倒です。そこで、巻尺だけで角度を測定できる方法があれば便利です。
そこで巻尺だけで、下図左側の土地を測量してみます。ここでは、左下の角の角度を測ります。まず、下図右側のように、巻尺の一端を角の部分に固定して、半径1mの円を描きます。
次に、角度を求めたい部分の円弧の長さを巻尺で計ります。上図の場合円弧の長さが「2m」でした。こような角度が「2ラジアン」です。円弧が「1m」なら「1ラジアン」、「3m」なら「3ラジアン」です。ラジアンはradとも書きます。
このように巻尺だけで角度を測定できました。そのうえ、ラジアンは「半径1mの円弧の長さ」という明確な根拠があるので、計算でもぴったりツジツマが合います。
さて、360°をラジアンで表せば、半径1mの円の円周ですから、2πラジアンです。そこで、以下示すように、度にを掛ければラジアンを、ラジアンに
を掛ければ度を求めることができます。
=D1*PI()/180
=D1*180/PI()
下図の交流は、大きさが4、位相が45°進んだ交流電圧です。4∠45°Vと書くことができました。
位相の45°は、ラジアンを使って、0.25π radと書くことができます。したがって、ラジアンを使ってフェーザ表示を、4∠0.25radVと書くこともできます。
3∠2.09radVの交流を下図にフェーザで矢印表示してください。
2.09radはだいたい120°なので。
周波数は1秒間に来た波の下図を数えたものですが、角周波数は1秒間にペダルの回転した角度を(ラジアンで)測ったものです。
まず、下図の交流で、1秒間にペダルが何回転したか数えてください。
2回転しています。1秒間にペダルが2回転した結果、波が2つやって来たことが分ります。つまり、周波数の正体は1秒間のペダルの回転回数です。
回転を「回数」ではなくて「角度」で表すこともできます。下表に示すとおり、2回転ですから、360°の2倍で、720°です。このため、周波数2[Hz]は、720[°/秒]と表すこともできます。さらに、角度をラジアンで示して、4π[rad/秒](12.6[rad/秒])と表すこともできます。
周波数 |
1秒の回転回数 |
1秒の回転角度(度) |
1秒の回転角度(rad) |
2Hz |
2 回転/秒 |
720°/秒 |
12.6 rad/秒 (4πrad/秒) |
特に、ラジアンで表した1秒間の回転角度(rad/秒)を使うと、計算が簡単になるので、「角周波数(ω)」と呼んで愛用されています。
さて、何となくツカミドコロの無い「角周波数(ω)」ですが、分かり易くイメージできます。つまり下図に示すとおり、角周波数(ω)とは「長さ1mのペダルが、1秒間に進んだ距離(描いた弧の長さ)」です。
例えば3[rad/sec]の場合、下図のように、1秒間に長さ1mのペダルが、3m(弧を描いて)進むような回転の速さ(から生まれる上下動の周波数)、と考えれば良い訳です。
3[rad/秒]のイメージ
計算して求める場合は、周波数[Hz]に2π(つまり、6.28)を掛けると角周波数[rad/秒]に、角周波数[rad/秒]を2πで割ると周波数[Hz]になります。
下図の交流が1秒間に回転した様子をペダルの図に書き込み、1秒間に回転した回数と、回転した角度[d]を求めてください。
回転回数 [Hz] 回転角度 [rad/秒]
回転回数 3 [Hz] 回転角度18.8[rad/秒]
下表上段の周波数に対応する角周波数を、下段に記入してください。
周波数 |
0.16[Hz] |
160[Hz] |
16[kHz] |
1.6[MHz] |
角周波数 |
[rad/sec] |
[k rad/sec] |
[k rad/sec] |
[M rad/sec] |
周波数 |
0.16[Hz] |
160[Hz] |
16[kHz] |
1.6[MHz] |
角周波数 |
1[rad/sec] =0.16/180*PI() |
1 [k rad/sec] =1000/180*PI() |
100[k rad/sec] =100E3/180*PI() |
10[M rad/sec] =10E6/180*PI() |
コイルやコンデンサのインピーダンスの大きさは、周波数をHzではなく、角周波数rad/secで表すと、下表に示すとおり、式の中にあった「2π」が無くなり、計算が簡単になります。
角周波数とインピーダンス
|
インピーダンス |
アドミタンス |
コンデンサC |
=1/O1/C1 |
=O1*C1 |
コイルL |
=O1*L1 |
=1/O1/L1 |
例えば、f=50rad/sec(318Hz)、L=10mH(0.01H)の場合、コイルのインピーダンスZLは
ZL=ωL=50×0.01=20[Ω]
=50*10E-3
と計算します。
コイルやコンデンサの複素インピーダンスも、角周波数を使うと下表のように簡単になります。
|
複素インピーダンス |
複素アドミタンス |
コイルL |
=IMAGINARY(0,O1*L1) |
( =IMDIV(1,IMAGINARY(0,O1*L1)) |
コンデンサC |
( =IMDIV(1,IMAGINARY(0,O1*C1)) |
=IMAGINARY(0,O1*C1) |
上表中の変形は、たとえばコンデンサの複素インピーダンスの場合、 のように、j/jを掛けてから、j×j=−1を使っています。コイルの複素アドミタンスも同様に変形しています。 |
ここでは電気の話を次のステップに進めるため、これまで既に使ってきた複素数を軽く復習して、Excelで計算できるようにし、どのような性質があるか確認します。もちろん、学校の「複素数」とはまるで違いますから、数学が嫌いでもご安心ください。
インピーダンスの項で使ったように、「複素数」は簡単で便利なのに、(翻訳した人が)難しい名前を付けたので、イメージが悪いです。そのうえ、(Excelでやれば一発だというのに)複素数の面倒な手計算計算を学校で散々やらされて、嫌いになった人も多いです。本書ではExcel一発でやりますから、計算の必要は殆どありません。(j×j=−1でさえ、滅多に使いませんからご安心を)
学校で習った複素数が普通に飲み込めて、sinやcosと関係していた事をうっすら覚えている、Excelで複素数を計算した覚えもある、という方は本章を読む必要はありません。
ちょっと凝った交流の回路や周波数特性の正確な計算、高周波の回路をやってみたい、と言う方には本章が必要です。逆に、直流や簡単な交流の回路しか作らない、という方には本章は必要はありません。
とはいえ、複素数と交流はうまい具合に繋がっているので、複素数を理解すると交流が良く分かるようになり、電子工作を一層楽しめるようになります。
本章は「複素数を理解する」のではなくて「複素数が使えるようになる」ことだけに注目して(つまり、実用本位に、正確さは犠牲にして)簡素に解説していますから、数学で複素数の時間がイヤだった方も苦痛無く読んで頂ける内容です。(逆に、まともに複素数を理解している方は「なめとんか!」と腹を立てると思う…だって、使えたらええやん。)
さて「複素数」は、英語では「コンプレックス・ナンバー」と呼びます。例えばおなじみの「シネマ・コンプレックス」は「映画館(シネマ)がいくつかセットになった(コンプレックス)施設」ですが、複素数はもっとシンプルで「値が2つだけセットになった数」です。たとえば、4と3をセットにすれば、複素数が出来上がりです。シネコンと違ってたった2つだけのセットですから、超シンプルです。
「コンプレックス」を「複素」と、「ナンバー」を「数」と迷訳したのですが、その結果できた「複素数」には「素数」(2、3、5、7、、、)という、複素数とは関係の無い単語が一部含まれてしまい、余計に難しく感じてしまいます。 |
さて、数字を2つセットにすると、場所を表すことができます。たとえば、下の地図のように「入り口から、右に4、上に3」と言うように、「4」と「3」という2つの数字のセットで、あなたが公園に埋めた、宝の場所を示すことができます。
秘密の地図
しかし、「右に4、上に3」と漢字を使っていては、計算するときに面倒です。そこで、(インピーダンスの所で出てきたように)次の表のように漢字をより簡単な記号に置き換えます。
漢字を記号に置き換える
|
右 ↓ + |
左 ↓ − |
上 ↓ +j |
下 ↓ −j |
つまり右左を正負の方向、上下をjの正負の方向、と決めた訳です。こうすれば、「右に4、上に3」は、「+4、+j3」と書くことができます。
あとは、2つの数「+4」と「+j3」を足して一つにまとめると、「4+j3」という複素数が完成です。こうすれば、下図のように、「4+j3」という1つの複素数で、宝の場所を示すことができます。
複素数「4+j3」は「1つの数」なのに、上図に太い斜めの矢印で示すような、宝の場所を一発で表すことができるスグレモノです。
複素数に含まれる2つの値は、それぞれに名前を付けて区別しています。たとえば「4+j3」に含まれる「4」を「実の部分」(実部)、「3」を「虚の部分」(虚部)と呼びます。つまり、jの付いている方が虚部です。
Excelは特別なオプションを購入することなく、簡単な設定を一度行なうだけで、複素数を計算することができます。
次の設定を行えば、以後は複素数が利用できます。まず、Excelを立ち上げて、メニューバーの「ツール」から「アドイン」を選択します。
「アドイン」ダイアログボックスが表示されますから、「分析ツール」チェックボックスをONにして、「OK」ボタンをクリックします。
下表の関数を使って、複素数を計算します。主にIM〜というのが複素数関連の関数です。
計算 |
関数の例 呼び方 |
動作の例 |
結果 |
複素数を入力 |
4+3i |
複素数4+j3を作る(入力する) |
4+3i |
複素数を作る |
=COMPLEX(4,3) コンプレックス |
複素数4+j3を作る |
4+3i |
足し算(+) |
=IMSUM ("4+3i","3+4i") アイエム・サム |
複素数4+j3と3+j4をたす |
7+7i |
引き算(−) |
=IMSUB ("4+3i","3+4i") アイエム・サブトラクト |
複素数4+j3から3+j4を引く |
1-1i |
掛け算(×) |
=IMPRODUCT ("4+3i","3+4i") アイエム・プロダクト |
複素数4+j3と3+j4を掛ける |
25i |
割り算(÷) |
=IMDIV ("4+3i","3+4i") アイエム・ディビジョン |
複素数4+j3を3+j4で割る |
0.96-0.28i |
実部を取り出す |
=IMREAL("4+3i") アイエム・リアル |
複素数4+j3の実部を求める |
4 |
虚部を取り出す |
=IMAGINARY("4+3i") イマジナリー |
複素数4+j3の虚部を求める |
3 |
絶対値 (大きさ) |
=IMABS("4+3i") アイエム・アブソリュート |
複素数4+j3の絶対値(大きさ)を求める |
5 |
偏角 (角度、ズレ) |
=IMARGUMENT("4+3i") アイエム・オーギュメント |
複素数4+j3の偏角(ズレ、位相)を求める (答の単位はrad) |
0.643... |
共役 |
=IMCONJUGATE("4+3i") アイエム・コンジュゲート |
共役な(虚部の符号が逆の)複素数を求める |
4-3i |
exp関数 |
=IMEXP("4+3i") エイエム・エクスポーネンシャル |
eの4+j3乗を計算する |
-54.05+7.704i |
Excelでは、複素数「j3」は、「3i」と表示されます(入力します)。これは数学の書き方(3i)の方が、電気の書き方(j3)より良く使われるからです。
また、Excelでは複素数は「文字列」としてセルに入ります。このため関数の括弧の中に直接記入する場合は、”4+3i”のように、「 ” 」(ダブルクォーテーション)で囲みます。
下図のように、B1セルに4+j3、C1セルに3+j4を入力し、それぞれの、実部、虚部、絶対値、偏角、EXP関数値、また、双方の和、差、積、除、を計算させてください。
最初の1回目だけは、ツールのアドインで分析をONにします。(2回目からは不要です)セルに次のように入力します。
結果は次のように表示されます。
下図の公園の地図や、自転車のペダルを横から見た図のような、「右左が正負で、上下がjの正負」を表す図(グラフ)を「複素平面」と呼びます。
例に倣って、下表の複素数を、下図の地図(複素平面)に書き込んで下さい。
例:4+j3 |
2+j1 |
−4+j2 |
1−j1 |
−4−j3 |
今一度、宝の地図を見てみましょう。
上図に示すとおり、右に4m、上に3m進んだ宝のありかは、複素数で4+j3と表すことができました。このとき、入り口から宝までの距離は5mです。この5mを「複素数の大きさ」や「絶対値」と呼んで、2本の縦棒で囲んで示します。たとえば、4+j3の絶対値は、次のように書きます。(インピーダンスの項でも触れました)
| 4+j3 | = 5
上の式は「右に4、上に3進んだ宝の位置は、入り口から5mの距離にある」という意味です。複素数の絶対値は「ピタゴラスの定理」を使って、次のように計算できます。
| 4 + j3 | = = 5 (複素数(4 + j3)の絶対値は、5)
=IMABS("4+3i")
また上図では、入り口から約37°の角度に宝があります。この角度を「偏角」と呼びます。例えば、4+j3の偏角は、atan(3÷4)で計算できますが、この方法は本書では必要ありません。なぜなら、Excelを使って、IMARGUMENT(”4+3i”)と複素数から一発で計算できるからです。
例(4+j3)にならって、複素数6+j8を複素平面上に示し、Excelを用いて、実部、虚部を、絶対値を求めてください。
実部: 虚部: 絶対値: 偏角: °
実部: 6 虚部: 8 絶対値: 10 偏角:53.1 °
=IMREAL("6+8i")、=IMAGINARY("6+8i")、=IMABS("6+8i")、=IMARGUMENT("6+8i")/PI()*180
※偏角はラジアンで答がでるので、180/πを掛けます。
盗掘を防ぐために宝を移動させましょう。下図に示すように、現在の場所から、右に3、下に2進んだ場所に埋め直します。右に3、下に2ですから、3−j2だけ移動させた事になります。
移動させた結果、宝は右に7、上に1の場所(7+j1)に隠されています。このように一度決めた場所から、さらに移動させた場所を求める事が、複素数の足し算です。つまり、
最初の場所 + 移動した分 = 4+j3 + 3-j2 = (4+3) + (3-2)j = 7 + j1
のように、実部と実部、虚部と虚部を加えるだけです。
1+1jと1+2jを掛けると、結果は−1+j3となります。つまり、
(1+ j 1) × (1+ j 2) = -1+ j 3
=IMPRODUCT("1+1i","1+2i")
となります。この計算を、複素平面上に書くと下図の通りです。
掛け算の元になった2つの数(1+1jと1+2j)と、掛け算の結果得られた数(−1+j3)の場所には、何の脈絡も無いように見えます。そこで、角度や大きさ(絶対値)に注目すると、特徴があります。
上図の通り、元になった2つの数の角度(偏角)を加えたものが、掛け算で得られた数の角度となり、また、元になった2つの数の大きさ(絶対値)をかけたものが、掛け算で得られた数の大きさとなっています。つまり複素数の掛け算は、角度のたし算、大きさの掛け算、です。
複素数の計算はExcelがやりますから、手計算する必要はありません。参考までにその方法は(分配の法則という奴を使って…) (a+jb)×(c+jd) =a×c+a×jd+jb×c+jb×jd =a×c−b×d + j(a×d+b×c) となります。(j×j=−1です) |
複素数の逆数は、大きさ(絶対値)と偏角(角度)で書くと分り易く、例えば次表のようになります。
|
例1 |
例2 |
||
|
元の値 |
逆数 |
元の値 |
逆数 |
複素数 |
|
|
|
|
絶対値 |
|
|
|
|
偏角 |
|
|
|
|
上図の例2で分るように、複素数の逆数では、「絶対値が逆数」になり(なら
になり)、「偏角は符号が逆」(120°なら-120°)になります。
下図の複素平面上に、上表の2つの例を示します。元の数と逆数は水平線(実軸)との角度は同じですが、上下が逆になります。
インピーダンスとアドミタンスは逆数の関係でした。ですから、インピーダンスが2∠120°Ωであれば、アドミタンスは0.5∠ー120°Sとなります。
exp(エクスポーネンシャル)という関数があります。コンデンサが放電するときの電圧をグラフにするとき、Excelで、=E1*EXP(-T1/C1/R1)のように使用しました。
このexp関数は複素数でも使えます。Excelで(分析ツールアドインを有効にして)セルに「=IMEXP("3+4i")」等と入力します。(IMEXPは複素数でも使えるexp関数です)
さて、このIMEXP関数に0+2jのような「実部が0で、虚部だけがある数」を順に入力すると、下図に示すような、面白い事が起きます。
IMEXPに与える値の、虚部を少しずつ大きくして行くと、IMEXPで求めた結果は、上図に示すとおり、時計の3時の位置から、半径1の円を描いて回転して行きます。そして、与える値がj6.28(つまり、j2π)になると、ぐるりと一周して戻って来ます。
これは、交流を生み出したペダルの回転と全く同じものです。ですから、exp関数(ExcelではIMEXP)に虚の値を入れて出てくる結果は、まさに交流を表しています。時間tが経てば経つほど、ペダルは回転して行きますから、
交流 = exp ( j×時間 ) = exp( j t )
(tにjを掛けているのは、虚部だけの数を作るためです)
Excelでは=IMEXP(COMPLEX(0,時間))
上の式では、6.28秒で一周するペダルしか表せませんから、ペダルを回す速さをωとすれば、
交流 = exp ( j×回転の速さ×時間 ) = exp( jωt )
Excelでは=IMEXP(COMPLEX(0,周波数*時間))
と書くことができます。(ωが大きい程、ペダルが早く回転します)たとえば、最大電圧(ペダルの長さ)5Vで、10Hz(1秒間に10回転)の交流電圧であれば、
最大電圧5Vで10Hzの交流電圧 = 5 × exp ( j×62.8×t )[V]
Excelでは=5*IMEXP(COMPLEX(0,62.8*時間)
(数学っぽく書けば「5 exp (j 62.8 t)」あるいは「5 e j 62.8 t」です)
という簡単な計算で交流を表すことができます。sinやcos等の面倒な三角関数が出てこないので、とても楽に使えます。
IMEXP関数の結果から、sinの波を求めたいときは、IMAGINARY(IMEXP(〜))と虚部を取り出し、cosの波を求めたいときは、IMREAL(IMEXP(〜))と実部を取り出すだけです。
eの値は約2.72で、ejtはtが2πの時にきっちり一周します。eより小さい2jtでは1一周できず、3jtでは1周以上回ってしまいます。このためeはπと並んで「宇宙の秩序を表す数」と考えらています。ejtに比べれば、sin(t)やcos(t)などは「ザコ関数」と言えるでしょう。
例えば下図に示すとおり、4+j3というフェーザがあったとき、その波形を手書きで作図することができます。
もちろんとても手間が掛かります。この面倒な作図も、Excelを使えば簡単に行えます。
実は、フェーザと、基本の回転を表す「exp(jt)」を掛けるだけで、フェーザが表す波形を求めることができるのです。つまり、
フェーザ × exp(jt) = フェーザの表す交流の波の形
です。後は、tをだんだん大きくして計算してやれば、交流の波形が出てきます。Excelで次のように値や式を入力してみましょう。
A列が時間で、少しずつ大きくなっています、B列は時間にjを掛けて虚数にしたもの、C列はexp(jt)を計算して、基本の回転(半径1で、偏角(波の左右ズレ)0)を求めたもの、D列は計算したい交流のフェーザ(4+j3)、E列はフェーザと基本の回転を掛けた「フェーザの波形」です。F列とG列は虚部を取り出して、波形を求めたものです。
計算結果は下図のようになります。
グラフには、基本の回転の波形(グレー:F列)と、フェーザが示交流の波形(黒:G列)を表示しています。グレーの波形は最大値が1で0から始まる基本の回転を示していることが分りますし、黒の波形は、最大値5で、約37°位相が進んでいます。
つまり「基本の回転にフェーザを掛けるだけで、フェーザが表す回転が分る」「回転の虚部を取り出せば、波形が分る」のです。
実部ではなく、「虚部を取り出せば、波形が分る」ちょっと妙です。その理由は、自転車を前から見た状態を基本に考えたため(ペダルの上下の(虚部の)動きが波形に対応したから)です。もし、自転車を上から見た状態を基本に考えれば(ペダルの前後の(実部の)動きが波形に対応するので)「実部を取り出せば、波形が分る」ことになります。実部、虚部、どちらを選んでも、見方が違うだけで何れも正しい答です。(電気の世界では波形をsin関数で表すことが好まれ、cos関数ではあまり表さない事とも関係があります)
ここまで来れば「複素電圧」や「複素電流」も、どうせ「鬼畜魔王」の仲間だな…と分るでしょう。つまり「名前だけ難しい奴」です。
複素電圧や複素電流は、電圧や電流を「べダルの最初の位置(つまり、フェーザ)」で表したもの、です。言い方を少し変えると、フェーザで表した交流電圧が複素電圧、フェーザで表した交流電流が複素電流です。
復習しましょう。交流は下図のように、ペダルの回転で発生していました。下図の交流は、クランクの長さが5、最初の位置が約37°進んでいます。
この「ペダルの最初の位置」を、複素数(4+j3)で表したものが「フェーザ」でした。そして、フェーザで表した「電圧」が「複素電圧」、フェーザで表した「電流」が「複素電流」です。
上図の交流は、たとえば電圧Eであれば、フェーザ(ペダルの最初の位置)を使って、
電流Iであれば、フェーザ(ペダルの最初の位置)を使って、
と表すことができます。EやIの上に付いている「・」は、「複素数ですよ」(つまり、向きがありますよ)というマークで、省略されることもあります。
複素電圧や電流は(フェーザと同一人物ですから)大きさと最初の角度(位相)は表していますが、周波数は表していません。
下図の電圧波形に対応するフェーザを描き、複素電圧、最大電圧、周波数、を記入してください。(1目盛りを1Vとします)
複素電圧: V 最大電圧: V 周波数: Hz
複素電圧:−3+j4V 最大電圧: 5V 周波数: 4Hz
最大電圧は、波形の最大値から求めることも、ペダルの長さから求めることも、。複素電圧(−3+j3)の絶対値(|−3+j4|=5)を計算して求めることもできます。
下表のように、交流の電圧やインピーダンスは、シンプルにAC10V等と「大きさ」だけで表すこともできました。また、より詳しく、8+j6V(10∠37°V)と複素数を使って「大きさと向き」で表す事もできました。
項目 |
大きさだけ(値) |
大きさと向き(複素数) |
||
名称 |
値の例 |
名称 |
値の例 |
|
電圧 |
交流電圧E |
AC10V |
複素電圧 (電圧フェーザ) |
8+j6V 10∠37°V |
電流 |
交流電流I |
AC5A |
複素電流 (電流フェーザ) |
3+j4A 5∠53°A |
通し難さ |
インピーダンスZ |
2Ω |
複素インピーダンス |
1.92−j0.56Ω 2∠−16°Ω |
通し難さ |
アドミタンスY |
0.5S |
複素アドミタンス |
0.48+j0.14S 0.5∠16°S |
※分り易さのために、AC電圧と複素電圧の値を揃えてますが、実際の強さは異なります。AC電圧は実効値を示し、フェーザの大きさは最大電圧を示します。 |
さて、交流でもオーム則が使えました。つまり、上表の「大きさだけ」部分にあるAC10V、AC5A、2Ωの間で、
AC10V = AC5A × 2Ω
つまり、
と、計算できます。
さらに上表の「大きさと向き」の部分にある複素電圧(8+j6V)、複素電流(3+j4A)、複素インピーダンス(1.92+j0.56Ω)の間でオーム則を使って、
8+j6V = (3+j4)A × (1.92−j0.56)Ω
つまり、
と、計算できます。
Excelで「=IMPRODUCT("3+4i","1.92-0.56i")」と入力すると、「8+6i」と、上記の通りの結果が表示されます。
複素数を使ったオーム則の計算例を数に示します。このように、大きさだけではなく、位相(波のズレ:偏角)も計算できます。
上図では、インピーダンスの偏角の分だけ、電流より電圧の位相が遅れていることが分ります。これは、複素数で電流とインピーダンスを掛けた結果、電流とインピーダンスの偏角の合計が電圧の偏角となった(複素数の掛け算では、偏角が足し算になる)ためです。
もちろん、複素電流、複素電圧、複素インピーダンス、それぞれの大きさ(絶対値)は、(方向のない)交流電流、インピーダンス、交流電圧の計算と一致します。
複素数電圧・電流でも使えるとは、オーム則はなかなかフトコロの広い法則です。
下図の回路のLRの複素インピーダンスと複素電流を求め、下図右側の図に書き込んでください。
Excelで=IMDIV("1+1i","1+0.5")と計算して、1.15+0.768iと分る。これを下図のように記入する。
下図の回路図は、3Ωのコイルと4Ωの抵抗が直列に接続されており、インピーダンスの大きさは5Ωです。電源が10Vですから、2Aの電流が流れます。
さて、上図左の電源側から見ると、10Vで2A流れているので、20Wの電力を送り出しているように思えます。しかし、上図右の負荷側で見ると、(コイルは電流が流れても発熱しませんから)4Ωに2A流れて、16Wの電力を消費するだけです。
上図左側のように、電流と電圧を掛けて計算した(見かけの)電力を「皮相電力」と呼び、上図右側のように、本当に消費された電力を「有効電力」と呼んで、双方を区別します。(「皮相電力」とは難しい言い方ですが、英語のapparent powerつまり「見た目の電力」を迷訳したものです。)
皮相電力や有効電力の意味や単位は次表のとおりです。
名前 |
意味 |
単位 |
単位の呼び方 |
皮相電力 |
電流と電圧の大きさを掛けた 見た目の電力 |
VA |
ボルトアンペア あるいは ブイエー |
有効電力 |
本当に消費された電力 |
W |
ワット |
もちろん、皮相電力と有効電力の差が大きいと、電流や電圧は大きいのに、消費電力が少なくなり、不経済です。ですから、できるだけ皮相電力と有効電力が同じになるように工夫します。
その工夫の目安として、有効電力÷皮相電力の値を「力率」と呼んで使用します。力率が1(100%)なら、有効電力=皮相電力で、見た目の電力は、すべて有効に消費されています。力率が50%なら、見た目の電力の半分しか有効活用されていません。
力率の計算には色々な方法があります。下図の回路を例に、下表で説明します。
番号 |
力率の求め方 |
上図の例 |
@ |
|
|
A |
|
|
B |
|
|
C |
|
|
上表の@〜Cの中から「今、分っている値」「そのとき求めやすい値」が使える方法を選んで計算します。
ところで、Cの方法は、この例では面倒なだけで論外です。それにも関わらず掲載したのは「力率」の事を「cosθ」と呼ぶ人が多いからです。これは、「力率が、インピーダンスの偏角θのcosの値である」事から来た呼び名ですが、この呼び方では「θが何の角度なのか」分らないため、「力率」よりも不誠実な呼び方に思えます。(バイクの運転手を、単に「運転手」と呼んでいるようなものです。「運転手を連れてきてくれ」と頼んだのでは、自動車の運転手が来るかも知れません)それにもかかわらず、書籍でも使われる他、口頭でも「コサインシータを測定しといてくれ」等と使われています。
下図の回路の力率を求めて下さい。
力率 %
インピーダンスが分っているので、上表Bの方法で計算します。
力率 60% %
複素電圧にオーム則が使えたように、複素電圧と複素電流から複素電力を求めることもできます。たとえば、下図のように8+j6Vで4−j3Aが流れた場合は、
Excelで、=IMPRODUCT("8+6i","4+3i")と入力する事で、複素電力が14+58iと計算されます。電流の「3−j4」のjの部分(虚部)の符号を反転して「3+j4」と入力する点に注意します。(理由は後述します)
こうして求めた複素電力を下図に示します。図で分るように、複素電力は、有効電力(実部)も皮相電力(絶対値)も表現しています。さらに、複素電力の虚部は「無効電力」と呼ばれています。このように、複素電力は交流電力の色々な要素を一発で表すことができます。
さて、複素電力を求めるときに、電流の虚部を逆符号にしました。ちょっと不自然です。その理由は、下図のような、電流と電圧の位相が同じ場合を考えると理解できます。電流と電圧の位相が同じなら、有効電力だけが発生して、無効電力は発生しない(力率が100%になる)筈です。
さて、電圧と電流の掛け算では、電流と電圧の偏角が合計されるため、そのまま掛けると上図に点線で示す電力のように、無効な成分(上向きの成分)が大半となります。
ところが、電流の虚部を逆符号にして計算してやると、電圧の偏角は上向き(+)、電流の偏角は下向き(−)で、掛けると(掛け算は、偏角の足し算なので)打ち消しあって偏角がゼロとなり、上図に実線で示す電力のように、ちょうど右向きの有効電力だけになります。
つまり、複素電力を求めるときに電流の虚部を逆符号にする理由は、電圧と電流の位相が同じときに、有効電力だけが得られるようにするためです。
Excelを用いて、下図の回路の負荷で発生する複素電力を求め、有効電力、無効電力、皮相電力を計算してください。
複素電力 W 有効電力 W 無効電力 VA 皮相電力 VA
複素電力60+j80W 有効電力 60W 無効電力 80VA 皮相電力 100VA
複素電流はExcelで=IMDIV("100+0i","60+80i")で0.6−j0.8A
複素電力はExcelで=IMPRODUCT("100+0i","0.6+0.8i")
あるいは、=IMPRODUCT("100+0i",IMCONJUGATE(IMDIV("100+0i","60+80i")))で60+j80W
尚、複素電力は電流を計算せずに、
でも計算できます。
E*はEの虚部の符号を逆にした(共役の)数です。ExcelではIMCONJUGATE()です。
Excelでは、=IMDIV(IMPRODUCT("100+0i",IMCONJUGATE("100+0i")),"80+80i")で計算できます。もちろん、この例では電圧の虚部がゼロなので、IMCONJUGATEがなくても同じ結果が出ます。
周波数が一定の電力分野等であれば、例えば「このコイルはj2Ω」と、予め求めたインピーダンスで計算することができます。
例えば下図左側では、周波数が0.159Hzと一定であり、2Hのコイルはj2Ωと決まっています。ですから、電圧が10+j0Vであれば、回路に流れる電流は、図中の計算により、−j5Aと分ります。
その結果、同図左下のフェーザで示すように、電圧より90°遅れて、大きさが5Aの電流が流れると求めることができます。
ところがオーディオ回路等の「様々な周波数の交流を扱いたい」回路では、このように周波数を決め打ちすることができません。周波数は変数にしておいて、後で色々な周波数で計算したいからです。そこで、周波数を決め打ちせず、角周波数ωのまま残します。
角周波数ωの代わりに、周波数fを使っても良いのですが、角周波数ならωLで済むところを、周波数では2πfLと書かなくてはならないため、手間を省くために角周波数が使われます。
ωを使うと、上図右側のように、コイルのインピーダンスはj2ωΩ、となり、その結果回路に流れる電流は、となります。
このようにして、一旦 を求めておけば、例えば角周波数ωが1000rad/secの場合(つまり159Hzの場合)は、
と、周波数に応じて流れる電流を簡単に求めることができます。
このように、周波数を後で決めるようにすると、式が入り組んで来ます。学校で数式に辟易した方は、「数学が苦手だと苦しそうだな」と思うかもしれませんが、全くそんなことはありません。
まず、オーム則で電流や電流を求めたり、インピーダンスの足し算をしたりする計算が組み合わされているだけすから、「四則演算」しか出てきません。
さらに、「式が出てきたら、綺麗に変形して整理しなければならない」(学校でそう言われたから)と思い勝ちですが、その必要が無いのです。最初に作った形のままExcelに入力して、結果を計算させれば良いからです。
下図左側の回路の入力に、フェーザ(大きさと位相)がで、角周波数ωの交流を加えたときの出力を求めます。
上図右側の@AB…の順で考えます。
@1Hのコイルのインピーダンスはです。(
)
Aコイルと抵抗の直列合成インピーダンスは、双方のインピーダンスを合計してです。
B入力に交流を加えたときに、直列回路に流れる電流は、
です。
上で求めた電流が、2Ωの抵抗に流れて発生する電圧が、「出力電圧」ですから、
C出力電圧は、ちょっと変形して(必須ではありません)
となります。
たとえば、角周波数ωが1rad/sec(0.16Hz)で、入力が10+j0 [V]の場合の出力電圧は、Excelのセルに、=IMPRODUCT(2,IMDIV(10,"2+i"))、と入力すれば、8−j4と表示されます。(複素数の計算はExcelがやりますから、手計算はあまり必要ではありません。)
下図の回路の入力に、(角周波数ω)を加えたときに、出力に現れる電圧を、下表の空欄を記入して考えてください。また、10+j0Vを入力に加えた場合の出力電圧のフェーザを下図右側に書き込んで下さい。(この回路は「CR微分回路」と呼ばれています)
1Fのコンデンサの、角周波数ωでの複素インピーダンスは、
|
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コンデンサと抵抗の直列合成インピーダンスは、双方のインピーダンスを合計して、
|
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入力に交流
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|
上で求めた電流が、2Ωに流れて発生した電圧が出力電圧ですから、出力電圧は、
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たとえば、10+j0V、角周波数1rad/sec(0.16Hz)の電圧を入力した場合の出力は、Excelを用いて、
|
|
1Fのコンデンサの、角周波数ωでの複素インピーダンスは、
|
|
コンデンサと抵抗の直列合成インピーダンスは、双方のインピーダンスを合計して、 |
|
入力に交流 |
|
上で求めた電流が、2Ωに流れて発生した電圧が出力電圧ですから、出力電圧は、 |
|
たとえば、10+j0V、角周波数1rad/sec(0.16Hz)の電圧を入力した場合の出力は、Excelのセルに、 =IMPRODUCT(2,IMDIV(10,"2+i")) と入力して、 |
|
さて、周波数を決め打ちせずに、角周波数ωで表したのは「あとで周波数を変えて色々計算する」ためでした。それでは実際に、練習問題で扱った下図の回路に、様々な周波数(角周波数)の交流(フェーザは10+j0V(大きさ10Vで、ペダルは最初右向き)とします)を加えて、出力がどのように変化するか確認します。
練習問題の答から、出力はと分っています。この式は、Excelで、
=IMPRODUCT(「入力」,IMDIV(2,IMSUB(2,IMDIV("i",「ω」))))
のように計算できます。あとは、「入力」()を与えて、「ω」を少しずつ変えて結果を観察するだけです。ここでは入力は10+j0(つまり=COMPLEX(10,0))で、ωはA列で指定します。
ます、Excelに下図のように入力します。A列以外のセルは、一行入力して下向きにコピーするだけです。A列(角周波数)のセルは最初の6行を入力し他の値、7行目を入力して(7行目だけを)下向きにコピーします。
すると、計算結果は下図のようになります。出力の実部と出力の虚部を「散布図」でグラフに描いています。グラフの上に、過去の練習問題で計算した角周波数(ω=1)の出力のフェーザ(8+j4)を書き加えています。
上図のグラフを見れば、周波数が変わると出力のフェーザがどのように変化するか分ります。つまり、周波数が低い(ωが小さい)ときは、出力もとても小さいですが、周波数が高くなるにつれて、半円を描いて時計回りに出力が大きくなって行き、ω=1(練習問題で扱った場合)に、8+j4Vが出力されます。(大きさは約9V)。そして、周波数が十分高くなると、ほぼ10Vが出力されると分ります。
上で作成したExcelシートの一部(「出力の実部」と「出力の虚部」の部分)を変更して、下図のように「出力の絶対値」(大きさ)と「出力の偏角」(位相)を表示させます。
計算結果は下図のようになります。周波数を横軸(対数)に、絶対値(対数)と偏角を縦軸に、散布図グラフを作成しています。(グラフでは「対数」と「第2軸」の機能を使っています)
グラフを見ると、絶対値(出力電圧の大きさ)は、周波数が高くなると次第に大きくなりますが、ωが1のあたりで増大が止まり、それ以上周波数が高くなっても、殆ど変化しないことが分ります。
また位相は、周波数が低い場合は1.6rad程度(90°)進んでいますが、周波数が高くなると、ほぼ 0°(入力した電圧と同じ方向のフェーザが出力される)と分ります。
下図の回路に10+j0Vの入力電圧を加え、ωを変化させたときの、出力フェーザの変化、出力の大きさ(絶対値)の変化、出力位相の変化を、Excelを使ってグラフに表示してください。
下図ようにExcelに入力します。
計算結果は下図のようになります。
周波数が高くなると、出力が小さくなり、位相が遅れて行くことが分ります。
「周波数伝達関数」は誤解し易い名前です。「周波数を伝達する様子を表す関数」ではありません。「周波数で増幅率(つまり、入力の出力への伝達)が変化する様子を表す関数」という意味です。例えば「100Hzで増幅率は何倍ですか」と聞けば「3倍です」等と答えてくれる式のことです。
さて、下図に3倍の増幅器を示します。1.5Vを入力すると、3倍されて、4.5Vが出力されています。このように増幅器では、例えば「3倍」等と、「増幅率」が重要な性能です。逆に、増幅率が3倍と分っていれば、10V入力すれば、30Vが出力される(つまり、入力×倍率=出力)と計算することもできます。
ところでこの「増幅率」は、出力を入力で割って求めたものです。つまり、出力を入力で割れば、その回路の重要な性質を表すことができるのです。
入力や出力は、電圧でも電流でも構いません。例えば、電流を入力すれば、電圧を出力する回路もあります。しかしここでは「電圧を入力して、電圧を出力する」(良くある)回路だけを考えます。
ところで、信号(入力や出力)には、直流や交流等の様々な種類があります。そこで次表に、各種の信号の種類毎に、出力を入力で割った値の例を示します。
出力÷入力の色々
信号種類 |
直流電圧 |
交流 |
||
交流電圧 (大きさ) |
複素電圧 (周波数固定) |
複素電圧 (後決め周波数ω) |
||
入力の例 |
1.5VDC |
1.5VAC |
10+j0V |
10+j0V |
出力の例 |
4.5VDC |
4.5VAC |
8-j4V |
|
|
|
|
|
|
名前 |
直流電圧増幅率 |
交流電圧増幅率 |
(複素電圧増幅率?) |
周波数伝達関数 |
上表一番右側の「周波数(ω)を後から決めて計算できる、複素電圧の増幅率(出力÷入力)を「周波数伝達関数」と呼びます。
尚、上表右側は練習問題で取り上げた、下図の回路を表しています。
さて、「増幅率」も「伝達関数」も、出力÷入力で求める点では、同じ仲間でした。下図左側に「増幅率」、同図右側に「伝達関数」の例を示します。
上図左側の例では、出力の4.5Vを入力の1.5Vで割って、増幅率の3倍を求めています。逆に、入力の1.5Vに増幅率の3倍を掛けると、出力の4.5Vを計算できます。
上図右側の例では、出力のVを入力の
Vで割って、伝達関数の
を求めています。逆に、入力の
Vに伝達関数の
を掛けると、出力の
Vを計算できます。
ここに登場するような複素数の分数をさらに変形して、見易く整理したいという欲望に駆られる方も多いでしょう。もちろんそれによってExcelの入力は多少楽になりますが、変形の途中に間違える事を考えれば、式はあまり変形せずに、いきなりExcelに入れるのもアリです。ここでは式の変形が嫌いな方のために、あえて殆ど変形せずに放置します。
つまり周波数伝達関数は、「増幅率」に、(1)周波数を後で決められるようにωで埋め込んで、(2)「大きさ(3倍とか)」だけではなく「位相(方向)」も埋め込んだ、ものです。言ってみれば「複素数で計算した増幅率」みたいなものです。
「周波数伝達関数」を「伝達関数」と略して呼ぶ場合もあり、(本書でもやっています)間違いではありませんが、本来の意味では少し違うものです。(今は違いはどうでもいいです)
すでに練習問題で取り上げた下図の回路の伝達関数を求めてください。
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周波数伝達関数 |
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練習問題の答から、出力はと分っています。そこで、周波数伝達関数は下図のように出力を入力で割って、計算できます。
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周波数伝達関数 |
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下図のCR回路の周波数伝達関数を下表を埋めながら求めてください。
番号 |
質問 |
答 |
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@ |
コンデンサの周波数ωにおける、複素インピーダンスは |
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[Ω] |
A |
入力から見るとRCが直列なので、直列合成インピーダンスは |
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[Ω] |
B |
RCに流れる電流は入力電圧Eをインピーダンスで割って、 |
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[A] |
C |
出力電圧は、流れる電流とコンデンサのインピーダンスを掛けて
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