なぁんちゃって電子工学 〜 あるいは自転車と交流 〜 楽しい電子工作のための(いい加減さを極めた)電気の知識
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2017年10月25日
なぁんちゃんて電子工学882.doc
By dokunewon
本書は趣味で電子回路を楽しむ方のために作成しました。つまり、回路を理解したり設計して遊ぶ方を対象にしています。このため、本書は次の方針で作成しています。
1.数学を忘れた人でも(簡単な算数ができれば)電子回路が楽しめるようにする
正確さは潔く犠牲にして、「式」では無く「図」を使って、日常生活に喩えて説明しています。計算はExcelで行います。
2.回路図から回路の動作を感じられるようにする
等価回路に置き換えずに、回路図上で動作を説明することで、回路図から直接に動作を読み取り、回路の動作を感じながら回路図を描いて楽しめるように工夫しています。
3.理解が深まるよう構成する
解説と練習問題を交互に組み合わせ、質問に答えながら読み進めることで、理解が深まるように構成しています。
4.予備知識が無くても読めるようにする
基礎的な内容も必要に応じて紹介し、予備知識が無くても理解できるように構成しています。
本書は、分り易さを重要視しすぎた結果「不正確」なうえ、(個人が作成しており、校正が行き届かないため)「誤字・脱字・誤算等」が多いことをご了承ください。
プロのエンジニアから「こんな説明では安全に動作する機器は設計できない」と非難があるのは当然でしょう。しかし、思い出してください。あなたが子供の頃、色々な回路を作っては壊した愉快な思い出を。そのような楽しさを味わう下地を提供するのが本書の目的です。まずは「安全じゃないけど、一応は動作するように設計できる」所まで行きましょう。
本書の部分や全体は、著者の承諾なしに、任意に複写や改良を行い、用途や有償・無償を問わず配布することができます。誤りの訂正やより分かり易くするための改良は歓迎されます。但し、複写や改良を行い、配布する著作物には、本枠内のメッセージをそのまま転載し、著作物の部分や全体を、著者の承諾なしに、任意に複写や改良を行い、有償・無償を問わず配布することを許可しなくてはなりません。 by dokunewon |
本書のあらゆる関係者は、本書の情報とその運用結果及び、その影響について、かかる損害の発生可能性を了知している場合であっても、直接的、間接的、偶発的、結果的損害、逸失利益、懲罰的損害、または特別損害を含む全ての損害に対して、状況のいかんを問わず一切責任を負いません。
本書は全く新たに書き起こしたものです。つまり、私自身の過去の著作物をコピー・ペーストすることはもちろん、参照することもせずに、白紙のの状態から作成したものです。これにもかかわらず、自然科学現象を平易に説明するという性質上、私が過去に作成した書面と類似の表現が現れる可能性があります。
また筆者が若い頃に、名著『プログラム学習による半導体回路TU』(職業能力開発教材委員会)で勉強したため、一部同書と似た表現や練習問題が表れる傾向もあります。もちろん参照して引き写した部分は一切ありませんが、若い時期に刻み込まれた記憶は一生残ってしまう結果として、(同書が名著である証であると考えて)ご勘弁ください。
水道から流れ出す水のように、いつも同じ向きと大きさで電流が流れている回路を「直流回路」と呼びます。
略してオーム則とも呼びます。回路を考えるとき、オーム則は何度と無く使います。このため、瞬間的に使えるようにしておくと、スラスラと回路が読めます。
オーム則は、次のように考えることで、経験が浅くても素早く使えます。 ・電圧が出てきたら、必ず割られる ・電圧が出てこなければ、双方を掛ける |
電圧は割られる! |
の2つです。例えば、次表のように使います。
状況 |
考え方 |
計算 |
12Vで4A流れた |
電圧の12は割られる |
12÷4=3Ω |
3Ωに12Vが掛かった |
電圧の12は割られる |
12÷3=4A |
3Ωに4A流れた |
電圧が出てこない(掛ける) |
3×4=12V |
Excelに「指数」で入力することで、単位接頭語(本項と次項でのみ、単に「単位」と書きます)を手早く処理できます。たとえば、5μAなら、5E-6、と、220kVなら、220E3というように、値の後に(「単位」に対応した)「指数」(E3等)を付けて入力します。例えば「E3」は「1000」(ゼロ3つ)「E-3」なら「0.001」(1の前にゼロ3つ)を意味します。下表に、単位に対応する指数を示します。
単位を指数で入力する
単位 |
f フェムト |
p ピコ |
n ナノ |
μ マイクロ |
m ミリ |
k キロ |
M メガ |
G ギガ |
T テラ |
指数 |
E-15 |
E-12 |
E-9 |
E-6 |
E-3 |
E3 |
E6 |
E9 |
E12 |
単位を指数で入力した場合、Excelには裸の値(10kなら、10000)が入力されています。
指数を入力したセルや、指数を元に計算したセルの表示形式は、自動的に「指数」に変更されます。指数ではなく、ゼロを並べて表示したいときは、表示形式を「標準」に設定します。(但し、「標準」に設定しても、とても大きな数字やとても小さな数字は指数で表示されます)逆に強制的に指数で表示させたいときは、セルの表示形式を「指数」に指定します。
(セルの表示形式は、セルを選択して、右クリックし、セルの書式設定ショートカットメニューを選択し、セルの書式設定ダイアログボックスで、表示形式タブを選択して、分類ボックスで指定します。)
Excelの入力と表示
値 |
入力 |
標準表示 |
指数表示 |
48kΩ |
48E3 |
48000 |
4.80E+04 |
100pA |
100E-12 |
1E-10 |
1.00E-10 |
47μV |
47E-6 |
0.000047 |
4.70E-05 |
0.022nF |
0.022E-9 |
2.2E-11 |
2.20E-11 |
Excelでオーム則を計算した例を示します。まず、下表のように値を指数を使って入力します。この例では、1行目は見出しです。2行目を使って、1mVを100kΩで割って、流れる電流を求めています。
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A |
B |
C |
D |
1 |
電圧1mV |
抵抗100kΩ |
電流の値[A] |
|
2 |
1E-3 |
100E3 |
=A2/B2 |
|
Excelは結果を次のように示します。
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A |
B |
C |
D |
1 |
電圧1mV |
抵抗100kΩ |
電流の値[A] |
|
2 |
1.00E-03 |
1.00E+05 |
1.00E-08 |
|
B2セルを見ると、入力したとおりには表示されない事が分ります。(100E3と入力したけれど、1.00E+5と表示されている、どちらも値は100000)つまり、Excelは入力した形式までは覚えておらず、入力した値を覚えているだけです。
C2セルに表示される計算結果1.00E-08[A]は、そのままでは分かり難い値です。そこで、[nA]を使って表示させます。項初の「単位を指数で入力する」の表によればn(ナノ)はE-9でした。ですから逆に、裸の値に1E+9を掛けてやれば、[nA]で表示することができます。そこで、次表D2のように入力します。
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A |
B |
C |
D |
1 |
1mV |
100kΩ |
電流の値[A] |
電流の値[nA] |
2 |
1E-3 |
100E3 |
=A2/B2 |
=C2*1E9 |
すると、Excelは次のように表示します。
|
A |
B |
C |
D |
1 |
1mV |
100kΩ |
電流の値[A] |
電流の値[nA] |
2 |
1.00E-03 |
1.00E+05 |
1.00E-08 |
1.00E+01 |
指数を元に計算したので、D1セルの表示形式も自動的に指数に設定されています。D1セルの表示形式を標準に設定すると、次表のように10と表示されます。
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A |
B |
C |
D |
1 |
1mV |
100kΩ |
電流の値[A] |
電流の値[nA] |
2 |
1.00E-03 |
1.00E+05 |
1.00E-08 |
10 |
このように、裸の値に、単位に対応した指数の、Eの後の符号を逆にして掛けると、その単位で表すことができます。このような、裸の値に掛けて単位で表示する場合の指数を次表に示します。
裸の値を単位で表示する
単位 |
f |
p |
n |
μ |
m |
k |
M |
G |
T |
指数 |
1E15 |
1E12 |
1E9 |
1E6 |
1E3 |
1E-3 |
1E-6 |
1E-9 |
1E-12 |
※「単位を指数で入力する」ときの表の、Eの後の符号を逆にしただけです。
※2007以降のExcelではCONVERT関数を使った変換も可能です。
次表は、見出しに記載の2つの値を元に、オーム則で計算した値を示す表です。例えば、見出しに太枠で示す12Vと3Ωからオーム則で計算した結果が、表中に太枠で示す4Aです。
この表にはいくつか間違いがあります。間違っている値を指摘してください。
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12μV |
3kΩ |
12V |
3Ω |
12mV |
3MΩ |
4μA |
3Ω |
12mV |
3MΩ |
12μV |
3kΩ |
12V |
3MΩ |
4mA |
|
4μA |
|
4nA |
|
4A |
3μΩ |
12kV |
3Ω |
12V |
3mΩ |
12kV |
3Ω |
4μA |
|
4A |
|
4mA |
|
4mA |
3mΩ |
12V |
3Ω |
12mV |
3Ω |
12kV |
3kΩ |
4nA |
|
4mA |
|
4μA |
|
下表に、誤りのある値を下線で示します。
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12μV |
3kΩ |
12V |
3Ω |
12mV |
3MΩ |
4μA |
3Ω |
12mV |
3MΩ |
12μV |
3kΩ |
12V |
3MΩ |
4mA |
|
4μA |
|
4nA |
|
4A |
3μΩ |
12kV |
3Ω |
12V |
3mΩ |
12kV |
3Ω |
4μA |
|
4A |
|
4mA |
|
4mA |
3mΩ |
12V |
3Ω |
12mV |
3Ω |
12kV |
3kΩ |
4nA |
|
4mA |
|
4μA |
|
ここではExcelを使わず暗算で単位やオーム則を使う方法を説明します。Excelを使って計算を繰り返していると、自然とできるようになりますが、本項のコツを意識することで、より短期間で慣れることができます。
まず、数字同士計算し、次にこれとは別に、単位同士を計算します。Excelを使う方法でも使用した、各単位の乗数を下表に示します。
主な単位接頭語とその乗数
単位 |
f |
p |
n |
μ |
m |
k |
M |
G |
T |
乗数 |
(-15) |
(-12) |
(-9) |
(-6) |
(-3) |
(3) |
(6) |
(9) |
(12) |
たとえば、10kVで2mA流れた場合、抵抗はオーム則でと計算して求めますが、まず数字だけに注目して、と計算し、次に単位だけをと計算して、両者を合わせて5MΩと答を出します。
上で使用した等の「単位の計算」は自然と覚えますが、慣れるまでは、乗数で計算します。今回の例では下図のように、をと考え、分母の(-3)の符号は反転して(+3)から合算して、(6)=Mと考えます。
別の例として、3kΩ×4μA の場合なら、数字の部分は「3×4」で12です。単位の部分は「k×μ=m」ですから(覚えるまでは (3)+(-6) = (-3) = mと考える)3kΩ×4μA=12mAと暗算できます。
参考までに頻度の高い単位の計算を次表白色部に示します。もちろん意識するだけで良いので、下表を暗記する必要はありません。
単位の計算(グレーの欄はあまり使わない)
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電子系の回路図では、電源とグラウンドの配線は記号で表し、電源(電池マーク)は記入しない場合が大半です。たとえば、練習で登場した下図(a)の回路は、下図(b)のように簡素に描かれます。
また、電圧が高い部分程、回路図の上部に描くと(回路図は大きくなりますが)回路が読み易くなります。
下図の回路図を、見易く書き直してください。
回路図を読むときは、電流や電圧を書き込みながら読みます。本書では、電流は矢印 で、電圧は尻尾に棒のついた矢印 で示します。
尚、電圧を両矢印 で示す方法もありますが、この方法では電圧の方向が分らないので、本書では使いません。
本書では、交流と直流を一つの回路に示す必要がある場合、直流を実線 で、交流を点線 で示します。
複数の抵抗を接続して得られる抵抗値を、合成抵抗と呼びます。直列に接続した場合は直列合成抵抗で、その抵抗値は、各抵抗の和で求めることができます。
下図に示すように、直列に接続した各抵抗には、抵抗値に比例した電圧が発生します。
分圧で、3.3kの両端に得られる電圧を求めてください。
下図のように、回路上の一点から流れ出す電流の合計(3A+2A)は、流れ込む電流の合計(5A)と同じになります。
下図のように互いに(太線部で)接続された2つの回路では、左右の電圧が同じになる(左6V、右6V)という法則です(あたりまえですね)。「各部品の電圧を合計すると、全体の電圧になる」法則と考えることもできます。(左側が4V+2V=6V、右側が5V+1V=6V)
このようにキルヒには電流則と電圧則がありますが、本書で単に「キルヒ則」と言った場合は、キルヒ電流則を指します。キルヒ電圧則は意識せずに使える場合が多いです。
下図の回路の、@〜Bの電圧、電流、抵抗、を求めて下さい。
番号 |
答 |
ヒント |
@ |
V |
キルヒ電圧則を使用 |
A |
mA |
キルヒ電流則を使用 |
B |
kΩ |
オーム則を使用 |
番号 |
答 |
説明 |
@ |
5V |
キルヒ電圧則より、15Vと10Vの差で5V |
A |
5mA |
キルヒ電流則より、A点に注目して、20mAと15mAの差で5mA |
B |
1kΩ |
オーム則より、5Vで1mAだから1kΩ |
下図の回路の、@〜Dの電圧、電流、抵抗、を求めて下さい。
番号 |
答 |
ヒント |
@ |
mA |
オーム則を使用 |
A |
mA |
キルヒ電流則を使用 |
B |
V |
キルヒ電圧則を使用 |
C |
V |
キルヒ電圧則を使用 |
D |
kΩ |
オーム則を使用 |
番号 |
答 |
説明 |
@ |
0.6mA |
オーム則より、1kΩに0.6Vが加わって、0.6mA |
A |
1mA |
キルヒ電流則より、流れ出す電流が0.3mAと0.6mAだから、流れ込む電流は1mA |
B |
0.6V |
キルヒ電圧則より、0.6V |
C |
1V |
キルヒ電圧則より、Bの0.6VとCを加えると、1.6Vとなるから、1V |
D |
1kΩ |
オーム則より、1Vで1mA流れるから、1kΩ |
抵抗は「電流の流れ難さ」ですが、コンダクタンスは「電流の流れ易さ」です。下表に「値の例」で示すように、抵抗の値が小さい程、コンダクタンスの値は大きくなります。つまり、抵抗とコンダクタンスの値には「逆数」の関係があります。
名前 |
抵抗 (レジスタンス) |
コンダクタンス |
|
イメージ |
電流の流れ難さ |
電流の流れ易さ |
|
単位 |
Ω |
|
S |
単位の読み |
OHM オーム |
MHO モー |
SEMENS ジーメンス |
値の例 |
4Ω |
1/4S |
|
1Ω |
1S |
||
1/4Ω |
4S |
上表にあるとおり、コンダクタンスの単位は(とSの)2つあります。Ω(OHM)の逆数が (MHO)というのは、お茶目で覚え易いため、是非使いたいのですが、 という文字が無いため、本書ではS(ジーメンス)を使います。
一本の抵抗器を「流れ難さΩ」で呼んでも、「流れ易さS」で呼んでもかまいません。つまり、部品店で4Ωの抵抗を購入する時に「4分の1ジーメンスの抵抗を下さい」と言っても良い訳です。ですから「抵抗(Ω)があれば、コンダクタンス(S)なんて要らないとや」と思い勝ちですが、実はこのコンダクタンス、並列回路でとても役に立ちます。
直列合成抵抗は合計するだけで求めることができましたが、並列合成抵抗はちょっと面倒でした。そこでコンダクタンス(通りやすさ)を使って考えてみます。コンダクタンスを使うと並列回路は合計するだけで計算できます。
下図の回路では、通りやすさ2Sと3Sの抵抗が並列に接続されています。道路に喩えれば、道幅2mと、3mの、2本の道路で目的地に繋がっている状態です。ですから、2本の道路を合わせて、道幅5mの道と同じだけの人が通れる筈です。
回路に話を戻すと、通りやすさ2Sの抵抗と3Sの抵抗が並列なので、並列にした通りやすさは5Sとなります。このように、コンダクタンス(流れ易さ)を合計するだけで、並列回路の計算ができました。答えをΩで出したい場合は、5Sの逆数を求めて、0.2Ωとなります。
さて、上図では抵抗の仕様が、流れ易さ(コンダクタンス:S:ジーメンス)で示されていました。次に、抵抗がいつも通り、流れ難さ(抵抗:Ω)で示されている場合を考えます。
下図の回路では、1Ωと4Ωが並列に接続されています。それぞれの抵抗値を、流れ易さに書き直すと、1Sと0.25Sです。流れ易さを合計して、並列接続の流れ易さ(並列合成コンダクタンス)を計算すると、1.25Sです。答えを流れ難さ(Ω)で出したい場合は、1.25Sの逆数を求めて、並列合成抵抗は0.8Ωとなります。
上図の下部に並列合成抵抗を公式で求める方法を示します。実は公式の方法も、2つの抵抗値をコンダクタンスに変換してから合計し、合計で得たコンダクタンスを、もう一度抵抗値に戻している、と分ります。
並列抵抗の計算は次のように書く場合があります。
1Ω // 4Ω = 0.8Ω
「//」は並列の抵抗値を計算する、という記号です。
下図の回路の@〜Cのコンダクタンス、抵抗、電流を回路図内に記入してください。
@0.5Sと1.5Sが並列なので、2S
A2Sを逆数にして、0.5Ω
B4.5Ωと0.5Ωが直列なので5Ω
C5Ωに10Vが加わっているので、2A
直列抵抗に分圧の考え方があるように、並列抵抗には分流の考え方があります。下図に示すように、並列に接続した各抵抗には、コンダクタンス(流れ易さ)に比例した電流が流れます。
下図の回路で、2kΩに流れる電流を回路図内に記入して下さい。
下図に示す、3つの電圧に繋がった、3本の抵抗の中点の電圧は、キルヒ則で連立方程式立てなくても、図中の公式で求めることができます。この公式は一見複雑そうですが、規則性があるので楽に覚えられます。
大文字ABCが電圧、小文字abcは抵抗値です。また、AbcはA×b×cの事です。(つまり、×は省略する場合があります)
抵抗が4本、5本と増えた場合はそれぞれ次のようになります。
下図の回路に矢印で示す点の電圧を求めてください。
下図左側の装置は、ポンプで水を送り、1秒間に3L(リットル)の水を循環させています。流れる水の量は3L/秒です。蛇口を眺めていると、1秒あたり3Lの水が通過するのが見えます。
さて、「水の量」:L(リットル)に相当する電気の量を「電荷」:C(クーロン)と呼びます。下図右の回路では、1秒間に3C(クーロン)の電荷が通過しています。つまり、3C/秒です。私たちは、これを3Aと呼んでいます。(つまり、3A = 3C/秒です)
毎秒3Lで5秒間流れると、15Lの水が通過します。これと同様に、毎秒3C(3C/秒=3A)が5秒間流れると、15Cの電荷が通過します。つまり、
通過した電荷[C]=電流[A]×時間[秒]
です。
5Ωの抵抗に10Vを加えると、1分間で何クーロンの電荷が通過しますか。
オーム則より、電流は10V÷5Ω=2A。1分は60秒だから、電荷は2A×60秒=120C通過する。
コンデンサは下図のコップが水を蓄えるように、電荷を蓄える部品です。
コップでは水面の高さとコップの大きさ(底面積)を掛けると溜まった水の量を知ることができます。上図の例では、
コップの大きさ(底面積)5cm2 × 水面の高さ2cm = 水の量10cm3
となります。コンデンサでも同様に、溜まっている電荷は、電圧の高さとコンデンサの大きさ(容量)を掛けて求めることができます。
コンデンサの大きさ(容量)5F × 電圧の高さ2V = 電荷の量10C
もしこのコップに、毎秒1cm3の勢いで、10秒間水を注ぐとと、水面が2cmに上昇しますから、
水の勢い1cm3/秒 × 10秒 / コップの大きさ5cm2 = 水面の高さ2cm
となります。水の勢い1cm3/秒は、電流1C/秒(つまり、1A)のことですから、コンデンサでは、電流と時間を掛けて(流れ込んだ電荷を求めて)容量で割れば、上昇した電圧が計算できます。
電流1A × 時間10秒 / 容量5F = 電圧の高さ(増加)2V
@12Fのコンデンサに、2Aの電流で1分間充電しました。(コンデンサに電流を流し込んでて、電荷を貯めることを充電すると言います)コンデンサに溜まった電荷は何クーロンですか。コンデンサは何ボルトに充電されますか。
A100μFのコンデンサが20Vに充電されています。一定の電流1mAで放電(コンデンサから電流を流れ出させ、コンデンサに溜まっている電荷を吐き出させることを、放電と言います)させれば、何秒で空(コンデンサの電荷がなくなる)になりますか。
@1分は60秒だから、溜まった電荷は2A×60秒=120C。12Fのコンデンサに120Cが蓄えられると、電圧は10Vとなる。
Aコンデンサに溜まっている電荷は、100μF×20Vで2mCである。1mAとは、1mC/秒のことだから、2mC÷1mC/秒=2秒でコンデンサが空になる。
下図の回路ではコンデンサは最初8Vに充電されています。ここで、SWをONにすると、1Ωの抵抗を通じて、コンデンサが放電(コンデンサに溜まった電荷が電流で流れ出す)を始めます。
SWをONした瞬間、下図回路図の@のように、抵抗には8Vが掛かり8Aの電流が流れます、その結果、グラフに@で示すように、コンデンサの電荷は8Aの勢いで放電し、速やかに電圧が下がり始めます。
コンデンサが4Vまで放電すると、上図Aのように、放電電流が4Aに減少し、放電の勢いが弱まります。このように次第に勢いを弱めながら放電が続き、例えば、1Vまで放電すると、上図Cのように、放電電流は1Aに減少し、放電の勢いは極めてゆるやかになります。
このようにコンデンサに抵抗を接続すると、電圧が低下すると、放電する電流も減少するため、上図のグラフに点線で示すように、次第に勢いを弱らせながら、放電して行きます。
下図に放電の様子を簡素に示します。コンデンサの容量がC[F],抵抗がR[Ω]の場合、下図に点線で示すように滑らかに放電します。
コンデンサの最初の電圧がE[V]の場合、スイッチONからt秒後のコンデンサの電圧Ecは、次の式で計算できます。(expは次第に勢いを弱らせる(強める)様子を計算する関数です。)
←この式は分らなくても良い
Excelでは、=E1*EXP(-T1/C1/R1)で計算できます。
E1=最初の電圧[V]、T1=時間[秒]、C1=コンデンサの容量[F]、R1=抵抗値[Ω]
たとえば、たとえば、10μコンデンサを100Vに充電して、100kΩで1秒放電した場合は、Excelに=100*EXP(-1/10E-6/100E3)と入力して、約37Vまで電圧が下がると計算できます。
逆に、コンデンサが所定の電圧に放電するまでの時間を計算することもできます。(lnはexpの逆の働きをする関数です。)
←この式は分らなくても良い
Excelでは、=-C1*R1*ln(E2/E1)で計算できます。
E1=最初の電圧[V]、E2=所定の電圧[V]、C1=コンデンサの容量[F]、R1=抵抗値[Ω]
たとえば、10μのコンデンサを100Vに充電して、100kΩで放電して60Vに電圧が下がるまでの時間は、Excelに=-10E-6*100E3*LN(60/100)と入力して、約0.51秒と計算できます。
Excelを用いて、下図の回路のスイッチをONにした後の放電の様子を10m秒毎に計算し、グラフに示してください。
Excelに下図のように入力します。A2、A4、A6のセルは絶対参照なので、F4キーを押して、$A$4等とします。
計算させ、グラフを表示させると、下図のようになります。
時定数は、じていすう、ときていすう、ときじょうすう、と読み方が様々にありますが、どれも正しいとされています。記号はτ(タウ)です。
CR回路は最初は勢い良く放電を開始し、次第に放電の勢いを弱めて行きますが、「時定数τ」は下図のグラフに太い点線で示すように、「もし、最初の勢いのまま放電し続けたら、何秒で放電が終了するか」を表しています。放電のグラフを手で書くときに、この時間τが分ると便利です。
τの値は、CとRを掛けて求める事ができます。
τ[秒] = C[F]×R[Ω]
さらに、最初の電圧を100Vとして、スイッチをONにしてからτ(=C×R)秒経過したときのコンデンサの電圧を計算すると、
100 × exp(−CR/CR)= E × exp(−1)= 約37
Excelでは=100*EXP(-1)で36.78…と表示される。
となり、τ秒経つと、コンデンサの電圧は最初の37%まで低下します。(さらにτ秒経つと、さらにその37%まで低下し、これを繰り返して放電して行きます。)このように時定数の値は、回路の動作を調べるのにとても役に立ちます。
コンデンサ容量[F]と抵抗[Ω]を掛けると、時間[秒]が求まるのは、奇妙な感じですが、容量=電荷/電圧また、電荷=電流×時間であることから、次のように考えることができます。
先の練習問題(C=100μF、R=1kΩ)の回路の時定数τを求め、放電開始からτ秒後のコンデンサの電圧を練習問題の答のグラフから求めてください。最初の電圧の何%に低下していますか?
時定数τ m秒 グラフから求めた電圧 V 電圧の割合 %
時定数τ=100μF×1kΩ=100m秒
時定数τ 100m秒 グラフから求めた電圧 3.7V 電圧の割合 37%
下図左側の回路でスイッチをONにすると、抵抗を通して電流が流れ、コンデンサが充電されて行きます。
また、下図右側に示すとおり、コンデンサ放電のグラフを上下逆にすると、今回のコンデンサ充電のグラフになります。
上下逆になったために、時定数τ後の充電電圧は、最初の電圧の63%となります。(充電されずに残っている電圧が37%です)また、コンデンサの充電電圧Ecは、電池の電圧をE[V]とすると、
Excelでは、=E1*(1-exp(-T1/C1/R1))で計算できます。
E1=電池の電圧[V]、T1=時間[秒]、C1=コンデンサの容量[F]、R1=抵抗値[Ω]
で計算できます。
下図の回路でSWをONにした後のコンデンサの電圧の変化を、1m秒毎にExcelで計算しグラフを描いてください。
抵抗が100kΩ、コンデンサが0.1μ、電源が100Vだから、Excelで、ON後の時間を時間をB2セルに入れれば、充電電圧は=100*(1-(exp(-B2/100E3/0.1E-6))で計算できる。tの値を次第に大きくして、例えば下図のようにExcelに入力し、計算させる。(下図ではCとRもセルから与えている)
計算結果は次のようになる。
本項は余談です。興味がなければ読み飛ばすことができます。
この問題は下図のシートを使えば、exp関数を使わずにシミュレーションという方法でも解くことができます。シミュレーションですから、入力電圧の変化も任意に設定できます。
A列に時間(1m秒ずつ増大)、B列に入力電圧(自由な変化が可能)を入力し、E2セルにコンデンサの電荷の初期値(ここでは0クーロン:空っぽ)を入力します。
C列の抵抗の電圧は、入力電圧とコンデンサの電圧の差ですから、=B2-F2、F列のコンデンサの電圧はコンデンサ電荷/容量なので、=E2/0.1E-6と式を設定します。
ポイントはE3セルのコンデンサの電荷です。「コンデンサの電流×時間=コンデンサに流れ込んだ電荷」という点と「流れ込んだ電荷の分、コンデンサの電荷は増える」という2点を考えて、電流のD2に(1行当たりの)時間(ここでは、A3−A2で1m秒と)を掛けてコンデンサに流れ込んだ電荷を求め、さらに直前の電荷(真上のセルE2)に加えて、=E2+D2*(A3-A2)と入力します。
入力した値や式を下方向にコピーしてシートを完成し、計算してグラフを描かせると、下図に示すとおり、充電の様子が正しく計算されました。
電圧の変化に対して、1行当たりの時間が十分細かくないと正しく計算できませんから、ゆっくりと電圧や電流が変化する程度に、1行当たりの時間(ここでは1m秒)を調節します。
実は、exp関数を使うより、こちらの方が(四則演算しか出てきませんし、電流、電圧、電荷の単純な関係だけを入力すれば良いから)分り易いのです。このような簡単な計算から、exp関数の曲線が出てくるのは、私達の代わりに、Excelが微分方程式を解いてくれているからです。(微分方程式は、フリコの構造を元に、フリコの振動を求めるような計算です)その上この方法、「倒立振子を安定させる制御を検討する」とか、相当すごい事までできるんです。
下図の回路の放電の様子をExcelでシミュレーションし、コンデンサの電圧をグラフで表示してください。
コンデンサの電荷が、抵抗に流れる電流×時間ずつ減少することを考えて、次のようなシートを作成する。
計算させてグラフを描くと下図のように放電の様子が表示される。
下図の回路でSWをONにすると、分圧の法則から、コンデンサは5Vを目指して充電されることは分ります。後は、時定数が計算できれば、充電の様子も分ります。
しかし、上図のままでは抵抗が2本あり、時定数が計算できません。そこで、上図の点線で囲んだ部分を、下図に示すテブナンの定理を使って、一本の抵抗に置き換えます。
先ず、上図(a)に示すように、電池を電線に置き換えます。すると、上図(b)のように、右側から見た抵抗値は、20kΩと5kΩが並列に見えるので、4kΩとなります。最後に、上図(c)のように、端子に加わる電圧(5V)の電池を接続し直します。
このように、電池と抵抗を複雑に組み合わせた回路も、1本の電池と抵抗の直列回路で表すことができます。これがテブナンの定理です。この置き換えを行うと、検討中の回路は下図のようになります。
上図の通り、4kΩを通して100μFを充電するので、時定数は400m秒で、充電の様子は上図右側のグラフのようになります。
下図(a)回路を端子から見た電圧と内部抵抗を、下図(b)のように単純に置き換えると、電圧と抵抗はいくらになりますか。
電圧 V 抵抗値 Ω
まず、端子の電圧を考える。下図(a)のとおり、下側の並列合成抵抗は1kΩ、従って電池の10Vが1kΩと1kΩで分圧されて、端子には5Vが出力される。
次に、電池を電線に置き換えると、上図(b)の回路となり。入力端子から見た抵抗値は、3つの抵抗の並列合成抵抗で、500Ωとなる。
電圧 5V 抵抗値 500Ω
重ね合わせの原理は、電池が複数ある回路の電流を簡単に求める方法です。「複数の電池が働いている回路に流れる電流は、それぞれの電池が1つだけ働いて流れた電流を合計すれば計算できる」という考え方です。電圧と電流が比例する(つまり、オーム則が通用する)回路であればいつでも利用できます。
具体的にはまず、複数の電池のどれか1つだけに注目し、それ以外の電池は「導線」と考えて、各部の電流を求めます。次に、別の電池に注目し、それ以外の電池は「導線」と考えて、各部の電流を求めます。このように全ての電池に順に注目して電流を求めます。最後に、これまでに求めた電流を合計すれば、全ての電池が活動したときの電流が分ります。
下図の例では6Vと12Vの2つの電池が働いています。ここでは、R1、R2、R3に流れる電流を重ね合わせの原理で求めます。
各部の電流は、下図(a)(b)(c)に示す3段階で考えます。まず(a)では6Vの電池に注目して、それ以外の(12Vの)電池は導線であると考え、各部の電流を求めます。次に(b)では12Vの電池に注目して、それ以外の(6Vの)電池は導線であると考え、各部の電流を求めます。最後に(c)で、(a)で求めた電流と(b)で求めた電流を合計すれば、電池が2つとも活動しているときの各部の電流が計算できます。
上図を見ながら下表に記入して、電流を求めます。
番号 |
問題 |
答 |
(a) |
@12Vの電池を導線と考えます |
− |
A |
R2とR3の並列合成抵抗値は、 |
Ω |
B |
電池から見た回路全体の抵抗値は、 |
Ω |
C |
R1に流れる電流は、 |
A |
D |
R2とR3に流れる電流は、(分流で…) |
A |
(b) |
@6Vの電池を導線と考えます |
− |
A |
R1とR2の並列合成抵抗値は、 |
Ω |
B |
電池から見た回路全体の抵抗値は、 |
Ω |
C |
R3に流れる電流は、 |
A |
D |
R2とR3に流れる電流は、(分流で…) |
A |
(c) |
(a)と(b)で求めた電流を合計します |
− |
@ |
R1に流れる電流は、 |
A |
A |
R2に流れる電流は、 |
上向き・下向き A |
B |
R3に流れる電流は、 |
上向き・下向き A |
番号 |
問題 |
答 |
(a) |
@12Vの電池を導線と考えます |
− |
A |
R2とR3の並列合成抵抗値は、 |
1Ω |
B |
電池から見た回路全体の抵抗値は、 |
3Ω |
C |
R1に流れる電流は、 |
2A |
D |
R2とR3に流れる電流は、(分流で…) |
1A |
(b) |
@6Vの電池を導線と考えます |
− |
A |
R1とR2の並列合成抵抗値は、 |
1Ω |
B |
電池から見た回路全体の抵抗値は、 |
3Ω |
C |
R3に流れる電流は、 |
4A |
D |
R2とR3に流れる電流は、(分流で…) |
2A |
(c) |
(a)と(b)で求めた電流を合計します |
− |
@ |
R1に流れる電流は、(2A−2A) |
0A |
A |
R2に流れる電流は、(2A+1A) |
上向き・下向き 3A |
B |
R3に流れる電流は、(4A−1A) |
上向き・下向き 3A |
コイルはコンデンサに比べると分かり難く感じる部品ですが、下図のように「電流で回るはずみ車」と考えると動作をイメージできます。
上図右側の回路でコイルの働きを説明します。下図左側のように、スイッチをONにすると、コイルに電圧が加わり、はずみ車はゆっくりと回転を始めます。つまり、電流はゆっくりと増えてゆきます。
電流が増えたところで、上図右側のようにスイッチをOFFにすると、はずみ車は勢いが付いているため、OFF後も回転を続け、上図右側の経路で電流が流れて、電球が光り続けます。
電球にエネルギを供給しているため、はずみ車は次第に回転が遅くなり、回転のエネルギをすべて電球に送り込むと停止します。
コイルの大きさ(インダクタンス)は、はずみ車の重さに対応しています。ですから大きなコイルは電圧を掛けてもなかなか電流が増加せず、小さなコイルはすぐに電流が増加します。ですから、コイルの大きさは次のように計算します。
6Vの電圧を加えて、電流が3Aに増えるまでに、2秒掛かれば、
コイルの大きさ = 6V × 2秒 ÷ 3A = 4H
Excelでは、=E1*T1/I1
ですからコイルに流れる電流は、
コイルの電流 = 電圧 × 時間 ÷ コイルの大きさ
Excelでは、=E1*T1/L1
ところで、鉄やフェライトなどの磁性体の芯(コア)に線を巻くと、コイルを小形にできます。ただし、磁性体には「これ以上強い磁石には成れない」という限度があるので、大きな電流を流すと、その限度に達して「磁気飽和」という現象が起こります。
下図に示す通り、コアが磁気飽和すると「電流がそれ以上増えない」のではなく、「電流が急激に増加する」するので注意が必要です。
つまり、上図右側のグラフ上に示すように、はずみ車があまりに激しく回転すると電線から離れてしまい(コイルが、電線に変身して)電流が流れ放題になるというイメージです。
@5Vを加えると1μ秒で10mAに電流が増加しました。このコイルの大きさはいくらですか?
A50mHのコイルに15Vの電圧を1m秒加えました。電流は何Aに増加しますか。
@コイルの大きさ = 5V ÷ 10mA ÷ 1μ秒 = 500μH =5*1E-6/10E-3
Aコイルの電流 = 15V × 1m秒 ÷ 50mH = 300mA =15*1E-3/50E-3
下図(a)の回路でスイッチをONにすると、コイルの上側に+の電圧が加わります。このため、同図(b)のようにはずみ車の回転が次第に速くなり、下図右のグラフに灰色線で示すように電流が増加して行きます。
ここで例えば電流が1Aに増加したときにスイッチをOFFにすると、すでにはずみ車は勢い良く回っており、コイルはスイッチがOFFであるにもかかわらず1Aの電流を流し続けようとします。このためコイルの下側に高い+の電圧が発生し、離れた接点を火花となって電流が流れます。接点に火花が発生すると(火花は高いエネルギーを消費するので)はずみ車の回転は短時間で停止し、電流は止まります。
このようにコイルに流れる電流を突然止めたとき、高い電圧が発生する現象を「フライバック」と呼び、発生する高い電圧を「フライバック電圧」、無理にスイッチを流れる電流を「フライバック電流」と呼びます。
フライバックによって、接点が火花で傷みますし、半導体であれば破損します。このため下図に示すような、OFF時の電流を吸収する回路(スナバ回路)を別に設け、火花の発生を止めます。
スナバ回路の働きについては、別途説明します。
下図(a)のように、4Vと書かれた電池の電圧を測定すると、確かに4Vでした。そこで、下図(b)のように、1A流れる事を期待して、4Ωの抵抗(このように電流を流すための抵抗を「負荷抵抗」と呼びます)を接続すると、なぜか0.8Aしか流れませんでした。
この理由は、上図(c)に示すように、電池の内部に(隠された)抵抗があり、その結果、合計の抵抗値が5Ωとなり、電流が減少したためです。
このような、「(必要ないのに)素子に入っている抵抗」を「内部抵抗」と呼びます。大きな電流を流す回路では、内部抵抗を考えて設計しないと、電流が思ったより小さくなってしまいます。
もちろん電池メーカーは意地悪で内部抵抗を入れている訳ではありません、電池メーカーは内部抵抗を無くそうと努力しているのですが、構造上止むを得ず入ってしまう訳です。
下図のように、内部抵抗1Ω、起電力4Vの電池を2本直列に接続し、1Aの電流を取り出すためには、負荷抵抗は何Ωにすべきですか。
負荷抵抗: Ω
内部抵抗を考えると、回路は下図左のように、各1Ωの内部抵抗があります。また、起電力(電池の電圧)の合計は8Vです。ですから、1A流すためには、回路全体の抵抗値を8Ωにする必要があります。このため、6Ωの負荷抵抗を接続すれば、回路に1Aを流すことが出来ます。
負荷抵抗: 6 Ω
下図(a)のように、3Vの電源を10kと20kで分圧すると、20kの両端には2Vが生じる筈です。そこで、同図(b)のように20kの両端電圧を測定すると、なぜか1.5Vしかありませんでした。
この現象も「内部抵抗」が原因です。上図(c)に示すように、本来は電流を流さない筈の電圧計にも、「内部抵抗」(ここでは20k)があります。
このため、回路に電圧計を接続したことで、下側の20kΩと電圧計の内部抵抗の20kΩが並列接続され、両者が合わさって10kとして作用します。結果として、上側の10kと下側の10kで分圧されたことになり、下側の20kΩの両端には、電源の3Vの半分、つまり1.5Vが生じたのです。
もちろん計器メーカーは意地悪で内部抵抗を入れている訳ではありません、メーカーは内部抵抗を無くそうと努力しているのですが、構造上止むを得ず入ってしまう訳です。今日では(通常の用途であれば)全く電流が流れないと考えて良い電圧計も増えています。(内部抵抗が1TΩ以上あります)
下図のように、100Vの電源から、10MΩを経由して電圧を測定すると、電圧計は50Vを示しました。この電圧計の内部抵抗を答えてください。
内部抵抗 Ω
100Vが50V(半分)に分圧されているので、上側の抵抗と下側の抵抗(内部抵抗)は同じです。このため内部抵抗は10MΩです。
内部抵抗 10M Ω
ここから説明する「仕事」や「仕事率」は、電気の世界と、現実の世界(温度や運動などの身近な事柄)を関連付ける上で役立ちます。たとえば「この機械には何Wくらいのモータが必要か?」などを、ざっくり計算できるようになります。ですから、エネルギや仕事については、練習もまじえてちょっと詳しく説明します。
尚、本書では分り易くするため「仕事」に関連する「良く似た」単位や考え方を「全く同じもの」として扱います。そのほうが簡単で、実用上何の問題も無いからです。
下図左側のように、102gのりんごを1m持ち上げる「仕事」が1Nm(ニュートンメートル)です。Nmの代わりに、J(ジュール)や、W秒(ワット秒)を使う事もできます。また、「仕事」は「エネルギ」とも呼びます。
持ち上げるのではなく、下図右上に示すとおり、荷物を102g(1N)の 力 で、1m横に引き摺る仕事も1Nmです。
また、上図下部に示すとおり、4200Nmのエネルギがあれば1リットルの水を1℃温めることができます。
下表の仕事を求めて答欄に、各種の単位で記入してください。
番号 |
問題 |
答 |
@ |
306gの荷物を4m持ち上げる仕事は |
Nm J W秒 |
A |
2Lの水を5℃暖める仕事は |
Nm J W秒 |
番号 |
問題 |
答 |
@ |
306gの荷物を4m持ち上げる仕事は 306g÷102g=3N 3N×4m=12Nm |
12Nm 12J 12W秒 |
A |
2Lの水を5℃暖める仕事は 4200J×2L×5℃=42000J |
42000Nm 42000J 42000W秒 |
仕事率は「1秒間にできる仕事の量」で、単位はNm/秒です。「1秒にできる」というところが、「仕事」との違いです。(Nm/秒の代わりに、J/秒や、Wを使う事もできます)
下図に示すとおり、荷物を102g(1N)の 力 で引っ張り、1秒間あたり、1mずつ引きずることができれば、仕事率は1Nm/秒(ニュートンメートル毎秒)です。1秒間に1Nmの仕事ができますから。10秒間待てば、10Nmの仕事ができます。
また、上図右側にあるように、電圧1Vで1Aの電流が流れているとき「1W(ワット)の電力が消費されている」と言います。
電力Wと仕事率Nm/秒(J/秒)は同じもので、1Wの電力を無駄なく使えば、1秒間に1Nmの仕事ができます。
電力は電圧と電流を掛けて、次のように計算して求めます。
電力 = 電圧 × 電流
例えば 20V × 5A = 100W
オーム則によれば、電圧は電流×抵抗、電流は電圧÷抵抗ですから、電力は次の計算でも求めることができます。
電力 = 電流2 × 抵抗 (電流2は電流×電流の事です)
例えば 5A2 × 4Ω = 100W
電力 = 電圧2 ÷ 抵抗
例えば 20V2 ÷ 4Ω = 100W
100Wの仕事率は、他の単位を使って表すこともできます。
100W = 100J/秒 = 100Nm/秒
(102gのりんごを、一秒で100m持ち上げます)
このように仕事や仕事率では、複数の単位が、ほぼ同じ意味で使われます。それらの単位を下表に示します。
種類 |
単位 |
呼び名 |
意味 |
仕事 |
Nm |
ニュートンメートル |
1N(102g)の力で1m引っ張る仕事 |
J |
ジュール |
||
W秒 |
ワットセカンド |
1Vで1Aの電流を1秒間流す仕事 |
|
熱量 |
kcal |
キロカロリー |
1kgの水を1℃温めるのに必要な熱量 4200J=1kcal |
仕事率 |
Nm/秒 |
ニュートンメートル毎秒 |
1N(102g)の力で 1秒あたり1m引っ張る仕事率 |
J/秒 |
ジュール毎秒 |
||
W |
ワット |
1Vで1Aの電流を流す仕事率 |
下表の仕事を求めて答欄に、各種の単位で記入してください。但し、エネルギは目的のために無駄なく利用されると考えてください。
番号 |
問題 |
答 |
@ |
4秒間に510gの荷物を20m持ち上げる仕事率は |
Nm/秒 J/秒 W |
A |
10分で3Lの水を5℃暖める仕事率は |
Nm/秒 J/秒 W |
C |
30V2Aのモータの仕事率は |
Nm/秒 J/秒 W |
C |
30V2Aのモータが、20秒間動作して行う仕事は |
Nm J W秒 |
番号 |
問題 |
答 |
@ |
4秒間に510gの荷物を20m持ち上げる仕事率は 510÷102=5N 5N×20m÷4秒=25 |
25Nm/秒 25J/秒 25W |
A |
10分で3Lの水を5℃暖める仕事率は 3L×5℃×4200=63000J 63000J÷600秒=105J/秒 |
105Nm/秒 105J/秒 105W |
C |
30V2Aのモータの仕事率は 30V×2A=60W |
60Nm/秒 60J/秒 60W |
C |
30V2Aのモータが、20秒間動作して行う仕事は 30V×2A=60W 60W×20秒=120W秒 |
120Nm 120J 120W秒 |
下図の回路の@〜Cの電圧や電力を求めてください。
@A分圧の法則により、@は10V、Aは20V
B10V×10V÷1kΩで、100mW
C20V×20V÷1kΩで、400mW
下図のように、10V500mAでモータを駆動して1.02kgの荷物を持ち上げます。このモータを10秒間動作させれば、何メートル持ち上げることができますか。下表右側の列に書き込んで答えてください。但し、モータに加えた電力は無駄なく荷物の持ち上げる事に使われるとします。
番号 |
項目 |
答 |
@ |
モータの消費電力 |
W |
A |
モータの10秒間の仕事 |
Nm |
B |
荷物を引く力 |
N |
C |
荷物を引く距離 |
m |
番号 |
項目 |
答 |
説明 |
@ |
モータの消費電力 |
5W |
10V×500mA |
A |
モータの10秒間の仕事 |
50Nm |
5W×10秒 (5Nm/秒×10秒) |
B |
荷物を引く力 |
10N |
1020g/102=10N (1N=102gw) |
C |
荷物を持ち上げる距離 |
5m |
50Nm/10N |
実際には様々なところでエネルギが(モータが発熱する等で)無駄になり、持ち上げる高さは小さくなります。
下図のように、100V、8.4Aのヒータを使って、電気ポットに入った20℃の水2リットルを、80℃まで温めるには、何分必要ですか。但し、熱は外に逃げないものとします。
番号 |
項目 |
答 |
@ |
暖めて上昇させる温度 |
℃ |
A |
暖めるのに必要なエネルギー |
J |
B |
ヒータの電力 |
W |
C |
暖める時間(秒) |
秒 |
D |
暖める時間(分) |
分 |
番号 |
項目 |
答 |
説明 |
@ |
暖めて上昇させる温度 |
60℃ |
80℃−20℃ |
A |
暖めるのに必要なエネルギー |
504000J |
2L×60℃×4200J |
B |
ヒータの電力 |
840W |
100V×8.4A |
C |
暖める時間(秒) |
600秒 |
504000÷840 |
D |
暖める時間(分) |
10分 |
600秒÷60 |
電力量は、電力(仕事率)に時間を掛けて、使用した電気エネルギ(仕事)の量を求めたものです。ですから電力量は、基本的にはJ(ジュール)やW秒(ワットセコンド)と同じタイプ(仕事)の単位です。
JやW秒との違いは、時間に「秒」ではなく「時間」(アワー:h)を使うところです。ですから単位も、Wh(ワットアワー)やkWh(キロワットアワー)です。1時間は3600秒ですから、1Whは3600W秒(3600J)です。
私たちが支払う電力料金も、電力量を元に決められます。つまり、使ったエネルギーの分、代金を取られる訳です。
下図の通り、100V8.4Aのヒータを、毎日2時間、30日間動作させると、何kWhの電力量を消費しますか?
番号 |
項目 |
答 |
@ |
ヒータの電力 |
W |
A |
2時間動作時の電力量 |
kWh |
B |
30日間動作時の電力量 |
kWh |
番号 |
項目 |
答 |
説明 |
@ |
ヒータの電力 |
840W |
電圧×電流 |
A |
2時間動作時の電力量 |
1.68kWh |
電力×時間 |
B |
30日間動作時の電力量 |
50.4kWh |
一日電力量×30 |
本書ではデシベルはしばらく(伝達関数のあたりまでは)出てきません。ややこしい割りには使う機会が少ないです。このため、本項は読み飛ばしておき、必要が生じてから読むこともできます。
さて、デシベルは「電力の倍率に付いているゼロの数を数えて10倍したもの」を表す単位です。(あとで詳しく説明します)「電力の倍率」は「利得」や「ゲイン」とも呼びます。
電力の倍率は、たとえば下表@〜Bの灰色部で示すように、1Wが10000Wに増加すれば「電力10000倍」です。当然、倍率は次のように計算できます。
つまり、
ところが、「10000倍」とゼロを沢山書くのは面倒ですから、下表C列のように、「ゼロの数」だけを書くことにして、「電力10000倍」を「4[B]」(ベル)と呼びます。電力100倍なら2[B]、電力1000000000倍でも9[B]と、短く書くことができます。
@ |
A |
B |
C |
D |
入力 電力 |
出力 電力 |
電力の 倍率 |
倍率の0の数 [B]ベル |
0の数の10倍 [dB]デシベル |
1W |
0.0001W |
0.0001倍 |
-4 [B] |
-40 [dB] |
0.001W |
0.001倍 |
-3 [B] |
-30 [dB] |
|
0.01W |
0.01倍 |
-2 [B] |
-20 [dB] |
|
0.1W |
0.1倍 |
-1 [B] |
-10 [dB] |
|
1W |
1倍 |
0 [B] |
0 [dB] |
|
10W |
10倍 |
1 [B] |
10 [dB] |
|
100W |
100倍 |
2 [B] |
20 [dB] |
|
1000W |
1000倍 |
3 [B] |
30 [dB] |
|
10000W |
10000倍 |
4 [B] |
40 [dB] |
しかし、あまり大きな倍率になると、ゼロの数を数える事さえ面倒です。このため「ゼロの数を数える関数」log10を使います。たとえば、Excelでセルに=LOG(1000000000,10)と入力すると、「9」と表示されます。式で書くと、
log10(1000000000)=9
です。ですから、電力の倍率のゼロの数[B](ベルの値)は、ゼロを数える関数log10を使って、
log10(電力10000倍)=4[B]
エクセルでは=LOG(10000,10)と入力すれば、4と表示される。
つまり、ベルの値=log10(電力の倍率)[B]
のようにして計算できます。
ところで、1[B]増えるだけで、10倍も大きくなるのは、ちょっと大胆すぎて使い難いです。たとえば、「1[B]大盛りにしてくれ」と頼むと、10人前の大盛りが出てくる」訳です。
そこで、上表D列のように、10[dB]で1[B]となる単位、[dB](デシベル)を使います。10倍にしただけですから、電力10000倍の場合は次のように計算できます。
10×log10(電力10000倍)=40dB
エクセルでは=10*LOG(10000,10)と入力すれば40と表示される。
つまり、デシベルの値=10×log10(電力の倍率)[dB]
B(ベル)の代わりにdB(デシベル)を使うのは、1.2[L](リットル)と呼ぶ代わりに、値を10倍して、12[dL](デシリットル)と呼ぶのと同じです。
1[B]は10倍ですが、1[dB]は約1.26倍です。1[dB]の大盛りは、26%増量です。3[dB]なら2倍盛り、これなら、使い勝手が良さそうです。
1mWを増幅器に入力したところ、10Wが出力された、利得は何dBか
エクセルで=10*LOG(10/1E-3,10)と入力して、利得は40dB
(1E-3は1mの意味、1E3なら1kの意味)
さて、100倍なら「ゼロ2つ」と数えられますが、例えば30倍はどうでしょう。30倍は、10倍(1個)よりは大きいし、100倍(2個)よりは小さいと思われます。幸い、log10はこのような場合にも答を出してくれます。
エクセルでは=LOG(30,10)と入力
つまり、30倍のゼロの個数は1.5個程度で、確かに1より大きく2より小さいです。
1.5mWを増幅器に入力したところ、100Wが出力された、利得は何dBか
エクセルで=10*LOG(100/1.5E-3,10)と入力して、利得は約48.2dB
下図の回路で、電圧を10倍、100倍、と大きくすると、電流も10倍、100倍と増加します。その結果、電力は、100倍、10000倍と電圧以上の勢いで大きくなります。
つまり、下表着色部で示すように、電圧の倍率のゼロの数が、1、2、3…と増加すると、電力の倍率のゼロの数(ベルの値)は、2、4、6…と2倍のペースで大きくなります。
電圧 |
電力 |
|||
倍率 |
倍率の0の数 |
倍率 |
倍率の0の数 [B]ベル |
0の数の10倍 [dB]デシベル |
0.1倍 |
-1 |
0.01倍 |
-2[B] |
-20[dB] |
1倍 |
0 |
1倍 |
0[B] |
0[dB] |
10倍 |
1 |
100倍 |
2[B] |
20[dB] |
100倍 |
2 |
10000倍 |
4[B] |
40[dB] |
1000倍 |
3 |
1000000倍 |
6[B] |
60[dB] |
電圧の倍率が1000倍のとき、電力の倍率は1000000倍になります。このため電圧の倍率100倍からベルの値を求めるには、ゼロの数を2倍して、
2×log10(電圧1000倍)=2×3=6[B]
Excelでは=2*log(1000,10)と入力すれば6[B]と表示される。
つまり、ベルの値=2×log10(電圧の倍率)[B]
と計算します。
電圧の倍率から「dBの値」を求める場合は、「Bの値」を10倍すれば良いので、
10×2×log10(電圧1000倍)=10×2×3=60[dB]
Excelでは=20*log(1000/1,10)と入力すれば60[dB]と表示される。
つまり、デシベルの値=20×log10(電圧の倍率)[dB]
と計算します。
このように、電圧からdBを求めるときに出てくる20は、ベルにするための10と、電圧比を電力比にするための2が合わさったものです。
1.5mVを増幅器に入力したところ、100Vが出力された、利得は何dBか
エクセルで=20*LOG(100/1.5E-3,10)と入力して、利得は約96.5dB
たとえば電力10000倍のゼロの個数(ベルの値)4は、次のように計算できました。
log10(10000倍)=ゼロ4個
つまり、ベルの値=log10(電力の倍率)
逆に、ゼロの個数(つまり、4[B])から、電力10000倍は、
104=10000倍
エクセルでは、=10^4あるいは=POWER(10,4)と入力すれば10000倍と表示される。
つまり、電力の倍率=10ベルの値
で求めることができます。
さて、40[dB]は4[B]でしたから、電力の倍率を40[dB]から求めるときは、デシベルの値を10で割って、ゼロの個数を求めて、
1040÷10=10000倍
エクセルでは、=10^(40/10)あるいは=POWER(10,40/10)と入力すれば10000倍と表示される。
つまり、電力の倍率 =10デシベルの値÷10
と計算できます。
26dBの利得のある増幅器に22mWの信号を入力した、出力は何Wとなるか
電力の倍率を26dBから求めて、22mWに掛ければよい、つまりエクセルで=22E-3*10^(26/10)と入力して、約8.76W
40[dB](4[B])なら電力は10000倍、電圧は100倍でした。つまり、電力のゼロの数を半分に減らすと電圧の倍率になりました。そのため、電力が40[dB]のとき電圧の倍率は、
1040÷10÷2=電圧100倍
エクセルでは、=10^(40/20)あるいは=POWER(10,40/20)と入力すれば100倍と表示される。
つまり、電圧の倍率=10デシベルの値÷20
と計算できます。
26dBの利得のある増幅器に22mVの信号を入力した、出力は何Vとなるか
26dBの電圧の倍率は、エクセルで=10^(26/20)倍、22mVを入力したときの出力電圧は、エクセルで=22E-3*10^(26/20)と入力して、約439mV
下表のデシベル値は、切りの良い倍率になるので、目安として利用できます。
デシベル |
電力 |
電圧 |
1dB |
約1.26倍 |
約1.12倍 |
3dB |
約2倍 |
約1.41倍 |
6dB |
約4倍 |
約2倍 |
7dB |
約5倍 |
約2.24倍 |
9dB |
約8倍 |
約2.51 |
10dB |
10倍 |
約3.16倍 |
10、100、1000倍のデシベルは、10、20、30と分るので、上表と組み合わせて様々な値で目安を知ることができます。
dBの足算は、倍率の掛け算になり、倍率の掛け算は、dBの足算になります。このため下表の例では、33dBの場合、30dB+3dBと考えて、30dB→1000倍、上表より3dB→2倍ですから、1000倍×3倍で2000倍と概算できます。
デシベルの世界 たし算 |
33dB |
||
30dB |
+ |
3dB |
|
倍率の世界 掛け算 |
1000倍 |
× |
2倍 |
2000倍 |
逆に、電力2000倍の場合、2倍×1000倍と考えて、2倍→3dB、1000倍→30dBですから、3dBと30dBを加えて、33dBと概算できます。
次の表の に適切な概算値を記入して、表を完成して下さい。
デシベル |
電力 |
33dB |
2000倍 |
29dB |
倍 |
16dB |
倍 |
dB |
50倍 |
dB |
8000倍 |
デシベル |
電力 |
考え方 |
33dB |
2000倍 |
30+3dB⇔1000倍×2倍 |
29dB |
800倍 |
20+9dB⇔100倍×8倍 |
16dB |
40倍 |
10+6dB⇔10倍×4倍 |
17dB |
50倍 |
10+7dB⇔10倍×5倍 |
39dB |
8000倍 |
30+9dB⇔1000倍×8倍 |
1. 交流回路
家庭のコンセントに電球を接続すると、下図に示すような、向きや大きさが(時と共に)単純な変化を繰り返す(ブルブル震えるような)電流が流れます。このような電流や電圧を「交流」と呼び、このような電流が流れる回路を「交流回路」と呼びます。
下図に直流(点線)と交流(実線)を示します。一定で変化しない電圧や電流が「直流」、単純な変化を繰り返す電圧や電流が「交流」です。
直流と交流
また、1秒間にやって来た波の数を「周波数」と呼び、単位はHz(ヘルツ)です。上の図では1秒間に3個の波が来ているので、周波数は3Hzです。
直流の1V(1VDC)でも、交流の1V(1VAC)でも、同じ1Vですから、電球が同じ明るさで光る筈です。
下図のように、交流の下側を、上側に折り返して、直流と強さを比べてみましょう。下図に示す、最大電圧が1Vの交流は、図に色を塗った部分が直流より弱く、その結果、電球は直流より暗く光ります。ですから、このような最大電圧1Vの交流は、1Vの交流とは呼べません。
そこで、2つの電球が同じ明るさで光るように交流の強さを調節すると、下図のようになりました。
上図「あ」の部分で、交流が直流より強く、交流が直流より弱い「い」の部分を打ち消して、直流と交流の強さが同じになります。
このとき、交流の最大電圧は1.41V(つまりV)です。このような交流を「1Vの交流」と呼びます。
つまり、交流の電圧を、倍(1.41倍)すると、交流の最大電圧を求めることができ、逆に、交流の最大電圧を、(1.41)で割ると、交流の電圧を求めることができます。
交流の電圧には下表のように、複数の呼び方や書き方があります。
呼び方の 色々 |
交流電圧 AC電圧 実効値電圧 |
書き方の 色々 |
AC10V 10VAC 10VRMS |
下図は10Vの交流の例です。最大電圧は14.1V、最小電圧は−14.1Vです。
谷底(下側の山頂)から、山頂までの電圧は、(オシロ等で)簡単に測定できるので、好んで使用され、ピーク・トゥ・ピーク(山頂から山頂までの)電圧(P−P電圧)と呼ばれます。上図に示す10VACの交流のピーク・トゥ・ピーク電圧は、28.2VP−Pです。交流の電圧に、を掛けると(2.82を掛けると)ピーク・トゥ・ピーク電圧を求めることができます。
電流の場合も電圧と同様に、1Aと同じ強さの交流電流の最大値は、1.41A(つまりA)、このときのP−P電流は2.82A(つまり 2 × A)です。
下図は2Vの交流です。この交流の、周波数、最大電圧、最小電圧、P−P電圧を答えてください。
周波数 Hz、最大電圧 V、最小電圧 V、P−P電圧 VP−P
周波数 6Hz、最大電圧 2.82V、最小電圧−2.82V、P−P電圧 5.64VP−P
下図は11.3VP−Pの交流です。この交流の、周波数、最大電圧、最小電圧、交流の電圧を答えてください。
周波数 Hz、最大電圧 V、最小電圧 V、交流の電圧 VAC
周波数 3Hz、最大電圧 5.65V、最小電圧−5.65V、交流の電圧 4VVAC
交流電圧には、最大電圧や交流電圧、P−P(ピーピー)電圧という複数の示し方があります。電流も同様です。電圧や電流を計算する場合は、同じ示し方に統一して計算します。例えば、
という感じです。ですから、
←誤り
は間違いです。
下図の回路に流れるP−P電流と、AC電流を求めてください。
P−P電流 、AC電流 x
P−P電流 14.1AP−P、AC電流 10AACx
P−P電流は、(同じ仲間の)P−P電圧から直接求めることができます。AC電流はP−P電流を√2で割って求めます。
抵抗には、直流を加えても、交流を加えても、同じ大きさの電流が流れます。しかし、下図のコンデンサは、直流では電流は流れませんが、交流なら電流が流れます。このため、交流の「流れ難さ」や「流れ易さ」は、交流を使って測定し、直流で測定したもの(「抵抗」や「コンダクタンス」)と区別する必要があります。
そこで、下表に示すとおり、交流で測定した「流れ難さ」や「流れ易さ」を「インピーダンス」や「アドミタンス」と呼びます。
信号 |
直流 |
交流 |
||
分類 |
流れ難さ |
流れ易さ |
流れ難さ |
流れ易さ |
名前 |
抵抗 |
コンダクタンス |
インピーダンス |
アドミタンス |
単位 |
Ω(オーム) |
S(ジーメンス) |
Ω(オーム) |
S(ジーメンス) |
例 |
4Ω |
0.25S |
4Ω |
0.25S |
求め方 |
|
|
|
|
抵抗の逆数がコンダクタンスになったように、インピーダンスの逆数がアドミタンスになります。
下表の空欄部をに適切な内容を記入し、直流・交流の何れかと、流れ易さ・流れ難さの何れかを選んで下さい。
|
抵抗 |
コンダクタンス |
アドミタンス |
インピーダンス |
単位 |
|
|
|
|
単位の呼び方 |
|
|
|
|
求め方 |
|
|
|
|
交直の別 |
直流・交流 |
直流・交流 |
直流・交流 |
直流・交流 |
流れの難易 |
易さ・難さ |
易さ・難さ |
易さ・難さ |
易さ・難さ |
|
抵抗 |
アドミタンス |
インピーダンス |
コンダクタンス |
単位 |
Ω |
S |
Ω |
S |
単位の呼び方 |
オーム |
ジーメンス |
オーム |
ジーメンス |
求め方 |
|
|
|
|
交直の別 |
直流・交流 |
直流・交流 |
直流・交流 |
直流・交流 |
流れの難易 |
易さ・難さ |
易さ・難さ |
易さ・難さ |
易さ・難さ |
オームの法則は交流でもそのまま使えます。回路に加わる電圧を、回路に流れた電流で割れば、インピーダンスの大きさ(しばらくは、単に「インピーダンス」と呼びます)を求めることができます。
(交流の)インピーダンスには(直流の)抵抗とは違う、不思議な性質もありますが、この点は後で説明するとして、先ずは、直流と同じように考えることができる「インピーダンスの大きさ」について説明します。
下図の回路の、コンデンサとコイルのインピーダンスを求めてください。
コンデンサ Ω コイル Ω
コンデンサ 20Ω コイル 5 Ω
下図の回路の点線で囲んだ部分のインピーダンスとアドミタンスを求めてください。
インピーダンス Ω、アドミタンス S
インピーダンス 20 Ω、アドミタンス0.05S
回路の内部が複雑なものであっても、加えた電圧と流れた電流からインピーダンスを求めることができます。
部品店に行って「10Ωのコンデンサを下さい」と言っても、「それは抵抗でしょう」と笑われるだけです。コンデンサをインピーダンスを(10Ω等と)を指定して購入できないのは、同じ大きさのコンデンサでも周波数が変わるとインピーダンスが変わってしまうからです。コイルも同様です。
ですから、コイル(L)とコンデンサ(C)のインピーダンス(流れ難さ)やアドミタンス(流れ易さ)は、先に周波数を決めてから、コイルやコンデンサの大きさを元に計算する必要があります。
計算の方法を下表に示します。表中のLは、コイルの大きさ[H](ヘンリー)、Cはコンデンサの大きさ[F](ファラド)、fは使用する周波数[Hz]です。
周波数とインピーダンス
|
インピーダンス 交流の通し難さ |
アドミタンス 交流の通し難さ |
コンデンサC |
=1/2/PI()/F1/C1 |
=2*PI()*F1*C1 |
コイルL |
=2*PI()*F1*L1 |
=1/2/PI()/F1/L1 |
例えば、周波数f=318Hz、コイルの大きさL=10mH(0.01H)の場合、コイルのインピーダンス(交流の流れ難さ)ZLは
ZL=2πfL=2×3.14×318×0.01=20[Ω]
=2*PI()*318*10E-3
と計算します。
コイルのインピーダンスと、回路に流れる交流電流を求めてください。ただし交流の周波数は6.37Hzとします。
インピーダンス Ω、回路に流れる交流電流 A
インピーダンス 4 Ω、回路に流れる交流電流 10A
交流回路の知識(交流理論)なんて知らなくても、色々な電子回路が作れます。特にオペアンプを使った低周波の回路やマイコンを中心にした回路では、交流理論の知識はあまり必要ではありません。そのような場合は本章を読み飛ばして、一気に「アナログ回路入門」に進めば良いでしょう。
しかし、例えば無接点給電回路などのコイルや共振を利用する工作や、フィルタ、高周波を扱う工作では交流理論の知識が必要になります。また、マイコンを利用した制御装置では、交流理論を発展させた制御理論の知識が役立ちます。つまり、交流理論が分っていると「ちょっと輝く電子工作」が作れるようになります。
ところが、学校の教科書の交流理論は「正確すぎて分り難い」ため、(交流理論の理解は諦めて)交流理論が必要ない範囲で電子工作を楽しんでおられる方も多いと思います。
これに対して、学校の教科書に懲りて交流理論を諦めた方にも理解頂けるように工夫しています。「不正確でも分かり易い」説明を徹底し、身近な「たとえ話」を多用して、交流の振る舞いが感じられるように説明しています。
本書の不正確な説明であっても、それで一旦理解してしまえば勝ちで、大学の教科書だって「ああ、あの事か」「こんな事を、よくもまあ、こんなに難しく書いたもんだなぁ…」とスラスラ読めるようになります。
さてここまでは、インピーダンスを使って、交流回路でも、直流回路と同様にオーム則が使える事を説明して来ました。
しかし、交流独特の不思議な現象も発生します。例えば、下図の回路では、5Ωのコイルと、4Ωのコンデンサを直列に繋いだところ、全体として1Ωとなり、9Vの交流を加えたら、9Aもの電流が流れました。
5Ωも、4Ωも、「通し難さ」なのに、2つ直列にすると、逆に「流れ易くなる」という不思議な現象が起きています。
ここで「直列回路のインピーダンスは だから…」と理由を考えずに公式を持ち出しては先々応用が利かなくなってしまいます。それでは「公式を覚えているだけ」で、インピーダンスの正体を感じた事にはならないからです。(電子工作に応用して、面白い回路を発想するには「正体を感じる」事が大切です)
これまで考えてきた「インピーダンス(の大きさ)」だけではこの問題は解決できません。これから説明する交流理論は、このような不思議な現象を分り易く解決するための分野です。
まず、交流理論の基本の考え方を、直流理論と比較して説明します。直流理論では下図左側の通り、例えば「4Ω」のように、1つの値で「流れ難さ」を表します。しかし、交流理論では同じ「流れ難さ」を、下図右側の通り「右に4Ωで、上に3Ω」のように、2つの値で表します。
上図を見れば分るように、直流では「左右」(直線)しか無かった世界が、交流では「上下と左右」(平面)になります。ちょっとややこしくなりそうですが心配はありません。交流理論の世界は(平らな面の上の話なので)、図に書いて、目で見て確認できますから、簡単に理解できます。
交流理論の得意分野 交流理論は予め周波数が決まっている交流が得意です。たとえば放送局の電波や、コンセントに届けられる電力は周波数が決められていて、大きく変わることがありませんから、交流理論が得意な分野です。さらに、オーディオ信号のように複雑な信号であっても、沢山の交流が合わさったものと考えて、交流理論を応用して扱うことができます。逆に交流の強さや周波数が素早く変動するような回路は、交流理論には苦手な分野です。 |
抵抗、コイル、コンデンサのインピーダンスは、何れも単位が「Ω」なので、一見同じ物に見えます。しかし部品の種類が違いますから、それぞれ別の性質がある筈です。そこで、方向で区別して、間違えないように工夫します。
上図のとおり、例えば、抵抗は右向きに4Ω、コイルは上向きに4Ω、コンデンサは下向きに4Ωと方向付きのインピーダンスで表現します。
抵抗の2Ω、コイルの3Ω、コンデンサの1Ωのインピーダンスを、下図のグラフに書き込んで下さい。また、「上5Ω」のように、方向を示してインピーダンスを答えてください。
抵抗 Ω、コイル Ω、コンデンサ Ω
抵抗 右2 Ω、コイル 上3 Ω、コンデンサ 下1 Ω
下図左側のように、例えば3Ωと4Ωの抵抗を直列に繋ぐと、7Ωになりました。ところが、(既に述べた交流の不思議な現象によって)下図右側のように、インピーダンス3Ωのコイルと4Ωの抵抗を繋いでも、7Ωにはならず、5Ωになってしまいます。
7Ωという誤った答が出たのは「方向を考えずに」インピーダンスを合計したからです。つまり、下図のようにインピーダンスの方向を考えて合計すると、正しく5Ωを求めることができます。
つまり、図の中心から出発して、上に3Ω(コイル)進み、さらに、右に4Ω(抵抗)進めば、最初の出発点(図の中心)から5Ω離れた場所(右4と上3)に到着する、と考えます。
下図の2つの直列回路を、下図右側のグラフ上で方向を考慮して合計し、直列合成インピーダンスを方向付きで求めてください。
Aの回路:方向付きインピーダンス と Ω、インピーダンスの大きさ Ω
Bの回路:方向付きインピーダンス と Ω、インピーダンスの大きさ Ω
Aの回路:方向付きインピーダンス 右3と上4 Ω、インピーダンスの大きさ 5 Ω
Bの回路:方向付きインピーダンス 右3と下4 Ω、インピーダンスの大きさ 5 Ω
「複素インピーダンス」は交流理論に良く出てくる「実は簡単な癖に、名前だけ難しい奴」です。たとえば、「子犬」に「鬼畜魔王」と名前を付けると、名前だけ聞いた人は「恐ろしい奴に違いない」と誤解するでしょう。
交流理論が難しく感じられるのは、この「鬼畜魔王」的なネーミングの奴らが跳梁跋扈している上に、こともあろうに「鬼畜魔王」の名に相応しい、魔界チックなオドロオドロしい説明が展開されるからです。
例えば、(Wikipediaより)
正確で短い素晴らしい記事ですが…本書の読者には「魔界チックなオドロオドロシイ説明」でしょう。いきなりこれを読んだら「フェーザは恐ろしい奴に違いない」と思うのは確実です。正弦信号、sin、オイラーの公式、複素数、虚数単位、絶対値、偏角、虚部、と鬼畜魔王の仲間達も跳梁跋扈しています。本書の「交流回路」を読み終えれば、上の説明が何を言いたいのか自然と分ります。 |
そこで本書では、名前はそのまま使いますが、説明は「子犬のお話」として、日常チックに説明します。(名前をそのまま使うのは、他人と回路の話をした時に、通じる方が楽しいからです)
今後も多数出没する「難しそうな名前の奴」は全て「名前だけ難しい奴」です。ですから「また鬼畜魔王が出たか…この子犬め!」と思ってナメて掛かってください。
さて、複素インピーダンスは、下表のとおり、「方向付きインピーダンス」の向きを「上」「下」と漢字で書く代わりに、「+j」「−j」と記号で書いた物です。
方向付きインピーダンス表し方 |
|||
素子 |
抵抗 |
コイル |
コンデンサ |
漢字で書く |
右4Ω |
上4Ω |
下4Ω |
記号で書く (複素インピーダンス) |
+4Ω |
+j4Ω |
−j4Ω |
以上です。
下表の複素インピーダンスを持つ素子が、それぞれ、コイル(L)、コンデンサ(C)、抵抗(R)のどれであるかを選択し、また、インピーダンスの方向を選んで下さい。
複素インピーダンス |
素子の種類 |
インピーダンスの方向 |
4.7Ω |
L・C・R |
上・下・左・右 |
−j6.8Ω |
L・C・R |
上・下・左・右 |
+j3.3Ω |
L・C・R |
上・下・左・右 |
複素インピーダンス |
素子の種類 |
インピーダンスの方向 |
4.7Ω |
L・C・R |
上・下・左・右 |
−j6.8Ω |
L・C・R |
上・下・左・右 |
+j3.3Ω |
L・C・R |
上・下・左・右 |
直流の場合と同様に、交流の流れ易さ(アドミタンス)は、交流の流れ難さ(インピーダンス)の逆数です。
例えば下表に示すとおり、上Ωのコイルのアドミタンスは下4Sとなります。また、下Ωのコンデンサのアドミタンスは上4Sとなります。
このように、インピーダンスは「コイルが上向き、コンデンサが下向き」でしたが、アドミタンスはその逆となり「コイルが下向き、コンデンサが上向き」となります。これは「逆数にすると上下が入れ代わる」性質があるからです。
名前 |
インピーダンス |
|
アドミタンス |
イメージ |
交流の流れ難さ |
|
交流の流れ易さ |
コイル |
上Ω または jΩ |
←逆数→ |
下4S または ーj4S |
コンデンサ |
下Ω または ーjΩ |
←逆数→ |
上4Sまたは j4S |
それぞれ4Sの、コイル、抵抗、コンデンサのアドミタンス(通し易さ)を下図に示します。
下表のアドミタンスを持つ素子が、それぞれ、コイル(L)、コンデンサ(C)、抵抗(R)のどれであるかを選択し、また、アドミタンスの方向を選んで下さい。
複素アドミタンス |
素子の種類 |
アドミタンスの方向 |
4.7S |
L・C・R |
上・下・左・右 |
−j6.8S |
L・C・R |
上・下・左・右 |
+j3.3S |
L・C・R |
上・下・左・右 |
複素アドミタンス |
素子の種類 |
アドミタンス方向 |
4.7S |
L・C・R |
上・下・左・右 |
−j6.8S |
L・C・R |
上・下・左・右 |
+j3.3S |
L・C・R |
上・下・左・右 |
下表に記載の各素子の、複素インピーダンスと複素アドミタンスを記入し、方向を選んでください。
素子 |
10Ωの抵抗 |
10Ωのコイル |
0.1Ωのコンデンサ |
複素インピーダンス |
Ω |
Ω |
Ω |
複素インピーダンスの方向 |
上・下・左・右 |
上・下・左・右 |
上・下・左・右 |
複素アドミタンス |
S |
S |
S |
複素アドミタンスの方向 |
上・下・左・右 |
上・下・左・右 |
上・下・左・右 |
素子 |
10Ωの抵抗 |
10Ωのコイル |
0.1Ωのコンデンサ |
複素インピーダンス |
10Ω |
+j10Ω |
−j0.1Ω |
複素インピーダンスの方向 |
上・下・左・右 |
上・下・左・右 |
上・下・左・右 |
複素アドミタンス |
0.1S |
−j0.1S |
+j10S |
複素アドミタンスの方向 |
上・下・左・右 |
上・下・左・右 |
上・下・左・右 |
コイルやコンデンサの複素インピーダンスは、次表のように計算できます。インピーダンス(の大きさ)の計算の前に、jや−jを付けて、方向を表しただけです。
|
複素インピーダンス |
複素アドミタンス |
コイルL |
=COMPLEX(0,2*PI()*F1*L1) |
=COMPLEX(0,-1/2/PI()/F1/L1) |
コンデンサC |
=COMPLEX(0,-1/2/PI()/F1/C1) |
=COMPLEX(0,2*PI()*F1*C1) |
例えば、f=318Hz、L=10mH(0.01H)の場合、コイルのインピーダンスZLは
ZL=j2πfL=j×3.14×318×0.01=j20[Ω](上向きの20Ω)
1mHのコイルと、100μFのコンデンサの複素インピーダンスを求めて、下図に書き込んでください。ただし、周波数は796Hzとします。
コンデンサの複素インピーダンス Ω、コイルの複素インピーダンス Ω
コンデンサの複素インピーダンス −j2 Ω、コイルの複素インピーダンス +j5 Ω
下図のように、コイルL、コンデンサC、抵抗Rを直列に繋いだ回路を「LCR直列回路」と呼びます。(接続の順序が変わっても、全体の作用は同じです)この例では、5Ωのコイル、4Ωの抵抗、2Ωのコンデンサが接続されています。
さて、回路全体のインピーダンスを求めるために、抵抗と同様にインピーダンスを合計すると、5+4+2=11Ωとなりますが、これは誤りで、実際には5Ωとなります。
このように、単純にインピーダンス(の大きさ)を合計しても正しい結果が得られないのは「インピーダンスの方向」を考えていなかったからでした。インピーダンスの方向は、コイルは上、抵抗は右、コンデンサは下でしたから、下図のように、方向を考えて地図の上で3つのインピーダンスを加えます。
最初にコイルは上に5Ωなので、中心から上に5つ進みます。次に、抵抗は右に4Ωなので、右に4つ進みます、最後に、コンデンサは下に2Ωなので、下に2つ進みます。この結果、上図に斜めの矢印で示すインピーダンス(右に4、上に3)がLCR直列回路の複素インピーダンスになります。
その結果、LCR直列回路のインピーダンスの大きさ(出発地点からどれだけ離れたか)は、上図の斜め矢印の長さ(5Ω)となります。
図を描かずに考えるときは、上下を考慮して…
コイルと抵抗とコンデンサ
=上5Ωと右4Ωと下2Ω
=右4と(上5と下2) 上下が打ち消しあって…
=右4と上3Ω
あるいは「上」「下」の変わりに「+j」「−j」を使って(複素インピーダンスとして)計算することもできます。
コイル+抵抗+コンデンサ
=+j5Ω+4Ω−j2Ω
=4+(+j5−j2) +jとーjが打ち消しあって…
=4+j3Ω
4と3が求まれば、次のように、ピタゴラスの定理で斜め部分の長さ(インピーダンスの大きさ)を求めることができます。
Excelで=SQRT(4^2+3^2)と入力して5Ω
複素インピーダンスを使っているときは、次のように「絶対値」という計算(ExcelならIMABS関数)で簡単に大きさを求めることができます。
※Excelにちょっとした設定が必要です「Excelで複素数を計算する」をご覧下さい
インピーダンスの大きさ
=複素インピーダンスの絶対値
=|4+j3|
Excelで=IMABS("4+3i")と入力して、
=5Ω
下図のLCR直列回路の合成インピーダンスを図を描いて求め、複素インピーダンスと、インピーダンスの大きさを答えてください。
複素インピーダンス Ω、インピーダンスの大きさ Ω
複素インピーダンス 3+j4 Ω、インピーダンスの大きさ 5 Ω
下図のように、コイルL、コンデンサC、抵抗Rを並列に繋いだ回路を「LCR並列回路」と呼びます。(接続の位置が変わっても、全体の作用は同じです)この例では、5Sのコイル、4Sの抵抗、2Sのコンデンサが接続されています。(並列なので「通し易さ」で考えています)
さて、回路全体のアドミタンス(交流の通りやすさ)を求めるために、抵抗と同様にアドミタンスを合計すると、5+4+2=11Sとなりますが、これは誤りで、実際には5Sとなります。
このように、単純にアドミタンス(の大きさ)を合計しても正しい結果が得られないのは「アドミタンスの方向」を考えていなかったからでした。アドミタンスの方向は、コイルは下、抵抗は右、コンデンサは上でしたから、下図のように、方向を考えて地図の上で3つのインピーダンスを加えます。
最初にコイルは下に5Sなので、中心から下に5つ進みます。次に、抵抗は右に4Ωなので、右に4つ進みます、最後に、コンデンサは上に2Sなので、上に2つ進みます。この結果、上図に斜めの矢印で示すアドミタンス(右に4、下に3)がLCR並列回路の複素アドミタンスになります。
その結果、LCR直列回路のアドミタンスの大きさ(出発地点からどれだけ離れたか)は、上図の斜め矢印の長さ(5S)となります。
図を描かずに考えるときは、上下を考慮して…
下5Sと右4Sと上2S
=右4と下3S
あるいは「上」「下」の変わりに「+j」「−j」を使って(複素アドミタンスとして)計算することもできます。
−j5S+4S+j2S
=4−j3S
4と3が求まれば、次のように、ピタゴラスの定理で斜め部分の長さ(インピーダンスの大きさ)を求めることができます。
Excelで=SQRT(4*4+3*3)と入力して5S
複素アドミタンスを使っているときは、次のように「絶対値」という計算(ExcelならIMABS関数)で簡単に大きさを求めることができます。
※Excelにちょっとした設定が必要です「Excelで複素数を計算する」をご覧下さい
|4−j3|
=IMABS("4-3i)
=5S
素子の値がアドミタンス[S]ではなく、インピーダンス[Ω]で分っているときは、まず逆数にしてアドミタンスに変換し、その後加えて並列接続した値を求めます。この答はアドミタンスで出てきますから、答をインピーダンスで出すときは、再度逆数にします。
つまり、並列合成複素インピーダンスの計算は、並列合成抵抗と同じで、
=IMDIV(1,IMSUM(IMDIV(1,Z1),IMDIV(1,Z2),(MDIV(1,Z3)))
と計算します。
トランスは、一つの鉄心(コア)に2つ(以上)のコイルを巻いた部品で、下図上側のように、向かい合ったコイルの図記号で示します。図記号の中央の縦棒は鉄心を表しています。
このように、図記号がコイルと似ており、構造もコイルと同じですが(導線を巻き付けた部品ですが)、トランスの働きはコイルとはまるで異なり、理想的なトランスにはコイル成分(インダクタンス)がありません。
トランスはインピーダンスの虫眼鏡です。例えば上図のトランスの2次側に2Ωの抵抗を接続すれば1次側からは、まるで18Ωの抵抗が接続されているように見えます。ですから、1次側に18VACの電圧を加えると、1AACの電流が流れます。このとき2次側の2Ωの抵抗には、6VACの電圧が加わり、3AACの電流が流れています。
下図はトランスの電圧や電流を比較した図です。巻数が3:1なら、電圧も3:1となります。逆に電流は1:3となります。その結果、二次側に接続された2Ωの抵抗は、1次側からは(18VACで1AACが流れるので)18Ωに、つまり、9倍(巻数比2=32=9倍)のインピーダンスに見えます。
下図は、1次側200回で2次側100回のトランスを使用した回路です。1次側には2Ωの抵抗を通じて10VACの電圧を接続し、2次側に2Ωの負荷を接続しています。
上図のトランスの1次側と2次側に流れる電流を、下表に記入しながら求めてください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
巻数比は、 |
: |
A |
インピーダンス比は、 (巻数比の二乗だから、) |
: |
B |
2次側に接続された負荷の2Ωは、1次側からは何Ωに見えますか、 |
Ω |
C |
1次側のインピーダンスの合計は、 |
Ω |
D |
1次側の電流は、 (1次側の電圧は10VACだから、) |
AAC |
E |
電流比は、 |
: |
F |
2次側の電流は、 |
AAC |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
巻数比は、 |
2:1 |
A |
インピーダンス比は、 (巻数比の二乗だから、) |
4:1 |
B |
2次側に接続された負荷の2Ωは、1次側からは何Ωに見えますか、 |
8Ω |
C |
1次側のインピーダンスの合計は、 |
10Ω |
D |
1次側の電流は、 (1次側の電圧は10VACだから、) |
1AAC |
E |
電流比は、 |
1:2 |
F |
2次側の電流は、 |
2AAC |
下図(a)に示すとおり、理想的なトランスでは、2次側に抵抗を接続すれば、1次側からも抵抗に見えます。しかし、下図(b)のように、1次側巻線で発生した磁気(磁束)が全て2次側巻線の中を通らない場合は、1次側から見るとコイルの成分(インダクタンス)が生じます。
なぜなら、上図(c)のように、(1次側巻線で発生し)2次側巻線を通った磁束はトランスとして働きますが、通らなかった磁束はコイルとして働くからです。
磁束が2次側の巻線に入らずに、漏れた分がコイルの成分(インダクタンス)を発生させたので、上図(c)のコイル成分を「漏れインダクタンス」あるいは「リーケージインダクタンス」と呼びます。
無接点給電の1次側と2次側のように、磁束の大部分が2次巻線を通らない場合は、極めて大きな漏れインダクタンスが生じます。その結果、下図(a)に示すように、1次側巻線に電圧を加えても僅かな電流しか流れません。このような場合、下図(b)に示すように、リーケージインダクタンスと同等な(インピーダンスの大きさを持つ)コンデンサを直流に接続することで、リーケージインダクタンスを打ち消して、1次巻線に電流を流すことができるようになります。
ここまで、コイルやコンデンサのインピーダンスを交流理論的に(平面上で)考えて来ました。ここからは、電流や電圧を交流理論的に(平面上で)考えてみます。
さて、走っている自転車を前から見ると、下図のように、ペダルが上下運動しているように見えます。ペダルの上下運動は、交流と全く同じ、単純な変化を繰り返します。
ペダルの上下運動は交流と同じ単純な変化
ところで、同じ自転車を横から見ると、下図のように、ペダルは上下しているのではなく、実は回転している事が分ります。
単純な変化はペダルの回転から生まれる
つまり、交流の正体は回転です。(交流の振動は、ペダルの回転を前から眺めたものです。)
それでは、(交流の正体である)ペダルの回転を様々に変化させて、交流がどのように変化するか考えて見ましょう。
ここでは下図のように、ペダルは時計の3時の位置からスタートする事にします。ペダルは最初に上がり、次に下がります。その結果交流は、下図右側の波を描いて上下します。
まず、下図のように、クランク(ペダルの付いている腕)が長いと、下図のように、大きな交流が生まれます。
クランクの長さと交流の大きさ
また、下図のように、ペダルを早く回すと、周波数の高い交流が生まれます。
クランクの速さと交流の周波数
さらに、下図のように、ペダルの最初の位置が変わると、波がズレます。
ペダルを回すタイミングと交流のズレ(位相)
ペダルの最初に位置がキッチリ右向きの時を0°、上(反時計回り)にズレたらプラス(位相が進んでいる)、下(時計回り)にズレたらマイナス(位相が遅れている)と言います。上図の例では位相が60°進んでいます。「位相」とは、ここでは「ペダルの最初の角度」という意味です。
このように、「交流は、クランクの長さ(大きさ)、最初の位置(位相)、回す早さ(周波数)の3つで表す事ができます」。つまり、上図左側のペダルの絵を書いて周波数を告げれば、上図右側の波の様子を書かなくても済むわけです。とても楽になるので、この方法が愛用されています。
下図下側の交流に対応するペダルの最初の位置を、例に倣って書き込んでください。円の半径(最大電圧)は何ボルトですか。1秒にやって来る波の回数(周波数)は何ヘルツですか。
例 |
最大電圧(クランクの半径)4V 周波数(1秒にやって来る波の下図)3Hz |
最大電圧(クランクの半径) V 周波数(1秒にやって来る波の下図) Hz
最大電圧(クランクの半径) 3 V 周波数(1秒にやって来る波の下図) 2 Hz
下図の交流に対応するペダルの最初の位置を、書き込んでください。ペダルの最初の位置(位相)は真右向ききから何度ズレていますか。ズレはプラスですか、マイナスですか、それは、進んでいますか、遅れていますか。
角度のズレ(位相) 度、プラス・マイナス、進んでいる・遅れている
角度のズレ(位相) 45度、マイナス、遅れている
「フェーザ表示」も、「名前だけ難しい奴」です。フェーザ表示とは、下図左側に示すとおり(これまで何度も練習した)「クランクの最初の位置(下図左)で交流を表したもの」です。
フェーザは図に描くだけではなく、下表のように、文字を使って書くこともできます。
フェーザの書き方
大きさと角度 |
左右、上下 |
右を+、上を+j |
4.24∠45° |
右3と上3 |
+3、+j3 |
フェーザ表示は周波数を表していません。大きさとズレ(位相)だけを表しています。それなのに、交流の学問(交流理論)では良く使われます。その理由は、例えば、コンセントに供給される交流が50Hzや60Hzで一定であるように、最初から周波数が決まっている場合が多く、逆の言い方をすれば「大きさと位相だけ考えたい」場合が多いからです。
下図の交流の左側に、ペダルの最初の位置(フェーザ)を記入し、図の下に例えば4∠45°Vのように、大きさと位相を記入してください。
フェーザの大きさと位相 V
フェーザの大きさと位相 3∠90° V
下図の左側に、フェーザ表示2∠−60°Vのペダルの最初の位置を記入し、下図右側にその回転で生じる波形を記入してください。ただし、周波数は2Hzとします。
ペダルが回転する様子を、下図のように描いて来ました。
ペダルが回転する様子
ところが、この図をもっと簡単に書くことができます。なぜなら、回転する方向は左回りと決まっているので、回転方向は不要、さらに、必ず円を描いて回転するので、回転を表す円は不要、このように不要な書き込みを省略すると、下図のように書くことができます。
フェーザ
つまり、大きさと位相(最初の位置)の2つを表す矢印を一つ書けば交流を表すことができます。この矢印がフェーザの正体です。フェーザを図に描けば矢印になり、文字で書けば4∠45°等となります。
下図右側に描かれた交流をのフェーザを、下図左側に矢印で記入し、図の下に大きさと位相を記入してください。
フェーザの大きさと位相 V
フェーザの大きさと位相 3∠90°V
下図右側に描かれた交流のフェーザを、下図左側に記入し、図の下に大きさと位相記入してください。
フェーザの大きさと位相 V
フェーザの大きさと位相 4∠ー120°V
日常生活では、角度を例えば「90°」等と「度」で表します。ご存知の通り、一周が360°と決められています。ところが360と言う値には大した根拠がありません。(1年が365日なので、1日に地球が約1°公転する、という程度の理由で360に決めたようです)このように、根拠の無い値(360)が含まれていると、計算のツジツマが合わなくなります。何か、もっと根拠のはっきりした角度の表し方が必要です。
また、角度を測定するには分度器が必要です。「度」を使う限り、例えば土地を測量する場合「巻尺」と「分度器」を用意する必要があり面倒です。そこで、巻尺だけで角度を測定できる方法があれば便利です。
そこで巻尺だけで、下図左側の土地を測量してみます。ここでは、左下の角の角度を測ります。まず、下図右側のように、巻尺の一端を角の部分に固定して、半径1mの円を描きます。
次に、角度を求めたい部分の円弧の長さを巻尺で計ります。上図の場合円弧の長さが「2m」でした。こような角度が「2ラジアン」です。円弧が「1m」なら「1ラジアン」、「3m」なら「3ラジアン」です。ラジアンはradとも書きます。
このように巻尺だけで角度を測定できました。そのうえ、ラジアンは「半径1mの円弧の長さ」という明確な根拠があるので、計算でもぴったりツジツマが合います。
さて、360°をラジアンで表せば、半径1mの円の円周ですから、2πラジアンです。そこで、以下示すように、度にを掛ければラジアンを、ラジアンにを掛ければ度を求めることができます。
=D1*PI()/180
=D1*180/PI()
下図の交流は、大きさが4、位相が45°進んだ交流電圧です。4∠45°Vと書くことができました。
位相の45°は、ラジアンを使って、0.25π radと書くことができます。したがって、ラジアンを使ってフェーザ表示を、4∠0.25radVと書くこともできます。
3∠2.09radVの交流を下図にフェーザで矢印表示してください。
2.09radはだいたい120°なので。
周波数は1秒間に来た波の下図を数えたものですが、角周波数は1秒間にペダルの回転した角度を(ラジアンで)測ったものです。
まず、下図の交流で、1秒間にペダルが何回転したか数えてください。
2回転しています。1秒間にペダルが2回転した結果、波が2つやって来たことが分ります。つまり、周波数の正体は1秒間のペダルの回転回数です。
回転を「回数」ではなくて「角度」で表すこともできます。下表に示すとおり、2回転ですから、360°の2倍で、720°です。このため、周波数2[Hz]は、720[°/秒]と表すこともできます。さらに、角度をラジアンで示して、4π[rad/秒](12.6[rad/秒])と表すこともできます。
周波数 |
1秒の回転回数 |
1秒の回転角度(度) |
1秒の回転角度(rad) |
2Hz |
2 回転/秒 |
720°/秒 |
12.6 rad/秒 (4πrad/秒) |
特に、ラジアンで表した1秒間の回転角度(rad/秒)を使うと、計算が簡単になるので、「角周波数(ω)」と呼んで愛用されています。
さて、何となくツカミドコロの無い「角周波数(ω)」ですが、分かり易くイメージできます。つまり下図に示すとおり、角周波数(ω)とは「長さ1mのペダルが、1秒間に進んだ距離(描いた弧の長さ)」です。
例えば3[rad/sec]の場合、下図のように、1秒間に長さ1mのペダルが、3m(弧を描いて)進むような回転の速さ(から生まれる上下動の周波数)、と考えれば良い訳です。
3[rad/秒]のイメージ
計算して求める場合は、周波数[Hz]に2π(つまり、6.28)を掛けると角周波数[rad/秒]に、角周波数[rad/秒]を2πで割ると周波数[Hz]になります。
下図の交流が1秒間に回転した様子をペダルの図に書き込み、1秒間に回転した回数と、回転した角度[d]を求めてください。
回転回数 [Hz] 回転角度 [rad/秒]
回転回数 3 [Hz] 回転角度18.8[rad/秒]
下表上段の周波数に対応する角周波数を、下段に記入してください。
周波数 |
0.16[Hz] |
160[Hz] |
16[kHz] |
1.6[MHz] |
角周波数 |
[rad/sec] |
[k rad/sec] |
[k rad/sec] |
[M rad/sec] |
周波数 |
0.16[Hz] |
160[Hz] |
16[kHz] |
1.6[MHz] |
角周波数 |
1[rad/sec] =0.16/180*PI() |
1 [k rad/sec] =1000/180*PI() |
100[k rad/sec] =100E3/180*PI() |
10[M rad/sec] =10E6/180*PI() |
コイルやコンデンサのインピーダンスの大きさは、周波数をHzではなく、角周波数rad/secで表すと、下表に示すとおり、式の中にあった「2π」が無くなり、計算が簡単になります。
角周波数とインピーダンス
|
インピーダンス |
アドミタンス |
コンデンサC |
=1/O1/C1 |
=O1*C1 |
コイルL |
=O1*L1 |
=1/O1/L1 |
例えば、f=50rad/sec(318Hz)、L=10mH(0.01H)の場合、コイルのインピーダンスZLは
ZL=ωL=50×0.01=20[Ω]
=50*10E-3
と計算します。
コイルやコンデンサの複素インピーダンスも、角周波数を使うと下表のように簡単になります。
|
複素インピーダンス |
複素アドミタンス |
コイルL |
=IMAGINARY(0,O1*L1) |
(を変形) =IMDIV(1,IMAGINARY(0,O1*L1)) |
コンデンサC |
(を変形) =IMDIV(1,IMAGINARY(0,O1*C1)) |
=IMAGINARY(0,O1*C1) |
上表中の変形は、たとえばコンデンサの複素インピーダンスの場合、
のように、j/jを掛けてから、j×j=−1を使っています。コイルの複素アドミタンスも同様に変形しています。 |
ここでは電気の話を次のステップに進めるため、これまで既に使ってきた複素数を軽く復習して、Excelで計算できるようにし、どのような性質があるか確認します。もちろん、学校の「複素数」とはまるで違いますから、数学が嫌いでもご安心ください。
インピーダンスの項で使ったように、「複素数」は簡単で便利なのに、(翻訳した人が)難しい名前を付けたので、イメージが悪いです。そのうえ、(Excelでやれば一発だというのに)複素数の面倒な手計算計算を学校で散々やらされて、嫌いになった人も多いです。本書ではExcel一発でやりますから、計算の必要は殆どありません。(j×j=−1でさえ、滅多に使いませんからご安心を)
学校で習った複素数が普通に飲み込めて、sinやcosと関係していた事をうっすら覚えている、Excelで複素数を計算した覚えもある、という方は本章を読む必要はありません。
ちょっと凝った交流の回路や周波数特性の正確な計算、高周波の回路をやってみたい、と言う方には本章が必要です。逆に、直流や簡単な交流の回路しか作らない、という方には本章は必要はありません。
とはいえ、複素数と交流はうまい具合に繋がっているので、複素数を理解すると交流が良く分かるようになり、電子工作を一層楽しめるようになります。
本章は「複素数を理解する」のではなくて「複素数が使えるようになる」ことだけに注目して(つまり、実用本位に、正確さは犠牲にして)簡素に解説していますから、数学で複素数の時間がイヤだった方も苦痛無く読んで頂ける内容です。(逆に、まともに複素数を理解している方は「なめとんか!」と腹を立てると思う…だって、使えたらええやん。)
さて「複素数」は、英語では「コンプレックス・ナンバー」と呼びます。例えばおなじみの「シネマ・コンプレックス」は「映画館(シネマ)がいくつかセットになった(コンプレックス)施設」ですが、複素数はもっとシンプルで「値が2つだけセットになった数」です。たとえば、4と3をセットにすれば、複素数が出来上がりです。シネコンと違ってたった2つだけのセットですから、超シンプルです。
「コンプレックス」を「複素」と、「ナンバー」を「数」と迷訳したのですが、その結果できた「複素数」には「素数」(2、3、5、7、、、)という、複素数とは関係の無い単語が一部含まれてしまい、余計に難しく感じてしまいます。 |
さて、数字を2つセットにすると、場所を表すことができます。たとえば、下の地図のように「入り口から、右に4、上に3」と言うように、「4」と「3」という2つの数字のセットで、あなたが公園に埋めた、宝の場所を示すことができます。
秘密の地図
しかし、「右に4、上に3」と漢字を使っていては、計算するときに面倒です。そこで、(インピーダンスの所で出てきたように)次の表のように漢字をより簡単な記号に置き換えます。
漢字を記号に置き換える
|
右 ↓ + |
左 ↓ − |
上 ↓ +j |
下 ↓ −j |
つまり右左を正負の方向、上下をjの正負の方向、と決めた訳です。こうすれば、「右に4、上に3」は、「+4、+j3」と書くことができます。
あとは、2つの数「+4」と「+j3」を足して一つにまとめると、「4+j3」という複素数が完成です。こうすれば、下図のように、「4+j3」という1つの複素数で、宝の場所を示すことができます。
複素数「4+j3」は「1つの数」なのに、上図に太い斜めの矢印で示すような、宝の場所を一発で表すことができるスグレモノです。
複素数に含まれる2つの値は、それぞれに名前を付けて区別しています。たとえば「4+j3」に含まれる「4」を「実の部分」(実部)、「3」を「虚の部分」(虚部)と呼びます。つまり、jの付いている方が虚部です。
Excelは特別なオプションを購入することなく、簡単な設定を一度行なうだけで、複素数を計算することができます。
次の設定を行えば、以後は複素数が利用できます。まず、Excelを立ち上げて、メニューバーの「ツール」から「アドイン」を選択します。
「アドイン」ダイアログボックスが表示されますから、「分析ツール」チェックボックスをONにして、「OK」ボタンをクリックします。
下表の関数を使って、複素数を計算します。主にIM〜というのが複素数関連の関数です。
計算 |
関数の例 呼び方 |
動作の例 |
結果 |
複素数を入力 |
4+3i |
複素数4+j3を作る(入力する) |
4+3i |
複素数を作る |
=COMPLEX(4,3) コンプレックス |
複素数4+j3を作る |
4+3i |
足し算(+) |
=IMSUM ("4+3i","3+4i") アイエム・サム |
複素数4+j3と3+j4をたす |
7+7i |
引き算(−) |
=IMSUB ("4+3i","3+4i") アイエム・サブトラクト |
複素数4+j3から3+j4を引く |
1-1i |
掛け算(×) |
=IMPRODUCT ("4+3i","3+4i") アイエム・プロダクト |
複素数4+j3と3+j4を掛ける |
25i |
割り算(÷) |
=IMDIV ("4+3i","3+4i") アイエム・ディビジョン |
複素数4+j3を3+j4で割る |
0.96-0.28i |
実部を取り出す |
=IMREAL("4+3i") アイエム・リアル |
複素数4+j3の実部を求める |
4 |
虚部を取り出す |
=IMAGINARY("4+3i") イマジナリー |
複素数4+j3の虚部を求める |
3 |
絶対値 (大きさ) |
=IMABS("4+3i") アイエム・アブソリュート |
複素数4+j3の絶対値(大きさ)を求める |
5 |
偏角 (角度、ズレ) |
=IMARGUMENT("4+3i") アイエム・オーギュメント |
複素数4+j3の偏角(ズレ、位相)を求める (答の単位はrad) |
0.643... |
共役 |
=IMCONJUGATE("4+3i") アイエム・コンジュゲート |
共役な(虚部の符号が逆の)複素数を求める |
4-3i |
exp関数 |
=IMEXP("4+3i") エイエム・エクスポーネンシャル |
eの4+j3乗を計算する |
-54.05+7.704i |
Excelでは、複素数「j3」は、「3i」と表示されます(入力します)。これは数学の書き方(3i)の方が、電気の書き方(j3)より良く使われるからです。
また、Excelでは複素数は「文字列」としてセルに入ります。このため関数の括弧の中に直接記入する場合は、”4+3i”のように、「 ” 」(ダブルクォーテーション)で囲みます。
下図のように、B1セルに4+j3、C1セルに3+j4を入力し、それぞれの、実部、虚部、絶対値、偏角、EXP関数値、また、双方の和、差、積、除、を計算させてください。
最初の1回目だけは、ツールのアドインで分析をONにします。(2回目からは不要です)セルに次のように入力します。
結果は次のように表示されます。
下図の公園の地図や、自転車のペダルを横から見た図のような、「右左が正負で、上下がjの正負」を表す図(グラフ)を「複素平面」と呼びます。
例に倣って、下表の複素数を、下図の地図(複素平面)に書き込んで下さい。
例:4+j3 |
2+j1 |
−4+j2 |
1−j1 |
−4−j3 |
今一度、宝の地図を見てみましょう。
上図に示すとおり、右に4m、上に3m進んだ宝のありかは、複素数で4+j3と表すことができました。このとき、入り口から宝までの距離は5mです。この5mを「複素数の大きさ」や「絶対値」と呼んで、2本の縦棒で囲んで示します。たとえば、4+j3の絶対値は、次のように書きます。(インピーダンスの項でも触れました)
| 4+j3 | = 5
上の式は「右に4、上に3進んだ宝の位置は、入り口から5mの距離にある」という意味です。複素数の絶対値は「ピタゴラスの定理」を使って、次のように計算できます。
| 4 + j3 | = = 5 (複素数(4 + j3)の絶対値は、5)
=IMABS("4+3i")
また上図では、入り口から約37°の角度に宝があります。この角度を「偏角」と呼びます。例えば、4+j3の偏角は、atan(3÷4)で計算できますが、この方法は本書では必要ありません。なぜなら、Excelを使って、IMARGUMENT(”4+3i”)と複素数から一発で計算できるからです。
例(4+j3)にならって、複素数6+j8を複素平面上に示し、Excelを用いて、実部、虚部を、絶対値を求めてください。
実部: 虚部: 絶対値: 偏角: °
実部: 6 虚部: 8 絶対値: 10 偏角:53.1 °
=IMREAL("6+8i")、=IMAGINARY("6+8i")、=IMABS("6+8i")、=IMARGUMENT("6+8i")/PI()*180
※偏角はラジアンで答がでるので、180/πを掛けます。
盗掘を防ぐために宝を移動させましょう。下図に示すように、現在の場所から、右に3、下に2進んだ場所に埋め直します。右に3、下に2ですから、3−j2だけ移動させた事になります。
移動させた結果、宝は右に7、上に1の場所(7+j1)に隠されています。このように一度決めた場所から、さらに移動させた場所を求める事が、複素数の足し算です。つまり、
最初の場所 + 移動した分 = 4+j3 + 3-j2 = (4+3) + (3-2)j = 7 + j1
のように、実部と実部、虚部と虚部を加えるだけです。
1+1jと1+2jを掛けると、結果は−1+j3となります。つまり、
(1+ j 1) × (1+ j 2) = -1+ j 3
=IMPRODUCT("1+1i","1+2i")
となります。この計算を、複素平面上に書くと下図の通りです。
掛け算の元になった2つの数(1+1jと1+2j)と、掛け算の結果得られた数(−1+j3)の場所には、何の脈絡も無いように見えます。そこで、角度や大きさ(絶対値)に注目すると、特徴があります。
上図の通り、元になった2つの数の角度(偏角)を加えたものが、掛け算で得られた数の角度となり、また、元になった2つの数の大きさ(絶対値)をかけたものが、掛け算で得られた数の大きさとなっています。つまり複素数の掛け算は、角度のたし算、大きさの掛け算、です。
複素数の計算はExcelがやりますから、手計算する必要はありません。参考までにその方法は(分配の法則という奴を使って…) (a+jb)×(c+jd) =a×c+a×jd+jb×c+jb×jd =a×c−b×d + j(a×d+b×c) となります。(j×j=−1です) |
複素数の逆数は、大きさ(絶対値)と偏角(角度)で書くと分り易く、例えば次表のようになります。
|
例1 |
例2 |
||
|
元の値 |
逆数 |
元の値 |
逆数 |
複素数 |
|
|
|
|
絶対値 |
|
|
|
|
偏角 |
|
|
|
|
上図の例2で分るように、複素数の逆数では、「絶対値が逆数」になり(ならになり)、「偏角は符号が逆」(120°なら-120°)になります。
下図の複素平面上に、上表の2つの例を示します。元の数と逆数は水平線(実軸)との角度は同じですが、上下が逆になります。
インピーダンスとアドミタンスは逆数の関係でした。ですから、インピーダンスが2∠120°Ωであれば、アドミタンスは0.5∠ー120°Sとなります。
exp(エクスポーネンシャル)という関数があります。コンデンサが放電するときの電圧をグラフにするとき、Excelで、=E1*EXP(-T1/C1/R1)のように使用しました。
このexp関数は複素数でも使えます。Excelで(分析ツールアドインを有効にして)セルに「=IMEXP("3+4i")」等と入力します。(IMEXPは複素数でも使えるexp関数です)
さて、このIMEXP関数に0+2jのような「実部が0で、虚部だけがある数」を順に入力すると、下図に示すような、面白い事が起きます。
IMEXPに与える値の、虚部を少しずつ大きくして行くと、IMEXPで求めた結果は、上図に示すとおり、時計の3時の位置から、半径1の円を描いて回転して行きます。そして、与える値がj6.28(つまり、j2π)になると、ぐるりと一周して戻って来ます。
これは、交流を生み出したペダルの回転と全く同じものです。ですから、exp関数(ExcelではIMEXP)に虚の値を入れて出てくる結果は、まさに交流を表しています。時間tが経てば経つほど、ペダルは回転して行きますから、
交流 = exp ( j×時間 ) = exp( j t )
(tにjを掛けているのは、虚部だけの数を作るためです)
Excelでは=IMEXP(COMPLEX(0,時間))
上の式では、6.28秒で一周するペダルしか表せませんから、ペダルを回す速さをωとすれば、
交流 = exp ( j×回転の速さ×時間 ) = exp( jωt )
Excelでは=IMEXP(COMPLEX(0,周波数*時間))
と書くことができます。(ωが大きい程、ペダルが早く回転します)たとえば、最大電圧(ペダルの長さ)5Vで、10Hz(1秒間に10回転)の交流電圧であれば、
最大電圧5Vで10Hzの交流電圧 = 5 × exp ( j×62.8×t )[V]
Excelでは=5*IMEXP(COMPLEX(0,62.8*時間)
(数学っぽく書けば「5 exp (j 62.8 t)」あるいは「5 e j 62.8 t」です)
という簡単な計算で交流を表すことができます。sinやcos等の面倒な三角関数が出てこないので、とても楽に使えます。
IMEXP関数の結果から、sinの波を求めたいときは、IMAGINARY(IMEXP(〜))と虚部を取り出し、cosの波を求めたいときは、IMREAL(IMEXP(〜))と実部を取り出すだけです。
eの値は約2.72で、ejtはtが2πの時にきっちり一周します。eより小さい2jtでは1一周できず、3jtでは1周以上回ってしまいます。このためeはπと並んで「宇宙の秩序を表す数」と考えらています。ejtに比べれば、sin(t)やcos(t)などは「ザコ関数」と言えるでしょう。
例えば下図に示すとおり、4+j3というフェーザがあったとき、その波形を手書きで作図することができます。
もちろんとても手間が掛かります。この面倒な作図も、Excelを使えば簡単に行えます。
実は、フェーザと、基本の回転を表す「exp(jt)」を掛けるだけで、フェーザが表す波形を求めることができるのです。つまり、
フェーザ × exp(jt) = フェーザの表す交流の波の形
です。後は、tをだんだん大きくして計算してやれば、交流の波形が出てきます。Excelで次のように値や式を入力してみましょう。
A列が時間で、少しずつ大きくなっています、B列は時間にjを掛けて虚数にしたもの、C列はexp(jt)を計算して、基本の回転(半径1で、偏角(波の左右ズレ)0)を求めたもの、D列は計算したい交流のフェーザ(4+j3)、E列はフェーザと基本の回転を掛けた「フェーザの波形」です。F列とG列は虚部を取り出して、波形を求めたものです。
計算結果は下図のようになります。
グラフには、基本の回転の波形(グレー:F列)と、フェーザが示交流の波形(黒:G列)を表示しています。グレーの波形は最大値が1で0から始まる基本の回転を示していることが分りますし、黒の波形は、最大値5で、約37°位相が進んでいます。
つまり「基本の回転にフェーザを掛けるだけで、フェーザが表す回転が分る」「回転の虚部を取り出せば、波形が分る」のです。
実部ではなく、「虚部を取り出せば、波形が分る」ちょっと妙です。その理由は、自転車を前から見た状態を基本に考えたため(ペダルの上下の(虚部の)動きが波形に対応したから)です。もし、自転車を上から見た状態を基本に考えれば(ペダルの前後の(実部の)動きが波形に対応するので)「実部を取り出せば、波形が分る」ことになります。実部、虚部、どちらを選んでも、見方が違うだけで何れも正しい答です。(電気の世界では波形をsin関数で表すことが好まれ、cos関数ではあまり表さない事とも関係があります)
ここまで来れば「複素電圧」や「複素電流」も、どうせ「鬼畜魔王」の仲間だな…と分るでしょう。つまり「名前だけ難しい奴」です。
複素電圧や複素電流は、電圧や電流を「べダルの最初の位置(つまり、フェーザ)」で表したもの、です。言い方を少し変えると、フェーザで表した交流電圧が複素電圧、フェーザで表した交流電流が複素電流です。
復習しましょう。交流は下図のように、ペダルの回転で発生していました。下図の交流は、クランクの長さが5、最初の位置が約37°進んでいます。
この「ペダルの最初の位置」を、複素数(4+j3)で表したものが「フェーザ」でした。そして、フェーザで表した「電圧」が「複素電圧」、フェーザで表した「電流」が「複素電流」です。
上図の交流は、たとえば電圧Eであれば、フェーザ(ペダルの最初の位置)を使って、
電流Iであれば、フェーザ(ペダルの最初の位置)を使って、
と表すことができます。EやIの上に付いている「・」は、「複素数ですよ」(つまり、向きがありますよ)というマークで、省略されることもあります。
複素電圧や電流は(フェーザと同一人物ですから)大きさと最初の角度(位相)は表していますが、周波数は表していません。
下図の電圧波形に対応するフェーザを描き、複素電圧、最大電圧、周波数、を記入してください。(1目盛りを1Vとします)
複素電圧: V 最大電圧: V 周波数: Hz
複素電圧:−3+j4V 最大電圧: 5V 周波数: 4Hz
最大電圧は、波形の最大値から求めることも、ペダルの長さから求めることも、。複素電圧(−3+j3)の絶対値(|−3+j4|=5)を計算して求めることもできます。
下表のように、交流の電圧やインピーダンスは、シンプルにAC10V等と「大きさ」だけで表すこともできました。また、より詳しく、8+j6V(10∠37°V)と複素数を使って「大きさと向き」で表す事もできました。
項目 |
大きさだけ(値) |
大きさと向き(複素数) |
||
名称 |
値の例 |
名称 |
値の例 |
|
電圧 |
交流電圧E |
AC10V |
複素電圧 (電圧フェーザ) |
8+j6V 10∠37°V |
電流 |
交流電流I |
AC5A |
複素電流 (電流フェーザ) |
3+j4A 5∠53°A |
通し難さ |
インピーダンスZ |
2Ω |
複素インピーダンス |
1.92−j0.56Ω 2∠−16°Ω |
通し難さ |
アドミタンスY |
0.5S |
複素アドミタンス |
0.48+j0.14S 0.5∠16°S |
※分り易さのために、AC電圧と複素電圧の値を揃えてますが、実際の強さは異なります。AC電圧は実効値を示し、フェーザの大きさは最大電圧を示します。 |
さて、交流でもオーム則が使えました。つまり、上表の「大きさだけ」部分にあるAC10V、AC5A、2Ωの間で、
AC10V = AC5A × 2Ω
つまり、
と、計算できます。
さらに上表の「大きさと向き」の部分にある複素電圧(8+j6V)、複素電流(3+j4A)、複素インピーダンス(1.92+j0.56Ω)の間でオーム則を使って、
8+j6V = (3+j4)A × (1.92−j0.56)Ω
つまり、
と、計算できます。
Excelで「=IMPRODUCT("3+4i","1.92-0.56i")」と入力すると、「8+6i」と、上記の通りの結果が表示されます。
複素数を使ったオーム則の計算例を数に示します。このように、大きさだけではなく、位相(波のズレ:偏角)も計算できます。
上図では、インピーダンスの偏角の分だけ、電流より電圧の位相が遅れていることが分ります。これは、複素数で電流とインピーダンスを掛けた結果、電流とインピーダンスの偏角の合計が電圧の偏角となった(複素数の掛け算では、偏角が足し算になる)ためです。
もちろん、複素電流、複素電圧、複素インピーダンス、それぞれの大きさ(絶対値)は、(方向のない)交流電流、インピーダンス、交流電圧の計算と一致します。
複素数電圧・電流でも使えるとは、オーム則はなかなかフトコロの広い法則です。
下図の回路のLRの複素インピーダンスと複素電流を求め、下図右側の図に書き込んでください。
Excelで=IMDIV("1+1i","1+0.5")と計算して、1.15+0.768iと分る。これを下図のように記入する。
下図の回路図は、3Ωのコイルと4Ωの抵抗が直列に接続されており、インピーダンスの大きさは5Ωです。電源が10Vですから、2Aの電流が流れます。
さて、上図左の電源側から見ると、10Vで2A流れているので、20Wの電力を送り出しているように思えます。しかし、上図右の負荷側で見ると、(コイルは電流が流れても発熱しませんから)4Ωに2A流れて、16Wの電力を消費するだけです。
上図左側のように、電流と電圧を掛けて計算した(見かけの)電力を「皮相電力」と呼び、上図右側のように、本当に消費された電力を「有効電力」と呼んで、双方を区別します。(「皮相電力」とは難しい言い方ですが、英語のapparent powerつまり「見た目の電力」を迷訳したものです。)
皮相電力や有効電力の意味や単位は次表のとおりです。
名前 |
意味 |
単位 |
単位の呼び方 |
皮相電力 |
電流と電圧の大きさを掛けた 見た目の電力 |
VA |
ボルトアンペア あるいは ブイエー |
有効電力 |
本当に消費された電力 |
W |
ワット |
もちろん、皮相電力と有効電力の差が大きいと、電流や電圧は大きいのに、消費電力が少なくなり、不経済です。ですから、できるだけ皮相電力と有効電力が同じになるように工夫します。
その工夫の目安として、有効電力÷皮相電力の値を「力率」と呼んで使用します。力率が1(100%)なら、有効電力=皮相電力で、見た目の電力は、すべて有効に消費されています。力率が50%なら、見た目の電力の半分しか有効活用されていません。
力率の計算には色々な方法があります。下図の回路を例に、下表で説明します。
番号 |
力率の求め方 |
上図の例 |
@ |
|
|
A |
|
|
B |
|
|
C |
|
|
上表の@〜Cの中から「今、分っている値」「そのとき求めやすい値」が使える方法を選んで計算します。
ところで、Cの方法は、この例では面倒なだけで論外です。それにも関わらず掲載したのは「力率」の事を「cosθ」と呼ぶ人が多いからです。これは、「力率が、インピーダンスの偏角θのcosの値である」事から来た呼び名ですが、この呼び方では「θが何の角度なのか」分らないため、「力率」よりも不誠実な呼び方に思えます。(バイクの運転手を、単に「運転手」と呼んでいるようなものです。「運転手を連れてきてくれ」と頼んだのでは、自動車の運転手が来るかも知れません)それにもかかわらず、書籍でも使われる他、口頭でも「コサインシータを測定しといてくれ」等と使われています。
下図の回路の力率を求めて下さい。
力率 %
インピーダンスが分っているので、上表Bの方法で計算します。
力率 60% %
複素電圧にオーム則が使えたように、複素電圧と複素電流から複素電力を求めることもできます。たとえば、下図のように8+j6Vで4−j3Aが流れた場合は、
Excelで、=IMPRODUCT("8+6i","4+3i")と入力する事で、複素電力が14+58iと計算されます。電流の「3−j4」のjの部分(虚部)の符号を反転して「3+j4」と入力する点に注意します。(理由は後述します)
こうして求めた複素電力を下図に示します。図で分るように、複素電力は、有効電力(実部)も皮相電力(絶対値)も表現しています。さらに、複素電力の虚部は「無効電力」と呼ばれています。このように、複素電力は交流電力の色々な要素を一発で表すことができます。
さて、複素電力を求めるときに、電流の虚部を逆符号にしました。ちょっと不自然です。その理由は、下図のような、電流と電圧の位相が同じ場合を考えると理解できます。電流と電圧の位相が同じなら、有効電力だけが発生して、無効電力は発生しない(力率が100%になる)筈です。
さて、電圧と電流の掛け算では、電流と電圧の偏角が合計されるため、そのまま掛けると上図に点線で示す電力のように、無効な成分(上向きの成分)が大半となります。
ところが、電流の虚部を逆符号にして計算してやると、電圧の偏角は上向き(+)、電流の偏角は下向き(−)で、掛けると(掛け算は、偏角の足し算なので)打ち消しあって偏角がゼロとなり、上図に実線で示す電力のように、ちょうど右向きの有効電力だけになります。
つまり、複素電力を求めるときに電流の虚部を逆符号にする理由は、電圧と電流の位相が同じときに、有効電力だけが得られるようにするためです。
Excelを用いて、下図の回路の負荷で発生する複素電力を求め、有効電力、無効電力、皮相電力を計算してください。
複素電力 W 有効電力 W 無効電力 VA 皮相電力 VA
複素電力60+j80W 有効電力 60W 無効電力 80VA 皮相電力 100VA
複素電流はExcelで=IMDIV("100+0i","60+80i")で0.6−j0.8A
複素電力はExcelで=IMPRODUCT("100+0i","0.6+0.8i")
あるいは、=IMPRODUCT("100+0i",IMCONJUGATE(IMDIV("100+0i","60+80i")))で60+j80W
尚、複素電力は電流を計算せずに、
でも計算できます。
E*はEの虚部の符号を逆にした(共役の)数です。ExcelではIMCONJUGATE()です。
Excelでは、=IMDIV(IMPRODUCT("100+0i",IMCONJUGATE("100+0i")),"80+80i")で計算できます。もちろん、この例では電圧の虚部がゼロなので、IMCONJUGATEがなくても同じ結果が出ます。
周波数が一定の電力分野等であれば、例えば「このコイルはj2Ω」と、予め求めたインピーダンスで計算することができます。
例えば下図左側では、周波数が0.159Hzと一定であり、2Hのコイルはj2Ωと決まっています。ですから、電圧が10+j0Vであれば、回路に流れる電流は、図中の計算により、−j5Aと分ります。
その結果、同図左下のフェーザで示すように、電圧より90°遅れて、大きさが5Aの電流が流れると求めることができます。
ところがオーディオ回路等の「様々な周波数の交流を扱いたい」回路では、このように周波数を決め打ちすることができません。周波数は変数にしておいて、後で色々な周波数で計算したいからです。そこで、周波数を決め打ちせず、角周波数ωのまま残します。
角周波数ωの代わりに、周波数fを使っても良いのですが、角周波数ならωLで済むところを、周波数では2πfLと書かなくてはならないため、手間を省くために角周波数が使われます。
ωを使うと、上図右側のように、コイルのインピーダンスはj2ωΩ、となり、その結果回路に流れる電流は、となります。
このようにして、一旦 を求めておけば、例えば角周波数ωが1000rad/secの場合(つまり159Hzの場合)は、と、周波数に応じて流れる電流を簡単に求めることができます。
このように、周波数を後で決めるようにすると、式が入り組んで来ます。学校で数式に辟易した方は、「数学が苦手だと苦しそうだな」と思うかもしれませんが、全くそんなことはありません。
まず、オーム則で電流や電流を求めたり、インピーダンスの足し算をしたりする計算が組み合わされているだけすから、「四則演算」しか出てきません。
さらに、「式が出てきたら、綺麗に変形して整理しなければならない」(学校でそう言われたから)と思い勝ちですが、その必要が無いのです。最初に作った形のままExcelに入力して、結果を計算させれば良いからです。
下図左側の回路の入力に、フェーザ(大きさと位相)がで、角周波数ωの交流を加えたときの出力を求めます。
上図右側の@AB…の順で考えます。
@1Hのコイルのインピーダンスはです。()
Aコイルと抵抗の直列合成インピーダンスは、双方のインピーダンスを合計してです。
B入力に交流を加えたときに、直列回路に流れる電流は、です。
上で求めた電流が、2Ωの抵抗に流れて発生する電圧が、「出力電圧」ですから、
C出力電圧は、ちょっと変形して(必須ではありません)となります。
たとえば、角周波数ωが1rad/sec(0.16Hz)で、入力が10+j0 [V]の場合の出力電圧は、Excelのセルに、=IMPRODUCT(2,IMDIV(10,"2+i"))、と入力すれば、8−j4と表示されます。(複素数の計算はExcelがやりますから、手計算はあまり必要ではありません。)
下図の回路の入力に、(角周波数ω)を加えたときに、出力に現れる電圧を、下表の空欄を記入して考えてください。また、10+j0Vを入力に加えた場合の出力電圧のフェーザを下図右側に書き込んで下さい。(この回路は「CR微分回路」と呼ばれています)
1Fのコンデンサの、角周波数ωでの複素インピーダンスは、 より、 |
|
コンデンサと抵抗の直列合成インピーダンスは、双方のインピーダンスを合計して、
|
|
入力に交流を加えたときに、直列回路に流れる電流は、
|
|
上で求めた電流が、2Ωに流れて発生した電圧が出力電圧ですから、出力電圧は、
|
|
たとえば、10+j0V、角周波数1rad/sec(0.16Hz)の電圧を入力した場合の出力は、Excelを用いて、
|
|
1Fのコンデンサの、角周波数ωでの複素インピーダンスは、 より、 |
|
コンデンサと抵抗の直列合成インピーダンスは、双方のインピーダンスを合計して、 |
|
入力に交流を加えたときに、直列回路に流れる電流は、 |
|
上で求めた電流が、2Ωに流れて発生した電圧が出力電圧ですから、出力電圧は、 |
|
たとえば、10+j0V、角周波数1rad/sec(0.16Hz)の電圧を入力した場合の出力は、Excelのセルに、 =IMPRODUCT(2,IMDIV(10,"2+i")) と入力して、 |
|
さて、周波数を決め打ちせずに、角周波数ωで表したのは「あとで周波数を変えて色々計算する」ためでした。それでは実際に、練習問題で扱った下図の回路に、様々な周波数(角周波数)の交流(フェーザは10+j0V(大きさ10Vで、ペダルは最初右向き)とします)を加えて、出力がどのように変化するか確認します。
練習問題の答から、出力はと分っています。この式は、Excelで、
=IMPRODUCT(「入力」,IMDIV(2,IMSUB(2,IMDIV("i",「ω」))))
のように計算できます。あとは、「入力」()を与えて、「ω」を少しずつ変えて結果を観察するだけです。ここでは入力は10+j0(つまり=COMPLEX(10,0))で、ωはA列で指定します。
ます、Excelに下図のように入力します。A列以外のセルは、一行入力して下向きにコピーするだけです。A列(角周波数)のセルは最初の6行を入力し他の値、7行目を入力して(7行目だけを)下向きにコピーします。
すると、計算結果は下図のようになります。出力の実部と出力の虚部を「散布図」でグラフに描いています。グラフの上に、過去の練習問題で計算した角周波数(ω=1)の出力のフェーザ(8+j4)を書き加えています。
上図のグラフを見れば、周波数が変わると出力のフェーザがどのように変化するか分ります。つまり、周波数が低い(ωが小さい)ときは、出力もとても小さいですが、周波数が高くなるにつれて、半円を描いて時計回りに出力が大きくなって行き、ω=1(練習問題で扱った場合)に、8+j4Vが出力されます。(大きさは約9V)。そして、周波数が十分高くなると、ほぼ10Vが出力されると分ります。
上で作成したExcelシートの一部(「出力の実部」と「出力の虚部」の部分)を変更して、下図のように「出力の絶対値」(大きさ)と「出力の偏角」(位相)を表示させます。
計算結果は下図のようになります。周波数を横軸(対数)に、絶対値(対数)と偏角を縦軸に、散布図グラフを作成しています。(グラフでは「対数」と「第2軸」の機能を使っています)
グラフを見ると、絶対値(出力電圧の大きさ)は、周波数が高くなると次第に大きくなりますが、ωが1のあたりで増大が止まり、それ以上周波数が高くなっても、殆ど変化しないことが分ります。
また位相は、周波数が低い場合は1.6rad程度(90°)進んでいますが、周波数が高くなると、ほぼ 0°(入力した電圧と同じ方向のフェーザが出力される)と分ります。
下図の回路に10+j0Vの入力電圧を加え、ωを変化させたときの、出力フェーザの変化、出力の大きさ(絶対値)の変化、出力位相の変化を、Excelを使ってグラフに表示してください。
下図ようにExcelに入力します。
計算結果は下図のようになります。
周波数が高くなると、出力が小さくなり、位相が遅れて行くことが分ります。
「周波数伝達関数」は誤解し易い名前です。「周波数を伝達する様子を表す関数」ではありません。「周波数で増幅率(つまり、入力の出力への伝達)が変化する様子を表す関数」という意味です。例えば「100Hzで増幅率は何倍ですか」と聞けば「3倍です」等と答えてくれる式のことです。
さて、下図に3倍の増幅器を示します。1.5Vを入力すると、3倍されて、4.5Vが出力されています。このように増幅器では、例えば「3倍」等と、「増幅率」が重要な性能です。逆に、増幅率が3倍と分っていれば、10V入力すれば、30Vが出力される(つまり、入力×倍率=出力)と計算することもできます。
ところでこの「増幅率」は、出力を入力で割って求めたものです。つまり、出力を入力で割れば、その回路の重要な性質を表すことができるのです。
入力や出力は、電圧でも電流でも構いません。例えば、電流を入力すれば、電圧を出力する回路もあります。しかしここでは「電圧を入力して、電圧を出力する」(良くある)回路だけを考えます。
ところで、信号(入力や出力)には、直流や交流等の様々な種類があります。そこで次表に、各種の信号の種類毎に、出力を入力で割った値の例を示します。
出力÷入力の色々
信号種類 |
直流電圧 |
交流 |
||
交流電圧 (大きさ) |
複素電圧 (周波数固定) |
複素電圧 (後決め周波数ω) |
||
入力の例 |
1.5VDC |
1.5VAC |
10+j0V |
10+j0V |
出力の例 |
4.5VDC |
4.5VAC |
8-j4V |
|
|
|
|
|
|
名前 |
直流電圧増幅率 |
交流電圧増幅率 |
(複素電圧増幅率?) |
周波数伝達関数 |
上表一番右側の「周波数(ω)を後から決めて計算できる、複素電圧の増幅率(出力÷入力)を「周波数伝達関数」と呼びます。
尚、上表右側は練習問題で取り上げた、下図の回路を表しています。
さて、「増幅率」も「伝達関数」も、出力÷入力で求める点では、同じ仲間でした。下図左側に「増幅率」、同図右側に「伝達関数」の例を示します。
上図左側の例では、出力の4.5Vを入力の1.5Vで割って、増幅率の3倍を求めています。逆に、入力の1.5Vに増幅率の3倍を掛けると、出力の4.5Vを計算できます。
上図右側の例では、出力のVを入力のVで割って、伝達関数のを求めています。逆に、入力のVに伝達関数のを掛けると、出力のVを計算できます。
ここに登場するような複素数の分数をさらに変形して、見易く整理したいという欲望に駆られる方も多いでしょう。もちろんそれによってExcelの入力は多少楽になりますが、変形の途中に間違える事を考えれば、式はあまり変形せずに、いきなりExcelに入れるのもアリです。ここでは式の変形が嫌いな方のために、あえて殆ど変形せずに放置します。
つまり周波数伝達関数は、「増幅率」に、(1)周波数を後で決められるようにωで埋め込んで、(2)「大きさ(3倍とか)」だけではなく「位相(方向)」も埋め込んだ、ものです。言ってみれば「複素数で計算した増幅率」みたいなものです。
「周波数伝達関数」を「伝達関数」と略して呼ぶ場合もあり、(本書でもやっています)間違いではありませんが、本来の意味では少し違うものです。(今は違いはどうでもいいです)
すでに練習問題で取り上げた下図の回路の伝達関数を求めてください。
|
周波数伝達関数 |
|
|
練習問題の答から、出力はと分っています。そこで、周波数伝達関数は下図のように出力を入力で割って、計算できます。
|
周波数伝達関数 |
|
と書く事もできます |
下図のCR回路の周波数伝達関数を下表を埋めながら求めてください。
番号 |
質問 |
答 |
||
@ |
コンデンサの周波数ωにおける、複素インピーダンスは |
|
|
[Ω] |
A |
入力から見るとRCが直列なので、直列合成インピーダンスは |
|
|
[Ω] |
B |
RCに流れる電流は入力電圧Eをインピーダンスで割って、 |
|
|
[A] |
C |
出力電圧は、流れる電流とコンデンサのインピーダンスを掛けて
|
|
|
[V] |
D |
伝達関数は1Vを入力したときの出力だから
|
|
|
[倍] |
番号 |
質問 |
答 |
||
@ |
コンデンサの周波数ωでの複素インピーダンスは |
|
|
[Ω] |
A |
入力から見ると、RCが直列なので、合成インピーダンスは |
|
|
[Ω] |
B |
このため、RCに流れる電流は入力電圧をインピーダンスで割って、 |
|
|
[A] |
C |
出力電圧は、電流とコンデンサのインピーダンスを掛けて |
|
|
[V] |
D |
伝達関数は1Vを入力したときの出力だから |
|
|
[倍] |
|
数学の得意な人は式を変形して、 (苦手な人は変形する必要はありません。変形しなくても、Excelで計算できます) |
|
[倍] |
伝達関数は増幅率の仲間で、入力×増幅率=出力、であるのと同様に、入力×伝達関数=出力、という関係がありました。
ですから入力が1Vの場合を考えると、1×増幅率=出力、1×伝達関数=出力、つまり、入力が1の時の出力を計算すれば、それが伝達関数です。
さて同じ事を複素電圧で考えると、下図に示すとおり、伝達関数がの回路に、(つまり、1)の電圧を入力すると、出力は入力電圧と伝達関数を掛けて、となり、当然ながら、伝達関数と全く同じになります。
つまり伝達関数は、の(大きさ1で、偏角が0°の)信号(基本の交流)を加えたときの出力と考えることもできます。
ですから例えば、入力電圧から出力を求める式が、
と分っている場合は、周波数伝達関数と、上の式のを1に変えるだけで、
と簡単に計算できます。
伝達関数は増幅率の仲間ですから、伝達関数に含まれる角周波数(ω)を様々に変えて、伝達関数の大きさ(絶対値)を計算すれば、「角周波数の変化による、増幅率の変化」を知ることができます。これが周波数特性です。計算の方法は出力電圧の計算と良く似ていますが、入力電圧を掛けなくても良いので多少簡単になります。(出力電圧の変化ではなく、増幅率の変化を計算するからです)
例えば既に説明した上図の回路の伝達関数を様々な角周波数ωで計算し、その実部、虚部、大きさ、偏角を計算するシートを作ると下図のようになります。
計算結果は下図のようになります。
上図で、ω(対数)を横軸に、伝達関数の大きさ(対数)をグラフにしたものが「周波数特性」、ω(対数)を横軸に、伝達関数の偏角をグラフにしたものが「位相特性」です。周波数特性と位相特性を一つの図にかいて、ボーデ線図と呼ぶこともあります。また、伝達関数の実部と虚部をグラフにしたものを「ナイキスト線図」と呼びます。
伝達関数から得られるこれらのグラフを下表に示します。
横軸 |
縦軸 |
表す内容 |
グラフの名前 |
|
角周波数ω(対数) |
伝達関数の絶対値 (おおきさ) (対数) |
周波数の大きさによる増幅率の変化 |
周波数特性 |
ボーデ線図 |
角周波数ω(対数) |
伝達関数の偏角 (位相) (対数) |
周波数の大きさによる位相の変化 |
位相特性 |
|
伝達関数の実部 |
伝達関数の虚部 |
増幅率と位相の関係(周波数は読み取り難い) |
ナイキスト線図 |
データシート等の資料では、伝達関数の周波数を(ωではなく)Hzで指定し、結果の絶対値を利得dBで、偏角を(ラジアンではなく)度で表す方法が使われます。計算の方法は同じで、単位を変えて計算するだけです。
すでに説明した下図の回路で、周波数HzとdB、度を使った周波数・位相特性図(ボーデ線図)をExcelで描きます。
下図のExcelシートでは、与えた周波数から角周波数ωを求め、そのωから伝達関数を計算して、その結果をdBと度に変換して表示しています。
計算させ、グラフを描くと下図のようになります。
下図のCR回路の周波数特性のグラフを、Excelを使って描いてください。横軸は周波数Hzとし、縦軸は利得dBとしてください。
伝達関数は、これを、
Excelでは=IMDIV(16E3,IMSUB(16E3,COMPLEX(0,-1/B2/0.1E-6)))と入力するので、下記のようにExceoに入力して、
計算させ、グラフを描くと下図のように表示される。
下図左側が既に説明したCR微分回路、同図右側がCR積分回路です。伝達関数はそれぞれ図に示す通りです。
伝達関数を元に周波数特性(利得)を描くと上図のようになります。CR微分回路は低い周波数では微分回路として働きますが、周波数がより高くなると、平らな特性になってしまいます。
逆にCR積分回路は、高い周波数では積分回路として働きますが、周波数がより低くなると、平らな特性になってしまいます。
より低い、あるいは高い周波数では、利得(信号の大きさが)が低下して行くので、をカットオフ周波数(遮断周波数)と呼んでいます。
またいずれの回路も、微分回路や積分回路として働く範囲では、周波数が2倍になると振幅が2倍、あるいは半分になります。これを、6dB/oct(6デシベルオクターブ)の特性と呼びます。
つまり、オクターブ(周波数が2倍)になると、振幅が±6dB(振幅が2倍、あるいは半分に)増減するという事です。
6dB/octは、20dB/dec(20デシベルディケード)とも呼ばれます。周波数が10倍になると、振幅±20dB(つまり10倍や10分の1に)増減するという意味です。
下図のCR回路について、下表の問いに答えてください。
番号 |
質問 |
答 |
@ |
回路はCR微分回路か、積分回路か |
CR 回路 |
A |
カットオフ周波数は、 |
Hz |
B |
信号周波数はカットオフ周波数の何倍か、 |
倍 |
C |
信号は何分の1に弱まるか、 |
分の1 |
D |
出力信号は何VACか、 |
mVAC |
カットオフ周波数は下図の通り計算して、約100Hz、加えている信号は10kHzで、カットオフ周波数の100倍、10kHzはカットオフ周波数より十分大きいので、
番号 |
質問 |
答 |
@ |
回路はCR微分回路か、積分回路か |
CR積分回路 |
A |
カットオフ周波数は、 |
100Hz |
B |
信号周波数はカットオフ周波数の何倍か、 |
100倍 |
C |
信号は何分の1に弱まるか、 |
100分の1 |
D |
出力信号は何VACか、 |
100mVAC |
ここまで説明した周波数伝達関数のイメージは、下図左側のようなものでした。つまり「角周波数ωを与えると、その周波数での出力の大きさと位相が分る」という理解でした。
電子工作にはこの考え方が向いており、理解が簡単な上、実用上何の問題もありません。ただし、学問的には、伝達関数は「jωを与えると、その周波数での出力の大きさと位相が分る」と考えます。このように考えると、数学との繋がりが良くなる上、制御理論にもすんなり入れる(制御理論ではjωの所を、σ+jωに置き換える)ためです。
とはいえ、学問の考え方でも、伝達関数本体には何の違いもありません。違いは左側をG(ω)とするか、G(jω)とするか、という点だけです。
|
|
説明した周波数伝達関数 |
学問の周波数伝達関数 |
学問の周波数伝達関数では、式の中に「jω」を作るために変形し、さらに「2」を一箇所にあつめて、
と書く場合が殆どです。もちろん、本書の目的は、数学の美しさを堪能する事ではありませんし、ましてや式の変形を練習することではありませんので、この変形ができる必要はありません。こんなものは、そのままExcelに入れて計算できれば良いのです。
12. (参考)伝達関数から(四則演算だけで)ステップ応答を計算する
周波数伝達関数は、周波数で振幅や位相がどのように変化するかを表しているので、交流以外の波形(たとえば、突然ポンと電圧が上がったとき:ステップ信号)を入力したときの出力波形(ステップ応答)を計算するのは苦手です。
とはいえ、Excelを使って(四則演算だけで)このような場合の出力を計算することはできます。もちろん、留数や逆ラプラス変換は全く使いません。
このように、伝達関数からステップを計算する事はあまりありませんから、一例を紹介するだけに留めます。Excelを使えば「伝達関数から四則演算だけでステップ応答が計算できるんだ」という事だけ知っておけば良いでしょう。
さて、たとえば「小遣いを貰うたびに、今まで貰った小遣いの総合計を計算する」と言う感じで、「これまでの値の合計」を求める計算を「積算」と呼びます。たとえば、1、3、2と来れば、積算値は1+3+2で6です。下図左側のシートのB列の値は、A列を積算したものです。
例えば、B5セルの6はA2〜A5までの積算値です。積算の方法は簡単で、上図右側のB6セルに示すように、直ぐ上のセルと、直ぐ左のセルを足すだけです。(実はこの「足し算」つまり「積算」が、「積分」なんですけど…理屈はさておいて)
次に、伝達関数から入力Xと出力Yの関係を求めます。すでに説明したように、伝達関数に入力電圧を掛けると出力電圧になりましたから、たとえば、伝達関数
では、入力電圧Xと出力電圧Yの関係は、
で求めることができます。これを変形して、
… @
とします。
さてここで、いささか風変わりな考えをします。つまり下表のように、「をjωで割ることは、Excelで積算することだ」と考えるのです。
いささか風変わりな考え方の表
|
積算 → |
|
積算 → |
|
積算 → |
|
積算 → |
|
たとえば上表で太線で囲んだ部分なら、「は、を積算したものだ」と考えます。つまり、は「積算する前の出力」、は「積算した後の出力」です。これを、上の@式に反映すると、
積算する前の出力 = 2×入力 − 2×積算した後の出力 … A
と考えることができるので、その通りに、Excelで、下図のようなシートを作成します。
C列の=(B*2-D2*2)*0.1等が上のA式を計算している部分で、末尾の「*0.1」は、計算をゆっくり行うためのものです(値が小さいと値はゆっくり変化します)。この値は、時定数の10分の1〜100分の1が目安で、 時定数が0.1秒の回路なら*00.1程度に設定します。(この値によって1行あたりの時間が決まります)
計算させて、グラフを描くと下図のようにステップ応答が表示されます。
基本の考え方は、既にCR回路で用いた「シミュレーション」と同じです。
さらに複雑な伝達関数では、上のA式を作るとき、最も積算の源流になっている項、つまり「いささか風変わりな考え方の表」で一番左にあるもの(jωの次数が高い項)、を左辺(左側)に単独で持ってくるように変形するのがポイントです。Excelでは、今回のC列に相当する、左辺の値を示す列が計算の中心になります。この列に入力電圧や積算値を元に左辺の値を求める式を記入します。伝達関数によっては、積算した値を積算した値の列、積算した値を積算した値を積算した値の列、を作る場合もあります。
オペアンプは沢山の素子を内蔵することで、ほぼ理想的な性能を持たせた半導体部品です。理想的な分、癖が無くて設計も簡単です。
登場した当初は値段が高くて、ホイホイと使うことは出来ませんでした。しかし、現在は4つ入り25円などと安価に販売されており、湯水のように使うことができます。
「理想的な性能」とは言っても、多少は「理想に届かない部分」もあります。そこでオペアンプ回路の設計は、まず、「理想的な性能」(理想オペアンプ)と考えて設計し、その後で「理想に届かない部分」による悪影響を検討する場合が多いです。
ここではまず「理想的な性能」と考えて設計する方法を説明します。今日のオペアンプは性能が向上しているので、このような設計でも、そのまま使える場合が相当あります。
とりわけ、レイル・トウ・レイル入出力が可能な、出力電流の比較的大きなCOMSオペアンプを使えば、周波数の低い回路なら、「理想的な性能」と考えて設計しても、概ね正しく動作します。オペアンプの基本だけを理解した段階でも(多少割高ですが)このようなオペアンプ(例えば、NJM7044(2V〜5V電源用)や、LMC6484(5〜15V電源用))を使えば設計を楽しむことができるでしょう。そして、本書の説明が概ね理解できれば、目的に応じて割安なオペアンプを選ぶことも十分楽しめるでしょう。
下図に示すように、オペアンプには「+入力端子」「−入力端子」「出力端子」(ここでは「+入力」「−入力」「出力」と略します)の3本の信号端子と、「+電源端子」「−電源端子」(ここでは「+電源」「−電源」と略します)の2本の電源端子があります。
2本の電源端子は回路図ではしばしば省略されます。
オペアンプ は-+入力と-−入力-の電圧の「差」を求めて、これを十分に増幅して-出力-に出します。つまり、
出力 = ( +入力 − −入力 )× 大きな増幅率
※「大きな増幅率」は例えば10万倍等です
そして、引き算が正確で、増幅率が大きいので、次の項で説明する4つの性質が生じます。
オペアンプの性質は沢山ありますが、下表の4つを理解すれば、9割の基本回路は理解することができます。
まず、オペアンプは「正確」で「大きな増幅率」の部品ですから、下表の番号AとBに示すように、+入力の電圧が、僅かでも−入力より高いだけで、出力は+電源電圧までビュンと振り切ってしまいます。同様に、+入力の電圧が、僅かでも−入力より低いだけで、出力は−電源電圧までビュンと振り切ってしまいます。
次に、増幅率が大きいため、下表@に示すように、+入力が−入力と全く同じ時だけ「出力が振り切らない」状態になります。逆に、出力が振り切ってなければ、+入力と−入力は同じ電圧であるとも言えます。
ここで気をつけることは、このような(@の)「振り切らない」状態となるのは、回路構成が、負帰還の(出力端子の電圧が入力端子に回り込んでいる)場合だけで、それ以外の回路では(AとBの)振り切った状態で動作するという点です。つまり、振り切ってABの動作をするか、振り切らずに@の動作をするかは、回路構成で決まると考えてください。(理由は後で説明します)
オペアンプ回路の重要な性質
番号 |
入力端子の状態 |
|
出力端子の状態 |
回路の構成 |
@ |
+入力 = −入力 |
⇔ |
振り切らない |
負帰還の回路 (出力端子の電圧が、入力端子に回り込んでいる) |
A |
+入力 > −入力 |
⇔ |
+に振り切る |
負帰還でない回路 (出力端子の電圧が、入力端子に回り込んでいない) |
B |
+入力 < −入力 |
⇔ |
−に振り切る |
|
C |
入力端子には電流が流れない |
最後に、上表の@〜Bの何れの場合でも、同表Cに示すように入力端子には電流が流れません。
ですから、オペアンプの回路を読むときは、負帰還の有無を最初に判定して、次表のように考えます。
回路構成 |
利用する特徴 |
負帰還が掛かっている |
@とCの性質で考える |
負帰還はない |
AとBとCの性質で考える |
4. ユニティゲイン増幅器
では、重要な4つの性質を使ってオペアンプの回路を読みます。
最初に取り上げる「ユニティゲイン増幅器(ユニティゲインバッファとも呼ばれます)」は、奇妙な名前ですが「1倍の増幅器」という意味です。つまり、入れた電圧がそのまま出てくる増幅器ですから、一見役に立たないように思えます。
しかし、重要な性質Cにより、入力端子には電流が流れませんから、たとえば、ユニティゲイン増幅器で、充電したコンデンサの電圧を測定しても、コンデンサが放電して電圧が低下することがありません。つまり、ユニティゲイン増幅器を使うと、測定される回路に影響を与えずに、正確に電圧を測定できるのです。
増幅器のような、入力電圧の大小で、出力電圧も滑らかに変化する回路は、(オペアンプを使った場合)かならず負帰還の掛かった回路です。
さて、下図がユニティゲイン増幅器の例です。左から電圧を与えると、右側に出力します。
下図に灰色矢印で示すように、出力端子の電圧が−入力に回り込んでいますから、負帰還の回路です。ですから、重要な性質の@とCを使って考えます。
上図を見て下表に書き込みながらユニティゲイン増幅器の動作を確認してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
入力電圧は、 |
V |
A |
+入力端子の電圧は、 |
V |
B |
重要な性質@によれば、(負帰還の回路では)2本の入力端子の電圧差は |
V |
C |
−入力端子の電圧は、 |
V |
D |
出力電圧は、 |
V |
E |
重要な性質Cによれば、入力に流れる電流は、 |
A |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
入力電圧は、 |
2V |
A |
+入力端子の電圧は、 |
2V |
B |
重要な性質@によれば、(負帰還の回路では)2本の入力端子の電圧差は |
0V |
C |
−入力端子の電圧は、 |
2V |
D |
出力電圧は、 |
2V |
E |
重要な性質Cによれば、入力に流れる電流は、 |
0A |
上表のDで分るように、入力した電圧がそのまま出力されます。また、上表のEで分るように入力には電流が流れません。
「電源」とは回路図に電池の図記号で示すような、回路を動作させるエネルギを供給する部分のことです。
元来オペアンプは、下図左側に示すように、+電源と−電源の2電源(両電源)で使用するように設計されました。なぜなら、+電源と−電源の真ん中あたり(つまり、0V付近)で安定して動作するからです。
ところが、オペアンプの応用範囲が広がるにつれ、電源を1つしか搭載しないような、軽便な機器でも利用されるようになり、下図右側に示すような、単一電源で使用される機会が増えて来ました。
当初は、2電源用に設計されたオペアンプを、回路を工夫して単一電源で使用していましたが、その後、単一電源用のオペアンプも作られるようになりました。
回路の動作は2電源の方が説明し易い場合が多いので、本書では特に電源を示さない限り、2電源と考えて説明しています。
さて、ユニティゲイン増幅器の働きは、重要な性質@「負帰還の回路なら、+入力=−入力」を、利用して考えました。ここでは、オペアンプを擬人化することで、なぜこの重要な性質@が生じるのか説明します。下図が擬人化したオペアンプです。
オペアンプの中の人は、上図のように「(自分が立つ)床(−入力)が基準」と考えています。そして、常に+入力の電圧を気にしています。
中の人は、+入力の電圧が、床(−入力)より高ければ、ハンドルを回して出力を上げます。逆に、+入力が、床(−入力)より低ければ、逆にハンドルを回して出力電圧を下げます。
中の人は、床と+入力の電圧に違いがある限り、ハンドルはいつまでも回し続けます。しかし、出力電圧が電源端子の電圧に達すると、(電源電圧を越える電圧は出力できませんから)それ以上ハンドルは回らなくなります。(これが後で説明するコンパレータの動作です)
さて、下図は擬人化したユニティゲイン増幅器です。
上図の回路では、出力電圧が−入力に回り込んで負帰還が掛かっています。このように負帰還に接続したことで、劇的な変化が起きます。つまり、中の人が「ハンドルを回して、自分の床の高さを上下できる」ようになるのです。
このため中の人は、+入力が床より高ければ、ハンドルを回して床を上げて行きます。そして、床の高さが+入力と同じになれば、ハンドルを回すのを止めます。その結果、出力電圧(−入力)が+入力と等しくなるのです。
つまり負帰還を掛けることで、中の人が「自分が立つ床の高さを変える」ことを可能にし、その結果中の人が+入力と同じ高さまで床を上げる(下げる)ために、オペアンプの重要な性質@、つまり「+入力=−入力(床)」が生まれるのです。
また、中の人はハンドルを回して電圧を上げ下げしますから、実は出力電圧は瞬時に上下できません。このため、ユニティゲイン増幅器に大きな振幅の信号を入れると、下図の下側に示すように、電圧が徐々に変化します。(後に詳しく説明します)これも実際のオペアンプで生じる(スルーレートと言う)現象です。
ここで取り上げる「非反転増幅回路」は変な名前ですが「反転しない増幅器」つまり、「入力が+に振れたら、出力も+に触れる」という「ありきたりの」増幅器です。(オペアンプ増幅器では、入出力が反転する場合が主流なので、あえて「非反転」と主張している訳です)
非反転増幅器は、ユニティゲイン増幅器とちがい、入力された電圧を大きくする作用があります。
下図が非反転増幅回路の例で、左から電圧を与えると、右側に出力します。
この回路は下図灰色矢印で示すように、出力端子の電圧が−入力に回り込んでいますから、負帰還の回路です。ですから、重要な性質の@とCを使って考えます。
上図を見て下表に書き込みながら非反転増幅回路の動作を確認してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
+入力に加わる電圧は |
V |
A |
重要な性質@によれば、2本の入力端子の電圧差は |
V |
B |
−入力端子の電圧は |
V |
C |
1kΩに流れる電流は、 |
mA |
D |
重要な性質Cによれば、1kΩの上側から、−入力端子に向かって流れる電流は、 |
mA |
E |
4kΩに流れる電流は、 |
mA |
F |
4kΩに生じる電圧(両端電圧)は、 |
V |
G |
出力端子の電圧は、 |
V |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
+入力に加わる電圧は |
1V |
A |
重要な性質@によれば、2本の入力端子の電圧差は +入力 = −入力であるから、 |
0V |
B |
−入力端子の電圧は、+入力と同じであるから、 |
1V |
C |
1kΩに流れる電流は、1Vで1kΩであるから、 |
1mA |
D |
重要な性質Cによれば、1kΩの上側から、−入力端子に向かって流れる電流は、入力端子には電流が流れないから、 |
0mA |
E |
4kΩに流れる電流は、キルヒホッフの法則をA点に使って、 |
1mA |
F |
4kΩに生じる電圧(両端電圧)は、 |
4V |
G |
出力端子の電圧は、1Vと4Vを加えて |
5V |
つまり、この回路は1Vを入れると5Vを出力します。5倍に増幅しているようです。しかし、ひょっとすると常に5V出力されて、実は増幅はされていないのかも知れません。そこで、入力を2Vに変更して、もう一度検討します。
下図の回路図の各部の電圧・電流を下表に記入してください。また、増幅器の入力電圧と出力電圧の関係(入出力電圧特性)を下図右側のグラフに書き込んでください。
上図を見て下表に書き込みながら考えてください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
+入力に加わる電圧は |
V |
A |
重要な性質@によれば、2本の入力端子の電圧差は |
V |
B |
−入力端子の電圧は |
V |
C |
1kΩに流れる電流は、 |
mA |
D |
重要な性質Cによれば、1kΩの上側から、−入力端子に向かって流れる電流は、 |
mA |
E |
4kΩに流れる電流は、 |
mA |
F |
4kΩに生じる電圧(両端電圧)は、 |
V |
G |
出力端子の電圧は、 |
V |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
+入力に加わる電圧は |
2V |
A |
重要な性質@によれば、2本の入力端子の電圧差は +入力 = −入力であるから、 |
0V |
B |
−入力端子の電圧は、+入力と同じであるから、 |
2V |
C |
1kΩに流れる電流は、1Vで1kΩであるから、 |
2mA |
D |
重要な性質Cによれば、1kΩの上側から、−入力端子に向かって流れる電流は、入力端子には電流が流れないから、 |
0mA |
E |
4kΩに流れる電流は、キルヒホッフの法則をA点に使って、 |
2mA |
F |
4kΩに生じる電圧(両端電圧)は、 |
8V |
G |
出力端子の電圧は、1Vと4Vを加えて |
10V |
1Vを入力すると5Vを、2Vを入力すると10Vを出力していますから、明らかに10倍に増幅しています。入力と出力の関係を上図右側のグラフに示します。
この増幅器の電圧増幅率AVは、2本の抵抗から次のように計算できます。
電圧増幅率AV==5倍
非反転増幅回路は、ユニティゲイン増幅器と同様、+入力端子がそのまま増幅器の入力端子になっていますから、重要な性質Cにより、入力に電流が流れません。
下図の増幅回路の各部の電圧・電流と、電圧増幅率を求めてください。また、増幅器の入力電圧と出力電圧の関係(入出力電圧特性)を下図右側のグラフに書き込んでください。
@ V |
A V |
B V |
C mA |
D mA |
E mA |
F V |
G V |
HAV = 倍 |
|
|
|
下図灰色の経路で負帰還が掛かっているので、重要な性質@とCを使います。
@ 0.1V |
A 0V |
B 0.1V |
C 0.1mA |
D 0mA |
E 0.1mA |
F 2.2V |
G 2.3V |
HAV = 23倍 |
|
|
|
コンパレータは「比べる回路」という意味で「比較回路」と訳されています。入力電圧がある電圧より「高いか」「低いか」を判別する働きがあります。このような出力の状態が「イチかバチか」という回路は、負帰還の掛かってない回路です。ですから、重要な性質のABCを使って考えます。
下図にコンパレータの例を示します。(ここでは、5Vの単一電源で考えています)
上図を見て下表に書き込みながら考えてください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
分圧の法則で、22kの両端電圧は、 |
V |
A |
−入力端子の電圧は、 |
V |
B |
+入力端子の電圧は、 |
V |
C |
+入力と−入力端子の電圧の関係は、 |
+入力 −入力 |
D |
重要な性質ABより、オペアンプの出力端子の状態は、 |
|
E |
出力端子の電圧は、 |
V |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
分圧の法則で、22kの両端電圧は、 (重要な性質Cで、−入力端子に電流が流れないので、分圧の法則が使えます) |
2V |
A |
−入力端子の電圧は、 |
2V |
B |
+入力端子の電圧は、 |
3V |
C |
+入力と−入力端子の電圧の関係は、 |
+入力>−入力 |
D |
重要な性質ABより、オペアンプの出力端子の状態は、 |
+に振り切る |
E |
出力端子の電圧は、 |
5V |
つまり、この回路に3Vを入力した場合、5Vが出力されます。
次に、このコンパレータに1Vを入力したときの回路の状態を考えます。
上図を見て下表に書き込みながら考えてください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
分圧の法則で、22kの両端電圧は、 |
V |
A |
−入力端子の電圧は、 |
V |
B |
+入力端子の電圧は、 |
V |
C |
+入力と−入力端子の電圧の関係は、 |
+入力 −入力 |
D |
重要な性質ABより、オペアンプの出力端子の状態は、 |
|
E |
出力端子の電圧は、 (−電源は、この回路ではグラウンド(0V)に接続されています) |
V |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
分圧の法則で、22kの両端電圧は、 (重要な性質Cで、−入力端子に電流が流れないので、分圧の法則が使えます) |
2V |
A |
−入力端子の電圧は、 |
2V |
B |
+入力端子の電圧は、 |
1V |
C |
+入力と−入力端子の電圧の関係は、 |
+入力<−入力 |
D |
重要な性質ABより、オペアンプの出力端子の状態は、 |
ーに振り切る |
E |
出力端子の電圧は、 (−電源は、この回路ではグラウンド(0V)に接続されています) |
0V |
つまり、この回路に1Vを入力した場合、5Vが出力されます。
下図の回路の入力電圧を、0〜5Vの範囲で変化させたときの、出力の電圧の様子を下図右側のグラフに記入して下さい。
入力電圧2Vを境目に、それより入力が高いときは、出力は5V、それより入力が低いときは、出力は0Vとなります。このような境目の電圧を「スレッショルド(threshold)電圧」と呼びます。
+入力端子に入力を加えるコンパレータでは、−入力端子の電圧を基準に、入力が高ければ+に振り切り、入力が低ければ、−に振り切ります。
下図のコンパレータはこれまで検討してきた回路の+入力と−入力を入れ替えています。
下図の回路の入力電圧を、0〜5Vの範囲で変化させたときの、出力の電圧の様子を下図右側のグラフに記入して下さい。
入力電圧2Vを境目に、それより入力が高いときは、出力は0V、それより入力が低いときは、出力は5Vとなります。
−入力端子に入力を加えるコンパレータでは、+入力端子の電圧を基準に、入力が高ければ−に振り切り、入力が低ければ、+に振り切ります。つまり、+入力端子に入力を加えるタイプとは、出力の状態が逆になります。
入力に使う端子を選ぶことでコンパレータの動作を下表のように変えることができます。
コンパレータの入力端子と動作 |
|||
入力に使う端子 |
入力が高いとき |
入力が低いとき |
コンパレータのタイプ |
+端子 |
+に振り切る |
−に振り切る |
非反転コンパレータ |
−端子 |
−に振り切る |
+に振り切る |
反転コンパレータ |
入力電圧が上がると、逆に出力電圧が下がるため、反転増幅器と呼ばれています。+入力が接地されている事が特徴です。このタイプの回路は、素子の特性を素直に引き出すので、フィルタや非線形回路等、様々な応用回路に利用されます。
さて、下図に反転増幅回路を示します。出力端子の電圧が、2kΩを通じて−入力に回り込んでいますから、負帰還の回路です。
上図を見て下表に書き込みながら考え、上図右側のグラフに入出力特性を書き込んでください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
アースに接続されているので、+入力端子の電圧は、 |
|
A |
負帰還の回路だから、+入力と−入力の差は、 |
|
B |
このため、A点の電圧は、 |
|
C |
入力電圧1VとA点の電圧の差から、1kΩの両端電圧は、 |
|
D |
オーム則より、1kΩに流れる電流は、 |
|
E |
重要な性質から、−入力端子に流れる電流は、 |
|
F |
A点にキルヒ則をつかって、2kΩに流れる電流は、 |
|
G |
オーム則から、2kΩの両端電圧は、 |
|
H |
出力は、A点よりGの電圧だけ下がった電圧だから、 |
|
入力に繋がった1kΩを「入力抵抗」、出力に繋がった2kΩを「帰還抵抗」と呼びます。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
アースに接続されているので、+入力端子の電圧は、 |
0V |
A |
負帰還の回路だから、+入力と−入力の差は、 |
0V |
B |
このため、A点の電圧は、 |
0V |
C |
入力電圧1VとA点の電圧の差から、1kΩの両端電圧は、 |
1V |
D |
オーム則より、1kΩに流れる電流は、 |
1mA |
E |
重要な性質から、−入力端子に流れる電流は、 |
0A |
F |
A点にキルヒ則をつかって、2kΩに流れる電流は、 |
1mA |
G |
オーム則から、2kΩの両端電圧は、 |
2V |
H |
出力は、A点よりGの電圧だけ下がった電圧だから、 |
−2V |
オペアンプを使った増幅器はシーソーにたとえることもできます。下図に反転増幅器の様子を示します。
−入力は+入力と同じ電圧になるため、常に0Vです。このため、シーソーの中央の支点だと考えます。入力側が1kΩなので腕の長さが1m、出力側が2kΩなので腕の長さが2mと考えます。支点が固定されているため、入力側が1V上がると、出力側が2V下がり、逆に入力側が1V下がると、出力側が2V上がります。
下図は非反転増幅回路の様子です。
1kΩの左側はアース(0V)に接続されているため、シーソーの左端を支点だと考えます。+入力端子を1V上下させると、(+入力=−入力は同じ電圧なので)−入力端子も1V上下し、シーソーの働きで、出力端子は3V上下します。
ユニティゲイン増幅器や、非反転増幅器は、(オペアンプの+入力端子を、そのまま入力に使用していたため)入力に(殆ど)電流が流れませんでした。しかし、下図に示すように、反転増幅回路は入力側の1kΩに電流が流れて動作します。ですから、電圧計の入力部等には適しません。
しかし、上図の(+入力が接地された)タイプの回路は、以下に説明する理由により、フィルタや変換回路等の(信号の性質を変化させるような)オペアンプらしい様々な用途に活用されます。
なぜならこの回路では、上図に示すように、まず、1kΩの右側(−入力端子)が0Vですから、入力電圧が正確に1kΩに加わります。その結果@1kΩには入力電圧に正確に対応した電流が流れます。次に、A1kΩに流れた電流は、(入力端子には電流が流れないので)全て2kΩに流れます。最後に、2kΩの左側が0Vですから、B2kΩに流れた電流で発生する電圧が、そのまま出力電圧となります。
つまり、上図に示すように、1kΩが「入力電圧を電流に変換する素子」、2kΩが「電流を出力電圧に変換する素子」として作用します。この特徴により、1kΩ(入力素子)や2kΩ(帰還素子)の代わりに様々な素子や回路を使用することで、素子や回路の持つ電圧と電流の関係を、そのまま回路の特性として利用する事ができるのです。
ここでは、交流理論の考え方を使ってオペアンプを使った反転増幅回路を検討しています。回路の動作を詳しく検討したい場合には便利な考え方ですが、知らなくても大きな問題はありませんから、興味がなければ読み飛ばすこともできます。内容的には、直流での電圧/電流が、複素電圧/複素電流に、増幅率が伝達関数に名前を変えただけです。
さて、反転増幅器を交流理論で考えると、抵抗RをインピーダンスZに書き換えて、下図のようになります。
入力に@交流電圧Eが加わると、AE/ZINの電流が流れ、その電流がそのまま帰還回路にも流れるため、出力電圧は、BE×ZF/ZINとなります。出力/入力が伝達関数ですから、C伝達関数は、ZF/ZINと極めてシンプルになります。(極性は無視しています)
このように、入力回路と帰還回路のインピーダンスの比が、そのまま回路の伝達関数になるため、思い通りの特性の回路を作ることができるのです。たとえば、後に説明する下図の回路は、
このように、並列インピーダンスと直列インピーダンスの計算だけ知っていれば、伝達間巣を求めることができます。そして、伝達関数さえ分れば、必要な特性をExcelで表示させることができます。
図中の式を見ても「分数が沢山出てきて、jも入ってるし、難しそうだ」という心配は全くありません。出てきた数式を体裁よく変形するという(学校で専ら練習する作業の)必要は無くて、そのままExcelに入力して値を求めれば良いのです。
上の伝達関数の値は、下図の簡単なExcelシートで求める事ができます。下図のシートでは、画面左上B2セルに、ωの値があり、この値を後で変化させて周波数特性を計算します。その2つ下のB4セルにはこのシートの計算結果である、ωに対応した伝達関数の値が表示されます。
B6〜B11は抵抗値やコンデンサ容量です。C6〜D11セルでは、使われる素子のインピーダンスやアドミタンスを表示させています。いずれか簡単な方(抵抗ならインピーダンス、コンデンサならアドミタンス)を計算し、他方は逆数を計算して表示させています。
これら素子の値を元に、C13セル〜D14セルでは入力回路のインピーダンス、C16セル〜D17セルは帰還回路のインピーダンスを計算しています。既に素子のインピーダンスとアドミタンスの両方が表示されているので、直列部分はインピーダンスを足し算、並列部分はアドミタンスを足し算するだけです。はっきり言って、一度式を立てて素子の値を代入するより、回路図から上のようなExcelシートを作る方が余程楽です。
このようにして求めた、帰還回路のインピーダンスを、入力回路のインピーダンスで割れば、B4セルの伝達関数の値を求めることができます。
後は、周波数ωの値を様々に変化させてグラフを描くだけですが、手入力では手間が掛かりますから、マクロを使います。ここでは、標準モジュールに次のようなマクロを作っています。このマクロは、ω(B2セル)の値を次々と変化させて、その時のG(jω)(B4セル)の値を取り出し、F列とG列に並べて保存します。
Option Explicit
Public Sub 計算() Dim i As Long Dim omega As Double For i = 0 To 100 omega = 10 ^ ((i - 50) / 5) Worksheets("Sheet1").Range("B2").Value = omega Worksheets("Sheet1").Cells(i + 2, 6) = omega Worksheets("Sheet1").Cells(i + 2, 7) = Worksheets("Sheet1").Range("B4").Value Next End Sub |
メニューバーから「計算」マクロを実行することもできますし、ツールバーにボタンを設けて、クリック一発で実行することもできます。
マクロの実行:「メニューバー」→「ツール」→「マクロ」→「マクロ」→(マクロを選択して)→「実行」
マクロのツールバーへの登録:「メニューバー」→「ユーザー設定」→「コマンド」タブの「分類」ボックスで「マクロ」選択し、「コマンド」ボックスに表示される「ユーザー設定のメニュー項目」を上部のツールバーにドラッグドロップした後、ドロップしてできた「ユーザー設定のメニュー項目」を右クリックして「マクロの登録」を選び、「計算」マクロを設定
マクロを実行すると、F列にωの値が、G列にωに対応した伝達関数の値(G(jω))が表示されますから、位相でも利得でも、好きな物を計算させてグラフに表示できます。下図はωから周波数を、G(jω)から利得を計算して表示した例です。
下図のように反転増幅器を応用して、複数の入力電圧の合計を出力することができます。
上図の回路の動作を、下表に書き込みながら検討してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
+入力の電圧は、(アースに接続されているから、) |
V |
A |
+入力と−入力の電圧差は、 (1kΩで負帰還が掛かっているから、) |
V |
B |
−入力の電圧は、 |
V |
C |
R1の両端電圧は、 |
V |
D |
R1に流れる電流は、 |
mA |
E |
R2の両端電圧は、 |
V |
F |
R2に流れる電流は、 |
mA |
G |
−入力に流れる電流は、 |
mA |
H |
R3に流れる電流は、 (D、F、Gとキルヒ則から、) |
mA |
I |
R3の両端電圧は、 |
V |
J |
出力電圧は、 |
V |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
+入力の電圧は、(アースに接続されているから、) |
0V |
A |
+入力と−入力の電圧差は、 (1kΩで負帰還が掛かっているから、) |
0V |
B |
−入力の電圧は、 |
0V |
C |
R1の両端電圧は、 |
1V |
D |
R1に流れる電流は、 |
1mA |
E |
R2の両端電圧は、 |
2V |
F |
R2に流れる電流は、 |
2mA |
G |
−入力に流れる電流は、 |
0mA |
H |
R3に流れる電流は、 (D、F、Gとキルヒ則から、) |
3mA |
I |
R3の両端電圧は、 |
3V |
J |
出力電圧は、 |
−3V |
このように、入力1と入力2に加わった電圧の合計が、反転して出力されます。入力の下図はさらに増やすこともできます。また、入力抵抗の右側は0Vの−入力に接続されているため、入力1の信号が入力2に逆流することもありません。
下図は「正入力」と「負入力」の差を出力する「差動増幅回路」です。このように、R1〜R4の全抵抗に同じを使用すると、増幅率が1になります。
下図の例では、「負入力」には3V、「正入力」には(負入力より1V高い)4Vが加わっています。「正入力」と「負入力」の差は1Vです。
上図を参考に、下表に書き込んで差動増幅回路の動作を検討してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
+入力の電圧は、 (正入力の4VがR3とR4で分圧されているから、) |
V |
A |
+入力と−入力の間の電圧は、 R2で負帰還が掛かっているから、 |
V |
B |
−入力の電圧は、 |
V |
C |
R1の両端電圧は、 |
V |
D |
R1に流れる電流は、 |
mA |
E |
−入力に流れる電流は、 |
mA |
F |
R2に流れる電流は、(D、Eとキルヒ則から、) |
mA |
G |
R2の両端電圧は、 |
V |
H |
出力電圧は、(EとGから、) |
V |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
+入力の電圧は、 (正入力の4VがR3とR4で分圧されているから、) |
2V |
A |
+入力と−入力の間の電圧は、 R2で負帰還が掛かっているから、 |
0V |
B |
−入力の電圧は、 |
2V |
C |
R1の両端電圧は、 |
1V |
D |
R1に流れる電流は、 |
1mA |
E |
−入力に流れる電流は、 |
0mA |
F |
R2に流れる電流は、(D、Eとキルヒ則から、) |
1mA |
G |
R2の両端電圧は、 |
1V |
H |
出力電圧は、(EとGから、) |
1V |
差動増幅回路は、下図(a)に示すとおり負入力をアースに接続すると、2倍の非反転増幅回路と、2分の1の分圧回路だと考えることができます。ですから、正入力に2Vを入力すれば、それが分圧されて1Vとなり、2倍に増幅されて2Vが出力されます。
また、上図(b)に示すとおり正入力をアースに接続すると、1倍の反転増幅回路と、2分の1の分圧回路だと考えることができます。ですから、負入力に2Vを入力すれば、それが反転されて−2Vが出力されます。
このように、正入力に加えた電圧は反転されずに出力され、負入力に加えた電圧は反転して出力されます。その結果、正入力と負入力の差が出力されます。
差動増幅回路で電圧差を増幅して出力する場合は、下図のように R2 = 増幅率 × R1 とします。(R1=R3、R2=R4とします)ですから、下図の回路の増幅率は10倍です。
差動増幅回路は入力端子に電流が流れて動作するため、測定する回路に影響を与えます。これを防止するには、次に説明する計測増幅回路を使います。
計装増幅回路(インスツルメンテーション・アンプ/計測装置増幅回路)は、下図に示すように、差動増幅回路の前段に反転増幅回路を追加し、入力に流れる電流を小さく(入力インピーダンスを高く)したものです。R5=R6とし、R7で増幅率を設定できます。
上図の計装増幅回路の正入力をアースに接続し、負入力に0.1Vを加えた場合の各部の電圧/電流を、下表に書き込みながら検討してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
U1の+入力と−入力の電圧差は、 (R6で負帰還が掛かっているので、) |
V |
A |
U1の−入力の電圧は、 |
V |
B |
U2の+入力と−入力の電圧差は、 (R5で負帰還で掛かっているので、) |
V |
C |
U2の−入力の電圧は、 |
V |
D |
R7の両端電圧は、 (AとCから、) |
V |
E |
R7に流れる電流は、 |
mA |
F |
U1の−入力に流れる電流は、 |
mA |
G |
R6に流れる電流は、 (E、Fとキルヒ則から、) |
mA |
H |
R6の両端電圧は、 |
V |
I |
U1の出力端子の電圧は、 |
V |
J |
U2の−入力に流れる電流は、 |
mA |
K |
R5に流れる電流は、 (C、Eとキルヒ則から、) |
mA |
L |
R5の両端電圧は、 |
V |
M |
U2の出力端子の電圧は、 |
V |
N |
U1の出力端子から、U2の出力端子までの電圧は、 |
V |
O |
U3の出力電圧は、 (1倍の差動増幅回路だから、) |
V |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
U1の+入力と−入力の電圧差は、 (R6で負帰還が掛かっているので、) |
0V |
A |
U1の−入力の電圧は、 |
0V |
B |
U2の+入力と−入力の電圧差は、 (R5で負帰還で掛かっているので、) |
0V |
C |
U2の−入力の電圧は、 |
0.1V |
D |
R7の両端電圧は、 (AとCから、) |
0.1V |
E |
R7に流れる電流は、 |
0.1mA |
F |
U1の−入力に流れる電流は、 |
0mA |
G |
R6に流れる電流は、 (E、Fとキルヒ則から、) |
0.1mA |
H |
R6の両端電圧は、 |
1V |
I |
U1の出力端子の電圧は、 |
−1V |
J |
U2の−入力に流れる電流は、 |
0mA |
K |
R5に流れる電流は、 (C、Eとキルヒ則から、) |
0.1mA |
L |
R5の両端電圧は、 |
1V |
M |
U2の出力端子の電圧は、 |
1.1V |
N |
U1の出力端子から、U2の出力端子までの電圧は、 |
2.1V |
O |
U3の出力電圧は、 (1倍の差動増幅回路だから、) |
−2.1V |
このように、前段の非反転増幅回路の差動信号増幅率は(R5+R6)/R7となります。
下図右側に太い灰色線で示すように、オペアンプ本体の周波数(利得)特性は、右肩下がりです。これは、ハンドルを回して電圧を上げ下げするのに時間が掛かるためです。(ハンドルを回す速さは一定ですから、上げ下げの頻度が増すほど、少ししか回せなくなります)
下図左側に非反転増幅器を示します。同図に示すとおり、使用する抵抗によって増幅率を幅広く設定することができます。下図の例では、帰還抵抗を9kΩ、99kΩ、999kΩと変更することで10倍、100倍、1000倍と設定しています。
このように、抵抗値によっては高い増幅率を得ることができますが、上図右側のグラフに灰色線で示す「オペアンプ本体の周波数特性」より大きな増幅率は出せません。このため、増幅率を大きくするほど、遮断周波数(ここから増幅率が下がるぞ、という周波数)が低くなって行きます。上の例では、倍率を10倍、100倍、1000倍と大きくすると、遮断周波数は100kHz、10kHz、1kHzと低くなっています。
このように回路を設計する上でオペアンプ本体の周波数特性は重要です。このためデータシートでは下表のような様々な方法で周波数特性が示されます。
名称や単位 |
説明 |
上図の例 |
周波数特性図 |
グラフで図示される |
上図右側灰色のグラフ |
ユニティゲイン周波数 [Hz] |
(負帰還を掛けないときに)増幅率が1倍(利得が0dB)になる周波数(下図@) |
1MHz |
GB積 ゲインバンドウィズ [Hz] |
(負帰還を掛けないときの)最高の増幅率と増幅率が下がり始める周波数の積(下図A) |
10Hz×10万倍(100dB) =1MHz |
ある周波数(任意)での周波数と増幅率の積(下図B) |
10kHz×100倍 =1MHz |
※最高の増幅率は、負帰還を掛けないときの直流の増幅率で「オープンループ(負帰還なしの)ゲイン」とも呼ばれます。
遮断周波数が高く、そのうえ増幅率も大きい増幅器を設計するには、下図上側のように、周波数特性の優れオペアンプを使うか、下図下側のように、増幅率を抑え(て遮断周波数を高め)た増幅回路を複数接続します。下図は上下共に、電圧増幅率1000倍、遮断周波数100kHzの増幅器の例です。
オープンループゲイン80dB、GB積300kHzのオペアンプの周波数特性を下図に点線で作図し、このオペアンプを使って作った100倍の増幅器の周波数特性を実線で書き加え、増幅器の遮断周波数(カットオフ周波数)を答えてください。
カットオフ周波数(fC) kHz
80dBは電圧10000倍の事である。GB積300kHzを最大の増幅率10000倍で割ると、30Hzとなるから、このオペアンプは30Hz以上の周波数で利得が低下して行く。最大の利得が80dBであることを考えて、下図点線のように作図できる。
カットオフ周波数(fC) 3kHz
電圧100倍は40dBだから、増幅器の利得はオペアンプ本体の利得を越えられない事を考えて、周波数特性は上図実線のようになり、図よりfCは3kHzと分かる。
必要以上に高い周波数まで増幅できると、ラジオの電波を受信して誤動作する場合がありますし、雑音も多くなります。また増幅率が低い場合は、下図に示すようなオーバーシュートが出る場合もあります。
このような場合、下図左側の回路図に示すとおり、帰還抵抗と並列に小さな容量の帰還コンデンサを接続すると、不要な高い周波数の増幅を抑え、オーバーシュートを無くすことができます。
上図右側のグラフの点線がコンデンサの無い状態、実線がコンデンサを取り付けた場合の周波数特性です。33kΩと150pFで決まる周波数(fC)より高い周波数で増幅率が下がって行きます。
コンデンサの容量は、=1/2/PI()/F1/C1、上の例では=1/2/PI()/32E3/33E3で求める事ができます。(fCは=1/2/PI()/C1/R1です)
使用する上限の周波数の2〜5倍程度で帯域を制限しておくのが、安定動作のコツです。
下図の反転増幅器の増幅率を5倍とし、帯域を10kHzに制限できるよう、帰還抵抗と帰還コンデンサの値を決定し、増幅器の周波数特性をグラフに書き加えてください。
帰還抵抗は=5*3.3E3で16.5kΩ、 帰還コンデンサは=1/2/pi()/10E3/16.5E3で、1000pF。参考までに、電圧増幅率5倍は=20*LOG(5,10)で約14dB。
たとえば下図のように、1Vを入力すると1秒に1Vの勢いで、2Vを入力すると1秒に2Vの勢いで、出力が上昇し続ける回路を積分回路と呼びます。入力が0Vの場合は、出力電圧は変動しません。
デジタル計算機が無い時代には、シミュレーションをするために重要な回路で、オペアンプはこの回路を作るために開発されたとも言えます。
オペアンプを使った積分回路を下図に示します。
この回路は、入力電圧が高い程、出力電圧が勢い良く「下がる」ので、名前こそ「積分回路」と呼ばれていますが、働きは「反転積分回路」です。
動作のイメージは、入力電圧に比例した電圧がRに流れ、その電流でCが充電され、Cの電圧が(反転して)出力電圧になる。そのため、一定の電圧を加えると、一定のペースでCが充電され、出力電圧が降下する、というものです。
今まで説明した、直流回路や交流回路の考え方を使って、電圧の変化や伝達関数を求める事ができますが、その詳細を説明するのは本書の主目的ではないので後回しにし、設計に必要な値の求め方を先に紹介します。
上図の回路の、抵抗Rやコンデンサ容量Cは、入力電圧と、出力電圧の降下速度から、次のように計算できます。
C × R = 入力電圧[V] ÷ 出力電圧の降下速度[V/秒]
また、この回路は上図右側のグラフのように、周波数が上昇すると増幅率が低下します。増幅率が低下して1倍(0dB)になる周波数から、CやRは次のように計算できます。
C × R = 1 /(2 π × 増幅率が1倍となる周波数[Hz])
=1/2/pi()/F1[秒]
また逆に、
増幅率が1倍となる周波数[Hz]= 1 /(2 π ×C × R)
=1/2/pi()/C1/R1[Hz]
と、計算することができます。C × Rは時定数τ(タウ)と呼んでいるものです。
積分回路は安定動作する場合が多く、特に安定のための工夫せずに応用することができます。
ただし、数秒から数十秒を越える、極めてゆっくりと時間を掛けて動作する積分回路では、コンデンサの電荷が(小さな穴の開いたバケツのように)漏れてしまい、出力電圧が不正確になる場合があります。このような場合は、漏れ電流の少ないコンデンサ(ポリプロピレンフィルムコンデンサ等)を使い、空中に配線するなどの工夫をします。このような回路は、オペアンプやコンデンサ、それに基板が汚れているだけで(汚れを通して)電流が漏れてしまうので、フラックス除去液等で綺麗に清掃します。
上図に示すとおり、0.01μFのコンデンサを使って、入力10mVを加えたとき、200m秒の間で、出力電圧が5V降下する積分回路を、下表に記入して設計してください。また、この積分回路の周波数特性を上図右側のグラフに記入してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
出力電圧の降下速度は、 |
V/秒 |
A |
このときの入力電圧は、 |
mV |
B |
C×Rの値(時定数)は、 |
μ秒 |
C |
コンデンサは0.01μFだから抵抗の値は |
kΩ |
D |
増幅率が1倍となる周波数は、 |
Hz |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
出力電圧の降下速度は、5V/200m秒で、 =5/200E-3 |
25V/秒 |
A |
このときの入力電圧は、 |
10mV |
B |
C×Rの値(時定数)は、10mV÷25V/秒で =10E-3/25 |
400μ秒 |
C |
コンデンサは0.01μFだから抵抗の値は 400μ秒/0.01μFで=400E-6/0.01E-6 |
40kΩ |
D |
増幅率が1倍となる周波数は、2/(2πCR) =1/2/pi()/0.01E-6/40E3 |
398Hz |
既に説明した方法で積分回路は設計できます。
ここでは、直流回路を復習するために、積分回路の動作を直流検討します。既に知っている回路を使うときは、このような検討は必要ありません。しかし、知らない回路に出会ったときは、直流回路を知識を使って、動作を考えることができます。
ただし、こういった説明は、教科書的で退屈な上、直ぐには役に立たないので、毎回このような検討を行うことは控えます。「知らない回路が出てきたら、直流理論と交流理論だ」とだけ覚えといて下さい。
さて、上図の積分回路は、帰還コンデンサを通じて、出力電圧が−入力端子に回り込んでいますから、負帰還の回路です。上図の回路を、下表の値欄に書き込んで直流検討してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
+入力と−入力の電圧は、負帰還だから、 |
+入力 −入力 |
A |
A点の電圧は、 |
[V] |
B |
抵抗の両端電圧は、 |
[mV] |
C |
抵抗に流れる電流は、オーム則より、 |
[μA] |
D |
−入力端子に流れる電流は、 |
[A] |
E |
コンデンサに流れる電流は、キルヒ則より、 |
[μA] |
F |
コンデンサに1秒に流れ込む電荷は、 (1A=1C/秒だから、) |
[μC/秒] |
G |
コンデンサの電圧の1秒あたりの上昇は、 (コンデンサの電圧=電荷[C]/容量[F]だから、コップに流れ込む水を想像して、) |
[V/秒] |
H |
出力電圧の1秒あたりの変化は、 (コンデンサの電圧矢印の向きに注意して、) |
[V/秒] |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
+入力と−入力の電圧は、負帰還だから、 |
+入力=−入力 |
A |
A点の電圧は、 |
0[V] |
B |
抵抗の両端電圧は、 |
200[mV] |
C |
抵抗に流れる電流は、オーム則より、=200E-3/100E3 |
2[μA] |
D |
−入力端子に流れる電流は、 |
0[A] |
E |
コンデンサに流れる電流は、キルヒ則より、 |
2[μA] |
F |
コンデンサに1秒に流れ込む電荷は、 (1A=1C/秒だから、) |
2[μC/秒] |
G |
コンデンサの電圧の1秒あたりの上昇は、 (コンデンサの電圧=電荷[C]/容量[F]だから、コップに流れ込む水を想像して、)=2E-6/1E-6 |
2[V/秒] |
H |
出力電圧の1秒あたりの変化は、 (コンデンサの電圧矢印の向きに注意して、) |
−2[V/秒] |
ここでは、交流回路を復習するために、積分回路の動作を交流検討します。
上図の回路に複素電圧 を加えたと考えて、下表の答欄に、表の最下部にある候補から選んだ文字や式を書き込んで交流検討し、伝達関数を求めてください。
番号 |
質問 |
答 |
@ |
+入力と−入力の電圧は、負帰還だから、 |
+入力 −入力 |
A |
A点の電圧は、 |
[V] |
B |
抵抗の両端電圧は、 |
[V] |
C |
抵抗Rに流れる電流は、オーム則より、 |
[A] |
D |
−入力端子に流れる電流は、 |
[A] |
E |
コンデンサCに流れる電流は、キルヒ則より、 |
[A] |
F |
コンデンサCの複素インピーダンスは、 |
[Ω] |
G |
コンデンサの両端電圧は、オーム則より、 |
[V] |
H |
出力端子の電圧は、 コンデンサの電圧の矢印の向きを考えて、 |
[V] |
I |
伝達関数は、 (1+j0Vを入力したときの出力だから、) |
|
0 1 > < = |
番号 |
質問 |
答 |
@ |
+入力と−入力の電圧は、負帰還だから、 |
+入力=−入力 |
A |
A点の電圧は、 |
0[V] |
B |
抵抗の両端電圧は、 |
[V] |
C |
抵抗に流れる電流は、オーム則より、 |
[A] |
D |
−入力端子に流れる電流は、 |
0 [A] |
E |
コンデンサに流れる電流は、キルヒ則より、 |
[A] |
F |
コンデンサの複素インピーダンスは、 |
[Ω] |
G |
コンデンサの両端電圧は、オーム則より、 |
[V] |
H |
出力端子の電圧は、 コンデンサの電圧の矢印の向きを考えて、 |
[V] |
I |
伝達関数は、 (1+j0Vを入力したときの出力だから、) |
|
たとえば下図のように、入力が1秒に1V上昇していると1Vを、1秒に2V低下していると−2Vを出力する回路を微分回路と呼びます。つまり、入力が上下する勢いを出力する回路です。
オペアンプを使った微分回路を下図に示します。
この回路は、入力電圧が勢い良く上昇する程、出力電圧が「低く」なるので、名前こそ「微分回路」と呼ばれてはいますが、働きは「反転微分回路」です。
動作のイメージは、入力電圧の変動に比例した電流がCに流れ、その電流がRに流れて、その結果Rに発生した電圧が(反転して)出力電圧になる。そのため、入力が一定速度で変動すると、Cに一定の電流が流れて、出力に一定の電圧が現れる、というものです。
出力電圧は、入力電圧の上昇速度、抵抗R、コンデンサ容量Cから次のように計算できます、
出力電圧[V] = 入力電圧の降下速度[V/秒] × C × R
=E1*C1*R1[V]
逆にCやRの値は、
C × R = 出力電圧[V]/ 入力電圧の降下速度[V/秒]
この回路は上図右側のように、周波数が下がると増幅率が低下します。増幅率が低下して1倍(0dB)となる周波数は、
増幅率が1倍となる周波数 =1/(2π × C × R)[Hz]
=1/2/pi()/C1/R1[Hz]
逆にCやRの値は、
C × R = 1/(2π × 増幅率が1倍となる周波数)
=1/2/pi()/F1
で計算することができます。
さて微分回路は、上図右のグラフに示すように、周波数が上がると増幅率も上昇(微分回路として動作)するものの、オペアンプ本来の周波数特性を越えて大きく増幅することはできず、高い周波数では、周波数が上がると増幅率が低下してしまいまうす。
このとき、オペアンプ本体の増幅率が下がって行く高い周波数で、上図のグラフに点線で示すように、無理に増幅率を上げようとするため、微分回路は(発振する等)不安定になりやすく、安定させるために下図のように工夫して使います。
上図の回路では、入力に1.6kΩを追加することで、上図右側のグラフに示すように、1kHz以上の周波数で増幅率が上がらないようにし(あるいは、増幅率の上限を100倍に制限して)、周波数特性を平らにしています。これによって「無理に高い周波数の増幅率を上げようとする」ことがなくなり、回路が安定します。
下図右の特性を持つ、下図左の微分回路を、下表に記入しながら設計してください。微分回路として動作する周波数は、どのような周波数の範囲ですか?
微分回路として動作する周波数の範囲 Hz〜 Hz
番号 |
質問 |
値 |
@ |
帰還抵抗の値は、1Hzで増幅率が1倍となり、コンデンサが0.1μFだから、 |
MΩ |
A |
入力抵抗の値は、100Hzから上で、利得が平らになるから、 |
kΩ |
B |
周波数と共に増幅率が上昇する部分が微分回路として働いているから、微分回路として動作する上限の周波数は、 |
Hz |
微分回路として動作する範囲 0Hz〜 100Hz
(0Hzとは直流の事)
番号 |
質問 |
値 |
@ |
帰還抵抗の値は、1Hzで増幅率が1倍となり、コンデンサが0.1μFだから、=1/2/pi()/1/0.1E-6 |
1.6MΩ |
A |
入力抵抗の値は、100Hzから上で、利得が平らになるから、=1/2/pi()/100/0.1E-6 |
16kΩ |
B |
周波数と共に増幅率が上昇する部分が微分回路として働いているから、微分回路として動作する上限の周波数は、(グラフには1Hz以下の部分は描かれていませんが、いくら低い周波数でも動作します) |
100Hz |
非反転増幅器や反転増幅器は、直流も増幅できるので、下図上側(b)のように、入力に含まれる直流まで増幅します。例えば、部屋の明るさを測定する場合等は、このように直流も増幅する回路が必要です。
逆にマイクで拾った音声を増幅する場合は、直流は全く必要がなく、逆に有害です。なぜなら、マイクの出力信号は、2V程度の直流の中に、1mV程度の小さい音声(交流)が入っている場合も多いのです。このため、そのまま1000倍に増幅したのでは、2000Vの直流の中に、1Vの交流が入っている状態となり、増幅器の出力は振り切ってしまいます。
そこで、上図下側(c)のように、直流は捨て去って、交流だけを増幅する回路が使用されます。これが交流増幅回路です。
上図(c)や(d)図を見ても、実にすっきりした出力信号が得られることが分ります。このように、直流が不要で、逆に有害な場合は多いので、交流増幅回路は頻繁に使用されます。
入力の波(上図(a))と同じタイミングで出力の波が上下する(上図(c))タイプを「交流増幅回路」、逆のタイミングで出力の波が上下する(上図(d))タイプが「交流反転増幅回路」です。交流増幅回路の場合、反転と非反転を区別しない場合もあります。
下図下側(b)に示す反転交流増幅回路は、下図上側(a)の微分回路と同じ構成です。両者の違いは、微分回路は下図(a)のグラフに太線で示す「周波数が上がると利得も上がる」部分(微分動作)を使用しますが、交流増幅器は(b)のグラフに太線で示す「周波数が変わっても利得が一定」の部分(増幅動作)を使用する、という点です。
上図(b)の交流反転増幅回路の、グラフの平らな部分(増幅動作の部分)の増幅率は、反転増幅回路と同じように考えて、
増幅率 = 帰還抵抗 / 入力抵抗
330k / 3.3k = 100倍(40dB)
=330E3/3.3E3
と計算することができます。
また上図(b)の、グラフの平らな部分の左端の周波数(fC2)は、入力抵抗Rと入力コンデンサCの値から、
平らな部分の左端の周波数 = 1/(2π × C × R)
1 /(2π × 4.8μF × 3.3kΩ) = 10Hz
=1/2/PI()/4.8E-6/3.3E3
と計算することができます。
10Hz以下では増幅率がどんどん下がって行きますから、増幅したい信号が、10Hzより高くなければいけません。
さて、この下限の周波数設定で注意する事があります。下図は10Hz(fC2)付近の増幅率のグラフを拡大したものです。
=100*IMABS(IMDIV(1,IMSUM(1,IMDIV(1,COMPLEX(0,F1/10)))))% F1:周波数
カットオフ周波数近傍での増幅率
増幅率は、上図に点線で示すように、10Hz以上ですぐに平らになるのではなく、実線で示すように(角に丸みが付いているため)10Hzでも振幅は70%程度(−3dB)に小さくなっています。そして20Hz、つまりfC2の2倍の周波数になって、ようやく90%になります。ですから、10Hz以上の信号を増幅するときに、fC2を10Hzに設定すると、10Hzの信号で増幅率が3割減となります。
とはいえ、むやみに(0.01Hz等と)fC2を極めて低く設定すると(もちろん、低い周波数も確実に増幅できますが)電源を入れたりケーブルを接続してから、回路が安定するまで時間が掛かり、その間出力が振り切ったりしますから注意が必要です。
つまり普通の用途であれば、fC2は「必要な信号が弱まらない範囲で、できるだけ高く」設定しておくと問題が少ないです。
下図の回路を用いて、増幅率10倍の交流反転増幅器を作ります。扱う信号は100Hz以上ですが、100Hzの信号でも増幅率を95%確保します。下表に書き込みながら、設計して下さい。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
増幅率を10倍にするためには、入力抵抗の値は、 |
kΩ |
A |
100Hzの信号で95%の振幅を確保したいから、 上の「カットオフ周波数近傍での増幅率」のグラフより、 100HzはfCの何倍となっているか、 |
倍 |
B |
入力抵抗と入力コンデンサで決まるfCの値は、 |
Hz |
C |
入力コンデンサの値は、 |
μF |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
増幅率を10倍にするためには、入力抵抗の値は、 =100E3/10 |
10kΩ |
A |
100Hzの信号で95%の振幅を確保したいから、 上の「カットオフ周波数近傍での増幅率」のグラフより、 100HzはfCの何倍となっているか、 既出の「カットオフ周波数近傍での増幅率」のグラフより、3倍
|
3倍 |
B |
入力抵抗と入力コンデンサで決まるfCの値は、 100Hz÷3=33Hz |
33Hz |
C |
入力コンデンサの値は、 =1/2/PI()/10E3/300 |
0.48μF |
下図上側は2電源の2倍の交流反転増幅回路です。入力がプラスのときは出力がマイナスに、入力がマイナスのときは出力がプラスになり、正常に動作しています。
上図下側は、同じ増幅器を単電源で使用した様子です。単電源ではマイナスの電圧が出力できないため、入力がプラスのときは出力に信号が現れません。
単一電源で交流反転増幅回路を正しく動作させるために、下図に示すような「+入力端子に電圧を加える」回路が良く利用されます。このとき加える電圧を「バイアス電圧」と呼びます。
バイアスを加えた単一電源の交流反転増幅回路の無信号時の出力電圧を、上図を参考に下表に書き込んで確認してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
+入力端子の電圧は、 (電源電圧を2本の10kΩで分圧しているから、) |
V |
A |
+入力と−入力の電圧差は、 (負帰還の回路だから、) |
V |
B |
−入力端子の電圧は、 |
V |
C |
入力抵抗に流れる直流は、 (コンデンサは直流を通さないから、) |
A |
D |
帰還抵抗に流れる直流は、 (オペアンプの入力には電流が流れないから、) |
A |
E |
帰還抵抗の両端電圧は、 |
V |
F |
無心号時の出力電圧(出力バイアス電圧)は、 |
V |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
+入力端子の電圧は、 (電源電圧を2本の10kΩで分圧しているから、) |
6V |
A |
+入力と−入力の電圧差は、 (負帰還の回路だから、) |
0V |
B |
−入力端子の電圧は、 |
6V |
C |
入力抵抗に流れる直流は、 (コンデンサは直流を通さないから、) |
0A |
D |
帰還抵抗に流れる直流は、 (オペアンプの入力には電流が流れないから、) |
0A |
E |
帰還抵抗の両端電圧は、 |
0V |
F |
無心号時の出力電圧(出力バイアス電圧)は、 |
6V |
このように、+入力にバイアス電圧を加える交流反転増幅回路では、出力端子の電圧は加えたバイアス電圧と同じになります。
C2が無いと、電源電圧の僅かな変動が増幅されて、出力に大きくなって現れます。下図は、電源電圧に2mVの変動のある1000倍の単電源交流反転増幅器です。下図を参考に下表に書き込んで、出力電圧の変動を求めてください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
電源電圧の変動が2mVP−Pあるとします。 |
− |
A |
C2は無いと考えて、+入力の電圧変動は、 (電源を2本の10kΩで分圧しているから、) |
mVP−P |
B |
+入力端子と−入力端子の電圧差は、 |
V |
C |
−入力端子の電圧変動は、 |
mVP−P |
D |
入力抵抗の両端電圧の変動は、 (無信号、つまり入力はアースに接続されているから、) |
mVP−P |
E |
入力抵抗(1k)に流れる電流の変動は、 (C1は十分大きいとして、) |
μAP−P |
F |
帰還抵抗(1M)に流れる電流の変動は、 (オペアンプの入力には電流が流れないから、) |
μAP−P |
G |
帰還抵抗の両端電圧の変動は、 |
VPーP |
H |
出力電圧の電圧変動は、 |
VP−P |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
電源電圧の変動が2mVP−Pあるとします。 |
− |
A |
C2は無いと考えて、+入力の電圧変動は、 (電源を2本の10kΩで分圧しているから、) |
1mVP−P |
B |
+入力端子と−入力端子の電圧差は、 |
0V |
C |
−入力端子の電圧変動は、 |
1mVP−P |
D |
入力抵抗の両端電圧の変動は、 (無信号、つまり入力はアースに接続されているから、) |
1mVP−P |
E |
入力抵抗(1k)に流れる電流の変動は、 (C1は十分大きいとして、) |
1μAP−P |
F |
帰還抵抗(1M)に流れる電流の変動は、 (オペアンプの入力には電流が流れないから、) |
1μAP−P |
G |
帰還抵抗の両端電圧の変動は、 |
1VPーP |
H |
出力電圧の電圧変動は、 |
1VP−P |
このように、バイアス電圧の変動は、増幅されて出力に現れます。ですから、増幅率が大きい場合は、容量の大きなC2を取り付けて、バイアス電圧の変動を小さくします。
たとえ安定化電源を使っていても、電源から回路までの配線の(電線の抵抗値の)影響等で、数mVの変動はしばしば生じます。ですから、増幅率が大きい場合は、R3//R4とC2で決まる時定数τが、0.1〜1秒になるようにC2を決める場合が大半です。(それ以上大きいと、回路が安定するまでに時間が掛かります)
τ =( R3 // R4 )× C2 = 0.1 〜 1 (「//」は並列合成抵抗のマーク)
Excelでは、=1/(1/R3+1/R4)*C2 が 0.1〜1秒
C2の容量は、
C2 = 0.1〜1 ÷ ( R3 // R4 )
Excelでは、=T1*(1/R3+1/R4)
上図の回路で、時定数τが1秒になるように、C2を決定して下さい。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
R3とR4の並列合成抵抗は、 |
kΩ |
A |
時定数が1秒とするから、C2の値は、 |
μF |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
R3とR4の並列合成抵抗は、 =1/(1/10E3+1/10E3) |
5kΩ |
A |
時定数が1秒とするから、C2の値は、 =1/5E3 |
200μF |
周波数によって利得等が変化する回路をフィルタと呼びます。不要な周波数の信号を取り除いたり、希望の信号だけを選択したり、波形を整えたり、様々な用途で使われます。
既に説明した積分回路、微分回路、帯域制限、交流増幅回路も、1次のフィルタの一種です。このように1次のフィルタには、多くの種類がありますが、殆どの場合1つのオペアンプで構成できます。下図に代表的な1次フィルタの回路と周波数特性を示します。
上図の上段が積分系のフィルタ、下段が微分系のフィルタで、中段は積分と微分双方の性質を備えたフィルタです。左から右に行くに従って素子が追加され、それによって周波数特性の折れ曲がり箇所が増えてゆきます。
1次のフィルタは、いずれも6dB/oct(周波数10倍で増幅率10倍(あるいは10分の1))の割合でしか、増幅率が変化しません。これ以上急激に変化させたいときは、1次のフィルタを複数接続したり、2次以上のフィルタを利用します。
すでに説明した下図の「帯域制限」の回路が、実は1次ローパスフィルタです。
上の回路では、帰還回路(後ろ側)のCとRで決まる周波数1/2πCR[Hz]より高い周波数で、増幅率が低下して行きました。
下図を用いて、その理由を説明します。下図では帰還回路のCとRで決まる周波数は1kHzです。
上図(a)に示す、周波数が100Hzと低い場合は、抵抗(1kΩ)に比べてコンデンサは10kΩと大きいので、電流は殆ど抵抗を通ります。このため、コンデンサは無いと考えてもかまいません。従って、この周波数では抵抗だけの回路となり、(反転増幅回路として動作して)増幅率は周波数によらず一定です。
上図(c)に示す、周波数が10kHzと高い場合は、抵抗(1kΩ)に比べてコンデンサが100Ωと小さいので、電流は殆どコンデンサを通ります。このため、抵抗は無いと考えてもかまいません。従って、この周波数ではコンデンサだけの回路となり、(積分回路として動作して)増幅率は周波数が高い程減少して行きます。
(a)と(c)の変わり目が、上図(b)です。このとき、抵抗とコンデンサのインピーダンス(の大きさ)が等しくなり、抵抗とコンデンサに同じ電流が流れます。
抵抗のインピーダンスはR[Ω]で、コンデンサのインピーダンス(の大きさ)が1/2πfC[Ω」でしたから、両方が同じになるとき、つまりR=1/2πfCとなる周波数はf=1/2πCRと計算することができます。
このように、周波数が変化して、コンデンサのインピーダンスが抵抗より十分大きく、あるいは十分小さくなると、どちらか一方だけに電流が流れ、そうでない方は「無い」と考えても良い状態になります。これによって、まるで回路を切り替えたようになり、反転増幅器だった動作が、高い周波数では積分回路の動作に切り替わるのです。
下図の、遮断周波数fC440Hz、増幅率2倍の1次ローバスフィルタのCRの値を、下表に記入しながら決定してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
増幅率を2倍にするためには、入力抵抗の値は、 |
kΩ |
A |
遮断周波数fCを440Hzにするために、帰還コンデンサの値は、 |
μF |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
増幅率を2倍にするためには、入力抵抗の値は、 |
66kΩ |
A |
遮断周波数fCを440Hzにするために、帰還コンデンサの値は、 =1/2/PI()/33E3/440 |
0.011μF |
すでに説明した下図の「交流反転増幅回路」が、実は1次ハイパスフィルタです。
上の回路では、入力回路(前側)のCとRで決まる周波数1/2πCR[Hz]より低い周波数で、周波数が下がる程増幅率が低下(周波数が上がる程増幅率が上昇)して行きました。
動作の仕組みはLPFと同様に前側の(入力回路の)抵抗とコンデンサのインピーダンスを比べて考えることができます。下図を用いて説明します。下図では入力回路のCとRで決まる周波数は1kHzです。
上図(a)に示す、周波数が低い場合は、抵抗に比べてコンデンサのインピーダンスが大きくなり、抵抗はショートしていると考えることができ、「無い」と考えてかまいません。従って、この周波数ではコンデンサだけの回路となり、(微分回路として動作して)周波数が上がると増幅率が上昇して行きます。
上図(c)の周波数が高い場合は、抵抗に比べてコンデンサのインピーダンスが小さいので、コンデンサはショートしていると考えることができ、「無い」と考えてかまいません。従って、この周波数では抵抗だけの回路となり、(反転増幅回路として動作して)増幅率は周波数が変化しても一定です。
抵抗値とコンデンサのインピーダンスが同じになる、上図(b)場合が、微分回路が反転増幅回路に切り替わる境目です。このとき、R[Ω]=1/2πfC[Ω」となり、境目の周波数は、f=1/2πCRと計算することができます。
下図に示すとおり、1次バンドパスフィルタ(BPF)は、1次LPFと1次HPFを組み合わせたものです。
上図(a)に示すように周波数の低い範囲では、入力回路(CR直列)では、抵抗に比べてコンデンサのインピーダンスが高く、抵抗はショートしていると考えることができ、入力コンデンサのみの回路と見ることができます。また帰還回路(CR並列)では、コンデンサのインピーダンスが高く、電流の大半は抵抗に流れるため、抵抗のみの回路と見ることができます。このため、周波数の低い部分では微分回路として動作し、周波数の上昇に伴って増幅率が上昇して行きます。
上図(c)に示すように周波数の高い範囲では、入力回路(CR直列)では、コンデンサのインピーダンスが低く、ショートしていると考えることができ、入力抵抗のみの回路と見ることができます。また、帰還回路(CR並列)では、コンデンサのインピーダンスが低く、電流の大半はコンデンサに流れるため、コンデンサのみの回路と見ることができます。このため、周波数の高い部分では積分回路として動作し、周波数の上昇に伴って増幅率が低下して行きます。
入力回路と帰還回路の双方で、抵抗値とコンデンサのインピーダンスが同じになる、上図(b)ときが、微分回路が積分回路に切り替わる境目です。このとき入力回路と帰還回路の各CRが同じインピーダンス、つまり、R[Ω]=1/2πfC[Ω」となり、これより、境目の周波数は、f=1/2πCRと計算することができます。
下図の、中心周波数fC440Hz、増幅率10倍の1次バンドパスフィルタのCRの値を、下表に記入しながら決定してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
増幅率を10倍にするためには、入力抵抗の値は、 |
kΩ |
A |
中心周波数fCを440Hzにするために、帰還コンデンサの値は、 |
μF |
B |
中心周波数fCを440Hzにするために、入力コンデンサの値は、 |
μF |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
増幅率を10倍にするためには、入力抵抗の値は、 =33E3*10 |
33kΩ |
A |
中心周波数fCを440Hzにするために、帰還コンデンサの値は、 =1/2/PI()/330E3/440 |
0.0011μF |
B |
中心周波数fCを440Hzにするために、入力コンデンサの値は、 =1/2/PI()/33E3/440 |
0.011μF |
組み合わフィルタは、入力回路や帰還回路に、より多くのCRが使用され、周波数特性に複数の折れ曲がりがある回路です。ここでは、正確な計算の方法ではなく、動作のイメージを説明します。
下図のように、帰還側にCR回路を設けて、周波数特性が何度も折れ曲がりつつ、右下りとなるフィルタもオペアンプ1つで作ることができます。
上図右側のグラフに@〜Eに示す、それぞれの周波数でのコンデンサのインピーダンスを、下図@〜Eに示します。
上図に太線で示すように、インピーダンスの変化によって、主役として作用する素子が交代し、増幅回路としての動作と、積分回路としての動作が交互に切り替わります。
これとは別に下図のように、入力側にCR回路を設けて、周波数特性が何度も折れ曲がりつつ、右上りとなるフィルタもオペアンプ1つで作ることができます。
上図では、周波数が高くなるに従って、@ABCの順で主役になる素子が切り替わり、上図右側のグラフに示す周波数特性が得られます。
さらに別の回路では、下図のように、入力側にも帰還側にもCR回路を設けて、周波数特性が何度も折れ曲がりつつ、上下するフィルタもオペアンプ1つで作ることができます。主役となる素子が変化して、反転増幅回路、微分回路、積分回路に動作が切り替わります。
上図のような組み合わせフィルタは一見複雑に見えますが、機能する素子が順に切り替わるだけで、動作は単純です。
下図左側の周波数特性を持つ、下図右側の組み合わせフィルタを例に、素子の切り替わりと回路の動作を、周波数の低い場合@から、周波数の高い場合Dへと向かって、下表で説明します。
周波数が高くなると(Cのインピーダンスが次第に高くなるため)、CとRが並列な部分では「Cが主に電流を流すため、Rを無視できる」また、CとRが直列な部分では「Cが短絡するため、Rだけが機能する」と考えます。
番号 |
@ |
A |
B |
C |
D |
|||||
周波数 |
低い |
→ |
→ |
→ |
高い |
|||||
素子の インピーダンス |
C2>R4 |
C2<R4 |
C2<R4 |
C2<R4 |
C2<R4 |
|||||
C2>R3 |
C2>R3 |
C2<R3 |
C2<R3 |
C2<R3 |
||||||
C1>R1 |
C1>R1 |
C1>R1 |
C1<R1 |
C1<R1 |
||||||
C1>R2 |
C1>R2 |
C1>R2 |
C1>R2 |
C1<R2 |
||||||
説明 |
周波数が十分低い時、C1C2は殆ど電流を流しません。このため回路図@のように、抵抗だけの増幅回路として動作し、周波数特性はグラフ@のように平らになります。 |
C2のインピーダンスがR4より小さくなると、電流は主にC2を流れ、回路図Aのように帰還回路にCの入った積分回路として動作し、周波数特性はグラフAのように、右下りとなります。 |
C2のインピーダンスがR3より小さくなると、帰還回路の主なインピーダンスはR3となり、回路図Bのように増幅回路として動作し、周波数特性はグラフBのように平らになります。 |
C1のインピーダンスがR1より小さくなると、電流は主にC1を流れ、回路図Cのように入力回路にCの入った微分回路として動作し、周波数特性はグラフCのように、右上りとなります。 |
C1のインピーダンスがR2より小さくなると、入力回路の主なインピーダンスはR2となり、回路図Dのように増幅回路として動作し、周波数特性はグラフDのように平らになります。 |
|||||
動作 |
増幅回路 |
積分回路 |
増幅回路 |
微分回路 |
増幅回路 |
|||||
増幅率[倍] |
(R3+R4)/(R1+R2) |
|
R3/(R1+R2) |
|
R3/R2 |
|||||
周波数[Hz] |
− |
1 / (2πC2R4) |
1 / (2πC2R3) |
1 / (2πC1R1) |
1 / (2πC1R2) |
− |
||||
実際の回路では、主役になる素子がはっきり切り替わらず、微妙な感じで移行して行く場合も多いです。例えば下図は、安物オーディオで低音と高音を増強する目的で利用した回路です。(出物のカナル型イヤホンで(音色は素敵なのに)低音と高音が弱かったので作りました)
さて上図左側の回路図を見ると、入力回路の2本の抵抗が同じ値ですし、帰還回路の2本の抵抗も3倍程度しか差がありません。そのため、「動作のイメージ」で説明したように、周波数によって素子を無視する訳に行きません。
このような場合、まず、上図右側の表のように、コンデンサを周波数でON/OFFするスイッチだと考えて増幅率を計算します。
つまり、コンデンサがどちらもOFF(とても低い周波数)では増幅率は0.45倍、周波数が少し上がって0.1μがONになると0.34倍、さらに周波数が上がって両方ともONになると0.68倍、と求めます。
その後で、コンデンサと抵抗で決まる周波数をそれぞれ計算し、(320Hz、110Hz、7.2kHz、7.2kHz)増幅率が変化を始める周波数として、上図右下のように、グラフに書き込みます。
帰還回路では、「変化を始める周波数」が320Hz,「変化を終える周波数」が110Hzと、「始め」と「終り」の値が逆になっています。これは、増幅率の段差が小さいためです。
入力回路でも、「変化を始める周波数」が7.2kHz,「変化を終える周波数」が7.2kと同じですが、これも、(帰還回路程では無いけれど)増幅率の段差が小さいためです。
このようにしてグラフに書き込んだ増幅率の直線の間を通るように、なだらかに曲線を描けば、大体の周波数特性を知ることができます。
もちろん、交流回路の知識を使って伝達関数を求め、Excelで正確無比な周波数特性を描くこともできます。しかし、学校のレポート以外では、それ程の精密さが求められた事はありません。
21. シュミット・トリガ(反転)
シュミットトリガは発明者の(オットー・シュミットさん)にちなんだ名前です。神経の研究をしていたシュミットさんは、刺激が一定のレベルを超えないと反応(トリガ)しないという神経の性質を電子回路で模倣するために、この回路を発明しました。
下図にシュミットトリガの例を示します。(ここでは5V単一電源で考えています)−入力に信号が入力された反転コンパレータの回路と似ていますが、シュミットトリガでは、出力から+入力に向かって「正帰還」抵抗が追加されています。
−入力に出力電圧が回り込む「負帰還」では、+入力と−入力の電圧が等しくなりましたが、正帰還ではこの現象は生じません。
さて最初の状態を、上図のように入力が0Vで出力が5Vとします。このとき、A点の電圧は「中点の電圧」で計算して、3.3Vです。
入力電圧が次第に上昇して行き3.3Vを越えると(コンパレータと同様に)出力が反転して0Vとなります。(上図右のグラフ)
下図は、反転後の回路の状態です。出力は0V、A点の電圧は1.7Vです。
さて次に、入力電圧が次第に降下して行き、1.7Vを超えると、出力が反転して5Vとなります。(上図右のグラフ)
シュミットトリガとコンパレータの違いは、コンパレータでは1つしかなかったスレッショルド電圧(閾値電圧)が、シュミットトリガでは下図に示すように2つに増えることです。
2つのスレッショルドを「上のスレッショルド」(3.3V)、「下のスレッショルド」(1.7V)と呼んで区別します。
下図のシュミットトリガの上のスレッショルドと下のスレッショルドを求めて、入出力電圧特性をグラフに記入してください。但し、オペアンプの−電源端子はアースに接続されているとします。
上のスレッショルド V 下のスレッショルド V
たとえば、下図のシートで中点(A)の電圧を計算する。
上図の通り、上のスレッショルドは3V、下のスレッショルドは2Vと分る。従って、入出力特性は、下図の通りになる。
上のスレッショルド 3 V 下のスレッショルド 2 V
スレッショルド2.5Vの反転コンパレータに、下図に点線で示す信号を入力すると、下図に実線で示す信号を出力しました。
上の練習で考えたシュミットトリガ(上のスレッショルド3V、下のスレッショルド2V)に、同じ信号を入力した場合の出力信号を、下図に書き加えてください。また、コンパレータとシュミットトリガの出力信号の違いを説明してください。
出力信号の違い
|
出力信号の違い コンパレータの出力は、入力信号がスレッショルド(2.5V)を横切るとき、出力信号が頻繁に反転を繰り返す。しかしシュミットトリガは、入力信号の大まかな上下を反映して、ゆっくりと反転する。
|
このように、シュミットトリガは振幅の小さな雑音の影響を抑えて、信号の大まかな変化を捉えて反転することができるため、雑音にる誤動作を防止したい場合にも用いられます。
入力電圧が上昇すると出力が+に反転し、入力電圧が降下すると出力が−に反転する(つまり反転しない)シュミットトリガです。
下図が非反転シュミットトリガの回路例です。下表に書き込みながら、下図の回路の動作を考え、下図のグラフに入出力電圧特性を書き込んでください。(ここでは5V単一電源で考えています)
番号 |
質問 |
値 |
@ |
10kΩで電源の5Vを分圧しているため、−入力端子の電圧は、 |
V |
A |
このオペアンプが反転する時の、+入力端子の電圧の電圧は、 |
V |
C |
以下では、上のAで考えた、オペアンプが反転する瞬間の各部の電圧を考える。つまり、+入力端子が上のAで考えた電圧として考える。 出力がB0Vのとき、25kΩの両端電圧は、 |
V |
D |
5kΩには25kΩと同じ電流が流れているから、その両端電圧は、 |
V |
E |
入力電圧は、 |
V |
G |
また、出力がF5Vのとき、25kΩの両端電圧は、 |
V |
H |
5kΩには25kΩと同じ電流が流れているから、その両端電圧は、 |
V |
I |
入力電圧は、 |
V |
J |
下のスレッショルドは、 |
V |
K |
上のスレッショルドは、 |
V |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
10kΩで電源の5Vを分圧しているため、−入力端子の電圧は、 |
2.5V |
A |
このオペアンプが反転する時の、+入力端子の電圧の電圧は、 |
2.5V |
C |
以下では、上のAで考えた、オペアンプが反転する瞬間の各部の電圧を考える。つまり、+入力端子が上のAで考えた電圧として考える。 出力がB0Vのとき、25kΩの両端電圧は、 |
2.5V |
D |
5kΩには25kΩと同じ電流が流れているから、その両端電圧は、 |
0.5V |
E |
入力電圧は、 |
3V |
G |
また、出力がF5Vのとき、25kΩの両端電圧は、 |
2.5V |
H |
5kΩには25kΩと同じ電流が流れているから、その両端電圧は、 |
0.5V |
I |
入力電圧は、 |
2V |
J |
下のスレッショルドは、 |
2V |
K |
上のスレッショルドは、 |
3V |
「無安定」とは聞き慣れない言葉ですが、下表に示す「2つの状態がある回路の種類」で、「無安定」に分類される回路、つまり「2つ(ここでは、+に振り切ったとき、−に振り切ったとき)の状態の何れでも安定せず、交互に入れ替わりを繰り返す回路」という意味です。
2つの状態がある回路の種類
邦名 |
英名 |
意味 |
双安定 |
bistable バイ・ステーブル |
どちらの状態でも留まることができる |
単安定 |
monostable モノ・ステーブル |
どちらか一方でだけで留まることができ、他方に切り替えても、しばらくすると元に戻る |
無安定 |
astable ア・ステーブル nonstable ノン・ステーブル |
どちらの状態にも留まることができず、2つの状態を交互に繰り返す |
さて、下図は無安定マルチバイブレータの回路です。点線で示す反転シュミットトリガに、抵抗とコンデンサが追加されています。(ここでは5V単一電源で考えています)
点線部はシュミットトリガとして動作しますから、下図B点(シュミットトリガの入力)の電圧が、上のスレッショルド(3V)を超えれば出力は0Vに反転し、下のスレッショルド(2V)を下回れば出力は5Vに反転します。
上図右側のグラフは回路図中のA、B、C点の電圧変化を示します。このように、回路は次のABCD(上図右側グラフの番号と対応しています)の動作を繰り返して、出力が5Vの状態と、出力が0Vの状態を交互に繰り返します。
@(最初の一回だけ)コンデンサは、最初の0Vから出力電圧(C点)の5Vを目指して、上図左側回路図の実線矢印の経路で充電されて行く。このためB点の電圧は次第に上昇する。
AB点の電圧が上のスレッショルド(3V)を超えると、出力電圧(C点)が0Vに反転する。(A点の電圧は2Vとなる)
Bコンデンサは、3Vから出力電圧(C点)の0Vを目指して、上図左側回路図の点線矢印の経路で放電されて行く。このためB点の電圧は次第に降下する。
CB点の電圧が下のスレッショルド(2V)を下回ると、出力電圧(C点)が5Vに反転する。(A点の電圧は3Vとなる)
Dコンデンサは、2Vから出力電圧(C点)の5Vを目指して、上図左側回路図の実線矢印の経路で充電されて行く。このためB点の電圧は次第に上昇する。→Aに戻り繰り返す
さて、AからCに放電するのに掛かる時間は、「CR回路の放電」で説明した方法で計算できます。Aでの電圧が3V(最初)、Cでの電圧が2Vですから、Excelで=-0.1E-6*33E3*ln(2/3)と計算して、1.3m秒と求めることができます。
今回の回路では、0Vを目指して放電したために、3Vと2Vを直接計算に使うことができましたが、たとえば0.5Vを目指して放電する(実際のオペアンプでは良くある)場合は、2.5V(3V−0.5V)から、1.5V(2V−0.5V)まで放電する、と考えて計算します。つまり「目指す電圧との差」を使って計算します。
この回路では、充電と放電の波形が上下対称で、放電時間と充電時間が同じですから、発振の周期は2倍の2.6m秒となり、周波数は=1/2.6E-3と計算して、約380Hzです。
実際には、充電と放電の波形が上下対象にならない場合が良くあります。
この回路の動作時間は、C×Rの値、つまり0.1μと33kΩで決まる時定数τに比例します。
下図の無安定マルチバイブレータが変更前の設定では132Hzで発振しました。その後、この回路の抵抗とコンデンサを下図に示すように変更しました。変更前の発振周期と、変更後の周期と周波数を、下表に書き込みながら求めてください。
変更前の周期 m秒 変更後の周期 m秒 変更後の周波数 Hz
番号 |
質問 |
値 |
@ |
変更前の周期は、周波数の逆数だから、 |
m秒 |
A |
CとRで動作時間が決まる回路では、 (動作時間を決めているCとR以外の設定が同じなら) 回路の動作時間は、C×Rの値(つまり、時定数τ)に比例します。つまり、
と計算できます。 今回の変更では、動作時間を決めているCやR以外の設定(電源電圧や動作時間を決めていない抵抗の値)は同じですか、 |
同じ・違う |
C |
変更前のC×Rの値は、 |
m秒 |
D |
変更後のC×Rの値は、 |
m秒 |
E |
変更後の周期は、 |
m秒 |
F |
変更後の周波数は周期の逆数で、 |
Hz |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
変更前の周期は、周波数の逆数だから、 Excelで=1/132と計算して、 |
7.6m秒 |
A |
CとRで動作時間が決まる回路では、 (動作時間を決めているCとR以外の設定が同じなら) 回路の動作時間は、C×Rの値(つまり、時定数τ)に比例します。つまり、
と計算できます。 今回の変更では、動作時間を決めているCやR以外の設定(電源電圧や動作時間を決めていない抵抗の値)は同じですか、 |
同じ・違う |
C |
変更前のC×Rの値は、 =0.1E-6*100E3と計算して、 |
10m秒 |
D |
変更後のC×Rの値は、 =0.33E-6*47E3と計算して、 |
16m秒 |
E |
変更後の周期は、 =7.6E-3*16/10と計算して、 |
12m秒 |
F |
変更後の周波数は周期の逆数で、 =1/12E-3と計算して、 あるいはより正確には、全体を通じて、 =1/(1/132*0.33E-6*47E3/0.1E-6/100E3)と計算して、 |
83Hz (85Hz) |
従って、
変更前の周期 7.6m秒 変更後の周期 12m秒 変更後の周波数 85Hz
となります。
下図(a)に示すように、フォトダイオード等のセンサは、両端を短絡(ショート)したときに、光の強さに比例した電流が流れます。このように素子の両端を短絡した状態で、流れる電流を測定できるのが、下図(b)に示す電流電圧変換回路(トランスコンダクタンスアンプ)です。
ここではフォトダイオードを太陽電池のように発電させる状態で使用しています。(フォトボルティックモード/光電地モード)このほかに、フォトダイオードに逆電圧(VR)を加えておき、流れる逆電流(IR)を検出する(フォトコンダクティブモード/光導電モード)もあります。前者は直線性が良好で(6桁にも及ぶ直線性)、後者は応答速度が高くなります。
上図(b)を参考に下表に記入しながら、電流電圧変換回路の動作を検討してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
+入力の電圧は、 (アースに接続されているから、) |
V |
A |
+入力と−入力の間の電圧は、 (1MΩで負帰還が掛かっているから、) |
V |
B |
−入力の電圧は、 |
V |
C |
ダイオードの両端電圧は、 |
V |
|
Cから、ダイオードは短絡した状態となることが分かります。 |
|
D |
入力部を左に向かって流れる電流は、 (ダイオードの光電流が1μAだから、) |
μA |
E |
−入力に流れる電流は、 |
A |
F |
帰還抵抗(1MΩ)に流れる電流は、 (DEとキルヒ則から、) |
μA |
G |
帰還抵抗の両端電圧は、 (オーム則より、) |
V |
H |
出力電圧は、 |
V |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
+入力の電圧は、 (アースに接続されているから、) |
0V |
A |
+入力と−入力の間の電圧は、 (1MΩで負帰還が掛かっているから、) |
0V |
B |
−入力の電圧は、 |
0V |
C |
ダイオードの両端電圧は、 |
0V |
|
Cから、ダイオードは短絡した状態となることが分かります。 |
|
D |
入力部を左に向かって流れる電流は、 (ダイオードの光電流が1μAだから、) |
1μA |
E |
−入力に流れる電流は、 |
0A |
F |
帰還抵抗(1MΩ)に流れる電流は、 (DEとキルヒ則から、) |
1μA |
G |
帰還抵抗の両端電圧は、 (オーム則より、) |
1V |
H |
出力電圧は、 |
1V |
このように、電流電圧変換回路を使用することで、ダイオードの両端を短絡した(0Vにした)状態で、ダイオードに流れた電流に比例した電圧を出力することができます。
極弱い光を測定する場合は、下図に示すように、回路全体をシールドケースに入れて、測定光をケースに設けた金網等からダイオードに照射します。
上図のように、電源に電池を用いてシールドケースの中に入れると、電源に起因するノイズも防ぐことができます。
下図の回路は、入力がプラスの場合は反転して出力されますが、入力がマイナスの場合は出力は0Vのままで変化しません。このような回路を半波整流回路と呼びます。
上図の半波整流回路に+10Vを加えた場合の各部の電圧/電流を、下表に書き込みながら検討してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
+入力の電圧は、 (アースに接続されているから、) |
V |
A |
+入力と−入力の電圧差は、 (抵抗やダイオードで負帰還が掛かっているから、) |
V |
B |
+入力の電圧は、 |
V |
C |
R1の両端電圧は、 |
V |
D |
R1に流れる電流は、 |
mA |
E |
オペアンプの入力に流れる電流は、 |
mA |
F |
D2を右向きに流れる電流は、 (逆方向だから、) |
mA |
G |
R1の右側から−入力に向かって流れる電流は、 (F、Eから、) |
mA |
H |
R2に流れる電流は、 (D、Gから、) |
mA |
I |
R2の両端電圧は、 |
V |
J |
出力電圧は、 |
V |
K |
D1に流れる電流は、 (Hから、) |
mA |
L |
D1の両端電圧は、 |
V |
M |
オペアンプの出力端子に流れ込む電流は、 |
mA |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
+入力の電圧は、 (アースに接続されているから、) |
0V |
A |
+入力と−入力の電圧差は、 (抵抗やダイオードで負帰還が掛かっているから、) |
0V |
B |
+入力の電圧は、 |
0V |
C |
R1の両端電圧は、 |
10V |
D |
R1に流れる電流は、 |
1mA |
E |
オペアンプの入力に流れる電流は、 |
0mA |
F |
D2を右向きに流れる電流は、 (逆方向だから、) |
0mA |
G |
R1の右側から−入力に向かって流れる電流は、 (F、Eから、) |
0mA |
H |
R2に流れる電流は、 (D、Gから、) |
1mA |
I |
R2の両端電圧は、 |
10V |
J |
出力電圧は、 |
−10V |
K |
D1に流れる電流は、 (Hから、) |
1mA |
L |
D1の両端電圧は、 |
0.7V |
M |
オペアンプの出力端子に流れ込む電流は、 |
1mA |
このように入力電圧がプラスのときは、入力電圧が反転して出力に現れます。
上図の半波整流回路に−10Vを加えた場合の各部の電圧/電流を、下表に書き込みながら検討してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
−入力の電圧は、 |
V |
A |
R1の両端電圧は、 |
V |
B |
R1に流れる電流は、 |
mA |
C |
D1を上向きに流れる電流は、 (逆方向だから、) |
mA |
D |
R2を流れる電流は、 |
mA |
E |
R2の両端電圧は、 |
V |
F |
出力電圧は、 |
V |
G |
R1の右側に向かって登る電流は、 |
mA |
H |
−入力に流れる電流は、 |
mA |
I |
D2を左向きに流れる電流は、 |
mA |
J |
D2の両端電圧は、 |
V |
K |
オペアンプの出力端子の電圧は、 |
V |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
−入力の電圧は、 |
0V |
A |
R1の両端電圧は、 |
10V |
B |
R1に流れる電流は、 |
1mA |
C |
D1を上向きに流れる電流は、 (逆方向だから、) |
0mA |
D |
R2を流れる電流は、 |
0mA |
E |
R2の両端電圧は、 |
0V |
F |
出力電圧は、 |
0V |
G |
R1の右側に向かって登る電流は、 |
1mA |
H |
−入力に流れる電流は、 |
0mA |
I |
D2を左向きに流れる電流は、 |
1mA |
J |
D2の両端電圧は、 |
0.7V |
K |
オペアンプの出力端子の電圧は、 |
−10.7V |
このように入力電圧がマイナスの場合は、出力電圧は0Vで変化しません。下図のようにダイオードの向きを逆にするとこで、入力がマイナスの場合に出力が出る回路に変更できます。
下図のように半波整流回路の出力(ろ)と、入力信号(い)を2:1の割合で加えると、全波整流波形(は)を出力できます。
上図の回路は、プラスの電圧が入力されても、マイナスの電圧が入力されても、プラスの電圧が出力されるので、絶対値回路と呼ばれます。
下図のようにコンデンサC1を追加すると、出力波形をなめらかにして(平滑して)、平均電圧を出力することができます。
上図の回路の平滑の時定数は=C1*R5で、カットオフ周波数は=1/2/pi()/C1/R5で計算できます。カットオフ周波数が、信号周波数の100分の1程度であれば、信号成分を殆ど含まない滑らかな平均電圧が出力されます。
下図は最大値検波回路です。+入力に1Vを加えると、−入力電圧が1Vになるまでダイオードを通じてコンデンサが充電されます(下図実線矢印の経路)。その後+入力電圧が下がってもダイオードが逆電圧になるためオペアンプはコンデンサを放電することができません。放電は抵抗を通じてゆっくりと行われます(下図点線矢印の経路)。
その結果、コンデンサは入力電圧の最大値に速やかに充電され、ゆっくりと放電されます。コンデンサの電圧に影響を与えないように、上図に点線で示す「ユニティゲイン増幅器」を設けて、出力を取り出します。
これまで、オペアンプが「理想的な性能」を持っていると考えて(理想オペアンプと考えて)回路の働きを説明して来ました。
既に述べたように、オペアンプの性能はかなり向上していますから、回路の種類やオペアンプの品種によっては「理想的な性能」と考えても問題ない場合も増えています。しかし、理想的とは言えない部分を理解することで、同じオペアンプでも、より高い性能が引き出せたり、より安価なオペアンプで済ますことができるようになります。
ここでは、オペアンプの「理想的でない」部分を説明し(理想的ではないために)回路の動作にどのような影響が出るのか考え、必要があれば対策の方法を解説します。
下図の3回路はいずれも10倍の非反転増幅回路ですが、抵抗の値がそれぞれ異なります。理想オペアンプであれば、どの回路も正しく動作する筈です。
使用する抵抗値が高い程、流れる電流が減り、発熱や消費電力が少なくなりますから、何の問題も無ければ、抵抗値の最も高い(a)の回路を使いたいところです。
この回路ではオペアンプの「理想的でない」部分の中で「入力バイアス電流」が問題になります。
オペアンプの重要な性質Cに「入力端子には電流が流れない」がありました。ところが実際には僅かな電流が入力端子に流れます。この電流が入力バイアス電流です。通常、入力バイアス電流は、入力電圧に関係なく常に一定の大きさで流れます。
下表にNJM4558のデータシートの一部を示します。表の3行目に「入力バイアス電流」の値が記載されています。
NJM4558の入力バイアス電流は25〜500nAです。単位が「nA」ですから、確かに非常に小さな電流ですが、これでも回路によっては影響があります。
NJM4558の位置付け
ここでは「理想オペアンプと現実のオペアンプの違い」を強調するためにNJM4558を取り上げます。つまり4558は、オフセットやバイアス電流が多く、出力スイングが小さく、高い周波数は増幅できない等と、理想オペアンプからは程遠い性能です。性能はイマイチですが、安価であり、また、性質を活かした使い方が確立しているため、永らく利用されました。電源電圧が低いと使い難いので、今後は淘汰されて行くでしょう。
オペアンプは1960年代中ごろからμA702、709と進歩し、68年の741で非常に使いやすくなりました。RC4558は、1970年代にレイセオン社が741を改良して(初段をPNPに変更)低雑音化したしたオペアンプで、NJM4558はそのセカンドソース(そっくりさん)です。低雑音の特性を活かしてオーディオ機器に多用されました。
では、上図を見ながら下表に記入して、最初の3つの回路で入力バイアス電流を影響を考えます。
|
質問 |
答 |
||
@ |
入力電圧は |
0V |
||
A |
負帰還の回路だから+入力と−入力の間の電圧は、 |
V |
||
B |
−入力端子の電圧は、 |
V |
||
C |
下側の抵抗に流れる電流は、 |
A |
||
D |
NUM4558の入力バイアス電流(最大値)は、 |
A |
||
E |
上側の抵抗に流れる電流は、 |
A |
||
F |
上側の抵抗に発生する電圧は、 |
(a)の場合 |
(b)の場合 |
(c)の場合 |
V |
V |
V |
||
G |
出力電圧は、 |
V |
V |
V |
|
質問 |
答 |
||
@ |
入力電圧は |
0V |
||
A |
負帰還の回路だから+入力と−入力の間の電圧は、 |
0V |
||
B |
−入力端子の電圧は、 |
0V |
||
C |
下側の抵抗に流れる電流は、 |
0A |
||
D |
NUM4558の入力バイアス電流(最大値)は、 |
500nA |
||
E |
上側の抵抗に流れる電流は、 |
500nA |
||
F |
上側の抵抗に発生する電圧は、 |
(a)の場合 |
(b)の場合 |
(c)の場合 |
4.5V |
4.5mV |
4.5μV |
||
G |
出力電圧は、 |
−4.5V |
−4.5mV |
−4.5μV |
つまり、本来であれば入力の0Vの10倍、つまり0Vが出力される筈ですが、例えば(a)では−4.5Vが出力されています。これは使えそうにありません。
(b)であれば、−4.5mVとかなり小さくなり、(c)では−4.5μVと測定が難しいほど小さくなっています。ですから、入力バイアス電流の影響を避けるためには(b)か(c)を選ぶべきです。
このような入力バイアス電流の検討と平行して、回路に流す電流も検討します。4558等の汎用オペアンプを使った回路は、主に最大1〜10mA程度の電流で動作させます。(オペアンプの品種によっては、10〜100μAで動作させる事も可能です)
上図を見ながら下表に書き込み、入力に1Vを加えた場合の、回路に流れる電流を検討してください。(入力バイアス電流の影響は無視して検討してください)
|
質問 |
(a)の場合 |
(b)の場合 |
(c)の場合 |
@ |
入力電圧は、 |
V |
V |
V |
A |
下側の抵抗の電圧は、 |
V |
V |
V |
B |
下側の抵抗の電流は、 |
A |
A |
A |
C |
上側の抵抗の電流は、 |
A |
A |
A |
D |
オペアンプが出力する電流は、 |
A |
A |
A |
|
質問 |
(a)の場合 |
(b)の場合 |
(c)の場合 |
@ |
入力電圧は、 |
1V |
1V |
1V |
A |
下側の抵抗の電圧は、 |
1V |
1V |
1V |
B |
下側の抵抗の電流は、 |
1μA |
1mA |
1A |
C |
上側の抵抗の電流は、 |
1μA |
1mA |
1A |
D |
オペアンプが出力する電流は、 |
1μA |
1mA |
1A |
(a)の回路は抵抗値が高いため、僅かな(1μA)な電流しか流れていません。省電力の携帯機器では、入力バイアス電流の小さなオペアンプを使用して、この程度の電流で動作させることも良くあります。(もちろん、NJM4558では無理です)
(c)の回路は抵抗値がとても小さく、例えば1Vを入力したときにオペアンプは1Aをの電流を出力する必要があります。しかし、4558が出力できるのは、たかだか10〜20mAですから、1Aはとても無理です。電源電流も1A以上消費することになり、発熱も大きくなります。
そこで(b)の回路であれば、回路電流は1mAと、NUM4558が出力できる大きさに収まっています。
このように回路電流は、下表に示すとおり、(1)入力バイアス電流に比べれば十分大きく、(2)オペアンプの出力電流よりは小さい範囲に設定します。
オペアンプの仕様 NJM4558の例 |
大小関係 |
回路電流 |
入力バイアス電流 (最大500nA) |
<< |
入力バイアス電流より十分大きくする |
精度の求められない回路でも、入力バイアス電流の最低100倍以上 (50μA以上) |
||
精度の求められる回路では1000倍かそれ以上 (0.5mA以上) |
||
オペアンプの最大出力電流 (10mA) 許容できる電源の消費電流より小さくする |
> |
発熱が限度内であれば、ぎりぎりまで使用できる (10mA以下) |
回路によっては、たとえ入力バイアス電流が流れても、その影響が相殺して影響を小さくすることができます。下図はバイアス電流の影響を相殺した交流反転増幅回路の例です。
上図を見ながら、下表に記入して入力バイアス電流の影響が相殺される様子を検討します。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
入力コンデンサを通して流れ込んでくる直流電流は、 |
A |
A |
NJM4558の最大入力バイアス電流は、 |
nA |
B |
入力バイアス電流によってR1に発生する電圧は、 |
mV |
C |
+入力端子の電圧は、 |
mV |
D |
負帰還が掛かっているから、−入力端子の電圧は、 |
mV |
E |
R2に流れる最大入力バイアス電流は、 |
nA |
F |
入力バイアス電流によってR2に発生する電圧は、 |
mV |
G |
出力電圧は、 |
V |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
入力コンデンサを通して流れ込んでくる直流電流は、 |
0A |
A |
NJM4558の最大入力バイアス電流は、 |
500nA |
B |
入力バイアス電流によってR1に発生する電圧は、 |
50mV |
C |
+入力端子の電圧は、 |
50mV |
D |
負帰還が掛かっているから、−入力端子の電圧は、 |
50mV |
E |
R2に流れる最大入力バイアス電流は、 |
500nA |
F |
入力バイアス電流によってR2に発生する電圧は、 |
50mV |
G |
出力電圧は、 |
0V |
入力バイアス電流は同じ品種でも個体毎に異なりますし、温度でも変化します。しかし、+入力と−入力のバイアス電流はほぼ同じであるため、上図の回路で影響を打ち消すことができます。
帰還抵抗(上図のR2)の値が大きく、入力バイアス電流がR2に流れて発生する電圧が、正常な回路の動作(どこまでが正常かは、回路の用途で決まります)を狂わせる場合は、上図R1のような対策を施します。ただし、CMOSオペアンプのような入力バイアス電流の小さなオペアンプでは、R1は不要です。
非反転増幅回路の場合も、下図のように入力バイアス電流で発生する電圧を+入力と−入力で等しくすることで、影響を相殺できます。
CMOSオペアンプでは、入力バイアス電流は「本当に無い」と言える程小さくなり、高い抵抗値の回路を使用しても(バイアス電流の)影響が出なくなります。
下表にCMOSオペアンプ、NJM7044のデータシートの一部を示します。表の3行目に「入力バイアス電流」の値が記載されています。
入力バイアス電流は1pAと非常に小さくなっています。1pAであれば、10MΩの抵抗に流れても、10μVの電圧しか生じません。入力バイアス電流の影響を「無い」と考えて設計できます。(さらにLMC660では3fAまで小さくなっています)
但し高抵抗の回路は、別途説明する「熱雑音」や「ストレイ容量」の影響により、雑音が増え、高い周波数が増幅できなくなるため、回路の目的を考えて、問題の無い範囲で高抵抗を使用します。
入力バイアス電流の項で、下図(c)の回路は出力電流が大きくなりすぎて使えない事に触れました。ここではこのように、オペアンプが出力できる最大の電流について説明します。
さて、下図のようにオペアンプの出力を振り切らせ、出力に接続した抵抗の値を小さくすると、オペアンプから出力される電流が増加します。
下図はNJM4580を±15Vの2電源で使用した場合の、最高/最低出力電圧と出力電流のグラフです。プラス側に注目すると、電流が1mAの場合は14V程度の電圧が出せますが、40mAでは13V、90mAでは6Vしか出力できないことが分ります。
この状況を整理した下表に示します。つまり、オペアンプには電流を流す能力に限界があり、無理に出力電流を増やそうとすると、オペアンプが負けて、出力電圧が下がってしまいます。
下表から一見、最高出力電圧さえ我慢すれば、より大きな出力電流を流すことができるようにも思えます。ところが、オペアンプが過熱するため、そのような使い方には注意が必要です。
出力電流 |
最高出力電圧 |
負荷抵抗 |
消費電力 |
1mA |
14V |
14V÷1mA=14kΩ |
1V×1mA=1mW |
40mA |
13V |
13V÷40mA=330Ω |
2V×40mA=80mW |
90mA |
6V |
6V÷90mA=66Ω |
9V×90mA=810mW |
なぜなら例えば、90mAの出力電流を取り出しているとき、下図に示すように、オペアンプ内部の素子は抵抗として働いています。そして、この抵抗で消費する電力でオペアンプが発熱します。下図の例では、6Vを出力しているとき、内部の抵抗(素子)には9Vの電圧が加わり、90mAの電流が流れているため、810mWの電力が消費されています。このような、出力電流毎の消費電力を上表の「消費電力」の列に示します。
オペアンプは消費電力が大きくなると次第に激しく発熱し、ついには熱で壊れてしまいます。下図はNJM4580の絶対最大定格です。
上表によれば、DIP8形パッケージの場合、800mWの電力を一瞬でも消費させると「いつ壊れても知らん」と記載されています。
従って、既に述べた90mA出力電流を取り出した場合の810mWの消費電力は、絶対最大定格を超えているため一瞬たりとも許されません。つまり、90mAの出力電流は、「流す能力はあるが、流すと壊れる」事が分ります。
このように、オペアンプの最大出力電流は、データシートに記載された「最大出力電流」の値が限界ではありますが、(オペアンプが過熱して壊れないように)消費電力が定格を十分下回ることも確認して利用します。また、1つのパッケージに複数のオペアンプが入っている場合、全てのオペアンプの消費電力の合計が定格を十分下回るように検討します。
下図のように、NJM4580を±15V電源で使用し、出力を+側に振り切らせて、60mAの電流を取り出ししました。既出のグラフを利用して、出力電圧を求め、消費電力を計算してください。
出力電圧 V 消費電力 mW
出力電圧 11V 消費電力 240mW
上記のグラフから、60mA時の+側出力電圧を読み取ると11V。オペアンプの内部素子には4Vの電圧が加わっており、60mAの電流が流れているから、240mWの電力が消費されている。
下図の回路は、理想オペアンプであれば、正確に0Vを出力する筈です。ところが下図では、1Vが出力されています。
この回路ではオペアンプの「理想的でない」部分の中で「入力オフセット電圧」(以下、オフセット)が問題になります。
さて、オペアンプの重要な性質@に「負帰還の回路では、+入力と−入力の電圧は同じ」がありました。ところが実際には、+入力と−入力の間に僅かな電圧の差が生じます。この電圧がオフセットです。
オフセットは、下図に示すように、中の人が立つ床に生じた「段差」のようなものです。中の人は床の高さを+入力にぴったりあわせたつもりでも、外から見ると、−入力と+入力の間には差が生じてしまいます。
回路図では、オフセットを上図下側のように、入力端子に挿入された電池で表すことができます。電池は−入力に挿入しても、+入力に挿入してもかまいません。また電池の極性も、どちら向きでも構いません。
上図では1mVの電池が挿入された(1mVのオフセットがあった)ために、本来0Vとなる増幅器の出力がに1mVが出力されています。
さて、オフセットには、個体差がある、温度で変化する、という2つの特徴があります。
下表は「NJMOPA277」(特にオフセットを小さくした品種です/OPA277のセカンドソース(そっくりさん))のオフセット電圧です。(Fグレード品の)標準値で10μVと小さく抑えられているのが分ります。
下図は同オペアンプのオフセット電圧の個体差です。同図のグラフを見るとオフセット電圧は個体毎に−40μV〜+40μVの範囲で様々に異なることが分ります。
つまり、標準のオフセット電圧が10μVしかない(Fグレードの)NJMOPA277を購入しても、運が悪いとオフセットが40μV発生する場合もあることが分ります。(逆に運が良ければ、殆どゼロという場合もあります)もちろん不良品ではありません。これがオフセット電圧の個体差です。
また最初の表には、入力オフセット電圧温度ドリフト(以下、温度ドリフト)も示されています。温度ドリフトとは、温度によるオフセットの変化です。
同表によれば、(Fグレード品で)温度が1℃変化すると、最大で入力オフセットが0.15μV変化することがわかります。たとえば、温度が40℃変化すると、最悪で6μV程度のオフセット電圧の変化があります。
このように、オフセットは小さな値ですが、下図のように大きな増幅率を持つ回路では、オフセットも増幅されるため、影響が大きくなります。下図は1000倍の増幅器を、オフセット1mVのオペアンプで作った例です。
上図の回路について、オフセット電圧の影響を調べます。下表に書きながら、0Vを入力した場合の出力電圧を考えてください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
入力電圧は、 |
0V |
A |
負帰還の回路だから、+入力と−入力の電圧は同じになる筈だが、1mVのオフセットがあるため、マイナス入力端子の電圧は、 |
mV |
B |
1kΩの両端電圧は、 |
mV |
C |
1kΩに流れる電流は、 |
μA |
D |
オペアンプの入力端子に流れる電流は、 (ここでは入力バイアス電流を無視して) |
A |
E |
999kに流れる電流は、 |
μA |
F |
999kに発生する電圧は、 |
mV |
G |
出力電圧は、 |
V |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
入力電圧は、 |
0V |
A |
負帰還の回路だから、+入力と−入力の電圧は同じになる筈だが、1mVのオフセットがあるため、マイナス入力端子の電圧は、 |
1mV |
B |
1kΩの両端電圧は、 |
1mV |
C |
1kΩに流れる電流は、 |
1μA |
D |
オペアンプの入力端子に流れる電流は、 (ここでは入力バイアス電流を無視して) |
0A |
E |
999kに流れる電流は、 |
1μA |
F |
999kに発生する電圧は、 |
999mV |
G |
出力電圧は、 |
1V |
このように、高い精度が必要な回路や、高倍率の増幅器、小さな電圧を扱う回路等では、オフセットの影響が大きく現れるので、対策が必要になります。
オフセット対策には次表に示すように「回路で対策する」と「オペアンプで対策する」の2タイプがあります。最近は、オフセットの小さなオペアンプも妥当な価格で手に入るので「オペアンプで対策する」が主流です。
方法 |
回路で対策する |
オペアンプで対策する |
概要 |
オフセット電圧を調節する回路を追加する。 |
オフセット電圧の小さなオペアンプを利用する。 |
費用 |
調節回路の費用が必要 |
割高なオペアンプが必要 |
手間 |
調整が必要 |
調整は不要 |
既に説明したように、オフセットは同じ品種でも個体差で大きく異なります。このため、回路で対策する場合は、あらかじめ値を見越して(決め打ちで)対策しておくことはできず、半固定抵抗を用いて、個別に調整する必要があります。
オフセット電圧を、回路で対策して調整しても、温度が変化すると温度ドリフトが発生して、調整がズレてしまい、オフセットの影響が再発します。特に装置の電源を投入した後は、最初は室温であった素子が、流れる電流によって温まるので、温度ドリフトが目立ちます。
温度ドリフトの対策は「温度ドリフトの小さなオペアンプを選ぶ」ことで行います。
過去には温度ドリフトの影響を打ち消す回路を設けたり、オペアンプを一定の温度に保つ「ICオーブン」を使用したりしましたが、温度ドリフトの小さなオペアンプが妥当な価格になったため、あまり利用されません。
オフセットと温度ドリフトの少ないオペアンプを選ぶことで、オフセットの影響を無くすのが、現在は一般的です。しかし、電子工作では「手持ちの部品で試してみたい」「とりあえず動くかチェックしたい」という場合も多く、外付けの回路でオフセットを調整する方法を説明します。
オペアンプは1つのパッケージに、1つ入り、2つ入り、4つ入り、と複数内蔵したものが作られています。1つ入りのオペアンプの中には「オフセット調整(オフセットヌル)端子」を備えているものがあります。
下図はLF411のピン接続図の例で、1番ピンと5番ピンが「オフセット調整端子」です。調整を行わない場合は、なにも接続せず、行うときはデータシートの指示にしたがって半固定抵抗等を接続します。
オフセットの少ないオペアンプの充実、部品点数の削減、調整コストの低減等の理由で、オフセット調整端子のあるオペアンプは減っていますし、利用の機会も少なくなっています。
下図に点線で示す回路が、オフセット調整回路です。点線の回路が動作していない場合、0Vを入力しても、6mVのオフセットが1000倍に増幅されて、6Vが出力されます。
そこで、下図に、オフセット対策回路を動作させた状態を示します。
6mVのオフセットが原因となり、R1は上図A点から、6μアンペアの電流を吸い込みます。そこで、R2からA点に向かって、同じ6μAを流し込むことで、R3に流れる電流をゼロに調整できます。(キルヒ電流則をA点に使います)
また、非反転増幅回路の場合は、下図の方法でオフセットを調整します。
下図を見ながら下表に書き込み、オフセット調整の方法を考えます。
番号 |
質問 |
値 |
@A |
帰還抵抗の分圧比は@とAより、 |
約1000分の1 |
|
このため上図の回路の増幅率は、 |
約1000倍 |
B |
+入力端子は1kΩで接地されているので、 入力バイアス電流の影響を考えなければ、 |
mV |
C |
負帰還の回路だから+入力と−入力は同じ電圧になる筈だが、6mVのオフセットがあるとして、−入力端子の電圧は(+の電圧が現れたとすると) |
mV |
D |
半固定抵抗から取り出した電圧は、 |
6V |
E |
上のDの電圧が100kと100Ωで分圧されて、100Ωの上側の電圧は、 |
約 mV |
F |
900Ωの両端電圧は、 |
V |
G |
900Ωに流れる電流は、 |
mA |
H |
1MΩに流れる電流は、 |
mA |
I |
1MΩの両端電圧は、 |
V |
J |
出力電圧は、 |
mV |
番号 |
質問 |
値 |
@A |
帰還抵抗の分圧比は@とAより、 |
約1000分の1 |
|
このため上図の回路の増幅率は、 |
約1000倍 |
B |
+入力端子は1kΩで接地されているので、 入力バイアス電流の影響を考えなければ、 |
0mV |
C |
負帰還の回路だから+入力と−入力は同じ電圧になる筈だが、6mVのオフセットがあるとして、−入力端子の電圧は(+の電圧が現れたとすると) |
6mV |
D |
半固定抵抗から取り出した電圧は、 |
6V |
E |
上の電圧が100kと100Ωで分圧されて、100Ωの上側の電圧は、 |
約6mV |
F |
900Ωの両端電圧は、 |
0V |
G |
900Ωに流れる電流は、 |
0mA |
H |
1MΩに流れる電流は、 |
0mA |
I |
1MΩの両端電圧は、 |
0V |
J |
出力電圧は、 |
6mV |
オフセットの大きなオペアンプでも、交流増幅回路であれば、無調整でオフセットの影響を抑えることができます。下図は、対策を行っていない交流増幅回路です。
下図の回路の動作を、下表に記入しながら考え、出力オフセット電圧を求めて下さい。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
+入力電圧は、1kΩを通じてアースされているから、 |
V |
A |
本来負帰還回路では+入力と−入力の電圧は等しいが、 このオペアンプの最大オフセット電圧は6mVだから、仮に−入力に正のオフセット電圧が現れるとすれば、 |
mV |
B |
1MΩの下側にある、1kΩの両端電圧は、 |
mV |
C |
この1kΩに流れる電流は、 |
μA |
D |
入力バイアス電流を無視すれば、1MΩに流れる電流は、 |
μA |
E |
1MΩの両端電圧は、 |
V |
F |
出力電圧は、 |
V |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
+入力電圧は、1kΩを通じてアースされているから、 |
0V |
A |
本来負帰還回路では+入力と−入力の電圧は等しいが、 このオペアンプの最大オフセット電圧は6mVだから、仮に−入力に正のオフセット電圧が現れるとすれば、 |
6mV |
B |
1MΩの下側にある、1kΩの両端電圧は、 |
6mV |
C |
この1kΩに流れる電流は、 |
6μA |
D |
入力バイアス電流を無視すれば、1MΩに流れる電流は、 |
6μA |
E |
1MΩの両端電圧は、 |
6V |
F |
出力電圧は、 |
6.006V |
となり、オフセットが約1000倍に拡大されて、6Vとなって出力にあらわれました。
交流回路の場合「直流は増幅しなくて良い」という抜け道がありますから、下図のような回路を用いて、交流では1000倍、直流では1倍、という具合に、直流の増幅率だけを下げることで、出力電圧のオフセットを小さくします。
では、下図を見ながら、下表に書き込んで、回路の動作を考えます。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
+入力電圧は、1MΩを通じてアースされているから、 |
V |
A |
本来負帰還回路では+入力と−入力の電圧は等しいが、 このオペアンプの最大オフセット電圧は6mVだから、仮に−入力に正のオフセット電圧が現れるとすれば、 |
mV |
B |
1MΩの下側にある、1kΩと16μFの直列回路に加わる電圧は、 |
mV |
C |
コンデンサは直流を通さないから、1kと16μの直列回路に流れる電流は、 |
μA |
D |
入力バイアス電流を無視すれば、−入力から流れる電流は、 |
μA |
E |
1MΩに流れる電流は、 |
μA |
E |
1MΩの両端電圧は、 |
V |
F |
出力電圧は、 |
mV |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
+入力電圧は、1MΩを通じてアースされているから、 |
0V |
A |
本来負帰還回路では+入力と−入力の電圧は等しいが、 このオペアンプの最大オフセット電圧は6mVだから、仮に−入力に正のオフセット電圧が現れるとすれば、 |
6mV |
B |
1MΩの下側にある、1kΩと16μFの直列回路に加わる電圧は、 |
6mV |
C |
コンデンサは直流を通さないから、1kと16μの直列回路に流れる電流は、 |
0μA |
D |
入力バイアス電流を無視すれば、−入力から流れる電流は、 |
0μA |
E |
1MΩに流れる電流は、 |
0μA |
E |
1MΩの両端電圧は、 |
0V |
F |
出力電圧は、 |
6mV |
このように、帰還回路にコンデンサを使うことで、直流の増幅率を1に下げ、オフセット電圧も1倍でしか出力に影響しないように改善できます。この増幅器は1/(2π×1k×16μF)以下の周波数では僧服率が下がって行きます。
オペアンプの重要な性質に、A+入力 > −入力なら、出力は+電源まで振り切る、また、B+入力 < −入力なら、出力は−電源まで振り切る、というのがありました。
下図左は無安定マルチバイブレータの回路、右は理想オペアンプの動作波形です。
ところが、実際に上図の回路を作って動作させると、下図に示すとおり、オペアンプの品種によって波形が異なります。同図では、「い」のコンデンサの電圧波形と、「う」の出力波形を表示しています。
@レイル・トゥ・レイルタイプ |
A汎用タイプ |
B汎用単電源タイプ |
|
|
|
LMC6482 |
NJM4580 |
LM358 |
「う」の出力波形に注目すると、@のレイルトゥレイルタイプではほぼ理想通りに0V〜5Vまで振れていますが、汎用タイプでは1.3〜4.2V程度、汎用単電源タイプでは0.7〜3.6V程度しか振れていません。
このようにオペアンプは品種や条件によって、出力できる最高の電圧と最低の電圧が制限されます。この電圧を、最高出力電圧(VOH)、最低出力電圧(VOL)と呼んでいます。(この2つを総じて、最大出力電圧と呼ぶこともあります)
出力電圧は電源電圧を越えることはできませんから、最高/最低出力電圧は、下図に示すように、電源電圧で決まります。(その他、温度や出力する電流によって多少変化します)
下図はNJM4580の電源電圧と最高/最低出力電圧の関係です。±電源を使用した場合のグラフですから、たとえば5V単一電源の場合±2.5Vと考えてグラフを使います。
目盛りが荒くて見難いですが、上図左側に灰色で示す電源電圧5V単一(上のグラフでは±2.5Vに相当)の部分では、最高/最低出力電圧は1.3〜4.2V程度で、その差(出力できる振幅)は2.7Vと辛うじて読むことができます。電源電圧が5Vで出力振幅が2.7Vですから、電源電圧の58%程度の振幅しか取れない事が分ります。
逆に、上図右側に灰色で示す電源電圧24V単一(上のグラフでは±12Vに相当)の部分では、最高/最低出力電圧は、1.2〜22.8V程度で、その差は21.6Vあり、電源電圧の90%程度の振幅が取れる事がわかります。
つまり、電源電圧が高いと、利用できる割合が大きくなります。この現象は下図に示すように、オペアンプの品種毎に「+側の使えない電圧」と「−側の使えない電圧」があり、これらは、電源電圧や負荷で多少は変化するけれども、だいたい一定と考えると分り易いです。
さて再度この項の最初に示した3枚の写真に戻ると、最高/最低出力電圧の影響で、上のスレッショルドや下のスレッショルドも変化し、その結果、発振周期にも影響していることが分ります。
ですから、正確な動作を計算するときには「A+入力 > −入力なら、出力は最高出力電圧まで振り切る、また、B+入力 < −入力なら、出力は最低出力電圧まで振り切る」と考えます。
出力できる電圧に範囲があるように、入力できる電圧にも範囲があります。入力できる電圧の制限には2種類あります。同相入力電圧範囲と差動入力電圧範囲です。さらに、入力しても壊れない範囲(絶対最大定格)と正常に動作する範囲(電気的特性)があります。
下図のような負帰還の回路が正常に動作しているとき、+入力端子と−入力端子は同じ電圧になります。このような状態で入力に加える電圧が、同相入力電圧です。
つまり、負帰還の掛かった回路のように、+入力と−入力が同じ電圧の場合に場合に、入力できる(正しく動作する)入力電圧の範囲が同相入力電圧範囲です。
下表はNJM2114の電気的特性です。±15Vの2電源の場合、表の5行目によれば、最低±12Vつまり、−12V〜+12Vの間であれば、正しく動作することが分ります。
下表は同じく2114の絶対最大定格です。絶対最大定格は「一瞬でも越えたらいつ壊れても知らん、いや、恐らく壊れる」というギリギリ一杯の数値ですから注意が必要です。
下表2行目に示すように、2114の同相入力電圧の絶対最大定格は電源電圧です。つまり、±15Vの2電源で使用しているとき、一瞬でも−15Vを下回る、あるいは、一瞬でも+15Vを越えると「壊れても知らん」と言う訳です。+5Vの単一電源で使用している場合は、+5Vを超えることはもちろん、一瞬でも負の(0V以下の)入力が加われば「壊れても知らん」と記載されている訳ですから、単一電源での入力には注意が必要な事が分ります。
下図のコンパレータは−入力に2Vを加え、スレッショルド電圧2Vとしています。コンパレーターの入力として+入力端子に加えた電圧(3V)と−入力端子の電圧(2V)には(負帰還の回路とは異なり)電圧が(1V)生じています。このように、+入力と−入力の間に加える電圧が差動入力電圧です。
上表によれば、NJM2114の差動入力電圧範囲の絶対最大定格は僅か0.5Vです。つまりNJM2114は上図の回路では使用できません。(事実上コンパレータには使用できません)これは2114が(汎用で無く)低雑音のオーディオ専用オペアンプだからです。
逆に汎用のオペアンプNJM4558では、±15V電源で使用したときの差動入力電圧範囲の絶対最大定格は±30Vとなっており、+入力を+電源に、−入力を−電源に接続しても(その逆であっても)壊れません。(実際には「今にも壊れそう」「殆ど壊れる」が正解です)
正常に動作するか否かは電気的特性で確認します。下表に示すとおり、4558の同相入力電圧範囲は(±15Vの2電源の場合)標準で±14V(電源電圧より上下共に1V小さい範囲)、運が悪いと(最小)±12V(電源電圧より上下共に3V小さい範囲)が動作する範囲です。
額面どおりに上記の同相入力電圧範囲を受け止めると、下図で示すとおり、例えば4558を8V単一電源で使用した場合、運が良ければ1〜7Vの6Vの入力電圧範囲で動作するものの、運が悪ければ2〜5Vの2Vの入力電圧範囲でしか正常動作しないとわかります。(温度や素子の個体差による)
さらに、最初にあげたコンパレータ回路のように、5V単一電源であれば、運の悪い場合に使える入力電圧の範囲が無くなってしまいますから「4558は5Vで使えない」となります。(実際には何とか動く場合が大半ですが…)
下図左側の無安定マルチバイブレータを検討したとき、下図右側のグラフのように、オペアンプの出力は「一瞬で反転する」と考えました。
ところが、実際に上図の回路を作って動作させると、一瞬では反転せず、時間とともに出力が変化して行きます。下図上段の写真では分かり難い場合もありますが、下図下段のように、反転する瞬間を時間方向に拡大すると、時間を掛けて反転する様子がはっきり分ります。下図下段では、横1目盛りが10μ秒です。
反転に要する時間は、@は4μ秒程度、Aはかなり早くて1μ秒以下、Bは30μ秒程度要する上、途中で一回休憩しています。
@レイルトゥレイルタイプ |
A汎用タイプ |
B汎用単電源タイプ |
|
|
|
|
|
|
LMC6482 |
NJM4580 |
LM358 |
このように「出力が反転する早さ」を「1μ秒に何V変化できるか」という尺度で表したのが、スルーレート(SR)と呼ぶ値です。(この回路の反転時間は、正確なスルーレートではなく、ゲインバインドウィズも関係しています)たとえば、上の3つのオペアンプのスルーレートは、下表のように計算することができます。
|
LMC6482 |
NJM4580 |
LM358 |
変化に要する時間 |
4μ秒 |
1μ秒 |
30μ秒 |
変化した電圧 |
5V |
2.9V |
2.9V |
スルーレート (変化の速度) |
5V/4μ秒 =1.6V/μ秒 |
2.9V/1μ秒 =2.9V/μ秒 |
2.9V/30μ秒 =0.1V/μ秒 |
データシートの値 |
0.7V/μ秒 |
5V/μ秒 |
0.3V/μ秒 |
但し、データシートのスルーレートは、下図のようにユニティゲイン増幅器に大きな信号を入れて測定する(増幅させないで測定する)きまりなので、コンパレータとして利用している時の値より、大きな(良い)値が記載されている場合が大半です。
ここでは、オペアンプ等の部品が発生させる雑音を説明します。増幅率の高い増幅器では、信号を入れていないときも、出力をイヤホン等でモニタすれば「ザー」と雨のような音が聞こえます。これが部品が出す雑音です。小さな信号を増幅して利用したい場合には、雑音を小さくする工夫が必要です。
下図に3段の増幅器の回路図を示します。「信号の大きさ」を「線の太さ」で示しています。信号が大きければ(線が太ければ)雑音が混入しても無視できますから、雑音に注意するのは、細い線で示す小さな信号を扱う部分です。
たとえば上図の場合は、三段の増幅器の内、(通常は)図中で薄い灰色に塗った、1段目に雑音対策が必要です。さらに、1段目の中でも、濃い灰色に塗った、オペアンプの入力端子と、入力端子に繋がる部品が雑音に影響します。逆に同じ1段目でも、オペアンプの出力端子では、既に信号が大きくなっているので、雑音への影響は殆どありません。
ですから、オペアンプの内部で発生する雑音も「入力端子で発生している」と考えます。オペアンプの入力端子では、雑音電圧(入力端子に加わる雑音の電圧)と雑音電流(入力端子に流れる雑音の電流)の2種類の雑音が発生します。
雑音についての記載はオペアンプの品種により様々です。雑音性能を重視したオペアンプでは詳しく、そうでないオペアンプでは簡素に説明されています。雑音を全く気にしない用途のオペアンプでは、雑音性能が記載されていない場合さえあります。
データシートに登場する主な雑音性能を下表に示します。
分類 |
名称 |
単位 |
意味 |
雑音電圧 |
@入力換算雑音電圧 Input voltage noize |
VRMS VP-P |
そのオペアンプが主に利用される周波数の範囲で、入力に発生する雑音の電圧 |
A入力換算雑音電圧密度 Input voltage noize density |
V/√Hz |
1Hzあたりの雑音電圧 |
|
B入力換算雑音電圧スペクトラム密度 Input Voltage Noise Spectral Density |
HzとV/√Hz グラフ |
1Hzあたりの雑音電圧の周波数による変化の様子 |
|
雑音電流 |
C入力換算雑音電圧 Input current noize |
ARMS AP-P |
そのオペアンプが主に利用される周波数の範囲で、入力に発生する雑音の電流 |
D入力換算雑音電圧密度 Input current noize density |
A/√Hz |
1Hzあたりの雑音電流 |
|
E入力換算雑音電圧スペクトラム密度 Input currnet noize spectral density |
HzとA/√Hz グラフ |
1Hzあたりの雑音電流の周波数による変化の様子 |
@とCは簡便な表し方で、たとえば「耳で聞こえる周波数の範囲」といった感じで、周波数の範囲を予め決めて測定した雑音の電圧です。そのまま入力に加わる雑音の大きさ(電圧や電流)として利用できます。ただし、使用する周波数の範囲が測定条件と違う場合は、雑音の大きさが正確に分りません。
AとDは多少詳しい表し方で、データシートの値(雑音密度)に、自分が使用する周波数の範囲(をルートした値を)掛けて、雑音の大きさを求めます。使用する周波数の範囲が広い場合に、ちゃんと雑音も大きく求めることができます。ただし、周波数による雑音の大きさの変化は分りません。
BとEは詳しい表し方で、周波数による雑音の大きさの変化も含めて、自分の使用する周波数の範囲での雑音の大きさを正確に求めることができます。
雑音電圧は、下図に丸印で示す「雑音電圧源」(雑音電圧を発生する部品)が、入力端子と直列に入っていると考えて回路への影響を検討します。このとき、下図に示すように「+入力に入っている」と考えても「−入力に入っている」と考えても同じ結果になりますから、どちらでも考え易い方に挿入して検討します。
このように、雑音電圧をオフセット電圧と似た方法で考えて良いのは、雑音がオフセット電圧の不規則な変化とも言えるからです。
このように入力で発生していると考えた雑音電圧を「入力換算雑音電圧」と呼び、たとえば「入力換算雑音電圧1μVRMS」と示します。
雑音電圧に使われている単位、実効値電圧(VRMS)は、交流電圧(VAC)と殆ど同じ意味です。つまり、実効値電圧1VRMSは(交流電圧1VACと同様に)直流1Vと同じ明るさで電球を光らせることができる電圧です。ただ、VACは単純な振動を繰り返す交流を表すための単位なので、複雑に変化する雑音を表すのには最適とは言えず、「直流1Vと同じ威力だが、波形は不明な信号」という意味のVRMSを使用しています。
では、入力換算雑音電圧の影響で、増幅器の出力にどのような雑音が現れるか検討します。下図は11倍の非反転増幅回路に、入力換算雑音電圧1μVRMSのオペアンプを使った例です。
上図を見ながら、下表に書き込んで出力に現れる雑音電圧を計算します。
番号 |
質問 |
値 |
|
+入力端子に加わる雑音電圧は1μVRMSです。 |
‐ |
@ |
負帰還の回路のため、+入力と−入力は間の電圧は、 |
V |
A |
1kΩの両端の雑音電圧は、 |
μVRMS |
B |
1kΩに流れる雑音電流は、 |
nARMS |
C |
10kΩに流れる雑音電流は、 |
nARMS |
D |
10kΩの両端の雑音電圧は、 |
μVRMS |
E |
出力端子の雑音電圧は、 |
μVRMS |
番号 |
質問 |
値 |
|
+入力端子に加わる雑音電圧は1μVRMSです。 |
‐ |
@ |
負帰還の回路のため、+入力と−入力は間の電圧は、 |
0V |
A |
1kΩの両端の雑音電圧は、 |
1μVRMS |
B |
1kΩに流れる雑音電流は、 |
1nARMS |
C |
10kΩに流れる雑音電流は、 |
1nARMS |
D |
10kΩの両端の雑音電圧は、 |
10μVRMS |
E |
出力端子の雑音電圧は、 |
11μVRMS |
このように増幅回路では、入力換算雑音電圧が(概ね)増幅率で拡大されて出力に現れます。
下表は低雑音オペアンプNJM2122の電気的特性です。
下から3行目に入力換算雑音電圧の標準値、0.56μVRMSが記載されています。
雑音電流は、雑音電圧程は頻繁に利用しませんが、抵抗値の高い回路では重要な場合があります。雑音電流は、下図に丸印で示す「雑音電流源」(雑音電流を発生する部品)が、入力端子と並列に入っていると考えて回路への影響を検討します。
このように入力で発生していると考えた雑音の電流を「入力換算雑音電流」と呼び、たとえば「入力換算雑音電流10pARMS」と示します。
では、入力換算雑音電流の影響で、増幅器の出力にどのような雑音が発生するか検討します。下図は11倍の非反転増幅回路に、入力換算雑音電流10pARMSのオペアンプを使った例です。
上図を見ながら、下表に書き込んで出力に現れる雑音電圧を計算します。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
+入力の電圧は、 (アースに接続されているから) |
V |
A |
負帰還の回路だから、+入力と−入力の電圧差は、 |
V |
B |
1MΩの両端電圧は、 |
V |
C |
1MΩに流れる電流は、 |
pARMS |
D |
雑音電流が10pAだから、帰還回路に流れる雑音電流は、 |
pARMS |
E |
10MΩに流れる電流は、 |
pARMS |
F |
10MΩの両端電圧は、 |
μVRMS |
G |
出力される雑音電圧は、 |
μVRMS |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
+入力の電圧は、 (アースに接続されているから) |
0V |
A |
負帰還の回路だから、+入力と−入力の電圧差は、 |
0V |
B |
1MΩの両端電圧は、 |
0V |
C |
1MΩに流れる電流は、 |
0pARMS |
D |
雑音電流が10pAだから、帰還回路に流れる電流は、 |
10pARMS |
E |
10MΩに流れる電流は、 |
10pARMS |
F |
10MΩの両端電圧は、 |
100μVRMS |
G |
出力される雑音電圧は、 |
100μVRMS |
つまりこの回路では、オペアンプの雑音電流が10MΩに流れて生じる電圧が、増幅器の出力雑音電圧になります。このように、値の大きい抵抗を使用した回路で雑音電流が問題になります。
雑音は様々な周波数の信号が乱雑に入り混じったものです。雑音の強さは周波数によって変化し、その変化の様子もオペアンプの品種によって違います。ですから、自分が使用する周波数の範囲で雑音が少ないオペアンプを選ぶ必要があります。
このために(雑音性能を重視したオペアンプの)データシートには、横軸を周波数、縦軸を雑音の大きさ、として描いたグラフが掲載されています。イメージ的には雑音の周波数特性のようなものです。
このグラフの正式名称は「入力換算雑音電圧スペクトラム密度 対 周波数」input reffered noize voltage spectral density vs frequencyという長い名前ですが、データシートには「入力換算雑音電圧」等と適当に名前を短縮して掲載されています。
下図は、LM833の入力換算雑音電圧スペクトラム密度(左側)と入力換算雑音電流スペクトラム密度(右側)のグラフです。(このデータシートでも名前は短縮されています)
各周波数での雑音の大きさは、nV/√Hzや、pA/√Hzといった風変わりな単位で表示されます。上図によれば、電圧雑音も電流雑音も、高い周波数では周波数によらず一定ですが、100Hz以下の周波数では増加することがわかります。多くのオペアンプがこのような傾向を持っています。
さて、グラフが平らになっている範囲の周波数を利用する場合は、簡単な計算で入力雑音電圧を求めることができます。たとえば、100Hz〜10KHzの信号を利用する場合、上図左のグラフから、電圧雑音が4.5nV/√Hz程度で一定と読み取れますから、次のように入力換算雑音電圧を計算します。
=4.5E-9*SQRT(10E3-100)
周波数の幅に√を付けるのは、「雑音は電力で足し算する」必要があるからです。雑音の足し算については、別途説明します。また、グラフが平らで無い周波数の範囲についても、別途説明します。
下図は典型的なオペアンプの雑音スペクトラム密度の例です。雑音には「どのような周波数にも満遍なく分布する」ホワイト雑音(水平な点線)と、「低い周波数で大きくなる」ピンク雑音(斜めの点線)があります。それぞれ別の原因で発生している雑音です。
ホワイト雑音はショット雑音、ピンク雑音は1/f(エフブンノイチ雑音)、フリッカ雑音とも呼ばれます。
ピンク雑音は、周波数が100分の1になると、振幅が10倍に大きくなります。参考のために下図に細線で示したCRフィルタ(積分回路)の特性では、周波数が10分の1になると、振幅が10倍に大きくなります。ですから、ピンク雑音の増加の勢いは、CR回路より穏やかです。
通常のオペアンプでは、図に灰色の太線で示すように、ピンク雑音とホワイト雑音の合計が、雑音として現れます。
平らなホワイト雑音の点線と、斜めのピンク雑音の点線が交わる周波数を、ピンク雑音の肩周波数と呼びます。ホワイト雑音の大きさが同じなら、ピンク雑音の肩周波数が低ければ低いほど、ピンク雑音が小さいことを示します。
ピンク雑音の肩周波数は、ピンク雑音の接線周波数、ピンク雑音のコーナー、ピンク雑音タンジェントと、様々な名前で呼ばれます。
温度センサーのような極めて周波数の低い(直流に近い)信号を扱う場合には、ピンクの雑音が問題になります。このような場合は、ピンク雑音の小さなオペアンプを、つまり、ピンク雑音の肩周波数の低いオペアンプを選びます。
下図(a)のように、1VACの交流と1VACの交流を加えると、2VACの交流になります。
ところが雑音の場合、上図(b)のように、1VRMSの雑音と、1VRMSの雑音を加えると、1.4VRMSになります。これは、交流がお互いに息を合わせて波打っている(コヒーレントな)のに対して、雑音が不揃いに変化している(インコヒーレントな)ためです。このような現象は雑音以外でも生じます。たとえばAさんの声1VRMSとBさん声1VRMSを加えても、1.4VRMSにしかなりません。Aさん声の波形と、Bさんの声の波形が(音色は似ていても)違う形だからです。
では、雑音電圧を足し算する方法を考えます。たとえ雑音のように不揃いな信号でも、エネルギーは保存されます。つまり電力が1Wの雑音と2Wの雑音を加えると、3Wの雑音となります。そこで、電力に注目して電圧の足し算を考えます。
下図左側に、3VRMSと4VRMSの雑音によって、1Ωの抵抗に発生する電力を示します。3VRMSなら3ARMSの電流が流れて9Wの電力が生じ、4VRMSなら16Wの電力が生じます。つまり、合計25Wの電力が生じます。
上図右側では、同じ1Ωの抵抗に25Wの電力が生じる様子を示します。電圧が5VRMSのとき、5ARMSの電流が流れる結果、25Wが生じます。
つまり、電力に注目すると、3VRMS(9W)と4VRMS(16W)を加えると合計5VRMS(25W)となります。この考え方を使うと、A [VRMS]とB [VRMS]の2つの雑音の足し算の方法は、
Aで生じる電力=A2 (A [VRMS]で、A [ARMS]だから)
Bで生じる電力=B2 (B [VRMS]で、B [ARMS]だから)
合計の電力=A2+B2
合計の電力を発生させる電圧=
と、雑音の合計は「二乗してから合計して、合計してからルートを取る」ことで計算できます。
オペアンプの雑音スペクトラム密度と、増幅器の特性が分れば、図の上で足し合わせるだけで、増幅器の出力の雑音スペクトラム密度を求めることができます。
下図に1kHzで帯域制限した10倍の反転増幅回路とその周波数特性を示します。
上図の回路に、下図に点線で示す入力換算雑音電圧(正しくは、入力換算雑音電圧スペクトラム密度)のオペアンプを使用した場合、増幅器の出力雑音電圧は、下図に太線で示す特性となります。
入力換算雑音電圧が増幅率の分大きくなりますから、1kHz以下の範囲では入力換算雑音電圧は10倍されて出力に現れます。(上にシフトします)。また、1kHz以上の範囲では、増幅率が「周波数10倍で振幅10分の1」の勢いで低下して行くため、入力に加わる雑音の大きさは変化しませんが、増幅器の出力にあらわれる雑音は「周波数10倍で振幅10分の1」の勢いで低下します。
増幅率1倍を最低値(一番下)にして対数グラフを描くと、入力換算雑音電圧と増幅器の特性の高さを加えるだけで、増幅器の出力雑音電圧を求めることができます。
回路の出力信号の雑音スペクトラム密度から、その回路はどの周波数での雑音が大きいか、簡単に知ることができます。
下図に点線で示すように(周波数が100倍になると雑音電圧が10分の1に減少する傾きの)斜線を、雑音特性と接するように描きます。雑音特性と斜線が接する付近が、雑音の大きい周波数です。下図の場合、黒丸の部分で接するため、1kHz周辺の灰色に塗った部分で雑音が多いことが分ります。ですから、このあたりの雑音は慎重に計算する必要があると分ります。
では、この回路の雑音出力電圧を計算します。雑音は、1Hz、10Hz、100Hzと10倍区切りに計算すると楽ですから、最初に、上図の@〜Eのように区間を設けます。区間はグラフの傾斜によって次のように分類できます。
区間 |
傾斜の特徴 |
区間の特徴 |
掛ける値 |
@とA |
周波数が100倍になると雑音電圧が10分の1に減る |
ピンク雑音の区間 |
2.4 |
BとC |
周波数に関係なく、雑音電圧が一定 |
ホワイト雑音の区間 |
0.95 |
DとE |
周波数が10倍になると雑音が10分の1に減る |
増幅回路が積分動作 している区間 |
1.5 |
上表の「掛ける数」は後で説明する各区間の雑音電圧の計算で利用します。
実際の回路では、雑音特性の折れ曲がり点が、ちょうど区間の切れ目に来ることはありません。雑音は素子による個体差が大きく、正確に計算する意味はそれ程ありませんから、10倍区切りに合うように、雑音特性を多少修正して計算します。
ホワイト雑音の区間は、下図に示すように周波数に関係なく雑音電圧が一定になります。このような場合、1区間あたりの雑音電圧は、
で計算できます。下図の例では、=32E-9*SQRT(1000)*0.95と計算して、961nVと分ります。
ピンク雑音の区間は、下図に示すように周波数が100倍になると、雑音電圧が10分の1に減少します。(3dB/oct、10dB/dec)このような場合、1区間あたりの雑音電圧は、
で計算できます。下図の例では、=32E-9*SQRT(10)*1.5と計算して、152nVと分ります。
増幅回路が積分動作している区間は、下図に示すように周波数が10倍になると、雑音電圧が10分の1に減少します。(6dB/oct、20dB/dec)このような場合、1区間あたりの雑音電圧は、
で計算できます。下図の例では、=32E-9*SQRT(10E3)*2.4と計算して、768nVと分ります。
このようにして求めた各区間の雑音電圧を下図に示します。
@〜Eの区間それぞれの雑音電圧は下表のExcelシートで求めることができます。
シートのE列に各区間の雑音電圧が表示されます。全ての区間の雑音電圧の合計は「雑音の足し算」で説明したように「二乗してから合計して、合計してからルートを取る」方法で計算します。F列で各区間の雑音電圧を2乗し、G列にその合計を、H列に合計をルートした値を表示しています。
上のシートを計算すると、下表のようになります。
全区間の雑音電圧の合計は、1308nV(1.3μV)と分ります。各区間の雑音電圧を下図に示します。
抵抗も雑音を発生します。雑音密度はどの周波数でも一定で、使用する周波数の範囲と抵抗値から、雑音電圧と雑音電圧密度は次のように計算できます。
たとえば、10MΩの抵抗は20〜20kHzの周波数の範囲では、
=0.13*SQRT(10E6*(20E3-20)) [nV]
=0.13*SQRT(10E6) [nV/√Hz]
と入力して、雑音電圧58000nV(58μV)、雑音電圧密度410nVと計算できます。
また、抵抗が発生する雑音電流と雑音電流密度は、
たとえば、10MΩの抵抗は20〜20kHzの周波数の範囲では、
=0.13*SQRT((20E3-20)/10E6) [nV]
=0.13*SQRT(1/10E6) [nA/√Hz]
と入力して、雑音電流0.0058nA(5.8pA)、雑音電流密度0.041pA/√Hzと計算できます。
下表に各種の抵抗で発生する雑音の一覧を示します。抵抗の雑音が使用するオペアンプの入力雑音より1桁以上小さければ、気にする必要はありません。
抵抗の雑音がオペアンプの入力雑音に近い、あるいは大きい場合は、抵抗値を小さくできないか、帯域を狭くできないかを検討します。
詳細はともかく、とりあえず、だいたいのイメージを把握することが理解の早道です。ここでは、半導体の働きと応用回路の大雑把な雰囲気を説明します。
半導体素子の説明に先立って、「半導体物性」の説明を行うのが世間のお約束です。しかし、現実には「半導体の中で何が起こっているのか」を知らなくてもダイオードやトランジスタは使えます。逆に「半導体の中で起こっている事」を正確に説明しようとすると(神はどのように世界を設計したかという話になり)話が極めて長くなります。そこで本書では、半導体の性質とダイオードやトランジスタの動作を、安易なたとえ話で手短に説明します。
上図(a)に示すように、銅などの導体(電気を良く流す物質)には、豊富に移動可能な電子(黒丸)が存在し(電子が移動して電流を運ぶので)電流が良く流れます。ところが、上図(b)に示すように、ガラス等の絶縁体(電気を流さない物質)では、電子が深い穴の底に固定されていて、移動することができず、電流が流れません。
さて、N型半導体は上図(c)のように、少しだけ移動可能な電子がある物質で、P型半導体は上図(d)のように、電子が出入りできる浅い穴のある物質です。
N型半導体では、下図(a)のように、電子が移動して電流が流れます。このように、電子が電気を運んでいるように見えるので、N型半導体では電子を「キャリア」(運び屋)と呼びます。また、P型半導体は、下図(b)のように、所々に浅い穴があるので、電子が穴伝いに渡り歩いて電流が流れます。
見方を変えると、P型半導体では電子が移動する方向とは逆向きに(空の)穴が移動しているように見えます。そこで、P型半導体では空の穴(ホール)を「キャリア」と呼びます。
なんらかの理由で、N型半導体の電子がどこかへ行ってしまうと(下図(a))キャリア(電子)がなくなって絶縁性となり、電流が流れなくなります。同様に、P型半導体のホールが電子で埋まってしまうと(下図(b))キャリア(空の穴)が無くなって絶縁性となり、電流が流れなくなります。
N型半導体とP型半導体をぴったりくっつけることを「PN接合」と呼びます。くっつけた面(接合面)では、下図中央部に示すように、N型半導体の電子がP型半導体のホールに移動して結合し、灰色で示す絶縁性の層ができます。この層を空乏層(キャリアの無い導電性の乏しい層)と呼びます。
このPN接合の、N型側に+の、P型側に−の電圧を掛けると、下図に示すとおり、N型の側では(左端の+電圧に引かれて)電子が奪われて、P型の側では穴が(右側から入り込んだ)電子で埋められて、絶縁性の空乏層が広がるばかりで、電流が流れません。
逆に、N型側に−の、P型側に+の電圧を掛けると、下図に示すとおり、N型の側では(左側から)電子が供給され、P型の側では穴から(右側へ)電子が取り除かれて、空乏層が消失し、電流が流れます。
このように一方向にだけ電流を流す作用を「整流作用」と呼びます。
下図のようにN型、P型、N型とサンドイッチ状に半導体を接合した素子が、(バイポーラ)トランジスタです。(PNPと接合したものもあります)
ダイオードと同様に、N型領域の電子が、P型領域のホールと結合し、下図に灰色で示すように、ベースの左右に絶縁性の空乏層が生じます。
さて、下図のようにコレクタに+、エミッタに−の高い電圧を加えると、ベース領域の穴が(エミッタから入り込んだ)電子で埋められてベースが絶縁性となり、また、コレクタ側の電子は左側の+電圧に引かれて空乏層が広がり、電流が流れません。
ここで下図のように、ベースに僅かな+の電圧を加えます。
すると、この+の電圧に引かれて、ベースの穴を埋めていた電子が抜き取られ、ベース領域に穴(キャリア:ホール)ができます。さらに、この穴に引かれて(穴に入ろうとして)、エミッタからベースへ、次々と電子が飛び込んできます。
ところが、ベースが薄いため飛び込んできた電子の大部分は穴に入ることができず、コレクタ領域に入ってしまいます。そして、一旦コレクタに入ったが最後、電子はコレクタに加えられた高い電圧に引かれて、一気に左へ進み、コレクタ端子から外へ出て行きます。
エミッタから飛び込んで来た電子のほんの一部だけが、ベースの穴に入りますから、ベースから抜き取る電子は僅かですみます。
この結果、ベースから僅かな電子を抜き取るだけで、その何倍もの電子がエミッタからコレクタに流れます。あたかも、ベースに流した僅かな電流が大きくなって、コレクタに流れたように見えますから、このような働きを「増幅作用」と呼びます。
PN接合には下図に示すような、整流作用(1方向にだけ電流を流す作用)がありました。電流はP型からN型に向かってだけ流れます。このような電流を「順電流(順方向電流)」IF、このとき加えている電圧を「順電圧(順方向電圧)」VFと呼びます。(流れない向きに無理流した電流を逆電流IR、その時の電圧を逆電圧VRとも呼びます)
半導体が現れる以前、このような用途には上図右側の、2極管(ダイオード)が利用されていました。このため、半導体で作った整流素子(上図左)も、半導体ダイオード(略して、ダイオード)と呼ばれます。
2極管にならってP型の端子をアノード(A)、N型の端子をカソード(K)と呼びます。カソードの綴りは主に「Cathode」ですが、略語が「K」なのは「Kathode」とも綴り得るからです。
さて、下図左側のグラフに示すとおり、ダイオードに僅かでも順電流(IF)を流すと、ダイオードの両端には0.7V程度の順電圧(VF)が生じ、電流を増やしても、順電圧は少ししか上昇しません。
そこで大雑把な回路設計では、「順電流が流れているシリコンダイオードには0.7Vの順電圧が発生している」(上図右側)と考えます。つまり、本当は滑らかな曲線を描いているダイオードの特性を、上図に灰色の太線で示す逆L型に簡略化して(楽に)扱います。
シリコンダイオードの順電圧は温度が1℃上昇すると、2mV減少します。つまり、常温で約0.7Vの順電圧は、50℃上昇すれば約0.6Vに、100℃上昇すれば約0.5Vに低下します。このため、広い温度範囲で動作させる回路、電流が多く流れて素子の温度が上昇する回路、正確に動作させる回路、等では順電圧の変化が影響しないように工夫を行います。
下図の回路でダイオードに流れる順電流を、下表に書き込みながら求めてください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
電流の流れているダイオードの順端電圧は、 |
V |
A |
電池が4Vだから、抵抗の両端電圧は、 |
V |
B |
抵抗に流れる電流は、 |
mA |
C |
ダイオードに流れる順電流IFは、 |
mA |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
電流の流れているダイオードの順電圧は、 |
0.7V |
A |
電池が4Vだから、抵抗の両端電圧は、 |
3.3V |
B |
抵抗に流れる電流は、 |
1mA |
C |
ダイオードに流れる順電流IFは、 |
1mA |
ダイオードの順電圧は温度が1℃上がると、約2mV下がります。0.7Vと考えている順電圧が、温度が50℃温度が上がると、0.6Vに減少しますから「多少順電圧が変化しても大丈夫」な回路を作ります。
シリコンダイオードに順電流が流れると約0.7Vの電圧が発生しました。材料の違うダイオードでは、それぞれ次のような順電圧が発生します。
ダイオードの種類 |
順電圧(VF) |
ゲルマニウムダイオード |
約0.2V |
ショットキバリアダイオード |
約0.3V |
シリコンダイオード |
約0.7V |
赤外線LED |
約1.2V |
赤色・黄色LED 低輝度緑色LED |
約2V |
青色・白色LED 高輝度緑色LED |
約3.5V |
下図の回路で赤色LEDに10mAの電流を流して点等したい。下表に書き込みながら、抵抗値を決めてください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
赤色LEDに電流が流れたとき、順電圧は、 |
V |
A |
電源が5Vだから、抵抗の両端電圧は、 |
V |
B |
抵抗に流れる電流は(LEDと等しいから)、 |
mA |
C |
抵抗値は(オーム則より)、 |
Ω |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
赤色LEDに電流が流れたとき、順電圧は、 |
2V |
A |
電源が5Vだから、抵抗の両端電圧は、 |
3V |
B |
抵抗に流れる電流は(LEDと等しいから)、 |
10mA |
C |
抵抗値は(オーム則より)、 |
300Ω |
ダイオードに順電流を流すと、下図グラフ右端に示すように、例えば0.7V程度の順電圧を生じました。(下図のグラフでは(幅広い電圧を表すために)電圧の目盛が左右に圧縮されています)
ところでダイオードに逆電圧を加えても逆電流は殆ど流れません。下図のグラフを詳しく見ると、逆電圧を加えても、極僅かな電流が漏れるだけです。この電流が逆電流IRです。
そして、逆電圧をどんどん高めて行くと、下図に「一般ダイオード」のグラフで示すように、とうとうダイオードの耐電圧を超えて電流が流れ始めます。この現象をブレークダウン(降伏)と呼びます。ブレークダウンを起こすと激しく発熱するため、下図左下に×印で示すように破損します。このような破損に至る可能性がある逆電圧が「逆電圧の絶対最大定格」です。
また、低い(正確な)電圧で安全にブレークダウンするように製造したダイオードが、上図に示す「ツェーナダイオード」です。ツェーナダイオードは低い電圧でブレークダウンする以外は一般ダイオードと殆ど同じ性質を持っています。
上図から分るようにツェーナダイオードから所定の電圧を取り出す場合は、逆電圧を加えます。順電圧を加えると一般ダイオードと同じ0.7Vの電圧が得られるだけです。
ツェーナ電圧5Vのツェーナダイオードを使って下図の回路を作りました。それれぞれの回路の出力電圧を、下図を参考に下表に書き込みながら求めてください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
ツェーナダイオードの両端電圧は、 (ツェーナダイオードには逆電圧が加わっているから、) |
V |
A |
+入力と−入力の間の電圧は、 (負帰還が掛かっているから、) |
V |
B |
出力電圧は、 |
V |
C |
ツェーナダイオードの両端電圧は、 (ツェーナダイオードには順電圧が加わっているから、) |
V |
D |
+入力と−入力の間の電圧は、 (負帰還が掛かっているから、) |
V |
E |
出力電圧は、 |
V |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
ツェーナダイオードの両端電圧は、 (ツェーナダイオードには逆電圧が加わっているから、) |
5V |
A |
+入力と−入力の間の電圧は、 (負帰還が掛かっているから、) |
0V |
B |
出力電圧は、 |
5V |
C |
ツェーナダイオードの両端電圧は、 (ツェーナダイオードには順電圧が加わっているから、) |
0.7V |
D |
+入力と−入力の間の電圧は、 (負帰還が掛かっているから、) |
0V |
E |
出力電圧は、 |
0.7V |
ツェーナ電圧5V、定格損失500mWのツェーナダイオードを5mWで動作させ、5Vの基準電圧を作ります。下表に記入しながら抵抗の値を決定してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
ツェーナダイオードのブレークダウン電圧は、 |
V |
A |
抵抗の両端電圧は、 |
V |
B |
ツェーナダイオードの発熱を5mWとするためには、ツェーナダイオードの逆電流は、 |
mA |
C |
抵抗の値は、 |
kΩ |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
ツェーナダイオードのブレークダウン電圧は、 |
5V |
A |
抵抗の両端電圧は、 |
10V |
B |
ツェーナダイオードの発熱を5mWとするためには、ツェーナダイオードの逆電流は、 |
1mA |
C |
抵抗の値は、 |
10kΩ |
トランジスタにはいくつかの種類があります。ここでは、理解し易い「バイポーラ・トランジスタ」を「トランジスタ」と呼んで取り上げます。バイポーラで考え方を掴めば、他のトランジスタも(ひと工夫することで)容易に理解できます。
さて、すでに「NPN接合の増幅作用」で説明した下図の素子がトランジスタです。下図(a)は模式図で、下図(b)は図記号で、トランジスタを示します。
上図(a)の太い点線矢印で示すとおり、(NPN型の)トランジスタでは、ベースから電子を引き抜くと、コレクタに沢山の電子が流れ出て行きました。
普通は「電子が流れる」とは言わず「電流が流れる」と説明します。電流は電子と反対の方向に流れますから、トランジスタの働きは、上図にブロック矢印で示すとおり「ベースに電流を流し込むと、コレクタに大量に電流が流れ込む」と説明できます。
トランジスタには既に説明したNPN型(下図左側)の他にPNP型(下図右側)があります。
接合面ではP型からN型に向かって電流が流れます。ですから、上図で分るように、ダイオードでもトランジスタでも、図記号の三角や矢印はP→Nの向きに描かれます。
上図左側で分るように、NPNトランジスタでは、ベース→エミッタ、ベース→コレクタの2方向に電流が流れます。逆にPNPトランジスタでは、ベース←エミッタ、ベース←コレクタの2方向に電流が流れます。この性質を使えば、導通を検査することで、NPNかPNPかを、また、どの端子がベースであるか、を見つけることができます。
チップトランジスタをテスタで導通検査したところ、下図の2つの接続で電流が流れました。白いプローブが+側とすれば、ベース端子は@ABのどれですか。また、このトランジスタのタイプはNPNですか、PNPですか。
端子@は、Aからも、Bからも電流が流れ込んでいるからベースである。ベースに電流が流れ込むためには(接合面に電流の流れる方向は、P→Nであると考えると)コレクタとエミッタがP型、ベースがN型半導体であるから、このトランジスタはPNP型である。
トランジスタには2つの接合面があり、NPNトランジスタの場合は、B→CとB→Eの向きに電流が流れました。もちろんその逆には電流が殆ど流れません。しかし注意することがあります。
下図(a)に示すとおり、コレクタとベースの間(C−B間)に逆電圧を掛けても僅かな電流が漏れるだけで、問題ありません。
ところが、下図(b)に示すように、エミッタとベースの間(B−E間)に逆電圧を掛けると、電圧が低い場合は微かな電流しか漏れず問題ありませんが、電圧が5V程度になると(ブレークダウンが発生し)電流が流れてトランジスタが壊れてしまします。
このように、B−E間のPN接合は極めて逆電圧に弱いので、回路を考えるときも注意が必要です。
実はこの弱点は、トランジスタの性能(増幅作用)を高めるために生じています。というのも、トランジスタの増幅作用を高めるには、ベースに穴(キャリア)が出来たとき、できるだけ多くの電子がエミッタから飛び込んで来なければいけません。そのために、上図(c)のように、エミッタには(普通のダイオードに比べて)極めて沢山の電子を含ませてあります。あまりにも多くの電子が含まれているため、B−E間の空乏層は絶縁性が悪くなり、逆電圧が大きくなると電流が流れてしまうのです。
逆に、上図右側に示すように、コレクタに含まれている電子は少ないので、C−B間はダイオードと同様に、逆電圧を加えても平気で、逆電圧を加えて使用します。とはいえ、これもダイオードと同様に、下図(a)に示すように、僅かな逆電流が漏れます。この逆電流はトランジスタの動作に悪影響を与える場合があるので、ICBOと呼んでデータシートに値が記載されています。
また、上図(b)のように、(ベースに何も接続せず)C−E間に電圧を加えた場合もICBOが流れます。コレクタからベースに流れたICBOは、ベースからエミッタに流れて行きます。
下図はNPNトランジスタのベースに僅かな(1の)電流を流したところ、コレクタに沢山の(100の)電流が流れた様子です。
上図の中に大雑把な設計で利用する、下表に示す「トランジスタの重要な性質」が全て含まれています。
トランジスタの重要な性質
番号 |
ポイント |
説明 |
@ |
VBE ≒ 0.7V |
ベースとエミッタの間は(耐圧は低いとは言え)PN接合ですから、ダイオードと同様に、電流が流れると(電流により多少の変化はあるものの)約0.7Vの電圧が発生します。 |
A |
IC ≒ IE |
上図ではICが 100 流れたとき、IEが 101 流れます。違いは1%です。大雑把な回路設計では両者が同じと考えて問題ありません。 |
B |
IC = IB × hFE |
ベースIB電流が増幅されてコレクタ電流ICになります。上図では100倍に増幅されていますが品種によって異なるので、この倍率(増幅率)をhFEと呼びます。 |
上図の回路で電流計が1.2mAを示しました。トランジスタのhFEは何倍ですか。下図を参考に、下表に書き込みながら考えてください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
1MΩがあるため、ベース電流は、 (選んでください) |
流れている 流れていない |
A |
ベース電流が流れているとき、ベースエミッタ間電圧 VBEは、 |
約 V |
B |
電源電圧が10.7Vだから、1MΩの両端電圧は、 |
V |
C |
1MΩに流れる電流は、 |
μA |
D |
ベース電流は、 |
μA |
E |
コレクタ電流は、 |
mA |
F |
hFEは、 |
倍 |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
1MΩがあるため、ベース電流は、 |
流れている 流れていない |
A |
ベース電流が流れているとき、VBEは、 |
約0.7V |
B |
電源電圧が10.7Vだから、1MΩの両端電圧は、 |
10V |
C |
1MΩに流れる電流は、 |
10μA |
D |
ベース電流は、 |
10μA |
E |
コレクタ電流は、 |
1.2mA |
F |
hFEは、 |
120倍 |
つまり、上図の簡単な回路でhFEの値を知ることができます。(測定している間にトランジスタが発熱して、値が変動する場合があります)
このようにトランジスタを動作させるために、一定の電流を流すことを「トランジスタをバイアスする」と呼び、流している電流を「バイアス電流」と呼びます。端子の名前を付けて「コレクタバイアス電流」等と使うこともあります。もちろん「コレクタバイアス電流」は「コレクタ電流」と呼んでも間違いではありません。しかし、センサが発した信号等で、一時的にトランジスタに電流が流れた場合等は、(一定の電流がしばらく続いても)バイアス電流とは呼びません。
上図の回路のコレクタエミッタ間電圧(VCE)を、下図を参考に、下表に書き込みながら求めて下さい。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
トランジスタのVBEは、 |
V |
A |
ベース抵抗RBの両端電圧VRBは、 |
V |
B |
ベース抵抗RBに流れる電流IRBは、 |
μA |
C |
ベース電流IBは、 |
μA |
D |
hFEが100だから、コレクタ電流ICは、 |
mA |
E |
負荷抵抗RLの両端電圧VRLは、 |
V |
F |
コレクタエミッタ間電圧VCEは、 |
V |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
トランジスタのVBEは、 |
約0.7V |
A |
ベース抵抗RBの両端電圧VRBは、 |
3.3V |
B |
ベース抵抗RBに流れる電流IRBは、 |
10μA |
C |
ベース電流IBは、 |
10μA |
D |
hFEが100だから、コレクタ電流ICは、 |
1mA |
E |
負荷抵抗RLの両端電圧VRLは、 |
1V |
F |
コレクタエミッタ間電圧VCEは、 |
3V |
※コレクタに接続された負荷抵抗RLは、コレクタ抵抗RCと呼ばれる場合もあります。
このように、電源から抵抗一本でベースに電流を流す方法を「固定バイアス」と呼びます。回路が簡単で、ベース電流は一定ですが、欠点があります。
欠点の1つ目は、回路の個体差です。同一品種のトランジスタでも、素子毎にhFEが大きくばらつきます。(たとえば、70〜300倍の範囲で「運任せ」という場合もあります)このため、コレクタ電流を一定にするには、ベース抵抗RBの値を1台1台の調整する必要があります。
欠点の2つ目は、hFEは温度でも変化するので、電源を入れて素子が温まるとコレクタ電流が変化します。特に大きな電流を流す場合は発熱が大きく電流の変化が目立ちます。
従って、下図のようにベース電流を調節できるようにすれば(温度による電流の変化は多少あるけれど)、本練習の回路で信号を増幅することができます。電圧増幅率も150倍程度とかなり大きいです。(増幅率の求め方は後で説明します)
とはいえ、このような調節は現実的ではありませんから、後で説明するような、hFEがバラついても、その影響を受けずに動作する回路が用いられます。
トランジスタには抵抗と違い、オーム則には従わず、電圧が変化しても一定の電流を流そうとする性質(定電流特性)があります。この定電流特性は様々な半導体素子で現れます。
先に演習した下図(a)の回路では、コレクタ電流ICが1mA流れていました。この回路の負荷抵抗RLをショートし、下図(b)の回路に変更すると、コレクタ電流ICとコレクタエミッタ間電圧VCEはどのように変化しますか。下表に記入しながら求めてください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
ベース電流とhFEから、ICは、 |
mA |
A |
ショートしたVRLの両端電圧は、 |
V |
B |
電源電圧4Vだから、VCEは、 |
V |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
ベース電流とhFEから、ICは、 |
1mA |
A |
ショートしたVRLの両端電圧は、 |
0V |
B |
電源電圧4Vだから、VCEは、 |
4V |
このように、負荷(RL)が変化し、VCEが変化(3V→4V)しても、流れる電流(IC)は変化せず一定です。このような性質を「定電流特性」と呼びます。
下図に示すデータシートのVCE−IC特性図はこの様子を表したグラフで、様々なベース電流で、VCEを変化させたときのICとの関係をグラフに描いたものです。
たとえば、上図下から2番目のIB=0.2mAのグラフでは、VCEが0.5V〜5Vの範囲でグラフが水平で、ICは30mA程度で殆ど変化がありません。この水平な(電圧が変わっても電圧が変わらない)部分が定電流特性を示しています。但し、IB=3mAの例で分るように、コレクタ電流が電流が大きくなると定電流特性が不完全となって、グラフが傾きます。
hFEの値は同じ品種でも大きく異なります。下表のように、例えば2N3904をICを1mAので使用したときのhFEは70〜300倍と、最大4倍以上の開きがあります。
このようなhFEの大きなバラツキを緩和するために、品種やメーカーによっては、下表のように、品番に「hFE分類」を追加して、分類(選別)して販売している場合もあります。
上表欄外に記載の「hFE分類」がこれを表し、たとえば2SC2712−YならhFE分類は「Y」で、hFEの値は120〜240倍と、2倍程度の開きに収まるように分類されています。
分類の名前は、O(オレンジ)、Y(ホワイト)、GR(グリーン)、BL(ブルー)と色に関係している場合があります。手作業で分類していた時代に、細筆を使って色ペンキで小さな点を付け、分類を表示していた名残です。
下図のように、ベースに一定の電圧を加える回路では、(VBEが温度で低下するため)温度が上昇するとベース電流やエミッタ電流が増加します。
一旦電流が増えると、「(増えた電流で)トランジスタが発熱して温度が上昇し、(VBEが低下して)さらに電流が増える」という連鎖が発生し、ついにはトランジスタが破損します。これを熱暴走と呼びます。熱暴走は下図のように、エミッタに抵抗を挿入すると防止できます。
上図左ではエミッタに1kΩを挿入し(抵抗の両端電圧を1Vとして)50度の温度上昇で、電流の増加を10%増に抑えています。同図右では、2kΩを挿入し(抵抗の両端電圧を2Vとして)電流の増加を5%に抑えています。
このように、エミッタ抵抗を大きくして、抵抗の両端電圧を高くすると、エミッタ電流の安定性が高まります。しかしエミッタ抵抗を大きくすると増幅率が下がりますから、小さな電圧を扱う回路では、エミッタ抵抗の両端電圧を1V程度に選ぶのが一般的です。
この回路ではエミッタ電流IEが増加すると(エミッタ抵抗の両端電圧が上昇して)ベース電流IBが減少します。つまり、電流IE増加→電流IB減少、という負帰還で(バイアス電流を)安定させているので「電流帰還バイアス回路」と呼びます。
「電流帰還バイアス回路」は日本独自の呼び名で、英語では「エミッタ・デジェネレーション」(エミッタの抑制)と別の名前で呼ばれます。日本語を直訳して「カレント・フィードバック・バイアス・サーキット」と言っても、まるで通じません。
さらにこの回路では、hFEが変動しても(IBは変動しますが)IEやICは殆ど変化しません。なぜなら、hFEが大きくてIEが多く流れると、エミッタ抵抗の両端電圧が増えて、ベース電流が減るからです。
つまり、エミッタ抵抗を挿入する事によって、VBEの温度変化やhFEのバラツキの双方を抑制して、安定したエミッタ電流を流すことができます。
トランジスタは一定の電流が流れるように工夫して、安定動作させます。既に説明したベースに一定の電流を流す方法では、hFEのばらつきでエミッタ電流もばらつく欠点がありました。
そこで下図のように、ベースに一定の電圧を加え、エミッタに抵抗REを取り付けると(増幅率は下がりますが)(温度でVBEが変化しても、hFEのばらついても)安定したエミッタ電流を流すことができました。
この回路のように、ベースに加える一定の電圧を、ベースバイアス電圧と呼びます。では、この回路について検討します。
上図を見ながら下表に記入して、各部の電流、電圧を求めて下さい。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
トランジスタのVBEは、 (トランジスタの重要な性質@より) |
V |
A |
エミッタ抵抗REのの両端電圧VREは、 |
V |
B |
エミッタ電流IEは、 |
A |
C |
コレクタ電流ICは、 (「トランジスタの重要な性質A」によれば) |
A |
D |
負荷抵抗RLの両端電圧VRLは、 |
V |
E |
電源電圧が12Vだから、出力電圧VOは、 |
V |
F |
ベース電流IBの範囲は、 (「トランジスタの重要な性質Bに」によれば) |
μA〜 μA |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
トランジスタのVBEは、 (トランジスタの重要な性質@より) |
約0.7V |
A |
エミッタ抵抗REのの両端電圧VREは、 |
1V |
B |
エミッタ電流IEは、 |
1mA |
C |
コレクタ電流ICは、 (「トランジスタの重要な性質A」によれば) |
1mA |
D |
負荷抵抗RLの両端電圧VRLは、 |
5V |
E |
電源電圧が12Vだから、出力電圧VOは、 |
7V |
F |
ベース電流IBの範囲は、 (「トランジスタの重要な性質Bに」によれば) |
5μA〜 10μA |
このように、エミッタ抵抗REを追加し、ベースに(一定の電流を流すのではなく)一定の電圧VBを加えることで、VBEの温度変化やhFEのバラツキの影響をあまり受けずに、安定したコレクタ電流を流すことができます。
下図は上で練習した回路の、べース電圧VBを0.1Vだけ増やしています。ベース電圧増加の影響による出力電圧VOの変化を、下表に書込みながら求めてください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
トランジスタのVBEは (トランジスタの重要な性質@より) |
V |
A |
エミッタ抵抗REのの両端電圧VREは、 |
V |
B |
エミッタ電流IEは、 |
mA |
C |
コレクタ電流ICは、 (「トランジスタの重要な性質A」によれば) |
mA |
D |
負荷抵抗RLの両端電圧VRLは、 |
V |
E |
電源電圧が12Vだから、出力電圧VOは、 |
V |
F |
ベース電圧VBが1.7Vから、1.8Vに、 0.1V増加した影響による、出力電圧VOの変化は、 |
− V |
G |
入力電圧の変化は何倍になって出力電圧に現れているか。(この回路の増幅率は) |
− 倍 |
H |
負荷抵抗RL÷エミッタ抵抗REの値は、 |
|
番号 |
質問 |
値 |
@ |
トランジスタのVBEは、 (トランジスタの重要な性質@より) |
約0.7V |
A |
エミッタ抵抗REのの両端電圧VREは、 |
1.1V |
B |
エミッタ電流IEは、 |
1.1mA |
C |
コレクタ電流ICは、 (「トランジスタの重要な性質A」によれば) |
1.1mA |
D |
負荷抵抗RLの両端電圧VRLは、 |
5.5V |
E |
電源電圧が12Vだから、出力電圧VOは、 |
6.5V |
F |
ベース電圧VBが1.7Vから、1.8Vに、 0.1V増加した影響による、出力電圧VOの変化は、 |
−0.5V |
G |
入力電圧の変化は何倍になって出力電圧に現れているか。(この回路の増幅率は) |
−5倍 |
H |
負荷抵抗RL÷エミッタ抵抗REの値は、 5k÷1k=5 |
5 |
このように、エミッタ抵抗のある回路の増幅率(の目安)は、負荷抵抗RL÷エミッタ抵抗REで求めることができます(コレクタ抵抗RC÷エミッタ抵抗REで求めることができます)。
下図の回路を、コレクタ電流ICを1mAで動作させたいです。(「コレクタ電流の動作点を1mAにしたい」「コレクタバイアス電流を1mAにしたい」とも言われます)下表に書き込みながら、エミッタ抵抗IEの値を決定してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
エミッタ電流は、 (「トランジスタの重要な性質A」によれば) |
mA |
A |
ベースエミッタ間電圧VBEは、 (トランジスタの重要な性質@より) |
V |
B |
エミッタ抵抗の両端電圧VREは、 |
V |
C |
エミッタ抵抗の値REは、 |
kΩ |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
エミッタ電流は、 (「トランジスタの重要な性質A」によれば) |
1mA |
A |
ベースエミッタ間電圧VBEは、 (トランジスタの重要な性質@より) |
約0.7V |
B |
エミッタ抵抗の両端電圧VREは、 |
1.3V |
C |
エミッタ抵抗の値REは、 |
1.3kΩ |
下図の回路で出力電圧VOが5Vとなるように、下表に書き込みながら、ベース電圧VBを決定してください。またベース電流IBの値の範囲を求めて下さい。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
負荷抵抗RLの両端電圧は、(VCCとVOから) |
V |
A |
コレクタ電流ICは、(オーム則より) |
mA |
B |
エミッタ電流IEは、 (トランジスタの重要な性質Aによれば、) |
mA |
C |
エミッタ抵抗の両端電圧VREは、(オーム則より) |
V |
D |
ベースエミッタ間電圧VBEは、 (トランジスタの重要な性質@より) |
V |
E |
ベース電圧VBは、(キルヒ電圧則より) |
V |
F |
ベース電流IBは、 (トランジスタの重要な性質Bより) |
μA〜 μA |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
負荷抵抗RLの両端電圧は、(VCCとVOから) |
4V |
A |
コレクタ電流ICは、(オーム則より) |
1mA |
B |
エミッタ電流IEは、 (トランジスタの重要な性質Aによれば、) |
1mA |
C |
エミッタ抵抗の両端電圧VREは、(オーム則より) |
2.3V |
D |
ベースエミッタ間電圧VBEは、 (トランジスタの重要な性質@より) |
約0.7V |
E |
ベース電圧VBは、(キルヒ電圧則より) |
3V |
F |
ベース電流IBは、(トランジスタの重要な性質Bより) 1mA/200=5μA 1mA/100=10μA |
5μA〜10μA |
下図(a)のように、ベースに電圧を加えて電流帰還バイアス回路を利用することで、VBEやhFEが変化しても、コレクタ電流を一定に保つことができました。しかしこの回路はバイアス電圧に電池を使用しており、(割高で、消耗するため)実用的ではありません。
そこで下図(b)のように、抵抗を使った分圧回路で1.7Vを発生させれば、電池を使わずに済みます。下図の回路は、ベース電流が10μA流れることも考慮して、ベースに1.7Vのバイアス電圧が加わるように工夫し、また、RAやRBの値は出来るだけ大きくし、回路の消費電流も節約したつもりです。
ところがhFEには2倍以上のばらつきがあるため、例えばhFEが上図(b)の100倍から、上図(c)の200倍に変わった場合は、ベース電流が10μAから、5μAに減少し、その結果、ベースに加わるバイアス電圧が1.7Vから、2.3Vと大きくなってしまいます。
このように、下図(a)のようにRA、RBに流す電流を過度に節約すると、ベース電流の(hFEによる)変化で(RA、RBの電流が変化して)ベースの電圧が変化してしまいます。そこで下図(b)に示すように、RA、RBにはベース電流の10倍〜100倍程度の十分な電流を流し、ベース電流が変化してもRA、RBの電流が影響を受けないようにします。(大きな川なら、少しぐらい水を汲んでも、川の流れに影響しないのと同じです)
下図の回路で、分圧回路の電流IRBを、ベース電流の最大値の20倍に設定して、ベースバイアス電圧を1.7V与えます。下表に記入しながら、RAとRBの値を決定して下さい。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
IBの最大値の20倍に設定するから、IRBは、 |
μA |
A |
VB(VRB)を1.7Vにするために、RBは、 |
kΩ |
B |
電源電圧が12Vだから、VRAは、 |
V |
C |
IRAは、 |
μA |
D |
RAは、 |
kΩ |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
IBの最大値の20倍に設定するから、IRBは、 |
200μA |
A |
VB(VRB)を1.7Vにするために、RBは、 |
8.5kΩ |
B |
電源電圧が12Vだから、VRAは、 |
10.3V |
C |
IRAは、 (IBを無視し、IRB=IRA=200μAとしても良い) |
210μA |
D |
RAは、 (IRB=IRA=200μAとした場合は、52kΩ) |
49kΩ |
練習で取り上げた上図の回路で、ベース電圧VB(上図では1.7V)を様々に変化させて、各部のの電圧を測定すると、下図のように変化します。このグラフは、グラフの上に対応する部品を書き加えると分り易くなります。
ベース電圧(グラフ上の点線)を高くするとICが増加して、VCEが小さくなり、回路はグラフ上を右に移動します。ベース電圧が2.7Vになると(コレクタ電流が2mAになると)VCEが0Vになり、トランジスタはショートした状態になります。この状態をON状態(飽和状態)と呼びます。
逆に、ベース電圧(グラフ上の点線)を低くするとICが減少して、VCEが大きくなり、回路はグラフ上を左に移動します。ベース電圧が0.7VになるとICが0Vになり、トランジスタは電流を流さない状態になります。この状態をOFF状態(遮断状態)と呼びます。
ONでもOFFでもない、中央の部分がリニア状態(能動状態)で、電圧や電流を滑らかに変化させることができます。増幅器に使うのはこの状態です。
次の表に示す通り、増幅作用のある半導体は殆ど「〜トランジスタ」と呼ばれます。これらトランジスタ族の中でも、一番最初に開発された「バイポーラ・トランジスタ」が、日本では単に「トランジスタ」と呼ばれます。本書でも単に「トランジスタ」と呼ぶ場合は「バイポーラ・トランジスタ」を指します。
トランジスタの色々
トランジスタの種類 |
頭文字 |
よくある呼び方 |
バイポーラ・トランジスタ (あるいは)バイポーラ・ジャンクション・トランジスタ |
BJT |
トランジスタ |
ジャンクション・フィールド・エフェクト・トランジスタ |
JFET |
エフイーティー |
メタル・オキサイド・セミコンダクター・フィールド エフェクト・トランジスタ |
MOSFET |
モス モスエフイ−ティー |
アイソレーテッド・ゲート・バイポーラ・トランジスタ |
IGBT |
アイジービーティー |
照明を点灯/消灯する等、電流を「流す」「流さない」だけを行えばよい用途が沢山あります。このような動作をスイッチングと呼びます。
スイッチで照明をON/OFFしても、スイッチが過熱しないように、スイッチングで動作する回路は、効率が良く発熱が少ないので、多用されます。
「トランジスタの状態」で説明したように、トランジスタには「電流を流さないOFF状態」と、VCEが0Vになって「導通するON状態」がありますから、この2つの状態を利用すればスイッチングができます。
下図(a)は負荷(電球)と直列にトランジスタを接続したスイッチング回路です。まずトランジスタをOFFさせて、電球を消灯する方法を考えます。
下図(a)のようにベースに電流を流さなければ、コレクタにも電流が流れず、トランジスタはOFFになる筈です。ところが、このままではトランジスタは次にように動作して、完全にはOFFになりません。
つまり、@コレクタからベースに向かって僅かなICBOが(漏れて)流れます。ベースがどこにも接続されずに放置されているため、AICBOはベースからエミッタへ流れます。ここで、トランジスタはベースに流れ込んだ電流をhFE倍してコレクタに流しますから、たとえICBOが僅か1μAと僅かであっても、Bコレクタには0.1mAの電流が流れてしまいます。
そこで上図(b)のようにベースエミッタ間に抵抗(RBE)を接続します。そうすれば、@コレクタからベースに向かってICBOが1μA流れて来ても、ARBEを1kΩ等と小さくすれば、BRBEの両端には(オーム則により)VBEは1mVしか発生しません。電流の流れるトランジスタではVBEが0.7V程度発生しますから、このようにVBEが1mVと小さければ、Cトランジスタを完全にOFFすることができます。
つまり、上図(b)のように、RBEを接続し、ICBOで発生する電圧を1mV程度に小さくするように値を選べば、トランジスタをOFFできます。
下表のデータシートの抜粋を参考に、下図の回路が完全にOFFするように、下表に書き込みながらRBEの値を決定してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
データシートより、ICBOの値は、 |
nA |
A |
トランジスタを完全にOFFさせるためには、VBEは、 |
mV以下 |
B |
ICBOが流れても、VBEを十分低く保つには、 |
kΩ |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
データシートより、ICBOの値は、 |
100nA |
A |
トランジスタを完全にOFFさせるためには、VBEは、 |
1mV以下 |
B |
ICBOが流れても、VBEを十分低く保つには、 1mV÷100nA=10kΩ |
10kΩ |
ICBOが小さければ、RBEを大きくする(無駄な消費電流を減らす)ことができます。大電流を流すことのできる大型のトランジスタや、設計の古いトランジスタは、ICBOが大きくなる傾向があります。
トランジスタをOFFさせる(RBEを取り付けた)回路に、下図のようにスイッチとRBを追加すれば、スイッチを押すことで(ベースに電流が流れて)トランジスタをONする回路を作ることができます。まず、トランジスタがONしているときの、コレクタ電流を求めます。
上図を参考に、下表に書き込みながらコレクタ電流を求めて下さい。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
電球を点灯するために、トランジスタはONしています。 |
− |
A |
ONしているトランジスタのVCEは、 |
V |
B |
電源電圧が12Vですから、負荷(電球)に加わる電圧は、 |
V |
C |
電球の仕様から、コレクタ電流は、 |
mA |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
電球を点灯するために、トランジスタはONしています。 |
− |
A |
ONしているトランジスタのVCEは、 |
0V |
B |
電源電圧が12Vですから、負荷(電球)に加わる電圧は、 |
12V |
C |
電球の仕様から、コレクタ電流は、 |
600mA |
このようにトランジスタがONすると、コレクタには600mAの電流が流れます。
さて、コレクタに600mA流すためには、(仮にhFEを60とすれば)ベースには10mA流せばよい筈です。ところが、トランジスタがONするとhFEが低下するため、実際にはベースに30mA流す必要があります。
ではトランジスタの特性図を使って「hFEの低下」を説明します。下図はトランジスタのVCE−IC特性の一例です(IBが10mAの場合に注目しています)。グラフの左端が、VCEが0VとなりトランジスタがONになる点です。
もしhFEがVCEに関係なく(例えば60倍で)一定であれば、IBが10mAなら、ICは常に600mA流れてグラフは水平となる筈です。確かにVCEが0.5V以上であれば、グラフ中央から右側で見られるように、コレクタ電流は600mAでほぼ一定で水平です。
東芝製TTC003B
ところが、VCEが0.5Vより低くなると、グラフの左端で見られるように、hFEが低下しICが急低下します。つまり、トランジスタがONに近づくとhFEが低下します。
ここでトランジスタを十分にONにする方法を考えます。上図のグラフで、トランジスタが十分にONになり、VCEが0.1V以下に低下する点を調べると、IBは同じく10mA流しているのに、ICが200mAに減少し、hFEは最初の約3分の1の20倍程度まで低下しています。ですから、トランジスタがONになれば、hFEは約3分の1に低下すると考えて、その分多めに3倍のベース電流を流せば、トランジスタをONにできます。
このように、スイッチング回路ではベース電流を多めに流す必要があります。多めに流す割合(通常3倍程度)を「オーバードライブ」と呼びます。
また、hFEには個体差があるので、ベース電流が不足しないように、(使用するランクの)hFEの最小値を使って計算します。たとえば、120〜240倍であれば、120倍として計算します。
ここまで説明した「OFFの方法」「ONの方法」をまとめると、トランジスタによるスイッチング回路では、次表のポイントに注意して検討すれば良いと分かります。
状態 |
OFFさせる |
ONさせる |
検討の ポイント |
ICBOを受け止める回路を設けて、VBEを1mV程度に低くする。 |
IC÷hFEの値にオーバードライブ(約3倍)を掛けてIBを求める。 |
IBが不足しないように、計算には hFEの最小値を使用する。 |
||
具体例 |
RBEを取り付ける。 ICBOが1μAなら、RBEは1kΩ程度 |
IB=3×IC/hFE(最低) |
OFFさせる具体的な方法は、上表以外にもいくつかあります。
下表に書き込みながら、トランジスタがONになるとhFEが3分の1に減少すると考え、ベース電流を3倍流す(3倍のオーバードライブをする)よう、下図の回路を検討して下さい。
番号 |
質問 |
値 |
|
電球の仕様でコレクタ電流は、600mA流れます。 |
− |
@ |
トランジスタがONになるとhFEが3分の1に減少し、ベース電流は3倍必要だから、ベース電流は、 |
mA |
A |
電流が流れているトランジスタのVBEは、 |
V |
B |
(オーム則より)RBEに流れる電流IRBEは、 |
mA |
C |
(キルヒ則より)RBに流れる電流IRBは、 |
mA |
D |
RBに加わる電圧は、 |
V |
E |
RBの値は、 |
Ω |
番号 |
質問 |
値 |
|
電球の仕様でコレクタ電流は、600mA流れます。 |
− |
@ |
トランジスタがONになるとhFEが3分の1に減少し、ベース電流は3倍必要だから、ベース電流は、 600mA÷60倍×オーバードライブ3倍 |
30mA |
A |
電流が流れているトランジスタのVBEは、 |
0.7V |
B |
(オーム則より)RBEに流れる電流IRBEは、 |
0.7mA |
C |
(キルヒ則より)RBに流れる電流IRBは、 |
30.7mA |
D |
RBに加わる電圧は、 |
11.3V |
E |
RBの値は、 |
370Ω |
電球を負荷に使用する回路では、点灯する瞬間だけ定格の数倍〜10倍の電流が流れるため、これを見越した設計を行います。(今回は行っていません)
下図はスイッチをONにするとLEDが点灯し、OFFにすると消灯する回路です。
上図の回路のRBEとRBを、下図左(OFFの場合)と下図右(ONの場合)や、下のデータシートを参考に下表に記入して決定してください。
番号 |
質問 |
値 |
|
トランジスタがOFFの場合を考えます。 |
− |
@ |
データシートよりICBOは、 |
μA |
A |
トランジスタを完全にOFFするためには、VBEは、 |
mV以下 |
B |
VBEを小さくするために、RBEは、 |
kΩ |
|
トランジスタがONの場合を考えます。 |
− |
C |
ONになったトランジスタのVCEは、 |
V |
D |
赤色LEDのVFは2Vと考えます。 |
2V |
E |
負荷抵抗RLの両端電圧は、 |
V |
F |
(オーム則より)コレクタ電流は、 |
mA |
G |
データシート下部より(分類Yの)hFEの最低値は、 |
倍 |
H |
オーバードライブを3倍とすると、IBは、 3×10mA÷120=0.25mA |
mA |
I |
電流を流しているトランジスタのVBEは、 |
V |
J |
RBEに流れる電流は、 |
mA |
K |
キルヒ則より、RBに流れる電流は、 |
mA |
L |
RBの両端電圧は、 |
V |
M |
RBの値は、 |
kΩ |
番号 |
質問 |
値 |
|
トランジスタがOFFの場合を考えます。 |
− |
@ |
データシートよりICBOは、 |
0.1μA |
A |
トランジスタを完全にOFFするためには、VBEは、 |
1mV以下 |
B |
VBEを小さくするために、RBEは、 |
10kΩ |
|
トランジスタがONの場合を考えます。 |
− |
C |
ONになったトランジスタのVCEは、 |
0V |
D |
赤色LEDのVFは2Vと考えます。 |
2V |
E |
負荷抵抗RLの両端電圧は、 |
3V |
F |
(オーム則より)コレクタ電流は、 |
10mA |
G |
データシートより(分類Yの)hFEの最低値は、 |
120倍 |
H |
オーバードライブを3倍とすると、IBは、 3×10mA÷120=0.25mA |
0.25mA |
I |
電流を流しているトランジスタのVBEは、 |
0.7V |
J |
RBEに流れる電流は、 |
0.07mA |
K |
キルヒ則より、RBに流れる電流は、 |
0.32mA |
L |
RBの両端電圧は、 |
4.3V |
M |
RBの値は、 |
13kΩ |
下図はスイッチのONになるとLEDが消灯し、OFFになると点灯する回路です。
上図の回路のRBを、下図左側(OFFのとき)と下図右側(ONのとき)や、既載のデータシートを参考に下表に記入して決定してください。
番号 |
質問 |
値 |
|
トランジスタがOFFの場合を考えます。 |
− |
@ |
データシートよりICBOは、 |
μA |
A |
スイッチがONならVBEは、 |
V |
B |
トランジスタは、(選んで下さい) |
ON・OFF |
|
トランジスタがONの場合を考えます。 |
− |
C |
ONになったトランジスタのVCEは、 |
V |
D |
青色LEDのVFは3.5Vと考えます。 |
V |
E |
負荷抵抗RLの両端電圧は、 |
V |
F |
(オーム則より)コレクタ電流は、 |
mA |
G |
データシートより(分類Yの)hFEの最低値は、 |
倍 |
H |
オーバードライブを3倍とすると、IBは、 3×15mA÷120=0.25mA |
mA |
I |
電流を流しているトランジスタのVBEは、 |
V |
J |
RBに流れる電流は、 |
mA |
K |
RBの両端電圧は、 |
V |
L |
RBの値は、 |
kΩ |
番号 |
質問 |
値 |
|
トランジスタがOFFの場合を考えます。 |
− |
@ |
データシートよりICBOは、 |
0.1μA |
A |
スイッチがONならVBEは、 |
0V |
B |
トランジスタは、(選んで下さい) |
ON・OFF |
|
トランジスタがONの場合を考えます。 |
− |
C |
ONになったトランジスタのVCEは、 |
0V |
D |
青色LEDのVFは3.5Vと考えます。 |
3.5V |
E |
負荷抵抗RLの両端電圧は、 |
1.5V |
F |
(オーム則より)コレクタ電流は、 |
15mA |
G |
データシートより(分類Yの)hFEの最低値は、 |
120倍 |
H |
オーバードライブを3倍とすると、IBは、 3×15mA÷120=0.25mA |
0.38mA |
I |
電流を流しているトランジスタのVBEは、 |
0.7V |
J |
RBに流れる電流は、 |
0.38mA |
K |
RBの両端電圧は、 |
4.3V |
L |
RBの値は、 |
13kΩ |
このように、トランジスタをOFFさせるとき、RBEの代わりにICBOが流れる経路がある回路では、RBEが不要です。
下図はスイッチを切り替えて、リレーをON/OFFする回路です。リレーと並列に接続したダイオードは、次の項で説明する、フライバック電圧の吸収用です。
上図の回路のRBを、下図左側(OFFのとき)と下図右側(ONのとき)や、既載のデータシートを参考に下表に記入して決定してください。
番号 |
質問 |
値 |
|
トランジスタがOFFの場合を考えます。 |
− |
@ |
データシートより、ICBOは、 |
μA |
A |
トランジスタを完全にOFFするためには、VBEは、 |
mV以下 |
B |
RBの両端電圧VRBは、 |
mV以下 |
C |
RBの値は、 |
kΩ以下 |
|
トランジスタがONの場合を考えます。 |
|
D |
ONになったトランジスタのVCEは、 |
V |
E |
リレーの両端電圧VRYは、 |
V |
F |
リレーの仕様から、コレクタ電流は、 |
mA |
G |
データシートから、(Y分類の)hFEの最低値は、 |
倍 |
H |
オーバードライブを3倍以上とすると、IBは、 |
mA以上 |
I |
電流が流れるトランジスタのVBEは、 |
V |
J |
RBの両端電圧VRBは、 |
V |
K |
RBの値は、 |
kΩ以下 |
L |
上のCとKの双方を満足するRBの値は、 |
kΩ |
番号 |
質問 |
値 |
|
トランジスタがOFFの場合を考えます。 |
− |
@ |
データシートより、ICBOは、 |
0.1μA |
A |
トランジスタを完全にOFFするためには、VBEは、 |
1mV以下 |
B |
RBの両端電圧VRBは、 |
1mV以下 |
C |
RBの値は、 |
10kΩ以下 |
|
トランジスタがONの場合を考えます。 |
|
D |
ONになったトランジスタのVCEは、 |
0V |
E |
リレーの両端電圧VRYは、 |
5V |
F |
リレーの仕様から、コレクタ電流は、 |
120mA |
G |
データシートから、(Y分類の)hFEの最低値は、 |
120倍 |
H |
オーバードライブを3倍以上とすると、IBは、 |
3mA以上 |
I |
電流が流れるトランジスタのVBEは、 |
0.7V |
J |
RBの両端電圧VRBは、 |
4.3V |
K |
RBの値は、 |
1.4kΩ以下 |
L |
上のCとKの双方を満足するRBの値は、 |
1.4kΩ |
このように、一本の抵抗がRBEとRB双方の役割を果たす場合は、双方の条件に合う抵抗値を選びます。
このタイプの回路は、下図のように、マイコン等のCMOSデジタル出力(上の練習の例では出力電流3mA以上のタイプが必要)でトランジスタをON/OFFする場合に利用できます。
上の練習で取り上げたリレーのようなコイル成分を持った負荷を「誘導負荷」と呼びます。誘導負荷では、「フライバック」の項で説明したように、OFF時に高い電圧が生じてトランジスタを破壊します。
下図はフライバック電圧の一例で、5μHのコイルを負荷に接続して、トランジスタを5μ秒間ONにした後、グラフ上の6μ秒の時点でOFFにしています。電源電圧は12Vですが、一瞬6000V程度のフライバック電圧が発生しています。
このフライバック電圧を抑えるために、フライバック電流を吸収するスナバ回路を追加します。
下図は前項で利用したダイオードを使用したスナバ回路です。この回路は下図に黒線で示すように、フライバック電圧を完全に抑えることができます。しかし、コイルの電流は灰色線で示すようにゆっくりと減少するため、すばやくON/OFFを繰り返すことができません。このため、秒単位でゆっくり動作するリレーやソレノイド(電磁石)で利用されます。
下図に示すように、ダイオードと直列に抵抗を入れることで、フライバック電圧はかなり発生しますが、(抵抗でコイルに蓄えられたエネルギが熱となって発散し)電流が素早く減少するようになります。
下図に示すように、抵抗と並列にコンデンサを入れると、フライバック電流がコンデンサに吸収され、フライバック電圧をかなり小さくできます。(コンデンサに蓄えられたコイルのエネルギは、抵抗で放出されます)フライバック電圧が低くなり、コイルの電流も比較的素早く減少するので、スイッチング電源等でよく利用されます。
下図に示すように、トランジスタと並列にツェーナダイオードを入れると、フライバック電圧をツェーナ電圧以下に抑えることができます。ツェーナダイオードはフライバック電流に耐える品種が必要です。後で説明するMOSFETにはツェーナダイオードとしても動作できる品種(アバランシェ耐量の大きな品種)もあるので、そのような場合に利用されます。
下図はより単純なCRによるスナバ回路です。ダイオードが不要ですがフライバック電圧はかなり大きくなります。
NPNトランジスタを使った回路は、簡単にPNPを使った回路に変更できます。下図はすでに練習で扱ったスイッチング回路です。
上図の回路ではNPNトランジスタを使っています。回路図の上下を逆にして、電流の向きを逆方向にすれば、PNPトランジスタの回路になります。
上図の回路では、負荷(電球)の片側をアースに接続することができる(電球が消えていれば、端子に触っても感電しない)という利点があります。
スイッチング回路でも、増幅回路でも、トランジスタを使った回路であれば、同じ方法でNPNとPNPを置き換えることができます。
PNPトランジスタはホール(空の穴)が電気を運ぶため、(動き易い電子が電気を運ぶ)NPNトランジスタより動作が遅くなる傾向があり、使用される頻度はNPNより少ないです。とはいえ、NPNとPNPを組み合わせて活用した回路もあり、PNPトランジスタの出番も完全には無くなりません。
下図は、PNPトランジスタとNPNトランジスタを組み合わせた、2段のスイッチング回路です。回路を二段にすることで、極僅かな電流で負荷をON/OFFできます。
下図を参考に下表に記入して、下図の回路の抵抗値を決定してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
ONになっているトランジスタQ2のVCE2は、 |
V |
A |
Q2の負荷RL2の両端電圧は、 |
V |
B |
電球の定格より、Q2のコレクタ電流IC2は、 |
mA |
C |
3倍のオーバードライブを掛けて、Q2のベース電流IB2は、 |
mA |
D |
Q2のベースエミッタ間電圧VBE2は、 |
V |
E |
RBE2に流れる電流IRBE2は、 |
mA |
F |
Q1の負荷抵抗RL1に流れる電流は、 (EとCよりキルヒ則で) |
mA |
G |
Q2のベース電圧VB2は、 |
V |
H |
ONになっているQ1のVCE1は、 |
V |
I |
Q1の負荷抵抗RL1の両端電圧は、 |
V |
J |
Q1の負荷抵抗RL1の抵抗値は、 |
Ω |
K |
3倍のオーバードライブを掛けて、Q1のベース電流IB1は、 |
μA |
L |
電流の流れているQ1のVBE1は、 |
V |
M |
Q1のRBE1に流れる電流IRBE1は、 |
μA |
N |
Q1のベース抵抗RB1に流れる電流IRB1は、 (LとMよりキルヒ則で) |
μA |
O |
Q1のベース抵抗RB1の抵抗値は、 |
kΩ |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
ONになっているトランジスタQ2のVCE2は、 |
0V |
A |
Q2の負荷RL2の両端電圧は、 |
12V |
B |
電球の定格より、Q2のコレクタ電流IC2は、 |
600mA |
C |
3倍のオーバードライブを掛けて、Q2のベース電流IB2は、 |
30mA |
D |
Q2のベースエミッタ間電圧VBE2は、 |
0.7V |
E |
RBE2に流れる電流IRBE2は、 |
0.7mA |
F |
Q1の負荷抵抗RL1に流れる電流は、 (EとCよりキルヒ則で) |
30.7mA |
G |
Q2のベース電圧VB2は、 |
11.3V |
H |
ONになっているQ1のVCE1は、 |
0V |
I |
Q1の負荷抵抗RL1の両端電圧は、 |
11.3V |
J |
Q1の負荷抵抗RL1の抵抗値は、 |
370Ω |
K |
3倍のオーバードライブを掛けて、Q1のベース電流IB1は、 |
770μA |
L |
電流の流れているQ1のVBE1は、 |
0.7V |
M |
Q1のRBE1に流れる電流IRBE1は、 |
70μA |
N |
Q1のベース抵抗RB1に流れる電流IRB1は、 (LとMよりキルヒ則で) |
840μA |
O |
Q1のベース抵抗RB1の抵抗値は、 |
13kΩ |
スイッチング回路(ON状態とOFF状態で動作する)とは違い、リニア回路はリニア状態(能動状態)で動作する回路で、入力の変化に対応して、出力も滑らかに変化します。リニア回路には、小さな振幅を扱う小信号増幅回路と、大きな振幅を扱う電力増幅回路があります。
小信号増幅回路とは、下図(a)に示すように、回路に加わる直流電圧(バイアス電圧)に比べて、交流電圧(信号電圧)が十分に小さい回路です。つまり信号によって回路の電圧が変化しても、直流電圧が増減したと考える必要の無い(程に小さな信号しか扱わない)回路です。小信号増幅回路では、直流と交流を(バイアスと信号を)まったく別々に計算して回路を設計することができ、設計が容易になります。
ところが、上図(b)のように信号が大きくなると、信号が大きく振れた部分では回路の電圧が変化したと考えて計算する必要があります。このような回路は電力増幅回路と呼ばれます。既に説明したスイッチング回路は電力増幅回路の一つです。
電力増幅回路では直流と交流を別々に考えることは出来ず、「回路の電圧が様々に変化する」と考えて設計します。スイッチング回路で「ONの場合」と「OFFの場合」を別々に考えて設計したのもこのためです。
増幅回路には直流電流や信号(交流)電流が入り混じって流れているため、直流と交流を同時に考えると面倒です。しかし、小信号増幅回路では「先に直流を検討して、後で交流を検討する」というように、(「重ね合わせの原理」を直流と交流に応用して)直流と交流を別々に検討することができます。
たとえば下図の回路で、直流だけを考える場合は、下図上側のように、交流電源を導線だと考えます。また、コンデンサは直流を流しませんから「付いてない」と考えます。そうすると、2Ωが2本直列となり、1Aの直流が流れます。
また、交流だけを考える場合は、上図下側のように、直流電源(電池)を導線だと考えます。また、十分大きな容量のコンデンサは0Ωと考えます。そうすれば、2Ωの抵抗に2Aの電流が流れると分ります。
このように直流と交流を別々に検討した結果を合わせれば、回路に流れる直流と交流を下図のように知ることができます。複雑な増幅回路の働きも、容易に検討することができます。
下図の回路の各素子に流れる直流と交流の向きと大きさを求めて下さい。
既に説明したように、下図左側の回路でダイオードに加える電圧VFを変えると、流れる電流IFは、例えば、下図右側の特性図のように変化しました。(この特性図はExcelで=1E-11*(EXP(E1/0.026)-1)を計算して散布図に描いたものです。)
上図から分るように、ダイオードは(オーム則に従って)抵抗のように電圧と電流が比例しません。電圧が高くなり、電流が増えれば増える程、電流が流れ易くなり(見かけの抵抗値が小さくなり)、僅かな電圧の増加で電流が大きく増えるようになります。このため、VFが0.7Vを超えた辺りから、急激に電流が増加します。
次に、下図左側の回路でダイオードに直流と交流を同時に加えた場合を考えます。ダイオードはオーム則に従わない部品なので、重ね合わせの原理をそのまま使う事はできません。そこで、電圧−電流特性図の曲線を使って考えます。
下図右側の特性図は、上の特性図の0.7V付近を拡大したものです。この特性図に、ダイオードに(一定の小さな交流電圧vfを加えながら)流れる直流IFを0.1mA、1mA、3mAと変化させたときの様子を示します。
上の特性図から、同じ大きさの交流電圧vfが加わっていても、流れている直流電流IFが多い程、流れる交流電流ifが多くなることが分ります。つまりダイオードは、直流電流が増すと交流が流れ易くなる(交流の抵抗値(インピーダンス)が小さくなる)と分ります。
(このように、直流電流IFが増えると小さくなる)ダイオードのインピーダンスZDは次の式で計算できます。
Excelでは、=26E-3/I1
上の式に登場する26mVは、ダイオードの材料がシリコンである事から決まる値で、シリコンダイオードならいつも同じです。例えば、1mAの直流が流れている時のダイオードのインピーダンスは、
と計算することができます。
但し、このように考えて良いのは、上の特性図から分るように、直流に比べて交流が十分小さい場合(小信号回路の場合)だけです。つまり、交流の振幅が小さければ、「曲線」で出来た特性図の一部分を「直線」と考えて、そのときの交流抵抗(インピーダンス)を計算することができますが、交流の振幅が大きくなると、「曲線」の広い範囲を使用してしまうため、もはや「直線」と考えることが出来なくなり(オーム則が成り立つ、つまり、直線であることが前提の)インピーダンスが計算できなくなります。
上図の回路に流れる直流電流と交流電流を、下図を参考に、下表に書き込んで検討してください。
@ |
回路に加わる直流電圧は、 |
V |
A |
電流が流れているダイオードの順電圧VFは、 |
V |
B |
1kΩの両端電圧は、 |
V |
C |
1kΩに流れる電流は、 |
mA |
D |
ダイオードのインピーダンスは、 26mV÷1mA=26Ω |
Ω |
|
交流について考えます。 |
− |
E |
回路に加わる交流電圧は、 |
mV |
F |
ダイオードのインピーダンスと抵抗を合計して、 |
Ω |
G |
回路に流れる交流電流は、 |
μA |
番号 |
質問 |
値 |
|
直流について考えます。 |
− |
@ |
回路に加わる直流電圧は、 |
1.7V |
A |
電流が流れているダイオードの順電圧VFは、 |
0.7V |
B |
1kΩの両端電圧は、 |
1V |
C |
1kΩに流れる電流は、 |
1mA |
D |
ダイオードのインピーダンスは、 26mV÷1mA=26Ω |
26Ω |
|
交流について考えます。 |
− |
E |
回路に加わる交流電圧は、 |
1.026mV |
F |
ダイオードのインピーダンスと抵抗を合計して、 |
1026Ω |
G |
回路に流れる交流電流は、 |
1μA |
このように、ダイオードはオーム則に従わない部品なので、そのままでは(重ね合わせの原理を使って)直流と交流を別々に考えることができません。しかし、(交流が直流に比べて十分小さければ、つまり、小信号回路であれば)直流と交流を別々に考ることができます。そのため、先に直流について考え、流れる直流からインピーダンスを求めて、次に求めたインピーダンスを使って交流について考えることができます。
上図の回路に流れる直流電流と交流電流を、下図を参考に、下表に書き込んで検討してください。
番号 |
質問 |
値 |
|
直流について考えます。 |
− |
@ |
回路に加わる直流電圧は、 |
4V |
A |
電流が流れているダイオードの順電圧VFは、 |
0.7V |
B |
33kΩの両端電圧は、 |
3.3V |
C |
33kΩに流れる電流は、 |
0.1mA |
D |
ダイオードのインピーダンスは、 26mV÷0.1mA=260Ω |
260Ω |
|
交流について考えます。 |
− |
E |
回路に加わる交流電圧は、 |
260μVP−P |
F |
十分大きなコンデンサのインピーダンスは、 |
0Ω |
G |
ダイオードとコンデンサの直列インピーダンスは、 |
260Ω |
H |
回路に流れる交流電流は、 |
1μAP−P |
番号 |
質問 |
値 |
|
直流について考えます。 |
− |
@ |
回路に加わる直流電圧は、 |
4V |
A |
電流が流れているダイオードの順電圧VFは、 |
0.7V |
B |
33kΩの両端電圧は、 |
3.3V |
C |
33kΩに流れる電流は、 |
0.1mA |
D |
ダイオードのインピーダンスは、 26mV÷0.1mA=260Ω |
260Ω |
|
交流について考えます。 |
− |
E |
回路に加わる交流電圧は、 |
260μVP−P |
F |
十分大きなコンデンサのインピーダンスは、 |
0Ω |
G |
ダイオードとコンデンサの直列インピーダンスは、 |
260Ω |
H |
回路に流れる交流電流は、 |
1μAP−P |
トランジスタ回路では、名前を聞いただけで、直流か、小信号かが分かるように、電圧や電流の呼び名が工夫されています。
交流/直流の区分 |
電圧 |
電流 |
直流や交流にこだわらない 直流と交流を合計した値 |
電圧の記号(大文字)Vに、大文字で端子の名前を添える。 エミッタ電圧:VC ベース電圧:VB 出力電圧:VO 呼び方:ブイ・シー等 |
電流の記号(大文字)Iに、大文字で端子の名前を添える。 エミッタ電圧:IC ベース電圧:IB 出力電圧:IO 呼び方:アイ・シー等 |
直流 (バイアス) |
電圧の記号(大文字)Vに、大文字で端子の名前を2つ添える。 エミッタ直流電圧:VCC ベース直流電圧:VBB 出力直流電圧:VOO 呼び方:ブイ・シー・シー等 |
電流の記号(大文字)Iに、大文字で端子の名前を2つ添える。 エミッタ直流電圧:ICC ベース直流電圧:IBB 出力直流電圧:IOO 呼び方:アイ・シー・シー等 |
交流 小信号 (信号) |
電圧の記号(小文字)vに、大文字で端子の名前を2つ添える。 エミッタ交流電圧:vc ベース交流電圧:vb 出力交流電圧:vo 呼び方:スモール・ブイ・シー等 |
電流の記号(小文字)iに、小文字で端子の名前を添える。 エミッタ交流電圧:ic ベース交流電圧:ib 出力交流電圧:io 呼び方:スモール・アイ・シー等 |
そのまま発音したのでは、ICとicはどちらも「アイ・シー」で区別できませんから、小文字の方(交流の方)を「スモール・アイ・シー」等と「スモール」を付けて発音する場合もあります。また、直流電流(電圧)をバイアス電流(電圧)と、交流電流(電圧)を信号電流(電圧)と呼ぶ場合もあります。
ダイオードでは、流れる直流が分れば、インピーダンスを知ることができました。トランジスタでもベースとエミッタの間はダイオードと考えることができます。ですから、ダイオードと同様に、エミッタを流れる直流が分かれば、(下図に示すダイオードと同じ計算で)エミッタのインピーダンスを知ることができます。このインピーダンスを、「エミッタ等価インピーダンス」(re)と呼びます。
上図に示すとおり、エミッタ等価インピーダンスは26mVを直流電流で割って、下式で求めることができます。
たとえば、エミッタ直流(バイアス)電流IEEが1mAなら、reは26Ωです。このreが分かれば、ダイオードと同様に、交流の様子を検討することができます。
では、上図の小信号増幅回路を検討します。上図の回路を、下図を参考に下表に記入しながら、直流と交流について検討してください。
番号 |
質問 |
値 |
|
直流について考えます。 |
− |
@ |
ベースに加わる直流電圧は、 |
1.7V |
A |
電流が流れているトランジスタのVBEは、 |
V |
B |
エミッタ抵抗REの両端電圧VREは、 |
V |
C |
エミッタ(バイアス)電流IEEは、 |
mA |
D |
エミッタとベースの間をダイオードと考えたときのインピーダンス(re)は、 |
Ω |
E |
コレクタ(バイアス)電流ICCは、 |
mA |
F |
hFEが100だから、ベース(バイアス)電流IBBは、 |
μA |
|
交流について考えます。 |
− |
G |
ベースに加わる交流電圧は、 |
1.026mVP−P |
H |
エミッタ側の全インピーダンスは、 |
Ω |
I |
エミッタに流れる電流は、 |
μAP−P |
J |
コレクタに流れる電流は、(IC=IEだから、) |
μAP−P |
K |
負荷抵抗RLの両端に発生する電圧は、 |
mVP−P |
L |
交流の振幅は約何倍に大きくなっていますか、 |
約 倍 |
M |
hFEが100だから、ベース信号電流は、 |
μA |
番号 |
質問 |
値 |
|
直流について考えます。 |
− |
@ |
ベースに加わる直流電圧は、 |
1.7V |
A |
電流が流れているトランジスタのVBEは、 |
0.7V |
B |
エミッタ抵抗REの両端電圧VREは、 |
1V |
C |
エミッタ(バイアス)電流IEEは、 |
1mA |
D |
エミッタとベースの間をダイオードと考えたときのインピーダンス(re)は、 26mV÷1mA=26Ω |
26Ω |
E |
コレクタ(バイアス)電流ICCは、 |
1mA |
F |
ベース(バイアス)電流IBBは、 |
10μA |
|
交流について考えます。 |
− |
G |
ベースに加わる交流電圧は、 |
1.026mVP−P |
H |
エミッタ側の全インピーダンスは、 |
1026Ω |
I |
エミッタに流れる電流は、 |
1μAP−P |
J |
コレクタに流れる電流は、(IC=IEだから、) |
1μAP−P |
K |
負荷抵抗RLの両端に発生する電圧は、 |
5mVP−P |
L |
交流の振幅は約何倍に大きくなっていますか、 5mV÷1.026mV=約5倍 |
約5倍 |
M |
ベース信号電流は、 ic÷hfe=1μA÷100=0.01μA |
0.01μA |
このように、負荷抵抗RLの両端に5mVP−Pの交流電圧が発生しました。この場合に、出力端子に現れる電圧を考えます。
まず、下図のように、電源(VCC)もアース(GND)も(電圧が震えていないので)交流電圧はどちらも0Vで、交流にとっては同じ電圧の場所です。(下図にやで示します)
次に、今回の回路では、負荷抵抗RLの両端に、下図Aのように、5mVP−Pの交流が発生していました。ここで、電源もアースも交流にとっては同じ電圧の場所()でしたから、下図Bのように、矢印を出力端子からアースに向けて描いても(交流にとっては)同じことです。
下図Bの電圧は、矢印が下を向いています。いつもどおりに矢印を上向きに直すと、下図Cのように、電圧の極性は−5mVP−Pと逆になります。
つまりこの回路は、1.026mVP−Pの交流が加わると(下図@)、−5mVP−P(下図C)が出力されます。
出力voの極性がマイナスになるのは、上図@で入力された波が、上下逆になってCのように出力されるためです。
上図の回路で出力される交流電圧を、下図を参考に、下表に記入しながら検討してください。
番号 |
質問 |
値 |
|
直流について考えます。 |
− |
@ |
ベースに加わる直流電圧は、 |
V |
A |
電流が流れているトランジスタのVBEは、 |
V |
B |
エミッタ抵抗REの両端電圧VREは、 |
V |
C |
エミッタ直流電流IEEは、 |
mA |
D |
エミッタとベースの間をダイオードと考えたときのインピーダンス(re)は、
|
Ω |
E |
コレクタ直流電流ICCは、 |
mA |
F |
負荷抵抗RLの両端電圧は、 |
V |
G |
出力直流電流VOOは、 |
V |
H |
ベース直流電流IBBは、 |
μA |
|
交流について考えます。 |
|
I |
ベースに加わる交流電圧は、 |
mVP−P |
J |
エミッタ側の全インピーダンスは、 |
kΩ |
K |
エミッタに流れる交流電流は、 |
μAP−P |
L |
コレクタに流れる交流電流は、(IC=IEだから、) |
μAP−P |
M |
負荷抵抗RLの両端に発生する交流電圧は、 |
mVP−P |
N |
出力端子に生じる交流電圧は、 |
mVP−P |
O |
ベースに流れる交流電流は、hFEが100だから、 |
μA |
P |
ベースに入力した交流電圧は、何倍になって出力されていますか。 |
約 倍 |
番号 |
質問 |
値 |
|
直流について考えます。 |
− |
@ |
ベースに加わる直流電圧は、 |
2V |
A |
電流が流れているトランジスタのVBEは、 |
0.7V |
B |
エミッタ抵抗REの両端電圧VREは、 |
1.3V |
C |
エミッタ直流電流IEEは、 |
0.1mA |
D |
エミッタとベースの間をダイオードと考えたときのインピーダンス(re)は、 26mV÷0.1mA=260Ω |
260Ω |
E |
コレクタ直流電流ICCは、 |
0.1mA |
F |
負荷抵抗RLの両端電圧は、 |
4V |
G |
出力直流電流VOOは、 |
6V |
H |
ベース直流電流IBBは、 |
1μA |
|
交流について考えます。 |
|
I |
ベースに加わる交流電圧は、 |
13.26mVP−P |
J |
エミッタ側の全インピーダンスは、 |
13.26kΩ |
K |
エミッタに流れる交流電流は、 |
1μAP−P |
L |
コレクタに流れる交流電流は、(IC=IEだから、) |
1μAP−P |
M |
負荷抵抗RLの両端に発生する交流電圧は、 |
40mVP−P |
N |
出力端子に生じる交流電圧は、 |
−40mVP−P |
O |
ベースに流れる交流電流は、 ic÷hfe=1μA÷100=0.01μA |
0.01μA |
P |
ベースに入力した交流電圧は、何倍になって出力されていますか。 40mV÷13.26mV=約3倍 |
約3倍 |
このタイプの回路の増幅率はRL÷(re+RE)で求めることができます。このように、エミッタ抵抗がある増幅器は(安定していますが)増幅率が小さくなります。
下図のように、エミッタ抵抗と並列にコンデンサを取り付ければ、回路の安定性を保ったまま、増幅率を大きくできます。このコンデンサを「エミッタバイパスコンデンサ」と呼びます。
直流から見ればエミッタ抵抗があり、そのために回路は(温度が変化する等しても)安定していますし、交流から見ればエミッタ抵抗がないため、エミッタに沢山の交流電流が流れて、増幅率を大きくできます。
上図の回路を下表に書き込みながら直流と交流について検討し、交流出力電圧を求めてください。
番号 |
質問 |
値 |
|
直流について考えます。 |
− |
@ |
ベースに加わる直流電圧は、 |
V |
A |
電流が流れているトランジスタのVBEは、 |
V |
B |
エミッタ抵抗REの両端電圧VREは、 |
V |
C |
エミッタ直流電流IEEは、 |
mA |
D |
エミッタとベースの間をダイオードと考えたときのインピーダンス(re)は、 |
Ω |
E |
コレクタ直流電流ICCは、 |
mA |
F |
負荷抵抗RLの両端電圧は、 |
V |
G |
出力直流電流VOOは、 |
V |
H |
ベース直流電流IBBは、 |
μA |
|
交流について考えます。 |
|
I |
ベースに加わる交流電圧は、 |
mVP−P |
J |
十分大きな容量のコンデンサのインピーダンスは、 |
Ω |
K |
エミッタ側の全インピーダンスは、 re+zc=26Ω+0Ω=26Ω |
Ω |
L |
エミッタに流れる交流電流ieは、 |
mAP−P |
M |
コレクタに流れる交流電流は、(IC=IEだから、) |
mAP−P |
N |
負荷抵抗RLの両端に発生する交流電圧は、 |
VP−P |
O |
出力端子に生じる交流電圧は、 |
VP−P |
P |
ベースに流れる交流電流は、 |
μA |
Q |
ベースに入力した交流電圧は、何倍になって出力されていますか。 |
倍 |
番号 |
質問 |
値 |
|
直流について考えます。 |
− |
@ |
ベースに加わる直流電圧は、 |
2.7V |
A |
電流が流れているトランジスタのVBEは、 |
0.7V |
B |
エミッタ抵抗REの両端電圧VREは、 |
2V |
C |
エミッタ直流電流IEEは、 |
1mA |
D |
エミッタとベースの間をダイオードと考えたときのインピーダンス(re)は、 26mV÷1mA=26Ω |
26Ω |
E |
コレクタ直流電流ICCは、 |
1mA |
F |
負荷抵抗RLの両端電圧は、 |
10V |
G |
出力直流電流VOOは、 |
14V |
H |
ベース直流電流IBBは、 |
10μA |
|
交流について考えます。 |
|
I |
ベースに加わる交流電圧は、 |
2.6mVP−P |
J |
十分大きな容量のコンデンサのインピーダンスは、 |
0Ω |
K |
エミッタ側の全インピーダンスは、 re+zc=26Ω+0Ω=26Ω |
26Ω |
L |
エミッタに流れる交流電流ieは、 |
0.1mAP−P |
M |
コレクタに流れる交流電流は、(IC=IEだから、) |
0.1mAP−P |
N |
負荷抵抗RLの両端に発生する交流電圧は、 |
1VP−P |
O |
出力端子に生じる交流電圧は、 |
−1VP−P |
P |
ベースに流れる交流電流は、 ic÷hfe=0.1mA÷100=1μA |
1μA |
Q |
ベースに入力した交流電圧は、何倍になって出力されていますか。 1V÷2.6mV=380倍 |
380倍 |
このように、エミッタバイパスコンデンサを取り付けると、増幅率が大きくなります。このタイプの回路の増幅率は、RL÷reで求めることができます。
しかし、(交流から見ると、エミッタ抵抗が無くなり)ベースとエミッタの間(B−E間)に大きな交流電圧が加わるため、波形が歪みます。下図にその様子を示します。この図では、グラフ下側から入ってきた交流が増幅されて、グラフ右側に出力されますが、出力波形は最初の波形と大きく異なっています。
上図で分かるように、VBEとIEの特性は曲線です。曲線に沿って回路が動作すると、かならず波形が歪みます。そこで小信号回路では「直流電圧(電流)に比べて、交流電圧(電流)が十分に小さい」というルールを設けて(本当は曲線である特性の「極一部」だけを使用して)直線に沿って回路を動作させ、信号を歪まさずに増幅していました。
しかし、上図のように信号が(直流に比べて)大きくなると、とても「極一部」とは言えなくなってしまい、曲線に沿って回路が動作し、波形が歪みます。
直流電流と交流電流の大きさを、上で練習した回路で比較すると、Cエミッタ直流電流が1mAで、Lエミッタ交流電流が0.1mAと、直流にくらべて交流が10分の1小さいだけです。歪みの少ない増幅を行うためには、交流電流を直流電流の100分の1程度以下に小さくすることが必要です。
もちろん、同じ回路でも信号の振幅が小さかったり、歪が気にならない場合は、上の練習の回路で大きな増幅率を得ることも可能です。但し、あまりに増幅率が大きく、動作が不安定になる(発振する)場合もあります。
下図の回路もエミッタバイパスコンデンサを設けた増幅回路です。この回路では、RE1を追加してエミッタ側のインピーダンスを大きくし、信号電流を小さくしています。これによって増幅率は小さくなりますが、波形の歪が小さくなります。
上図の回路で出力される交流電圧を、下図を参考に、下表に記入しながら検討してください。
番号 |
質問 |
値 |
|
直流について考えます。 |
− |
@ |
ベースに加わる直流電圧は、 |
V |
A |
電流が流れているトランジスタのVBEは、 |
V |
B |
エミッタ抵抗REの両端電圧VREは、 |
V |
C |
エミッタ抵抗RE1とRE2の直列合成抵抗は、 |
kΩ |
D |
エミッタ直流電流IEEは、 |
mA |
E |
エミッタとベースの間をダイオードと考えたときのインピーダンス(re)は、 |
Ω |
F |
コレクタ直流電流ICCは、 |
mA |
G |
負荷抵抗RLの両端電圧は、 |
V |
H |
出力直流電流VOOは、 |
V |
I |
ベース直流電流IBBは、 |
μA |
|
交流について考えます。 |
|
J |
ベースに加わる交流電圧は、 |
mVP−P |
K |
十分大きな容量のコンデンサのインピーダンスは、 |
Ω |
L |
エミッタ側の全インピーダンスは、 |
Ω |
M |
エミッタに流れる交流電流は、 |
μAP−P |
N |
コレクタに流れる交流電流は、(IC=IEだから、) |
μAP−P |
O |
負荷抵抗RLの両端に発生する交流電圧は、 |
mVP−P |
P |
出力端子に生じる交流電圧は、 |
mVP−P |
Q |
ベースに流れる交流電流は、 |
μA |
R |
ベースに入力した交流電圧は、何倍になって出力されていますか。 |
倍 |
番号 |
質問 |
値 |
|
直流について考えます。 |
− |
@ |
ベースに加わる直流電圧は、 |
2.7V |
A |
電流が流れているトランジスタのVBEは、 |
0.7V |
B |
エミッタ抵抗REの両端電圧VREは、 |
2V |
C |
エミッタ抵抗RE1とRE2の直列合成抵抗は、 |
1kΩ |
D |
エミッタ直流電流IEEは、 |
2mA |
E |
エミッタとベースの間をダイオードと考えたときのインピーダンス(re)は、 26mV÷2mA=13Ω |
13Ω |
F |
コレクタ直流電流ICCは、 |
2mA |
G |
負荷抵抗RLの両端電圧は、 |
8V |
H |
出力直流電流VOOは、 |
10V |
I |
ベース直流電流IBBは、 |
20μA |
|
交流について考えます。 |
|
J |
ベースに加わる交流電圧は、 |
1mVP−P |
K |
十分大きな容量のコンデンサのインピーダンスは、 |
0Ω |
L |
エミッタ側の全インピーダンスは、 |
100Ω |
M |
エミッタに流れる交流電流は、 |
10μAP−P |
N |
コレクタに流れる交流電流は、(IC=IEだから、) |
10μAP−P |
O |
負荷抵抗RLの両端に発生する交流電圧は、 |
40mVP−P |
P |
出力端子に生じる交流電圧は、 |
−40mVP−P |
Q |
ベースに流れる交流電流は、 ic÷hfe=10μA÷100=0.1μA |
0.1μA |
R |
ベースに入力した交流電圧は、何倍になって出力されていますか。 40mV÷1mV=40倍 |
40倍 |
このように、RE1を追加することで、増幅率は40倍と小さくなります。このタイプの回路の増幅率は、RL÷(re+RE1)で求めることができます。また、Iベース直流電流20μAに対して、Qベース交流電流は0.1μAと、200分の1に小さくなっており、歪みは少なくなります。
さて、これまで練習した回路では、下図左側のように、信号に直流を接続して回路に加えていました。しかし通常の信号には直流が含まれていません。そこで既に説明した「分圧バイアス」の方法を利用して、下図右のような回路で、ベースに一定の電圧(ここでは、1.7V)を加えます。
上図右の回路では(ベース電流がhFEのバラツキで変化するので)上図右のRAとRBにはベース電流の10倍〜100倍の電流を流すのがポイントでした。
上図の回路を、下図を参考に下表に書き込みながら検討し、信号(交流)増幅率を求めて下さい。
番号 |
質問 |
値 |
|
上図左側を使って、直流について考えます。 |
− |
@ |
分圧バイアス抵抗RAとRBの合計は、 |
kΩ |
A |
RAとRBに流れる電流は、 |
μA |
B |
ベースバイアス電圧VBBは、 |
V |
C |
ベースエミッタ間電圧VBEは、 |
V |
D |
RE1とRE2の直列部分に加わる電圧は、 |
V |
E |
RE1とRE2の直列合成抵抗は、 |
kΩ |
F |
エミッタバイアス電流IEEは、 |
mA |
G |
エミッタ等価インピーダンスreは、 |
Ω |
H |
コレクタバイアス電流ICCは、 |
mA |
I |
負荷抵抗RLの両端電圧は、 |
V |
J |
出力直流電圧VOOは、 |
V |
K |
ベースバイアス電流IBBは、 |
μA |
|
上図右側を使って、交流について考えます。 |
|
@ |
エミッタ側の合計インピーダンスZeは、 |
Ω |
A |
ベースに加わる交流(信号)電圧は、 |
mVP−P |
B |
エミッタ交流電圧ieは、 |
μAP−P |
C |
コレクタ交流電圧icは、 |
μAP−P |
D |
負荷抵抗RLの両端の交流電圧vrlは、 |
mVP−P |
E |
出力端子の交流電圧vooは、 |
mVP−P |
F |
ベース交流電流ibbは、 |
μAP−P |
G |
エミッタバイアス電流は、エミッタ交流電流の何倍、 |
倍 |
番号 |
質問 |
値 |
|
上図左側を使って、直流について考えます。 |
− |
@ |
分圧バイアス抵抗RAとRBの合計は、 |
120kΩ |
A |
RAとRBに流れる電流は、 |
100μA |
B |
ベースバイアス電圧VBBは、 |
1.7V |
C |
ベースエミッタ間電圧VBEは、 |
0.7V |
D |
RE1とRE2の直列部分に加わる電圧は、 |
1V |
E |
RE1とRE2の直列合成抵抗は、 |
2kΩ |
F |
エミッタバイアス電流IEEは、 |
0.5mA |
G |
エミッタ等価インピーダンスreは、 |
52Ω |
H |
コレクタバイアス電流ICCは、 |
0.5mA |
I |
負荷抵抗RLの両端電圧は、 |
5V |
J |
出力直流電圧VOOは、 |
7V |
K |
ベースバイアス電流IBBは、 |
5μA |
|
上図右側を使って、交流について考えます。 |
|
@ |
エミッタ側の合計インピーダンスZeは、 |
500Ω |
A |
ベースに加わる交流(信号)電圧は、 |
5mVP−P |
B |
エミッタ交流電圧ieは、 |
10μAP−P |
C |
コレクタ交流電圧icは、 |
10μAP−P |
D |
負荷抵抗RLの両端の交流電圧vrlは、 |
100mVP−P |
E |
出力端子の交流電圧vooは、 |
−100mVP−P |
F |
ベース交流電流ibbは、 |
0.1μAP−P |
G |
エミッタバイアス電流は、エミッタ交流電流の何倍、 |
50倍 |
さて、練習でも取り扱った下図左の増幅回路の出力電圧は、100mVP−Pでした。100mVあればスピーカーも多少は鳴るはずです。そこで、下図中央のように8Ωのスピーカーを接続すると、音が出ません。このとき出力端子の信号電圧を測定すると、0.08mVP−Pしか出力されていません。
このように増幅器に負荷を接続すると出力電圧が低下します。これは、下図右側に示すように、増幅器の内部に「出力インピーダンス」と呼ぶ抵抗があるためです。
増幅器の出力を利用するとき、「どの程度の(インピーダンスの)負荷を繋いだら良いか」あるいは「負荷を接続すると、出力電圧はいくらになるか」を知るためには、出力インピーダンスの値が重要です。
増幅器は出力インピーダンスと同じ値の負荷抵抗を接続したとき最も大きな電力を取り出すことができます。
また、下図(a)のように、無負荷で出力電圧100mVP−Pの回路に、下図(b)のように、次段の増幅回路を接続すると、100mVであった出力電圧が、53mVP−Pに低下しました。これは、下図(c)に示すように、次段の増幅器の入力部に「入力インピーダンス」と呼ぶ抵抗があり、これが接続されたことで、前段の増幅器の出力電圧が低下するためです。
このように、増幅器を信号に接続するとき「接続すると、信号の電圧はいくらになるか」を知るためには、入力インピーダンスの値が重要です。
このような理由で、増幅器の出力インピーダンスと入力インピーダンスは、他の回路と接続したときの様子を知るために重要です。入力インピーダンスはZiやZin、出力インピーダンスはZoやZoutの記号で表します。
では、入力インピーダンスや出力インピーダンス(入出力インピーダンス)を求める方法を説明します。
例えば、下図(a)の回路の入力インピーダンスは、下図(b)のような手順で求めます。この方法では、「アースも電源も(電圧の振動が無い点だから)交流にとってはアースである」と考えます。
上図(b)を見ながら、下表に記入して、上図の回路の入力インピーダンスを求めてください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
R1の下側からアースを見れば、 |
Ω |
A |
R1の上側からアースを見れば、 |
kΩ |
B |
R3の下側からアースを見れば、 |
Ω |
C |
R3の上側からアースを見れば、 |
kΩ |
D |
(電源は交流にとってはアースと同じ0Vだから、) R2の上側から電源を見れば、 |
Ω |
E |
R2の下側から電源を見れば、 |
kΩ |
F |
コンデンサの右側から、右側を見れば、 これまでに求めた3つのインピーダンスが並列に見えて、40k//10k//2k |
k |
G |
入力端子(コンデンサの左側)から、回路全体を見れば、 上で求めたインピーダンスとコンデンサのインピーダンスが直列に見えて、 0Ω+1.6kΩ |
kΩ |
このようにして、上図の回路の入力インピーダンスを1.6kΩと知ることができます。
上図(a)の回路の入力インピーダンスを、上図(b)の考え方で、下表に書き込みながら求めてください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
R1の上側からアースを見れば、 |
kΩ |
A |
R2の下側から電源を見れば、 |
kΩ |
B |
R3の上側からアースを見れば、 |
kΩ |
C |
R4の右側から、右側を見れば、 @〜Bのインピーダンスが並列に見えて、 |
Ω |
D |
入力端子から回路全体を見れば、 上のCのインピーダンスに、R4のインピーダンスが加わって、 |
kΩ |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
R1の上側からアースを見れば、 |
5kΩ |
A |
R2の下側から電源を見れば、 |
20kΩ |
B |
R3の上側からアースを見れば、 |
1kΩ |
C |
R4の右側から、右側を見れば、 5k//20k//1k=800Ω |
800Ω |
D |
入力端子から回路全体を見れば、 200Ω+800Ω=1kΩ |
1kΩ |
下図のように、ベース電流のhFE倍がコレクタに流れるため、例えば、ベース電流が10μAで、hFEが100倍なら、コレクタ電流は1mAです。
下図左では5Vのコレクタ電圧が、右では9Vと変化していますが、コレクタ電流は左右共に1mAで一定です。このことを「定電流特性」と呼びました。
つまり、「外部から電圧の変化(交流電圧)を加えても、電流が変化しない(交流電流が流れない)」という事ですから、交流の抵抗値(インピーダンス)は、無限に大きい事が分かります。
インピーダンスは抵抗と同様に、電圧÷電流ですから、次の計算からも、インピーダンスが無限に大きくなる事が分ります。
インピーダンス = 交流電圧 ÷ 交流電流 = 4V変化 ÷ 0mA変化 = ∞
コレクタのインピーダンスは∞に大きい(交流を通さない)ので、下図のように「コレクタはインピーダンス的には断線している」と考えれば、下図の手順でコレクタ回路のインピーダンスを簡単に求めることができます。
上図を見て下表を書き込んでください。
番号 |
質問 |
値 |
@ 重要 |
コレクタのインピーダンスは、 |
Ω |
A |
1kΩの上側から電源を見るとインピーダンスは、 |
Ω |
B |
1kΩの下側から電源を見るとインピーダンスは、 |
kΩ |
C |
出力端子から回路を見ると、@とBが並列に見えて、 |
kΩ |
上図を見て下表を書き込んでください。
番号 |
質問 |
値 |
@ 重要 |
コレクタのインピーダンスは、 |
∞Ω |
A |
1kΩの上側から電源を見るとインピーダンスは、 |
0Ω |
B |
1kΩの下側から電源を見るとインピーダンスは、 |
1kΩ |
C |
出力端子から回路を見ると、@とBが並列に見えて、 |
1kΩ |
下図のように、例えば、hFEが100倍のとき、エミッタ電流が1mAならベース電流は10μA(下図左)、エミッタ電流が2mAならベース電流は20μA(下図右)です。
下図左では1.7Vのベース電圧が、右では2.7Vと、1V変化しています。これによって、エミッタの電流は1mAから2mAに変化していますが、ベース電流はエミッタ電流の1/hFEですから、10μAから20μAに変化しています。
つまり、ベースの電圧を1V変化させる(交流1Vを加える)と、ベース電流が10μA変化する(交流電流が10μA流れる)と分かります。ですから、次の計算のように、ベースのインピーダンスは1V÷10μAで、100kΩと分かります。
ベースのインピーダンス = 交流電圧 ÷ 交流電流
= 1V変化 ÷ 10μA変化 = 100kΩ
ベースの電流はエミッタの電流の1/hFEに小さくなるので、エミッタ(からアースを見た時)のインピーダンス(上図では1kΩ)が、hFE倍(上図では100倍)に高くなってベースに現れる(上図では100kΩ)と考えることができます。
ベースの電流 = エミッタ電流 ÷ hFE
ベースのインピーダンス = エミッタのインピーダンス × hFE
より詳しくは次のように求められます、
Ze=ve÷ie
vb=ve
ie=ib×hFE
Zb=vb÷ib=ve÷ib×hFE=Ze×hFE
ベースのインピーダンスはエミッタのインピーダンスのhFE倍になるので、ベース回路のインピーダンスは、reも配慮して、下図の手順でを簡単に求めることができます。
上図を見て下表を書き込んでください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
100Ωの下側からアースを見たインピーダンスは、 |
Ω |
A |
100Ωの上側からアースを見たインピーダンスは、 |
Ω |
B |
reの付け根(ベースの裏側)からアースを見たインピーダンス(エミッタの全インピーダンス)は、 |
Ω |
C 重要 |
hFEを100とすると、ベースのインピーダンスは、 |
kΩ |
D |
入力端子から回路を見たインピーダンスは、 |
kΩ |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
100Ωの下側からアースを見たインピーダンスは、 |
0Ω |
A |
100Ωの上側からアースを見たインピーダンスは、 |
100Ω |
B |
reの付け根(ベースの裏側)からアースを見たインピーダンス(エミッタの全インピーダンス)は、 |
126Ω |
C 重要 |
hFEを100とすると、ベースのインピーダンスは、 |
12.6kΩ |
D |
入力端子から回路を見たインピーダンスは、 |
15kΩ |
ベースからみるとエミッタのインピーダンスがhFE倍になりました。逆に、エミッタから見るとベースのインピーダンスが1/hFEになります。そのため、エミッタ回路のインピーダンスは、reも配慮して、下図の手順でを簡単に求めることができます。
上図を見て下表を書き込んでください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
入力からアースを見たインピーダンスは、 (電池や交流源はインピーダンスはとても低いから、) |
Ω |
A |
ベースから左を見たインピーダンスは、 |
kΩ |
B 重要 |
hFEを100とすると、reの付け根(ベースの裏側)から左を見たインピーダンスは、 |
Ω |
C |
エミッタから左を見たインピーダンスは、 (reが26Ωだから、) |
Ω |
D |
100Ωの下側からアースを見たインピーダンスは、 |
Ω |
E |
100Ωの上側がアースを見たインピーダンスは、 |
Ω |
F |
出力端子から回路全体を見たインピーダンスは、 (CとEが並列に見えるから、) |
Ω |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
入力からアースを見たインピーダンスは、 (電池や交流源はインピーダンスはとても低いから、) |
0Ω |
A |
ベースから左を見たインピーダンスは、 |
2.4kΩ |
B 重要 |
hFEを100とすると、reの付け根(ベースの裏側)から左を見たインピーダンスは、 |
24Ω |
C |
エミッタから左を見たインピーダンスは、 (reが26Ωだから、) |
50Ω |
D |
100Ωの下側からアースを見たインピーダンスは、 |
0Ω |
E |
100Ωの上側がアースを見たインピーダンスは、 |
100Ω |
F |
出力端子から回路全体を見たインピーダンスは、 (CとEが並列に見えるから、) |
33Ω |
これまでの説明をまとめると、トランジスタのインピーダンスは下図のようにして求めることができます。
上図の回路の入力、出力1、出力2のインピーダンスを、下図を参考に、下表に書き込みながら答えてください。(ただし、入力インピーダンスは、接続された電圧源と信号源のインピーダンスを含めずに答えてください)
番号 |
質問 |
値 |
|
出力1のインピーダンスを考えます |
− |
@ 重要 |
コレクタのインピーダンスは、 |
Ω |
A |
1kΩの下から電源を見たインピーダンスは、 |
kΩ |
B |
出力1端子から回路を見たインピーダンスは、 (1kΩと∞Ωが並列に見えて、) |
kΩ |
|
入力のインピーダンスを考えます |
− |
C |
500Ωの上からアースを見たインピーダンスは、 |
Ω |
D |
reの付け根(ベースの裏側)からアースを見たインピーダンスは、(reが260Ωだから、) |
Ω |
E 重要 |
ベースのインピーダンスは、hFEが100だから、 |
kΩ |
F |
入力端子から回路を見たインピーダンスは、 |
kΩ |
|
出力2のインピーダンスを考えます |
− |
G |
24kΩの右側から、左を見たインピーダンスは、 (電池や信号源のインピーダンスは低いから) |
kΩ |
H 重要 |
reの付け根(ベースの裏側)から左を見たインピーダンスは、(hFEが100だから、) |
Ω |
I |
エミッタのインピーダンスは、(reが260Ωだから、) |
Ω |
J |
500Ωの上側からアースを見たインピーダンスは、 |
Ω |
K |
出力2端子から回路を見たインピーダンスは、 (500Ωとエミッタが並列に見えるから、) |
Ω |
番号 |
質問 |
値 |
|
出力1のインピーダンスを考えます |
− |
@ 重要 |
コレクタのインピーダンスは、 |
∞Ω |
A |
1kΩの下から電源を見たインピーダンスは、 |
1kΩ |
B |
出力1端子から回路を見たインピーダンスは、 (1kΩと∞Ωが並列に見えて、) |
1kΩ |
|
入力のインピーダンスを考えます |
− |
C |
500Ωの上からアースを見たインピーダンスは、 |
500Ω |
D |
reの付け根(ベースの裏側)からアースを見たインピーダンスは、(reが260Ωだから、) |
760Ω |
E 重要 |
ベースのインピーダンスは、hFEが100だから、 |
76kΩ |
F |
入力端子から回路を見たインピーダンスは、 |
100kΩ |
|
出力2のインピーダンスを考えます |
− |
G |
24kΩの右側から、左を見たインピーダンスは、 (電池や信号源のインピーダンスは低いから) |
24kΩ |
H 重要 |
reの付け根(ベースの裏側)から左を見たインピーダンスは、(hFEが100だから、) |
240Ω |
I |
エミッタのインピーダンスは、(reが260Ωだから、) |
500Ω |
J |
500Ωの上側からアースを見たインピーダンスは、 |
500Ω |
K |
出力2端子から回路を見たインピーダンスは、 (500Ωとエミッタが並列に見えるから、) |
250Ω |
上の練習で扱った増幅器A(出力インピーダンス1kΩ)が、下図に示すように、無負荷時(なにも繋がないとき)202mVの交流電圧を出力していました。これに、十分大きなコンデンサを介して、同じ増幅器B(入力インピーダンス100kΩ)を繋ぐと、増幅器Aの出力「あ」の交流出力電圧は何Vに減りますか。但し、増幅器Bの動作は(バイアス用電池を取り除いても)練習で扱った状態から変化しないと考えます。
増幅器の入力インピーダンス(100kΩ)と出力インピーダンス(1kΩ)が分かっているので、下図のように考えて、200mVに減る。
コンデンサの容量は「十分大きい」と考えて計算してきました。ここでは「十分大きい」と考えるためには、コンデンサの容量をいくらにすれば良いかを説明します。
まず、下図のCR回路に交流が加わると、コンデンサに流れる電流は、周波数が160Hzより低くなると減少します。
電流が減少し始める周波数は、既に説明した「遮断周波数」fCで、次のように計算できます。
上の例では、=1/2/PI()/1E-6/1E3
下図のように回路が複雑な場合も、コンデンサから見たインピーダンスを求めて、遮断周波数を計算できます。
上の例でも、コンデンサから見たインピーダンスが1kΩですから、遮断周波数は160Hzです。
さて、遮断周波数は増幅器で使用する最低の周波数を目安に選びます。コンデンサに流れる電流は遮断周波数の手前から低下を始め、下図に示すように、使用する周波数が遮断周波数と同じでも、コンデンサの電流は3割程度減少します。そして、使用する周波数が遮断周波数の4〜5倍に高ければ、電流の減少は殆ど無視できます。
たとえ振幅の減少が3割でも、たとえば入力、エミッタ、出力と3つのコンデンサが使われていると、70%×70%×70%=34%と、振幅は半分以下に減少します。ですから、振幅の減少が殆ど無視できるように、使用する周波数を遮断周波数の4〜5倍に(遮断周波数を使用する周波数の4〜5分の1に)選ぶ場合が多いです。
例えば、増幅する最低の周波数を100Hzとし、振幅の減少が無視できるようにする場合は、遮断周波数を(100Hzの4〜5分の1の)20Hz程度に設定します。
遮断周波数を設定したら、次に回路を検討してコンデンサの容量を決定します。例えば下図(a)は、増幅器の出力をコンデンサを通じて負荷に接続した回路です。この回路では、下図(b)に示すように、出力インピーダンスの1kΩと、負荷インピーダンスの1kΩは、双方ともコンデンサと直列に接続されています。このため、コンデンサから見たインピーダンスは下図(c)のように2kΩとなり、遮断周波数を20Hzとすれば、コンデンサの容量は=1/2/PI()/20/2E3と計算して、4μFと分かります。
どのようなインピーダンスの負荷を接続するか分からない増幅回路の場合は、下図(b)のように(最悪の場合として)0Ωの負荷を接続したと考えて、コンデンサから見たインピーダンスを下図(b)のように1kΩとして=1/2/PI()/20/1E3と計算し、コンデンサの容量を8μFとします。
この計算方法は出力コンデンサにも、入力コンデンサにも使用することができます。
どのような入力を接続するか分からない増幅回路の場合は、下図(b)のように(最悪の場合として)0Ωの信号源を接続したと考えて、コンデンサから見たインピーダンスを下図(b)のように1kΩとして=1/2/PI()/20/1E3と計算し、コンデンサの容量を8μFとします。
例えば下図のような、エミッタバイパスコンデンサの場合は、コンデンサからは(a)のインピーダンス200Ωと、(b)のインピーダンス(800Ω)が並列に見えます。
ですから、コンデンサから見た回路のインピーダンスは160Ωです。遮断周波数が20Hzであれば、=1/2/PI()/20/160と計算して、コンデンサの容量は50μFと分かります。
下図のように概ねインピーダンス検討を終えた増幅器があります。上図を参考に下表に書き込み、入出力コンデンサとエミッタバイパスコンデンサの容量を決定してください。増幅器で使用する最低の周波数は20Hzで、遮断周波数はその4分の1の5Hzと設定します。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
入力コンデンサの右側から回路を見たインピーダンスは、(RA、RB、ベース、が並列に見えて、) |
kΩ |
A |
遮断周波数fCを5Hzとすれば、入力コンデンサCIの容量は、 |
μF |
B |
出力コンデンサの左側から回路を見たインピーダンスは、(RLとコレクタが並列に見えて、) |
kΩ |
C |
遮断周波数fCを5Hzとすれば、出力コンデンサCOの容量は、 |
μF |
D |
RE1の下側から上を見たインピーダンスは、 (re(26Ω)とRE1(74Ω)が直列に見えて、) |
Ω |
E |
RE2の上側からアースを見たインピーダンスは、 |
Ω |
F |
エミッタバイパスコンデンサCEから回路を見たインピーダンスは、(上のDとEが並列に見えて、) |
Ω |
G |
遮断周波数fCを5Hzとすれば、エミッタバイパスコンデンサCEの容量は、 |
μF |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
入力コンデンサの右側から回路を見たインピーダンスは、(RA、RB、ベース、が並列に見えて、) |
6.1kΩ |
A |
遮断周波数fCを5Hzとすれば、入力コンデンサCIの容量は、 =1/2/PI()/5/6.1E3 |
5.2μF |
B |
出力コンデンサの左側から回路を見たインピーダンスは、(RLとコレクタが並列に見えて、) |
10kΩ |
C |
遮断周波数fCを5Hzとすれば、出力コンデンサCOの容量は、 =1/2/PI()/5/10E3 |
3.2μF |
D |
RE1の下側から上を見たインピーダンスは、 (re(26Ω)とRE1(74Ω)が直列に見えて、) |
100Ω |
E |
RE2の上側からアースを見たインピーダンスは、 |
800Ω |
F |
エミッタバイパスコンデンサCEから回路を見たインピーダンスは、(上のDとEが並列に見えて、) |
80Ω |
G |
遮断周波数fCを5Hzとすれば、エミッタバイパスコンデンサCEの容量は、 =1/2/PI()/5/80 |
400μF |
下図は入出力(結合/カップリング)コンデンサ、分圧バイアス回路、エミッタバイパスコンデンサを備えた標準的なトランジスタ増幅器です。これまでに練習した内容を活用して、下の回路を検討してみましょう。(練習の目的でエミッタからも出力を取り出しています)
上図の回路を直流検討して回路の消費電流を求め、インピーダンス検討、交流検討して、2つの出力端子の出力インピーダンス、出力電圧、使用するコンデンサの値を求めます。
下図を参考に、下表に書き込みながら、直流検討して回路の消費電流を求めてください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
RAとRBの直列合成抵抗は、 |
kΩ |
A |
RAとRBに流れる電流、IRABは、 |
μA |
B |
RBの両端電圧は、 |
V |
C |
電流が流れているトランジスタのVBEは、 |
V |
D |
RE1とRE2に加わる電圧の合計は、 |
V |
E |
RE1とRE2の直列合成抵抗は、 |
kΩ |
F |
エミッタバイアス電流IEEは、 |
mA |
G |
コレクタバイアス電流ICCは、 |
mA |
H |
負荷抵抗の両端電圧VRLは、 |
V |
I |
出力バイアス電圧VOOは、 |
V |
J |
ベースバイアス電流IBBは、 |
μA |
K |
回路の消費電流は、(GとAから、) |
mA |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
RAとRBの直列合成抵抗は、 |
240kΩ |
A |
RAとRBに流れる電流、IRABは、 |
100μA |
B |
RBの両端電圧は、 |
1.7V |
C |
電流が流れているトランジスタのVBEは、 |
0.7V |
D |
RE1とRE2に加わる電圧の合計は、 |
1V |
E |
RE1とRE2の直列合成抵抗は、 |
1kΩ |
F |
エミッタバイアス電流IEEは、 |
1mA |
G |
コレクタバイアス電流ICCは、 |
1mA |
H |
負荷抵抗の両端電圧VRLは、 |
10V |
I |
出力バイアス電圧VOOは、 |
14V |
J |
ベースバイアス電流IBBは、 |
10μA |
K |
回路の消費電流は、(GとAから、) |
1.1mA |
下図を参考に、下表に書き込みながら、ベース側とコレクタ側のインピーダンスを検討してください。
番号 |
質問 |
値 |
|
出力1(コレクタ側)のインピーダンスを考えます |
− |
@ |
コレクタのインピーダンスは、 |
Ω |
A |
10kΩの下から電源を見たインピーダンスは、 |
kΩ |
B |
COの左側から回路を見たインピーダンスは、 (10kΩと∞Ωが並列に見えて、) |
kΩ |
C |
出力1端子から回路を見たインピーダンスは、 (COが十分大きいから、) |
kΩ |
|
入力のインピーダンスを考えます |
− |
D |
928Ω上側からアースを見たインピーダンスは、 (CEが十分大きいから、) |
Ω |
E |
72Ωの上側からアースを見たインピーダンスは、 |
Ω |
F |
reの付け根(ベースの裏側)からアースを見たインピーダンスは、(reが26Ωだから、) |
Ω |
G |
ベースのインピーダンスは、hFEが100だから、 |
kΩ |
H |
17kの上側からアースを見たインピーダンスは、 |
kΩ |
I |
223kの下側から電源を見たインピーダンスは、 |
kΩ |
J |
CIの右側から右を見たインピーダンスは、 (GHIが並列に見えて、) |
kΩ |
K |
入力端子から回路を見たインピーダンスは、 (CIが十分大きいから、) |
kΩ |
番号 |
質問 |
値 |
|
出力1(コレクタ側)のインピーダンスを考えます |
− |
@ |
コレクタのインピーダンスは、 |
∞Ω |
A |
10kΩの下から電源を見たインピーダンスは、 |
10kΩ |
B |
COの左側から回路を見たインピーダンスは、 (10kΩと∞Ωが並列に見えて、) |
10kΩ |
C |
出力1端子から回路を見たインピーダンスは、 (COが十分大きいから、) |
10kΩ |
|
入力のインピーダンスを考えます |
− |
D |
928Ω上側からアースを見たインピーダンスは、 (CEが十分大きいから、) |
0Ω |
E |
72Ωの上側からアースを見たインピーダンスは、 |
72Ω |
F |
reの付け根(ベースの裏側)からアースを見たインピーダンスは、(reが26Ωだから、) |
100Ω |
G |
ベースのインピーダンスは、hFEが100だから、 |
10kΩ |
H |
17kの上側からアースを見たインピーダンスは、 |
17kΩ |
I |
223kの下側から電源を見たインピーダンスは、 |
223kΩ |
J |
CIの右側から右を見たインピーダンスは、 (GHIが並列に見えて、) |
6.1kΩ |
K |
入力端子から回路を見たインピーダンスは、 (CIが十分大きいから、) |
6.1kΩ |
下図を参考に、下表に書き込みながら、エミッタ側のインピーダンスを検討してください。
番号 |
質問 |
値 |
|
出力2(エミッタ側)のインピーダンスを考えます |
− |
@ |
信号源のインピーダンスは、 |
Ω |
A |
6.5kの上側からアースを見たインピーダンスは、 |
kΩ |
B |
CIの右側から左を見たインピーダンスは、 (CIが十分大きいから) |
kΩ |
C |
17kの上側からアースを見たインピーダンスは、 |
kΩ |
D |
223kの下側から電源を見たインピーダンスは、 |
kΩ |
E |
ベースから左側を見たインピーダンスは、 (BCDの3つが並列に見えて、) |
kΩ |
F |
reの付け根(ベースの裏側)から左を見たインピーダンスは、(hFEが100だから、) |
Ω |
G |
エミッタから左を見たインピーダンスは、 |
Ω |
H |
928Ωの上側からアースを見たインピーダンスは、 (CEが十分大きいから、) |
Ω |
I |
72Ωの上側からアースを見たインピーダンスは、 |
Ω |
J |
CO2の左側から左を見たインピーダンスは、 (GとIが並列に見えて、) |
Ω |
K |
出力端子から回路を見たインピーダンスは、 (CO2は十分大きいから、) |
Ω |
番号 |
質問 |
値 |
|
出力2(エミッタ側)のインピーダンスを考えます |
− |
@ |
信号源のインピーダンスは、 |
0Ω |
A |
6.5kの上側からアースを見たインピーダンスは、 |
6.5kΩ |
B |
CIの右側から左を見たインピーダンスは、 (CIが十分大きいから) |
6.5kΩ |
C |
17kの上側からアースを見たインピーダンスは、 |
17kΩ |
D |
223kの下側から電源を見たインピーダンスは、 |
223kΩ |
E |
ベースから左側を見たインピーダンスは、 (BCDの3つが並列に見えて、) |
4.6kΩ |
F |
reの付け根(ベースの裏側)から左を見たインピーダンスは、(hFEが100だから、) |
46Ω |
G |
エミッタから左を見たインピーダンスは、 |
72Ω |
H |
928Ωの上側からアースを見たインピーダンスは、 (CEが十分大きいから、) |
0Ω |
I |
72Ωの上側からアースを見たインピーダンスは、 |
72Ω |
J |
CO2の左側から左を見たインピーダンスは、 (GとIが並列に見えて、) |
36Ω |
K |
出力端子から回路を見たインピーダンスは、 (CO2は十分大きいから、) |
36Ω |
下図を参考に、下表に書き込みながら、交流検討して交流出力電圧を求めてください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
増幅器の入力インピーダンスZinは、 (すでに求めたとおり、) |
6.1kΩ |
A |
信号電圧が20.7mAP−P、信号源インピーダンスRSが6.5kΩだから、増幅器の入力端子(白丸)に加わる交流電圧は、 |
mVP−P |
B |
エミッタ側インピーダンスの合計は、 |
Ω |
C |
エミッタ信号電流ieは、 |
μAP−P |
D |
コレクタ信号電流icは、 |
μAP−P |
E |
負荷抵抗RLの両端信号電圧vrlは、 |
VP−P |
F |
出力信号電圧voは、 |
VP−P |
G |
ベース信号電流ibは、 |
μAP−P |
H |
今一度、エミッタ信号電流は、 |
μAP−P |
I |
エミッタ側出力端子の出力信号電圧vo2は、 100μAP−P×72Ω=7.2mVP−P |
mVP−P |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
増幅器の入力インピーダンスZinは、 |
6.1kΩ |
A |
信号電圧が20.7mAP−P、信号源インピーダンスRSが6.5kΩだから、増幅器の入力端子(白丸)に加わる交流電圧は、 |
10mVP−P |
B |
エミッタ側インピーダンスの合計は、 |
100Ω |
C |
エミッタ信号電流ieは、 |
100μAP−P |
D |
コレクタ信号電流icは、 |
100μAP−P |
E |
負荷抵抗RLの両端信号電圧vrlは、 |
1VP−P |
F |
出力信号電圧voは、 |
−1VP−P |
G |
ベース信号電流ibは、 |
1μAP−P |
H |
今一度、エミッタ信号電流は、 |
100μAP−P |
I |
エミッタ側出力端子の出力信号電圧vo2は、 100μAP−P×72Ω=7.2mVP−P |
7.2mVP−P |
回路で使用する最低の周波数を20Hzとして、遮断周波数を5Hzに設定し、下図を参考に下表に書き込みながら、回路に使用された4つのコンデンサの容量を決定して下さい。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
入力コンデンサCIの右側から回路を見たインピーダンスは、 (RA、RB、ベースのインピーダンスが並列に見えて、) |
kΩ |
A |
入力コンデンサCIの左側から信号を見たインピーダンスは、 |
kΩ |
B |
コンデンサから左右を見たインピーダンスは、(@とAが直列に見えて、) |
kΩ |
C |
断周波数fCを5Hzとすれば、入力コンデンサCIの容量は、 |
μF |
D |
出力コンデンサCOの左側から回路を見たインピーダンスは、 出力に接続する回路は未定ですから、コンデンサの右側に接続されるインピーダンスは0Ωと考えて、ここで計算したインピーダンスを、コンデンサから見たインピーダンスと考えます。 |
kΩ |
E |
断周波数fCを5Hzとすれば、出力コンデンサCOの容量は、 |
μF |
F |
出力2コンデンサCO2の左側から回路を見たインピーダンスは、 (ベースのインピーダンス(72Ω)とRE1(72Ω)が並列に見えて、) 出力に接続する回路は未定ですから、コンデンサの右側に接続されるインピーダンスは0Ωと考えて、ここで計算したインピーダンスを、コンデンサから見たインピーダンスと考えます。 |
Ω |
G |
断周波数fCを5Hzとすれば、出力コンデンサCO2の容量は、 |
μF |
H |
エミッタバイパスコンデンサCEの上側から、上を見たインピーダンスは、 |
Ω |
I |
エミッタバイパスコンデンサCEの上側から、下を見たインピーダンスは、 |
Ω |
J |
エミッタバイパスコンデンサCEから回路を見たインピーダンスは、 |
Ω |
K |
断周波数fCを5Hzとすれば、エミッタバイパスコンデンサCEの容量は、 |
μF |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
入力コンデンサCIの右側から回路を見たインピーダンスは、=1/(1/10E3+1/223E3+1/17E3) (RA、RB、ベースのインピーダンスが並列に見えて、) |
6.1kΩ |
A |
入力コンデンサCIの左側から信号を見たインピーダンスは、 |
6.5kΩ |
B |
コンデンサから左右を見たインピーダンスは、(@とAが直列に見えて、) |
12.6kΩ |
C |
断周波数fCを5Hzとすれば、入力コンデンサCIの容量は、=1/2/PI()/5/12.6E3 |
2.5μF |
D |
出力コンデンサCOの左側から回路を見たインピーダンスは、 |
10kΩ |
E |
断周波数fCを5Hzとすれば、出力コンデンサCOの容量は、=1/2/PI()/5/10E3 出力に接続する回路は未定ですから、コンデンサの右側に接続されるインピーダンスは0Ωと考えて、ここで計算したインピーダンスを、コンデンサから見たインピーダンスと考えます。 |
3.2μF |
F |
出力2コンデンサCO2の左側から回路を見たインピーダンスは、 (ベースのインピーダンス(72Ω)とRE1(72Ω)が並列に見えて、) 出力に接続する回路は未定ですから、コンデンサの右側に接続されるインピーダンスは0Ωと考えて、ここで計算したインピーダンスを、コンデンサから見たインピーダンスと考えます。 |
36Ω |
G |
断周波数fCを5Hzとすれば、出力コンデンサCO2の容量は、=1/2/PI()/5/36 |
880μF |
H |
エミッタバイパスコンデンサCEの上側から、上を見たインピーダンスは、 |
144Ω |
I |
エミッタバイパスコンデンサCEの上側から、下を見たインピーダンスは、 |
928Ω |
J |
エミッタバイパスコンデンサCEから回路を見たインピーダンスは、 |
124Ω |
K |
断周波数fCを5Hzとすれば、エミッタバイパスコンデンサCEの容量は、=1/2/PI()/5/124 |
260μF |
下図のように、ベースに直流電圧と共に交流電圧を加えると(VBEが一定ですから)エミッタにもほぼ同じ交流電圧が生じます。ところが電流は、例えばエミッタに1mAP−P流れていても、ベースにはそのhFE分の1の10μAP−Pしか流れません。電圧が同じで電流が少なくなりますから、ベースの交流抵抗は高くなります。
これがすでに説明した「ベースのインピーダンスはエミッタのインピーダンスのhFE倍に高くなる」という現象です。この性質をそのまま増幅器に利用したのがエミッタフォロアです。「フォロア」とは「あとについて(同じように)動く」という意味で、エミッタの電圧がベースの電圧と同じように動くために命名されています。
つまりエミッタフォロアは「電圧は増幅しない(ほとんどそのまま出てくる)」が、「電流はhFE倍に増幅」し、その結果、「入力インピーダンスは出力インピーダンスのhFE倍に高くなる」あるいは「出力インピーダンスは入力インピーダンスのhFE分の1に低くなる」増幅器です。
下図の例では、入力から見れば同図(a)のように、信号源の1kΩの(高い)インピーダンスが、出力端子からは35Ωと低く見えています。出力から見れば同図(b)のように、出力の25Ωの(低い)インピーダンスが、入力端子からは5kΩと高く見えています。
上図の通り、実際の回路では、reやエミッタ抵抗の影響で、インピーダンスがぴったりhFE倍やhFE分の1にはなりませんが、入力インピーダンスは高く、出力インピーダンスは低くなります。
下図(a)のエミッタフォロアの出力直流電圧VOO、出力交流電圧vo、出力インピーダンスZoを下図を参考に、下表に書き込みながら求めてください。
まず、直流検討して、VOOを求めます。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
ベースバイアス電圧VBBは、 |
V |
A |
電流の流れているトランジスタのVBEは、 |
V |
B |
エミッタ抵抗の両端電圧VREは、 |
V |
C |
エミッタバイアス電流IEEは、 |
mA |
D |
エミッタ等価インピーダンスreは、 26mV÷1mA=26Ω |
Ω |
E |
コレクタバイアス電流ICCは、 |
mA |
F |
ベースバイアス電流IBBは、 |
μA |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
ベースバイアス電圧VBBは、 |
5V |
A |
電流の流れているトランジスタのVBEは、 |
0.7V |
B |
エミッタ抵抗の両端電圧VREは、 |
4.3V |
C |
エミッタバイアス電流IEEは、 |
1mA |
D |
エミッタ等価インピーダンスreは、 26mV÷1mA=26Ω |
26Ω |
E |
コレクタバイアス電流ICCは、 |
1mA |
F |
ベースバイアス電流IBBは、 |
10μA |
次に交流検討して、出力信号電圧voと、インピーダンス検討して出力インピーダンスZoを求めます。
番号 |
質問 |
値 |
G |
ベース信号電圧vbbは、 |
mVP−P |
H |
エミッタ等価インピーダンスreは、 |
Ω |
I |
エミッタ側の総インピーダンスは、 re+RE=4326Ω |
Ω |
J |
エミッタ信号電流ieeは、 |
mAP−P |
K |
出力信号電圧vo(エミッタ抵抗の両端信号電圧は、) |
mVP−P |
L |
コレクタ信号電流iccは、 |
mAP−P |
M |
ベース信号電流ibbは、 ICC÷hFE=10μA |
μAP−P |
N |
ベースから左を見たインピーダンス(信号源のインピーダンス)は、 |
Ω |
O |
reの付け根(ベースの裏側)から左を見たインピーダンスは、 0Ω÷hFE=0Ω |
Ω |
P |
エミッタ等価インピーダンスreは、 |
Ω |
Q |
エミッタのインピーダンスは、 |
Ω |
R |
REの上側からアースを見たインピーダンスは、 |
kΩ |
S |
出力端子から回路を見たインピーダンスは、 26Ω//4.3kΩ=26Ω |
Ω |
番号 |
質問 |
値 |
G |
ベース信号電圧vbbは、 |
4325mVP−P |
H |
エミッタ等価インピーダンスreは、 |
26Ω |
I |
エミッタ側の総インピーダンスは、 re+RE=4326Ω |
4326Ω |
J |
エミッタ信号電流ieeは、 |
1mAP−P |
K |
出力信号電圧vo(エミッタ抵抗の両端信号電圧は、) |
4300mVP−P |
L |
コレクタ信号電流iccは、 |
1mAP−P |
M |
ベース信号電流ibbは、 ICC÷hFE=10μA |
10μAP−P |
N |
ベースから左を見たインピーダンス(信号源のインピーダンス)は、 |
0Ω |
O |
reの付け根(ベースの裏側)から左を見たインピーダンスは、 0Ω÷hFE=0Ω |
0Ω |
P |
エミッタ等価インピーダンスreは、 |
26Ω |
Q |
エミッタのインピーダンスは、 |
26Ω |
R |
REの上側からアースを見たインピーダンスは、 |
4.3kΩ |
S |
出力端子から回路を見たインピーダンスは、 26Ω//4.3kΩ=26Ω |
26Ω |
下図のように、ベース同士を繋いだトランジスタでは、2つのトランジスタのVBEが同じになり、2つのトランジスタには同じ大きさのICが流れます。また、コレクタ電流には定電流特性があるため、負荷抵抗RL2の値を変更しても、IC2の値は変化しません。
このように、2つのトランジスタを組み合わせると、双方のICが等しくなり、負荷が変化しても一定の電流を保ちます。まるで、Q1の電流が鏡に映ったようQ2に反映されるため、この回路を「カレント・ミラー」と呼びます。
上図を参考に下表に書き込んで、回路の動作を確認します。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
Q1のコレクタ電流IC1は1mAとします。 |
− |
A |
VBE−IC特性から、そのときのQ1のVBEは、 |
V |
B |
Q1とQ2のベースが繋がっているから、Q1のVBEは、 |
V |
C |
VBE−IC特性から、そのときのQ1のICは、 |
mA |
D |
hFEが100だから、Q1のIBは、 |
μA |
E |
同じくQ2のIBは、 |
μA |
F |
ベース電流の合計は、 |
μA |
G |
RL1に流れる電流、IRL1は、 |
mA |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
Q1のコレクタ電流IC1は1mAとします。 |
− |
A |
VBE−IC特性から、そのときのQ1のVBEは、 |
0.68V |
B |
Q1とQ2のベースが繋がっているから、Q1のVBEは、 |
0.68V |
C |
VBE−IC特性から、そのときのQ1のICは、 |
1mA |
D |
hFEが100だから、Q1のIBは、 |
10μA |
E |
同じくQ2のIBは、 |
10μA |
F |
ベース電流の合計は、 |
20μA |
G |
RL1に流れる電流、IRL1は、 |
1.020mA |
上表で分かるように、RL1とRL2に流れる電流には、2%程度の差しかありません。大雑把な設計では、2つの電流を同じと考えて計算します。
VBEは温度変化するため、Q1とQ2の温度が同じでなければ、コレクタ電流が等しくなりません。このため2つのトランジスタを接着(熱結合)して使用したり、一つのチップの上に2つのトランジスタを作りこんだ「デュアルトランジスタ」を使用します。
オペアンプICでは全てのトランジスタが一つのチップの上に作り込まれていますから、デュアルトランジスタ同様にカレントミラーは精度良く動作します。ただし、熱を発する出力トランジスタまで同じチップに作り込まれているため、その影響を受けるのが悩みの種です。そこで、チップ上の配置を工夫して、たとえ出力回路が発熱しても、2つのトランジスタの温度が同じになるように配慮されています。
下図の回路のQ2のコレクタ電流IC2を下表に書き込みながら求めてください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
電流の流れているトランジスタのVBEは、 |
V |
A |
VCCが5.7Vなので、RL1の両端電圧は、 |
V |
B |
Q1のコレクタ電流IC1は、 |
mA |
C |
Q2のコレクタ電流IC2は、 |
mA |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
電流の流れているトランジスタのVBEは、 |
0.7V |
A |
VCCが5.7Vなので、RL1の両端電圧は、 |
5V |
B |
Q1のコレクタ電流IC1は、 |
5mA |
C |
Q2のコレクタ電流IC2は、 |
5mA |
下図のようにエミッタ抵抗を挿入することによって、左右で異なる電流を流すこともできます。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
電流の流れているトランジスタのVBEは、 |
V |
A |
Q1のコレクタ抵抗RL1とエミッタ抵抗RE1の合計値は、 |
kΩ |
B |
RL1の両端電圧VRL1と、RE1の両端電圧VRE1の合計電圧は、 |
V |
C |
RL1とRE1に流れる電流は、 |
mA |
D |
Q1のエミッタ抵抗の両端電圧VRE1は、 |
V |
E |
Q2のエミッタ抵抗の両端電圧VRE2は、 |
V |
F |
Q2のエミッタ電流IE2は、 |
mA |
G |
Q2のコレクタ電流IC2は、 |
mA |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
電流の流れているトランジスタのVBEは、 |
0.7V |
A |
Q1のコレクタ抵抗RL1とエミッタ抵抗RE1の合計値は、 |
12kΩ |
B |
RL1の両端電圧VRL1と、RE1の両端電圧VRE1の合計電圧は、 |
12V |
C |
RL1とRE1に流れる電流は、 |
1mA |
D |
Q1のエミッタ抵抗の両端電圧VRE1は、 |
2V |
E |
Q2のエミッタ抵抗の両端電圧VRE2は、 |
2V |
F |
Q2のエミッタ電流IE2は、 |
2mA |
G |
Q2のコレクタ電流IC2は、 |
2mA |
エミッタ抵抗は、左右のトランジスタの電流を変えるだけではなく、エミッタ抵抗のある増幅器と同様に、VBEの温度変化やhFEのばらつきを緩和する効果があります。つまり、左右の電流が同じ場合でも、エミッタ抵抗によって安定度が向上します。
増幅器の増幅率を高くする方法を考えます。下図(a)の増幅器では、増幅率はエミッタ抵抗REと負荷抵抗RLの比率で決まります。つまり、RLが大きい程増幅率を高くできます。この回路では、RLが、2kΩ、4kΩ、6kΩと大きくなれば、増幅率は2倍、4倍、6倍と大きくなります。
しかし、上図(b)で分かるように、RLが大きくなるにつれVRLも大きくなり、逆にVCEは小さくなります。そしてついに、RLが6kΩになるとVCEが0Vになって回路は動作しなくなります。つまり、単にRLを大きくする方法では、増幅率が十分大きくなる前に回路が動作しなくなってしまいます。
ところでVRLが発生する原因は、RLにコレクタバイアス電流ICCが流れているためです。もし、RLに流れる電流を減らすことができれば、RLをもっと大きくできます。
しかし、ICCは回路の動作に必要な電流ですから減らすことはできません。そこで下図のように、ICCを、RLとは別の経路で供給して、RLに流れる電流を減らす方法が工夫されました。これがアクティブロード(能動負荷)です。
「能動(アクティブ)」とはトランジスタのような「増幅作用」の事で、(増幅作用の無い)抵抗の代りに、トランジスタ(能動素子)を「負荷(ロード)」に使うので、「能動負荷」と呼ばれます。
下図の回路では、カレントミラー回路を使用して、RLとは別経路で0.9mAの電流をコレクタに供給しています。このため、RLを流れる電流は0.1mAと小さくなり、RLを30kΩと高くし、30倍の増幅率を得ることができます。
下図の回路の信号増幅率を下表に記入しながら確認してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
ベースに加わる信号電圧vbは、 |
mVP−P |
A |
エミッタ側の合計インピーダンスZeは、 |
Ω |
B |
エミッタ信号電流ieは、 |
μAP−P |
C |
カレントミラーから流れ込む信号電流は、 (カレントミラーの出力は、定電流である。定電流とは「電流全く変動しない」という事だから、変動する電流である信号電流は、) |
mAP−P |
D |
負荷抵抗RLに流れる信号電流irlは、 |
μAP−P |
E |
負荷抵抗の両端に現れる信号電圧vrlは、 |
mVP−P |
F |
出力端子に現れる信号電圧voは、 |
mVP−P |
G |
電圧増幅率は、 |
倍 |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
ベースに加わる信号電圧vbは、 |
1.026mVP−P |
A |
エミッタ側の合計インピーダンスZeは、 |
1026Ω |
B |
エミッタ信号電流ieは、 |
1μAP−P |
C |
カレントミラーから流れ込む信号電流は、 (カレントミラーの出力は、定電流である。定電流とは「電流全く変動しない」という事だから、変動する電流である信号電流は、) |
0mAP−P |
D |
負荷抵抗RLに流れる信号電流irlは、 |
1μAP−P |
E |
負荷抵抗の両端に現れる信号電圧vrlは、 |
30mVP−P |
F |
出力端子に現れる信号電圧voは、 |
−30mVP−P |
G |
電圧増幅率は、 |
−30倍 |
増幅率は、エミッタバイパスコンデンサを取り付けて高めることもできますが、直流には(コンデンサは直流を通さないため)効果がありません。これとは違い、アクティブロードは直流の増幅率も高めることができます。
下図の回路を直流検討して消費電流を求め、交流検討して増幅率を求めてください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
Q1のベースバイアス電圧VBB1は、 |
2.7V |
A |
Q1のベースエミッタ間電圧VBE1は、 |
V |
B |
Q1のエミッタ抵抗の両端電圧VRE1は、 |
V |
C |
Q1のエミッタバイアス電流IEE1は、 |
mA |
D |
Q1のエミッタ等価インピーダンスre1は、 |
Ω |
E |
Q1のコレクタバイアス電流1CC1は、 |
mA |
F |
Q3のベースエミッタ間電圧VBE1は、 |
V |
G |
Q3の負荷抵抗RL3の両端電圧VRL3は、 |
V |
H |
Q3のコレクタ電流ICC3は、 |
mA |
I |
Q2のコレクタ電流ICC2は、 (Q2とQ3はカレントミラーだから、) |
mA |
J |
負荷抵抗RL1に流れる電流IRL1は、 |
mA |
K |
負荷抵抗RL1の両端電圧VRL1は、 |
V |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
Q1のベースバイアス電圧VBB1は、 |
2.7V |
A |
Q1のベースエミッタ間電圧VBE1は、 |
0.7V |
B |
Q1のエミッタ抵抗の両端電圧VRE1は、 |
2V |
C |
Q1のエミッタバイアス電流IEE1は、 |
2mA |
D |
Q1のエミッタ等価インピーダンスre1は、 |
13Ω |
E |
Q1のコレクタバイアス電流1CC1は、 |
2mA |
F |
Q3のベースエミッタ間電圧VBE1は、 |
0.7V |
G |
Q3の負荷抵抗RL3の両端電圧VRL3は、 |
21V |
H |
Q3のコレクタ電流ICC3は、 |
2.1mA |
I |
Q2のコレクタ電流ICC2は、 (Q2とQ3はカレントミラーだから、) |
2.1mA |
J |
負荷抵抗RL1に流れる電流IRL1は、 |
0.1mA |
K |
負荷抵抗RL1の両端電圧VRL1は、 |
10V |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
Q1のベースに加わる信号電圧vb1は、 |
1.031mVP−P |
A |
Q1のエミッタ側インピーダンスの合計Ze1は、 |
Ω |
B |
Q1のエミッタ信号電流ie1は、 |
μAP−P |
C |
Q1のコレクタ信号電流ic1は、 |
μAP−P |
D |
Q2のコレクタ信号電流ic2は、 (Q2とQ3はカレントミラーで、Q2のコレクタ電流は定電流だから、) |
mAP−P |
E |
負荷抵抗RL1に流れる信号電流irl1は、 |
μAP−P |
F |
負荷抵抗RL1の両端電圧vrl1は、 |
mVP−P |
G |
この回路の電圧増幅率は、 |
約 倍 |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
Q1のベースに加わる信号電圧vb1は、 |
1.031mVP−P |
A |
Q1のエミッタ側インピーダンスの合計Ze1は、 |
1013Ω |
B |
Q1のエミッタ信号電流ie1は、 |
1μAP−P |
C |
Q1のコレクタ信号電流ic1は、 |
1μAP−P |
D |
Q2のコレクタ信号電流ic2は、 (Q2とQ3はカレントミラーで、Q2のコレクタ電流は定電流だから、) |
0mAP−P |
E |
負荷抵抗RL1に流れる信号電流irl1は、 |
1μAP−P |
F |
負荷抵抗RL1の両端電圧vrl1は、 |
ー100mVP−P |
G |
この回路の電圧増幅率は、 |
約99倍 |
下図(a)は単純な増幅器です。トランジスタを動作させるためには、信号と直列に0.7Vの電圧を加える必要がありました。しかし、入力に直流を加えるのは面倒ですから、できれば信号を直接ベースに接続したいところです。
そこで上図(b)のように、ベースの電圧を上げるのではなく、エミッタの電圧を下げることで、ベースに直接信号を加えることができます。
ただし、この方法には欠点があります。つまり「VBEは0.7V程度でほぼ一定」とは言うものの、温度で変化(1℃あたり約2mV低下)するため、温度変化に合わせて電池の電圧を調節しないと、ICを一定に保つことができません。
そこで、上図(c)のように、もう一つの(同一品種の)トランジスタ(Q2)を用意し、ベースをアースに接続し、エミッタ抵抗を負電源に接続すれば、Q2のエミッタの電圧は−0.7Vとなります。この−0.7Vを、電池の代わりに利用することで、(Q1のVBE1とQ2のVBE2は、温度に対して同じ変化をしますから)ICは温度に影響されなくなります。
上図(c)の回路に、出力端子を追加してバランスよく書き直した回路を下図(a)に示します。このように2つの増幅器をエミッタでつないだ回路を「差動増幅回路」と呼びます。ベースを0Vに接続できるように、エミッタは負の電圧に保ちます。そのため、正電源VCCだけでなく、負電源VEEが必要です。
上図(a)を参考に、下表に書き込みながら、差動増幅回路を直流検討し、2つの出力端子の電圧VOO1とVOO2を求めて下さい。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
電流の流れているトランジスタのVBEは、 |
V |
A |
エミッタ抵抗REの両端電圧VREは、 |
V |
B |
エミッタ抵抗に流れる電流IREは、 |
mA |
C |
回路の左右は同じ形(対称)だから、エミッタバイアス電流IEE1とIEE2は、いずれも、 |
mA |
D |
エミッタ等価インピーダンスre1とre2は、 |
Ω |
E |
コレクタバイアス電流ICC1とICC2は、いずれも、 |
mA |
F |
負荷抵抗RL1とRL2の両端電圧VRL1とVRL2は、 |
V |
G |
出力端子の直流電圧VOO1とVOO2は、 |
V |
H |
ベースバイアス電流IBB1とIBB2は、 |
μA |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
電流の流れているトランジスタのVBEは、 |
0.7V |
A |
エミッタ抵抗REの両端電圧VREは、 |
10V |
B |
エミッタ抵抗に流れる電流IREは、 |
2mA |
C |
回路の左右は同じ形(対称)だから、エミッタバイアス電流IEE1とIEE2は、いずれも、 |
1mA |
D |
エミッタ等価インピーダンスre1とre2は、 |
26Ω |
E |
コレクタバイアス電流ICC1とICC2は、いずれも、 |
1mA |
F |
負荷抵抗RL1とRL2の両端電圧VRL1とVRL2は、 |
5V |
G |
出力端子の直流電圧VOO1とVOO2は、 |
5.7V |
H |
ベースバイアス電流IBB1とIBB2は、 |
10μA |
下図を参考に、下表に書き込みながら、差動増幅回路をインピーダンス及び交流検討し、2つの出力端子の信号電圧vo1とvo2を確認してください。
番号 |
質問 |
値 |
|
まず、Q1のエミッタのインピーダンスを検討します。 |
− |
@ |
Q2のベースからアースを見たインピーダンスは、 |
Ω |
A |
Q2のエミッタからベース(上)を見たインピーダンスは、 |
Ω |
B |
REの上側からマイナス電源VEEを見たインピーダンスは、 |
kΩ |
C |
Q1のエミッタから下を見たインピーダンスは、 (AとBが並列に見えて、) |
Ω |
D |
Q1のreの付け根(ベースの裏側)から右を見たインピーダンスは、 |
Ω |
|
次に交流検討をします。 |
− |
E |
ベースに加わる信号電圧vi1は、 |
mVP−P |
F |
エミッタ信号電流ieは、 (DとEから、) |
mAP−P |
G |
Q1のコレクタ信号電流ic1は、 |
mAP−P |
H |
Q1の負荷抵抗RL1の両端信号電圧vrl1は、 |
VP−P |
I |
出力端子の信号電圧vo1は、 |
VP−P |
J |
Q2のコレクタ信号電流ic2は、 |
mAP−P |
K |
Q1の負荷抵抗RL2の両端信号電圧vrl2は、 (但し、電圧の矢印は下向きです) |
VP−P |
L |
出力端子の信号電圧vo2は、 (矢印の向きに注意して、) |
VP−P |
M |
ベース信号電流ib1、ib2は、 (hFEが100だから、) |
μAP−P |
番号 |
質問 |
値 |
|
まず、Q1のエミッタのインピーダンスを検討します。 |
− |
@ |
Q2のベースからアースを見たインピーダンスは、 |
0Ω |
A |
Q2のエミッタからベース(上)を見たインピーダンスは、 |
26Ω |
B |
REの上側からマイナス電源VEEを見たインピーダンスは、 |
5kΩ |
C |
Q1のエミッタから下を見たインピーダンスは、 (AとBが並列に見えて、) |
26Ω |
D |
Q1のreの付け根(ベースの裏側)から右を見たインピーダンスは、 |
52Ω |
|
次に交流検討をします。 |
− |
E |
ベースに加わる信号電圧vi1は、 |
52mVP−P |
F |
エミッタ信号電流ieは、 (DとEから、) |
1mAP−P |
G |
Q1のコレクタ信号電流ic1は、 |
1mAP−P |
H |
Q1の負荷抵抗RL1の両端信号電圧vrl1は、 |
5VP−P |
I |
出力端子の信号電圧vo1は、 |
−5VP−P |
J |
Q2のコレクタ信号電流ic2は、 |
1mAP−P |
K |
Q2の負荷抵抗RL2の両端信号電圧vrl2は、 (但し、電圧の矢印は下向きです) |
5VP−P |
L |
出力端子の信号電圧vo2は、 (矢印の向きに注意して、) |
5VP−P |
M |
ベース信号電流ib1、ib2は、 (hFEが100だから、) |
10μAP−P |
このように、Q1のベースに信号を加えるだけで、Q1とQ2両方のエミッタに信号電流が流れ、両方の出力端子に信号が出力されます。
差動増幅回路では、下図に灰色矢印で示すように信号電流が流れます。左側からQ1のベースに流れ込んだ信号電流は、hFE倍に増幅されて、Q1のエミッタ信号電流になり、Q2に向かって右向きの、そして上向きに登ってゆきます。このようにして流れたQ2のエミッタ電流のhFE分の1が、Q2のベース信号電流となり、右へ流れ出てゆきます。
ベース信号電流に注目すると、上図に灰色細矢印で示すように、Q1のベースから入ってエミッタを通り、Q2のベースから流れ出します。また、コレクタやエミッタ信号電流は、上図に灰色太矢印で示すように、U字型に流れます。
下図に、差動増幅回路に信号電流が流れるイメージを示します。
信号電流は「正」「負」を繰り返す交流ですから、回路は上図(a)の状態と、上図(b)の状態を交互に繰り返して、回路内には電流が行き来します。
この図で分かるように、左右のトランジスタのエミッタやコレクタには同じ電流が流れますから、出力端子をどちらのトランジスタに設けても、同じ電圧の(位相は逆)の出力が得られます。
下図の差動増幅回路を直流検討し、出力直流電圧VOOを求め、インピーダンス検討、交流検討して、信号出力電圧voを求めてください。
番号 |
質問 |
値 |
|
直流について考えます。 |
|
@ |
電流が流れているトランジスタのVBEは、 |
V |
A |
エミッタ抵抗の両端電圧VREは、 |
V |
B |
エミッタ抵抗の電流IREは、 |
mA |
C |
Q1とQ2のエミッタバイアス電流、IEE1とIEE2は、 |
mA |
D |
Q1とQ2のエミッタ等価インピーダンスは、 |
Ω |
E |
Q1とQ2のコレクタバイアス電流、ICC1とICC2は、 |
mA |
F |
Q2の付加抵抗の両端電圧VRL2は、 |
V |
G |
出力直流(バイアス)電圧VOOは、 |
V |
番号 |
質問 |
値 |
|
直流について考えます。 |
|
@ |
電流が流れているトランジスタのVBEは、 |
0.7V |
A |
エミッタ抵抗の両端電圧VREは、 |
4V |
B |
エミッタ抵抗の電流IREは、 |
4mA |
C |
Q1とQ2のエミッタバイアス電流、IEE1とIEE2は、 |
2mA |
D |
Q1とQ2のエミッタ等価インピーダンスは、 |
13Ω |
E |
Q1とQ2のコレクタバイアス電流、ICC1とICC2は、 |
2mA |
F |
Q2の付加抵抗の両端電圧VRL2は、 |
2V |
G |
出力直流(バイアス)電圧VOOは、 |
2.7V |
番号 |
質問 |
値 |
|
Q1のエミッタインピーダンスを検討します。 |
|
@ |
Q2のベースからアースを見たインピーダンスは、 |
Ω |
A |
Q2のエミッタからアースを見たインピーダンスは、 |
Ω |
B |
エミッタ抵抗REからマイナス電源を見たインピーダンスは、 |
kΩ |
C |
Q1のエミッタから右側を見たインピーダンスは、 (AとBが並列に見えて) |
Ω |
D |
Q1のreの付け根(ベースの裏側)から右を見たインピーダンスは、 |
Ω |
|
回路を交流検討します。 |
|
E |
Q1のベースに加わる信号電圧は、 |
mVP−P |
F |
Q1のエミッタ信号電流ie1は、 (エミッタのインピーダンスはDであったから、) |
mAP−P |
G |
Q2のコレクタ信号電流は、 |
mAP−P |
H |
Q2の負荷抵抗RL2の両端電圧は、 |
VP−P |
I |
信号出力電圧vo2は、 |
VP−P |
番号 |
質問 |
値 |
|
Q1のエミッタインピーダンスを検討します。 |
|
@ |
Q2のベースからアースを見たインピーダンスは、 |
0Ω |
A |
Q2のエミッタからアースを見たインピーダンスは、 |
13Ω |
B |
エミッタ抵抗REからマイナス電源を見たインピーダンスは、 |
1kΩ |
C |
Q1のエミッタから右側を見たインピーダンスは、 (AとBが並列に見えて) |
13Ω |
D |
Q1のreの付け根(ベースの裏側)から右を見たインピーダンスは、 |
26Ω |
|
回路を交流検討します。 |
|
E |
Q1のベースに加わる信号電圧は、 |
26mVP−P |
F |
Q1のエミッタ信号電流ie1は、 (エミッタのインピーダンスはDであったから、) |
1mAP−P |
G |
Q2のコレクタ信号電流は、 |
1mAP−P |
H |
Q2の負荷抵抗RL2の両端電圧は、 |
1VP−P |
I |
信号出力電圧vo2は、 |
1VP−P |
下図(a)のように、差動増幅回路は左右のベースを同時に入力に使用できます。左のベースの電圧を上げると出力電圧が上がり、右のベースの電圧を上げると出力電圧が下がります。このため、左のベースを+入力、右のベースを−入力と呼びます。
上図(b)のように+入力と−入力の間に加える入力を「差動入力」、+入力と−入力を同時に上下させるような入力を「同相入力」と呼びます。差動増幅回路は、差動入力だけを増幅して出力します。
差動増幅回路は安定しており増幅率も大きいですが、出力インピーダンスが高いので、下図に示すように、出力にエミッタフォロアを追加して使用します。
上図の回路を下表に書き込みながら直流検討してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
Q2のVBEは、 |
V |
A |
エミッタ抵抗の両端電圧VREは、 |
V |
B |
エミッタ抵抗に流れる電流IREは、 |
mA |
C |
Q1とQ2のエミッタバイアス電流IEE1、IEE2は、 |
mA |
D |
Q1とQ2のエミッタ等価インピーダンスre1、re2は、 |
Ω |
E |
Q1とQ2のコレクタバイアス電流ICC1、ICC2は、 |
mA |
F |
Q1とQ2のベースバイアス電流IBB1、IBB2は、 (hFEが100だから、) |
μA |
G |
Q2の負荷抵抗RL2の両端電圧は、 |
V |
H |
Q3のVBEは、 |
V |
I |
Q3のエミッタ抵抗の両端電圧VRE3は、 |
V |
J |
Q3のエミッタバイアス電流IEE3は、 |
mA |
K |
Q3のエミッタ等価インピーダンスre3は、 |
Ω |
L |
Q3のベースバイアス電流IBB3は、 |
μA |
|
前段のコレクタバイアス電流はICC2は後段のベースバイアス電流IBB3の何倍、 (Q3のhFEばらつきの影響を避けるため、20倍程度欲しい) |
倍 |
M |
出力バイアス電圧VOOは、 |
V |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
Q2のVBEは、 |
0.7V |
A |
エミッタ抵抗の両端電圧VREは、 |
10V |
B |
エミッタ抵抗に流れる電流IREは、 |
2mA |
C |
Q1とQ2のエミッタバイアス電流IEE1、IEE2は、 |
1mA |
D |
Q1とQ2のエミッタ等価インピーダンスre1、re2は、 |
26Ω |
E |
Q1とQ2のコレクタバイアス電流ICC1、ICC2は、 |
1mA |
F |
Q1とQ2のベースバイアス電流IBB1、IBB2は、 (hFEが100だから、) |
10μA |
G |
Q2の負荷抵抗RL2の両端電圧は、 |
4.7V |
H |
Q3のVBEは、 |
0.7V |
I |
Q3のエミッタ抵抗の両端電圧VRE3は、 |
4V |
J |
Q3のエミッタバイアス電流IEE3は、 |
1mA |
K |
Q3のエミッタ等価インピーダンスre3は、 |
26Ω |
L |
Q3のベースバイアス電流IBB3は、 |
10μA |
|
前段のコレクタバイアス電流はICC2は後段のベースバイアス電流IBB3の何倍、 (Q3のhFEばらつきの影響を避けるため、20倍程度欲しい) |
100倍 |
M |
出力バイアス電圧VOOは、 |
6.3V |
下図を参考に下表に書き込みながら下図の回路を交流検討して、電圧増幅率と出力インピーダンスを求めてください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
Q1のベースとQ2のベース間の信号電圧vb12は、 |
μVP−P |
A |
Q1とQ2のエミッタ側インピーダンスの合計は、 |
Ω |
B |
Q1とQ2のエミッタ信号電流ie12は、 |
μAP−P |
C |
Q1とQ2のコレクタ信号電流ic12は、 (方向は互いに異なるが、) |
μAP−P |
D |
RE3の下側から+電源を見たインピーダンスは、 |
kΩ |
E |
Q3のベースの裏側から、+電源を見たインピーダンスは、 |
Ω |
F |
Q3のベースから+電源を見たインピーダンスは、 (hFEが100だから、) |
kΩ |
G |
Q2のコレクタから+電源を見たインピーダンスは、 (RL2とFが並列に見えて、) |
kΩ |
H |
Q2の負荷抵抗RL2の両端信号電圧は、 (CとGから、) |
mVP−P |
I |
Q3のエミッタ信号電圧ie3は、 |
μAP−P |
J |
RE3の両端信号電圧は、 |
mVP−P |
|
電圧増幅率Avは、 (AとJから、) |
倍 |
|
出力インピーダンスは、 ((RL2/hFE3+26Ω)//1kΩで、) |
Ω |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
Q1のベースとQ2のベース間の信号電圧vb12は、 |
52μVP−P |
A |
Q1とQ2のエミッタ側インピーダンスの合計は、 |
52Ω |
B |
Q1とQ2のエミッタ信号電流ie12は、 |
1μAP−P |
C |
Q1とQ2のコレクタ信号電流ic12は、 (方向は互いに異なるが、) |
1μAP−P |
D |
RE3の下側から+電源を見たインピーダンスは、 |
1kΩ |
E |
Q3のベースの裏側から、+電源を見たインピーダンスは、 |
1026Ω |
F |
Q3のベースから+電源を見たインピーダンスは、 (hFEが100だから、) |
102.6kΩ |
G |
Q2のコレクタから+電源を見たインピーダンスは、 (RL2とFが並列に見えて、) |
4.5kΩ |
H |
Q2の負荷抵抗RL2の両端信号電圧は、 (CとGから、) |
4.5mVP−P |
I |
Q3のエミッタ信号電圧ie3は、 |
4.4μAP−P |
J |
RE3の両端信号電圧は、 |
4.4mVP−P |
|
電圧増幅率Avは、 (AとJから、) |
85倍 |
|
出力インピーダンスは、 ((RL2/hFE3+26)//1kΩで、) |
68Ω |
差動増幅回路に能動負荷を応用する場合、下図のように、エミッタ側とコレクタ側に2つのカレントミラーを使用します。これによって同相入力電圧の影響が一層少なくなり、また、大きな増幅率が得られます。
Q1、Q2が差動増幅回路、Q5、Q6が差動増幅回路のエミッタ電流を一定に保つカレントミラー、Q3、Q4が差動増幅回路のコレクタ電流を等しく保つカレントミラーです。
上図を参考に下表に書き込んで能動負荷を利用した差動増幅回路を直流検討してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
Q6のVBEは、 |
V |
A |
負荷抵抗RL6の両端電圧は、 |
V |
B |
Q6のコレクタバイアス電流ICC6は、 |
mA |
C |
Q5のコレクタバイアス電流ICC5は、 (Q5、Q6はカレントミラーだから、) |
mA |
D |
Q1とQ2のエミッタ電流IEE1とIEE2は、 |
mA |
E |
Q1とQ2のエミッタ等価インピーダンスre1とre2は、 |
Ω |
F |
Q1とQ2のコレクタバイアス電流ICC1とICC2は、 |
mA |
G |
Q1とQ2のベースバイアス電流IBB1とIBB2は、 |
μA |
H |
Q3のコレクタ電流ICC3は、 |
mA |
I |
Q4のコレクタ電流は、 (Q3、Q4はカレントミラーだから、) |
mA |
J |
出力端子へ向かうバイアス電流IOOは、 (FとIから、) |
mA |
K |
RLに流れるバイアス電流IRLは、 |
mA |
L |
RLの両端電圧VRLは、 |
V |
M |
出力バイアス電圧VOOは、 |
V |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
Q6のVBEは、 |
0.7V |
A |
負荷抵抗RL6の両端電圧は、 |
10V |
B |
Q6のコレクタバイアス電流ICC6は、 |
2mA |
C |
Q5のコレクタバイアス電流ICC5は、 (Q5、Q6はカレントミラーだから、) |
2mA |
D |
Q1とQ2のエミッタ電流IEE1とIEE2は、 |
1mA |
E |
Q1とQ2のエミッタ等価インピーダンスre1とre2は、 |
26Ω |
F |
Q1とQ2のコレクタバイアス電流ICC1とICC2は、 |
1mA |
G |
Q1とQ2のベースバイアス電流IBB1とIBB2は、 |
10μA |
H |
Q3のコレクタ電流ICC3は、 |
1mA |
I |
Q4のコレクタ電流は、 (Q3、Q4はカレントミラーだから、) |
1mA |
J |
出力端子へ向かうバイアス電流IOOは、 (FとIから、) |
0mA |
K |
RLに流れるバイアス電流IRLは、 |
0mA |
L |
RLの両端電圧VRLは、 |
0V |
M |
出力バイアス電圧VOOは、 |
5V |
このように回路の動作は上図に電池で示す同相入力電圧VCの影響を受けません。
下図を参考に下表に記入しながら、回路を交流検討して増幅率を求めて下さい。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
Q1とQ2のベース間に加わる信号電圧vb12は、 |
μVP−P |
A |
Q1とQ2のエミッタ側インピーダンスの合計は、 |
Ω |
B |
Q1とQ2のエミッタ信号電流ie12は、 |
μAP−P |
C |
Q1とQ2のコレクタ信号電流はic1、ic2は、 (それぞれ向きは違うが、) |
μAP−P |
D |
Q1とQ2のベース信号電流ib1、ib2は、 (hFEを100とすれば、) |
nAP−P |
E |
Q3のコレクタ信号電流ic3は、 |
μAP−P |
F |
Q4のコレクタ信号電流ic4は、 (Q3、Q4はカレントミラーだから、) |
μAP−P |
G |
出力端子へ向かう信号電流ioは、 |
μAP−P |
H |
負荷抵抗RLに流れる信号電流irlは、 |
μAP−P |
I |
負荷抵抗RLの両端信号電圧vrlは、 |
mVP−P |
J |
出力信号電圧voは、 |
mVP−P |
K |
差動電圧増幅率は、 (@とJから、) |
倍 |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
Q1とQ2のベース間に加わる信号電圧vb12は、 |
52μVP−P |
A |
Q1とQ2のエミッタ側インピーダンスの合計は、 |
52Ω |
B |
Q1とQ2のエミッタ信号電流ie12は、 |
1μAP−P |
C |
Q1とQ2のコレクタ信号電流はic1、ic2は、 (それぞれ向きは違うが、) |
1μAP−P |
D |
Q1とQ2のベース信号電流ib1、ib2は、 (hFEを100とすれば、) |
10nAP−P |
E |
Q3のコレクタ信号電流ic3は、 |
1μAP−P |
F |
Q4のコレクタ信号電流ic4は、 (Q3、Q4はカレントミラーだから、) |
1μAP−P |
G |
出力端子へ向かう信号電流ioは、 |
2μAP−P |
H |
負荷抵抗RLに流れる信号電流irlは、 |
2μAP−P |
I |
負荷抵抗RLの両端信号電圧vrlは、 |
20mVP−P |
J |
出力信号電圧voは、 |
−20mVP−P |
K |
差動電圧増幅率は、 (@とJから、) |
380倍 |
下図は(a)は、NPNトランジスタの動作時の模式図です。エミッタベース間は電流が流れる向きに電圧が加えられています(順バイアス)が、ベースコレクタ間は電流の流れない向きに電圧が加えられています(逆バイアス)。このため、ベースとエミッタの間には下図(a)に灰色で示す、絶縁性の空乏層が出来ています。
つまり、上図(a)に点線で囲って示すように、コレクタとベースが絶縁体で隔てられている訳ですから、コンデンサとしても機能します。つまり、上図(b)に示すように、コレクタとベースの間には、容量が生じ、トランジスタの性能(素早い動作)に大きな影響を与えます。この容量を、コレクタ出力容量(Cob)と呼びます。
トランジスタには3本の端子があり、何れか1本を入力、その他の1本を出力に使うと、入力でも出力でも無い端子が1つ残ります。この残った一本の端子の名称を使って、トランジスタ回路に名前を付け「接地方式」と呼んでいます。
例えば下図(a)のように、ベースを入力に、コレクタを出力に使うと、エミッタが残るので、この使い方(接地方式)は「エミッタ接地」と呼びます。また、下図(b)のように、ベースを入力に、エミッタを出力に使うと、コレクタが残るので、この使い方(接地方式)は「コレクタ接地(別名エミッタフォロア)」と呼びます。
コレクタ「接地」とは呼びますが、コレクタが「アース」に接続されている訳ではありません。あくまでも「信号を加えていない」という気持で「接地」と呼んでいるだけです。ですからコレクタ「共通」と呼ぶ人もいます。
英語では「common-emitter amplifier」で要は「common」を「接地」と訳すか「共通」と訳すかという問題です。
下図に3つの接地方式の略図を示します。
上図(a)のエミッタ接地は、僅かに入力電圧を上げると出力電圧が低下し、大きな電圧増幅率が得られ、その上、入力電流はhFE倍に増大して出力に流れます。つまり、電圧も電流も増幅できます。
上図(b)のエミッタ接地は、入力電圧を1V上げると、出力電圧も1V上がります。つまり電圧は増幅されません。しかし、入力電流はhFE倍に増大して出力に流れます。つまり、電流だけが増幅できます。
上図(c)のベース接地は、僅かに入力電圧を下げると出力電圧が低下し、大きな電圧増幅率が得られます。しかし、入力に流れた電流がそのまま出力に流れ、電流は増幅されません。
これらをまとめると、下表のようになります。
接地方式 |
エミッタ接地 |
コレクタ接地 |
ベース接地 |
電圧増幅率 |
大きい |
1倍 |
大きい |
電流増幅率 |
大きい |
大きい |
1倍 |
電力増幅率 電圧増幅×電流増幅 |
大きい |
並 |
並 |
下図に各回路の入出力インピーダンスを示します。
各回路の入出力インピーダンスは、下表のようになります。
接地方式 |
エミッタ接地 |
コレクタ接地 |
ベース接地 |
入力インピーダンス |
並 |
高い |
低い |
出力インピーダンス |
高い |
低い |
高い |
コレクタ出力容量Cobの影響は、下図のように回路方式によって異なります。
上図(a)のエミッタ接地では入力電圧を少し上げると、出力が大きく低下し、Cobを通じて(上図に点線で示す)大きな電流が流れ、上がろうとする入力電圧を押し下げます。そのため、あたかも大容量のCobが存在するような大きな影響が生じます。このようにエミッタ接地でCobが大きく見える作用を「ミラー効果」と呼びます。エミッタ接地はミラー効果が生じるため、高い周波数の増幅が苦手です。
上図(b)のコレクタ接地では入力電圧を上げると、Cobに電流が流れます。しかしCobの一方は電圧の変化しない電源に接続されているので、ミラー効果は生じません。このように、コレクタ接地ではCobが入力に小さな影響を与えるため、多少高い周波数でも増幅できます。
上図(c)のベース接地では、Cobが入力に接続されていません。このためCobは入力に影響を与えず、ベース接地は高い周波数の増幅が得意です。
これらをまとめると下表のようになります。
接地方式 |
エミッタ接地 |
コレクタ接地 |
ベース接地 |
使用できる周波数 |
低い |
中程度 |
高い |
これまでの説明をまとめると、下表のようになります。
接地方式 |
エミッタ接地 |
コレクタ接地 |
ベース接地 |
電圧増幅率 |
大きい |
1倍 |
大きい |
電流増幅率 |
大きい |
大きい |
1倍 |
電力増幅率 |
大きい |
並 |
並 |
入力インピーダンス |
並 |
高い |
低い |
出力インピーダンス |
高い |
低い |
高い |
使用できる周波数 |
低い |
中程度 |
高い |
別名 |
|
エミッタフォロア |
|
カスコード増幅器は、より高い周波数を増幅するために利用される回路です。
下図(a)はありふれたエミッタ接地の増幅器です。ミラー効果によりCobが強く影響し、高い周波数を増幅することができません。
上図(b)はカスコード増幅器です。エミッタ接地回路のコレクタ側に、もう一つトランジスタが追加されています。
上側のトランジスタのベースは6Vに接続されているため、エミッタの電圧は5.3Vで一定です。このため、下側のトランジスタのコレクタ電圧が一定となり、コレクタ接地回路として素早く動作します。また、上側のトランジスタはベース接地回路であるため、極めて素早く動作します。
その結果カスコード増幅器は部品が増加しますが、素早く動作し、高い周波数も増幅する事ができます。
下図のカスコード増幅回路を下表に書き込みながら直流検討してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
分圧によって得られるQ1のベースバイアス電圧VBB1は、 |
V |
A |
Q1のVBEは、 |
V |
B |
Q1のエミッタ抵抗の両端電圧VRE1は、 |
V |
C |
Q1のエミッタバイアス電流IEE1は、 |
mA |
D |
Q1のコレクタバイアス電流ICC1(Q2のエミッタバイアス電流IEE2)は、 |
mA |
E |
Q1のベースバイアス電流IBB1は、 |
μA |
F |
Q2のコレクタバイアス電流ICC2は、 |
mA |
G |
負荷抵抗の両端電圧VRLは、 |
V |
H |
Q2のベースバイアス電流IBB2は、 |
μA |
I |
分圧によって得られるQ2のベースバイアス電圧VBB2は、 |
V |
J |
Q2のVBEは、 |
V |
K |
Q1のVCEは、 |
V |
L |
出力バイアス電圧VOOは、 |
V |
M |
Q2のVCEは、 |
V |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
分圧によって得られるQ1のベースバイアス電圧VBB1は、 |
1.7V |
A |
Q1のVBEは、 |
0.7V |
B |
Q1のエミッタ抵抗の両端電圧VRE1は、 |
1V |
C |
Q1のエミッタバイアス電流IEE1は、 |
1mA |
D |
Q1のコレクタバイアス電流ICC1(Q2のエミッタバイアス電流IEE2)は、 |
1mA |
E |
Q1のベースバイアス電流IBB1は、 |
10μA |
F |
Q2のコレクタバイアス電流ICC2は、 |
1mA |
G |
負荷抵抗の両端電圧VRLは、 |
3V |
H |
Q2のベースバイアス電流IBB2は、 |
10μA |
I |
分圧によって得られるQ2のベースバイアス電圧VBB2は、 |
6V |
J |
Q2のVBEは、 |
0.7V |
K |
Q1のVCEは、 |
5.3V |
L |
出力バイアス電圧VOOは、 |
9V |
M |
Q2のVCEは、 |
3.7V |
正確な電圧を得るならツェーナダイオード等の低電圧部品を使用しますが、VBEと同様に温度で変化する電圧が必要な場合があります。このような場合は、ダイオードを直列にしたり、ここで説明するVBEマルチプライヤを使用します。
下図(a)のように、ダイオードを直列にして電流を流すことで、VBE3個分(約2.1V)の電圧を得ることができます。ただしこの方法では「2.5個分」といった半端な電圧は得ることができません。
上図(b)は、トランジスタを使って(a)と似た動作を行なう回路です。抵抗値の設定次第で、VBE2.5個分、等の半端な倍率も使用できます。下表に書き込んで回路の状態を確認して下さい。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
電流の流れているトランジスタのVBEは、 |
V |
A |
下側の抵抗に流れる電流IRBEは、 |
mA |
B |
IBを無視すれば、上側の抵抗に流れる電流IRCBは、 (キルヒ則より) |
mA |
C |
上側の抵抗の両端電圧VCBは、 |
V |
D |
全体の電圧VCEは、 |
V |
E |
コレクタ電流ICは、 (全体の電流が3mAだから、Bとキルヒ則で) |
mA |
F |
ベース電流IBは、 (hFEが100だから) |
μA |
G |
ベース電流を無視しなければ、IRCBは、 |
mA |
H |
ベース電流を無視しなければ、VCBは、 |
V |
I |
ベース電流を無視しなければ、全体の電圧VCEは、 |
V |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
電流の流れているトランジスタのVBEは、 |
0.7V |
A |
下側の抵抗に流れる電流IRBEは、 |
1mA |
B |
IBを無視すれば、上側の抵抗に流れる電流IRCBは、 (キルヒ則より) |
1mA |
C |
上側の抵抗の両端電圧VCBは、 |
1.4V |
D |
全体の電圧VCEは、 |
2.1V |
E |
コレクタ電流ICは、 (全体の電流が3mAだから、Bとキルヒ則で) |
2mA |
F |
ベース電流IBは、 (hFEが100だから) |
20μA |
G |
ベース電流を無視しなければ、IRCBは、 |
1.02mA |
H |
ベース電流を無視しなければ、VCBは、 |
1.428V |
I |
ベース電流を無視しなければ、全体の電圧VCEは、 |
2.128V |
このように、IBを無視すれば、下の抵抗と上の抵抗で全体の電圧が決まり、
全体の電圧(VCE) ≒ 0.7 + 0.7 × RCB / RBE
=0.7+0.7*R1/R2
と計算することができます。
上図(b)の回路は、VBEが0.7Vなければ動作しません。このために、IRBEは(700Ωだから)1mA必要です。コレクタにも多少の電流を流す事を考えると、回路全体には最低2mA程度(IRBEの2倍くらい)の電流を流す必要があります。
また上表F〜Iのように、IBが大きくなると動作がくるいます。ですから、IBはIRBEの10分の1以下にします。このため、(hFEを100とすれば)ICはIRBEの10倍以下にする必要があります。
つまり上図の回路は、回路全体にIRBEの2倍〜10倍程度の電流を流して使用します。
下図の回路の電圧や電流を、下表に書き込みながら検討してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
電流が流れているトランジスタのVBEは、 |
V |
A |
ベースエミッタ間抵抗に流れる電流IRBEは、 |
mA |
B |
ベース電流を無視すれば、コレクタベース間抵抗に流れる電流IRCBは、 |
mA |
C |
コレクタベース間電圧VCBは、 |
V |
D |
コレクタエミッタ間電圧、VCEは、 |
V |
E |
負荷抵抗の両端電圧VRLは、 |
V |
F |
負荷抵抗に流れる電流IRLは、 |
mA |
G |
コレクタ電流ICは、 (BとFよりキルヒ則で、) |
mA |
H |
ベース電流IBは、 (hFEが100だから、) |
μA |
I |
回路全体の電流IRLは、IRBEの何倍、 |
倍 |
J |
IRBEの大きさは適切か、 (2〜10倍なら適切と考えて、) |
不適切・適切 |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
電流が流れているトランジスタのVBEは、 |
0.7V |
A |
ベースエミッタ間抵抗に流れる電流IRBEは、 |
1mA |
B |
ベース電流を無視すれば、コレクタベース間抵抗に流れる電流IRCBは、 |
1mA |
C |
コレクタベース間電圧VCBは、 |
2.3V |
D |
コレクタエミッタ間電圧、VCEは、 |
3V |
E |
負荷抵抗の両端電圧VRLは、 |
12V |
F |
負荷抵抗に流れる電流IRLは、 |
4mA |
G |
コレクタ電流ICは、 (BとFよりキルヒ則で、) |
3mA |
H |
ベース電流IBは、 (hFEが100だから、) |
30μA |
I |
回路全体の電流IRLは、IRBEの何倍、 |
4倍 |
J |
IRBEの大きさは適切か、 (2〜10倍なら適切と考えて、) |
不適切・適切 |
小信号回路では、直流電圧(バイアス電圧)に比べて、交流電圧(信号電圧)が十分に小さいと考えて、直流と交流を分けて設計することができました。
しかし、スピーカーを鳴らす、モーターを回す、等の大きな電力を駆動する回路では、電源電圧に近い大きな振幅の信号電圧を扱います。このような回路を電力増幅回路と呼びます。
電力増幅回路では下表のように、小信号回路とは違う方法で検討し、電力や熱を検討する必要があります。
|
小信号回路 |
電力増幅回路 |
検討の方法 |
直流と交流を別々に検討する。 |
様々な入力(出力)電力で検討する。 たとえば、0V出力時、最大電圧出力時、中間の電圧出力時等 |
電力 |
回路の消費電力は少なく、各部品の消費電力を検討する必要は少ない。 |
回路の消費電力が大きく、各部品の消費電力を検討する必要がある。 |
熱 |
熱の発生は僅かで、放熱を考える必要は少ない。 |
熱が発生するため、素子の放熱を考える必要がある。 |
トランジスタを用いた電力増幅回路では、出力電流の大きなエミッタフォロアが利用されます。下図(a)はNPNトランジスタを使ったエミッタフォロアです。+電源で動作し、入力電流をhFE倍して吐き出すことができます。出力電圧は入力電圧より0.7V低くなりますが、入力に従って変化します。また、下図(b)はPNPトランジスタを使ったエミッタフォロアです。−電源で動作し、入力電流をhFE倍して吸い込むことができます。出力電圧は入力電圧より0.7V高くなりますが、入力に従って変化します。負荷に流す電流の向きが一方向で良い場合は、このような回路が利用できます。
上図(a)と(b)の回路を一つにすると、同図(c)に示す、電流を吐き出すことも、吸い込むこともできる、コンプリメンタリ・エミッタフォロアになります。
上図(c)の回路では、上側のトランジスタは入力が0.7Vより低いときは出力電流が流れません。また、下側のトランジスタは入力が−0.7Vより高いときは出力電流が流れません。このため、入力が−0.7V〜0.7Vの間は回路が動作せず、上図(c)のグラフに点線で囲む部分で波形が歪む欠点があります。この歪は、上のトランジスタから、下のトランジスタに動作が引き継がれるときに発生するので「クロスオーバー歪」と呼ばれます。
下図のエミッタフォロア回路に、+10.7Vを入力した場合と、−5.7Vを入力した場合の各部の電圧や電流を、下表に書き込みながら検討してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
入力に10.7Vを加えた場合を考えます。 |
− |
A |
Q1のベースエミッタ間電圧VBE1は、 (入力電圧がプラスの場合、Q1には電流が流れているから、) |
V |
B |
出力電圧VOは、 |
V |
C |
負荷抵抗RLに流れる電流IRLは、 |
A |
D |
Q1のエミッタ電流IE1は、 |
A |
E |
Q1のベース電流IB1は、 |
mA |
F |
Q2のエミッタ電流IE2は、 |
A |
G |
Q2のベース電流IB2は、 |
mA |
H |
Q2のベースエミッタ間電圧VBE2は、 |
V |
I |
Q2はONかOFFか、(選んで下さい) (VBEが負の電圧ならベース電流は流れないから、) |
ON・OFF |
J |
入力に−5.7Vを加えた場合を考えます。 |
− |
K |
Q2のベースエミッタ間電圧VBE2は、 (入力電圧がマイナスの場合、Q2には電流が流れているから、) |
V |
L |
出力電圧VOは、 |
V |
M |
負荷抵抗RLに流れる電流IRLは、 |
A |
N |
Q2のエミッタ電流IE2は、 |
A |
O |
Q2のベース電流IB2は、 |
mA |
P |
Q1のエミッタ電流IE1は、 |
A |
Q |
Q1のベース電流IB1は、 |
mA |
R |
Q1のベースエミッタ間電圧VBE1は、 |
V |
S |
Q1はONかOFFか、(選んで下さい) (VBEが負の電圧ならベース電流は流れないから、) |
ON・OFF |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
入力に10.7Vを加えた場合を考えます。 |
− |
A |
Q1のベースエミッタ間電圧VBE1は、 (入力電圧がプラスの場合、Q1には電流が流れているから、) |
0.7V |
B |
出力電圧VOは、 |
10V |
C |
負荷抵抗RLに流れる電流IRLは、 |
2A |
D |
Q1のエミッタ電流IE1は、 |
2A |
E |
Q1のベース電流IB1は、 |
20mA |
F |
Q2のエミッタ電流IE2は、 |
0A |
G |
Q2のベース電流IB2は、 |
0mA |
H |
Q2のベースエミッタ間電圧VBE2は、 |
−0.7V |
I |
Q2はONかOFFか、(選んで下さい) (VBEが負の電圧ならベース電流は流れないから、) |
ON・OFF |
J |
入力に−5.7Vを加えた場合を考えます。 |
− |
K |
Q2のベースエミッタ間電圧VBE2は、 (入力電圧がマイナスの場合、Q2には電流が流れているから、) |
0.7V |
L |
出力電圧VOは、 |
−5V |
M |
負荷抵抗RLに流れる電流IRLは、 |
1A |
N |
Q2のエミッタ電流IE2は、 |
1A |
O |
Q2のベース電流IB2は、 |
10mA |
P |
Q1のエミッタ電流IE1は、 |
0A |
Q |
Q1のベース電流IB1は、 |
0mA |
R |
Q1のベースエミッタ間電圧VBE1は、 |
−0.7V |
S |
Q1はONかOFFか、(選んで下さい) (VBEが負の電圧ならベース電流は流れないから、) |
ON・OFF |
これまでに説明した下図(a)の回路は、クロスオーバー歪みが生じました。そこで、下図(b)のようにダイオードを追加して、ベース電圧を0.7V高めることで(ベースにバイアス電圧を加えることで)、クロスオーバー歪を無くすことができます。
ところが、上図(b)の回路は「熱暴走(ヒートラン)」という現象で破損します。まず、その仕組みを説明します。ここでは、入力電圧も出力電圧も0V場合を考えます。
トランジスタにはダイオードより大きな電流が流れるため、発熱も大きくなります。ところで、VBEやVFは1℃で2mV低下する性質があります。このためたとえば、ダイオードが25℃のままで、トランジスタが75℃に発熱したとすると、VFは0.7Vのまま、VBEは0.6Vに低下します。このためベース電流が増加し、エミッタ電流はそのhFE倍で大きく増加します。その結果トランジスタはさらに発熱し、VBEは一層低下します。(加えて、hFEが温度で大きくなるという問題もあります)
このようにして、発熱→VBE低下→電流増加→更なる発熱、という過程を繰り返して、電流の増加、あるいは過熱でトランジスタが破壊します。この現象を「熱暴走」と呼びます。
次に熱暴走の対策を説明します。主な対策は2つあります。1つ目は、トランジスタが発熱すれば、ダイオードの温度も上がるように(VBEが低下すればVFが低下するように)する事です。そのために、トランジスタにダイオードを密着(熱結合)します。しかし、半導体チップ(半導体の本体)は金属やプラスチックの(パッケージ)容器で分厚く保護されていますから、パッケージの表面温度は内部の半導体チップよりかなり低くなります。このため、如何にしっかりと熱結合しても、トランジスタのチップと、ダイオードのチップを同じ温度にすることは出来ません。その結果、電流の多いトランジスタの温度はどうしてもダイオードより高くなり、VBEはVFより低くなり、電流はある程度増加します。
そこで、2つ目の対策を行います。2つ目は、既に説明したエミッタ抵抗の挿入です。上図(c)のように、たとえVFとVBEに0.1Vの差が生じても、例えば10Ωのエミッタ抵抗が挿入されていれば電流は10mA増加するだけです。ただし、エミッタ抵抗を大きくすると出力インピーダンスが上がり、大きな電流を出力できなくなりますから、エミッタ抵抗の値は、熱暴走の危険が無い範囲で小さな抵抗値に設定します。
エミッタ抵抗の目安は、ダイオードとトランジスタの熱結合が無いと考えて、消費電力の増加で生じるチップの温度上昇は、ΔT=ΔP×Tθ、温度上昇で生じる消費電力の増加は、ΔP=VCC×ΔT×2mV/RE、よって、エミッタ抵抗の最低値は、RE(MIN)=VCC×Tθ×2mV、程度です。たとえば、VCC10Vで、総熱抵抗5℃/Wの放熱を行えば、RE(MIN) = 10V × 5℃/W × 0.002 = 0.1Ω、この値は「伸るか反るか」という値ですから、その3倍くらいの値で、0.3Ωくらいに設定します。もちろん、熱結合が十分であれば抵抗値は低くできますが、この目安は、hFEの温度による上昇は配慮していませんから、あまり小さくすることはできません。
下図のコンプリメンタリエミッタフォロア回路について、最高電圧の出力時と、無信号時について検討します。
回路の最大出力電圧を10Vとして、10Vを出力している場合の各部の電圧や電流を下表に書き込みながら検討してください。但し、トランジスタの温度が(25℃から約75℃に)上昇して、VBEが0.6Vに低下していると考えてください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
出力電圧は最大値の10Vです。 |
− |
A |
負荷抵抗に流れる電流IRLは、 |
A |
B |
エミッタ抵抗に流れる電流IREは、 |
A |
C |
エミッタ抵抗の両端電圧IREは、 |
V |
D |
ベースエミッタ間電圧VREは、 |
V |
E |
ベース電圧VBは、 |
V |
F |
ベース抵抗の両端電圧VRBは、 |
V |
G |
ベース電流IBは、 (hFEが100だから) |
mA |
H |
ベース抵抗の電流IRBは、 (ベース電流がすべてベース抵抗に流れているとすれば、) |
mA |
I |
ベース抵抗の値は、 |
Ω |
J |
ダイオードには電流が流れていないと考えます。 |
− |
K |
電流の流れていないダイオードの両端電圧は、 |
V |
L |
入力電圧は、 |
V |
M |
コレクタエミッタ間電圧VCEは、 |
V |
N |
トランジスタの消費電力PDは、 |
W |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
出力電圧は最大値の10Vです。 |
− |
A |
負荷抵抗に流れる電流IRLは、 |
1A |
B |
エミッタ抵抗に流れる電流IREは、 |
1A |
C |
エミッタ抵抗の両端電圧IREは、 |
1V |
D |
ベースエミッタ間電圧VREは、 |
0.6V |
E |
ベース電圧VBは、 |
11.6V |
F |
ベース抵抗の両端電圧VRBは、 |
4V |
G |
ベース電流IBは、 (hFEが100だから) |
10mA |
H |
ベース抵抗の電流IRBは、 (ベース電流がすべてベース抵抗に流れているとすれば、) |
10mA |
I |
ベース抵抗の値は、 |
400Ω |
J |
ダイオードには電流が流れていないと考えます。 |
− |
K |
電流の流れていないダイオードの両端電圧は、 |
0V |
L |
入力電圧は、 |
11.6V |
M |
コレクタエミッタ間電圧VCEは、 |
4.6V |
N |
トランジスタの消費電力PDは、 |
4.6W |
回路の無信号時の状態として、0Vを出力している場合の各部の電圧や電流を下表に書き込みながら検討してください。但し、トランジスタの温度が(25℃から約75℃に)上昇して、VBEが0.6Vに低下していると考えてください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
入出力電圧はともに0Vと考えます。 |
− |
A |
負荷抵抗に流れる電流IRLは、 |
A |
B |
ダイオードの順方向電圧VFは、 |
V |
C |
ベース抵抗の両端電圧VRBは、 |
V |
D |
ベース抵抗に流れる電流IRBは、 (@とBから、) |
mA |
E |
ベース電圧VBは、 |
V |
F |
ベースエミッタ間電圧VBEは、 (温度が上昇しているから、) |
V |
G |
エミッタ抵抗の両端電圧VREは、 (@、B、Fから、) |
V |
H |
エミッタ電流IEは、 |
mA |
I |
下側のトランジスタのエミッタ電流IEは、 (AとHから、) |
mA |
J |
ベース電流IBは、 (hFEが100だから、) |
mA |
K |
ダイオードの順電流IFは、 (DとJからキルヒ則で、) |
mA |
L |
VCEは、 |
V |
M |
トランジスタの消費電力PDは、 |
W |
N |
ベース抵抗の消費電力PRBは、 (CとDから、) |
W |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
入出力電圧はともに0Vと考えます。 |
− |
A |
負荷抵抗に流れる電流IRLは、 |
0A |
B |
ダイオードの順方向電圧VFは、 |
0.7V |
C |
ベース抵抗の両端電圧VRBは、 |
14.9V |
D |
ベース抵抗に流れる電流IRBは、 (@とBから、) |
37mA |
E |
ベース電圧VBは、 |
0.7V |
F |
ベースエミッタ間電圧VBEは、 (温度が上昇しているから、) |
0.6V |
G |
エミッタ抵抗の両端電圧VREは、 (@、B、Fから、) |
0.1V |
H |
エミッタ電流IEは、 |
100mA |
I |
下側のトランジスタのエミッタ電流IEは、 (AとHから、) |
100mA |
J |
ベース電流IBは、 (hFEが100だから、) |
1mA |
K |
ダイオードの順電流IFは、 (DとJからキルヒ則で、) |
36mA |
L |
VCEは、 |
15.5V |
M |
トランジスタの消費電力PDは、 |
1.55W |
N |
ベース抵抗の消費電力PRBは、 (CとDから、) |
0.55W |
コンプリメンタリエミッタフォロアで、無信号時に流れるエミッタ(コレクタ)電流を「アイドリング電流」と呼びます。無信号時にはVCEが大きいため、小さなアイドリング電流でも、意外と大きな発熱を生じます。
また、無信号時にはベース抵抗の両端電圧が大きくなり、ベース抵抗の消費電力も0.55Wと大きく、電力用の抵抗を使う必要があることが分かります。
このように電力増幅回路では、発熱する部品が増えるため、各部品の消費電力を計算して回路を検討し、電力に耐える部品を選ぶ必要があります。
下図(a)の回路はエミッタフォロアです。下図の例では、入力電流の100倍の電流を出力することができます。下図(b)はエミッタフォロアを2段接続した回路です。入力電流がQ1で100倍、Q2でさらに100倍となるので、2段で入力電流の10000倍の電流を出力することができます。
このようにエミッタフォロアを2段重ねにすることで、全体でhFE1×hFE2の大きな電流増幅率を得ることができます。
上図(a)の回路の出力電圧は、入力より0.7V低くなり、4.3Vですが、同図(b)の回路では、1.4V低くなり、3.6Vです。このようにエミッタフォロアを重ねると、入力に比べて出力電圧が低くなります。
ところで、下図(a)の2段エミッタフォロア回の2つのトランジスタを1つと考えて、下図(b)のように書き直すことができます。同図(b)の接続方法を「ダーリントン接続」と呼びます。
ダーリントン接続したトランジスタは、VBEが1.4Vと大きくなりますが、hFEは10000(hFE1×hFE2)と非常に大きく、大電流を出力するのに便利です。このため、1つのパッケージに内部でダーリントン接続した2つのトランジスタを内臓した「ダーリントントランジスタ」も販売されています。
さて、上図で説明したダーリントン接続をそのまま使う都、トランジスタが完全にOFFしません。なぜなら、下図(a)のように、コレクタからベースに流れてきたICBOの行き先が無く、ICBOがベースからエミッタに流れ、これがhFE倍されてコレクタに流れるからです。
そこで上図(b)のようにRBEを取り付けてICBOがベースに流れ込まないようにします。これによって、トランジスタは完全にOFFになります。スイッチング回路の場合と同様、ICBOによってRBEの両端に生じる電圧が1mV程度になるようにRBEを選びます。
RBEには、トランジスタを完全にOFFさせる役割のほかにも、トランジスタがOFFする瞬間に、ベースに電子を送り込む(電流をベースから引き抜く)働きもあります。(P型であるベースのホール(穴)を電子で埋めることでOFFさせました)
このため、RBEを取り付けると動作も素早くなり、RBEの値が小さいと一層素早く動作します。このため、素早く動作させたい場合は、上のようにICBOと1mVから計算した値より、さらに小さな抵抗値のRBEが使用されます。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
Q1のエミッタ電圧VE1は、 (Q1のVBEが0.7V、入力電圧が13.4Vだから、) |
V |
A |
出力電圧VOは、 (Q2のVBEが0.7Vだから、) |
V |
B |
Q2のVCEは、 |
V |
C |
Q1のVCEは、 |
V |
D |
電球の仕様より、Q2のエミッタ電流IE2は、 (IRBEは無視して、) |
A |
E |
Q2のベース電流IB2は、 (hFE2が50だから、) |
mA |
F |
RBEに流れる電流IRBEは、 |
mA |
G |
Q1のエミッタ電流IE1は、 (E、Fとキルヒ則から、) |
mA |
H |
Q1のベース電流IB1は、 (hFE1が100だから、) |
mA |
I |
Q2のコレクタ損失PC2は、 |
W |
J |
Q1のコレクタ損失PC1は、 |
mA |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
Q1のエミッタ電圧VE1は、 (Q1のVBEが0.7V、入力電圧が13.4Vだから、) |
12.7V |
A |
出力電圧VOは、 (Q2のVBEが0.7Vだから、) |
12V |
B |
Q2のVCEは、 |
3V |
C |
Q1のVCEは、 |
2.3V |
D |
電球の仕様より、Q2のエミッタ電流IE2は、 (IRBEは無視して、) |
5A |
E |
Q2のベース電流IB2は、 (hFE2が50だから、) |
100mA |
F |
RBEに流れる電流IRBEは、 |
7mA |
G |
Q1のエミッタ電流IE1は、 (E、Fとキルヒ則から、) |
107mA |
H |
Q1のベース電流IB1は、 (hFE1が100だから、) |
1.07mA |
I |
Q2のコレクタ損失PC2は、 |
15W |
J |
Q1のコレクタ損失PC1は、 |
246mW |
このように大電流の流れる電力増幅回路は、大きな発熱(15W等)があります。しかし、この練習で計算した発熱は最大値ではありません。
Q2の発熱が最大になるのは、VCEが電源電圧の半分程度になったときです。今回の例では、Q2のVCEが7.5V程度のとき、PC2(Q2の発熱)が最大になります。
ですからそのような状態(VCEが電源電圧の半分程度)でも計算し、コレクタ損失がトランジスタの許容損失を十分に下回っている事を確認します。また、トランジスタ単体では放熱が無理な場合は、放熱器を取り付けます。
Q1に使うような小形トランジスタ(TO92パッケージ)は1Wの損失でチップ温度が100度上昇しますから、246mWでは、24度上昇し、ケース内温度が50度ならチップは74度になります。(使えるでしょう)
Q2に使うような中型トランジスタ(TO220パッケージ)は1Wの損失でチップ温度が70度上昇しますから、15Wでは、チップは1050℃となり、放熱器を付けなければ確実に壊れます。(チップが150℃になると壊れます)
ヒートシンクの放熱能力は熱抵抗で現します。下図に「抵抗」と「熱抵抗」対応を示します。
対応を表にすると次表のとおりです。
電気抵抗 |
熱抵抗 |
抵抗の上側が45V |
半導体チップが45℃ |
抵抗の下側が25V |
外気温が25℃ |
両端電圧が20V |
温度差が20℃ |
抵抗値Rが5Ω |
熱抵抗θが5℃/W |
流れる電流は4A |
放熱される熱は4W |
ですから、
温度差 = 放熱電力 × 熱抵抗
熱抵抗 = 温度差 ÷ 放熱電力
と計算できます。
たとえば、コレクタ損失が10Wで、熱抵抗が2℃/Wなら、気温に対してチップ温度が5℃高くなります。気温が30℃なら、チップは35℃です。
熱抵抗の単位は[℃/W]で、記号にはθやRTHが良く使われます。
下図は放熱器の無い小形パッケージの例です。チップ(接合面junction)から周囲の空気(air)までの熱抵抗はθjaは100℃/Wです。(このように「aからbまでの熱抵抗」をθabと書きます。)
上図を参考に下表に書き込んでチップの温度を確認してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
チップで発生する熱(電力、損失)はPD、 |
W |
A |
チップから周囲の空気までの熱抵抗θjaは、 |
℃/W |
B |
チップと周囲の空気の温度差は、 (0.4W×100℃/W=40°) |
℃ |
C |
周囲の空気の温度Taは、 |
℃ |
D |
チップの温度Tjは、 (BとCから、) |
℃ |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
チップで発生する熱(電力、損失)はPD、 |
0.4W |
A |
チップから周囲の空気までの熱抵抗θjaは、 |
100℃/W |
B |
チップと周囲の空気の温度差は、 (0.4W×100℃/W=40°) |
40℃ |
C |
周囲の空気の温度Taは、 |
30℃ |
D |
チップの温度Tjは、 (BとCから、) |
70℃ |
データシートに書かれた熱抵抗には、下表のように、θjaやθjcがあります。放熱器を使わず、素子から直接放熱する場合はθjaを使用します。
記号 |
θja |
θjc |
意味 |
チップ(PN接合面:junction)から、周囲の空気airまでの熱抵抗 |
チップ(PN接合面:junction)から、ケースの表面までの熱抵抗 |
使い方 |
素子単体で放熱する場合に利用する |
放熱器を利用して放熱する場合に利用する。 |
逆に、放熱器を使用する場合は、θjcを使用します。下図の例では、2Wが発生するトランジスタを20W/℃の放熱器に取り付けています。
下図を参考に、下表に書き込みながらトランジスタのチップ温度を求めてください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
トランジスタの損失は2Wです。 |
− |
A |
トランジスタのチップから、周囲の空気までの熱抵抗の合計は、 |
℃/W |
B |
損失@と熱抵抗Aから、温度差は、 |
℃ |
C |
周囲の空気の温度は、 |
℃ |
D |
チップは、周囲の空気Cより、温度差Bだけ熱くなるから、 |
℃ |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
トランジスタの損失は2Wです。 |
− |
A |
トランジスタのチップから、周囲の空気までの熱抵抗の合計は、 (5+0.4+20=25.4℃/W) |
25.4℃/W |
B |
損失@と熱抵抗Aから、温度差は、 (25.4×2=50.8℃) |
50.8℃ |
C |
周囲の空気の温度は、 |
30℃ |
D |
チップは、周囲の空気Cより、温度差Bだけ熱くなるから、 30+50.8=80.8℃ |
80.8℃ |
チップの温度は(温度による特性の変化が気にならなくても)100度を超えないようにします。温度が低いと寿命が伸びます(温度が10℃下がると、寿命が倍になる)ので、長持ちさせたい場合は、低い温度で使用します。
3.8Wの損失を生じるトランジスタのチップ温度Tjを80℃に押さえるため、どのような放熱器が必要ですか?但し、周囲温度を40℃、パッケージの熱抵抗を5℃/W、絶縁板の熱抵抗(シリコングリス塗布)を0.4℃/Wとします。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
トランジスタの損失は3.8Wです。 |
− |
A |
チップの温度は80℃に抑えます。 |
− |
B |
周囲温度は50℃です。 |
− |
C |
チップと周囲の温度差は、 |
℃ |
D |
損失@と温度差Cから、総熱抵抗θjaは、 |
℃/W |
E |
放熱器の熱抵抗は、 |
℃/W |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
トランジスタの損失は3.8Wです。 |
− |
A |
チップの温度は80℃に抑えます。 |
− |
B |
周囲温度は50℃です。 |
− |
C |
チップと周囲の温度差は、 |
40℃ |
D |
損失@と温度差Cから、総熱抵抗θjaは、 |
10.5℃/W |
E |
放熱器の熱抵抗は、 総熱抵抗10.5−ケース5−絶縁板0.4℃=放熱器5.1℃/W |
5.1℃/W |
パッケージ(ケース)の熱抵抗θjcが大きいと、放熱器をいくら大きくしても間に合わなくなります。このような場合は、より大きなパッケージ(θjcが小さい)の素子を使用します。
COMSオペアンプの性能が向上し、そのうえ安価になっているので、接合型FET(以下、単に「FET」)を遣った増幅器回路は以前ほど重要ではありません。とはいえ素子の特徴を活かして、ここ一発という場所に使う場合はありますから、仕組みや使い方を説明します。
下図にバイポーラトランジスタとFETの図記号と端子の名前を示します。トランジスタでは、エミッタ、コレクタ、ベースの各端子が、FETでは、ソース、ドレイン、ゲート、に対応します。
トランジスタではベースに電流を流すことで、コレクタからエミッタに電流が流れます。しかし、FETではゲートに電圧を加える(取り除く)ことで、ドレインからソースに電流が流れます。FETではゲートには電流が流れません。
下図(a)にゲートに電圧を加えない場合のFETの模式図を示します。N型半導体を挟むように、P型半導体が配置されており、接合面には空乏層ができています。ゲートとソースの間に電圧を加えないときは、空乏層は極薄いため、P型半導体に挟まれた「チャネル」と呼ばれる部分は幅が広く、ドレインからソースに向かって大きな電流が流れます。
ゲートとソースの間に負の電圧を加えると上図(b)のように空乏層が広がり、チャネルが狭くなります。その結果ドレインからソースに流れる電流は減少します。さらにゲートの負電圧が高くなると、チャネルが無くなり、ドレイン電流が全く流れなくなります。この現象を(空乏層に挟まれて、チャネルが途切れて電流が止まるので)「ピンチ・オフ」(挟んで止まる)と呼びます。
このようにFETはゲートに電圧を加えないとき最大のドレイン電流(IDSSと呼ばれます)が流れ、ゲートに負電圧を加えることで、ドレイン電流が減少します。
下図左側が、ゲートの電圧(ゲートソース間電圧(VGS))とドレイン電流(ID)の関係です。VGSが0Vのとき、最大のID(3mA程度)が流れ、ゲートに負の電圧を加えると(グラフの左へ行く程)IDが減少し、VGSが−1.6V程度になるとピンチオフしています。
上図右側は、様々なゲート電圧VGSでのドレインソース間電圧VDSとドレイン電流IDの関係です。FETにはトランジスタと同様に定電流特性があり、ドレイン電圧VGSとは関係なくVGSで決まる電流が流れることが分かります。
トランジスタはベース電流でコレクタ電流が決まり、コレクタ電流は定電流特性があります。FETは、ゲート電圧でドレイン電流が決まり、ドレイン電流は定電流特性があります。
トランジスタのhFEには個体差があるように、FETの最大ドレイン電流IDSS(VGSが0Vの時のID)にも個体差があります。このため、IDSSが変化しても影響の無い回路を利用するか、FETを選別して利用します。
トランジスタにNPNとPNPがあるように、FETには、NチャネルとPチャネルがあります。
PチャネルFETはドレインにマイナスの電圧を掛けて電流を流し、ゲートにプラスの電圧を加えてその電流を減らします。
下表にトランジスタの重要な性質と対比して、FETの重要な性質を示します。
直流/交流 |
トランジスタ |
FET |
|
直流検討 |
|
|
|
エミッタベース間電圧VBE VBE=0.7V |
ゲートソース間電圧VGS VGSはIDで変化する |
VGSとIDは互いに関係しているので、VGS−IDグラフで動作させる点を決める。 |
|
コレクタ電流IC IC=IB×hFE |
ドレイン電流ID IDはVGSで変化する。 |
||
IC≒IE |
ID=IS |
トランジスタと違いFETではゲートには全く電流が流れないので、IDは完全にISと等しい。 |
|
交流検討 |
|
|
|
エミッタ等価インピーダンスre re=26mV/IEE |
ソース等価インピーダンスrs rs=1/Yfs |
YfsはIDで変化するので、Yfs−IDグラフで求める。(多少の個体差もある) |
|
エミッタ信号電流ie ie=vb/re |
ソース信号電流is iS=vg/rs |
|
トランジスタではVBEを約0.7Vと決めて検討できましたが、FETではVGSがIDによって変化するため、データシートのグラフで求める必要があります。
また、トランジスタのreはieから簡単に計算(26mV/ie)できましたが、FETのrsは、データシートのグラフから求める必要があります。
つまり、大雑把な設計でもデータシートのグラフを2つ利用します。このあたりが、(理屈は大体同じなのですが)面倒な所で、FETに先立ってトランジスタを説明した理由です。
下図左側はFETを用いた増幅器で、同図右側はFET(2SK30)のデータシートに掲載されたVGS−ID特性図です。例えば、IDが1.6mAであれば、VGSはー0.5Vと分かります。
上図を参考に下表に書き込みながら、回路の直流検討を確認してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
上図右のVGS−IDグラフで、使用する点を決めます。 ここではVGSをー0.5Vで使用すると決めます。 |
− |
A |
上図右のグラフより、ドレインバイアス電流IDDは、 |
mA |
B |
ゲートには電流が流れないから、RGでアースに接続されたゲートバイアス電圧VGGは、 |
V |
C |
ソース抵抗の両端電圧VRSは、 (Bと@から、) |
V |
D |
ソースバイアス電流ISSは、(ID=ISだから、) |
mA |
E |
ソース抵抗RSの値は、 (CとDから、) |
Ω |
F |
出力バイアス電圧VOOを7Vと決めます。 |
− |
G |
負荷抵抗の両端電圧VRLは、 (VCCが12Vだから、) |
V |
H |
負荷抵抗RLの値は、 (AとGより、) |
kΩ |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
上図右のVGS−IDグラフで、使用する点を決めます。 ここではVGSをー0.5Vで使用すると決めます。 |
− |
A |
上図右のグラフより、ドレインバイアス電流IDDは、 |
1.6mA |
B |
ゲートには電流が流れないから、RGでアースに接続されたゲートバイアス電圧VGGは、 |
0V |
C |
ソース抵抗の両端電圧VRSは、 (Bと@から、) |
0.5V |
D |
ソースバイアス電流ISSは、(ID=ISだから、) |
1.6mA |
E |
ソース抵抗RSの値は、 (CとDから、) |
330Ω |
F |
出力バイアス電圧VOOを7Vと決めます。 |
− |
G |
負荷抵抗の両端電圧VRLは、 (VCCが12Vだから、) |
5V |
H |
負荷抵抗RLの値は、 (AとGより、) |
1.9kΩ |
下図を参考に下表に書き込みながら、回路の交流検討を確認してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
直流検討からIDは、 |
mA |
A |
IDは1.6mAであるから、ID−Yfsグラフから、Yfsの値は、 |
mS |
B |
ソース等価インピーダンスrsの値は、 (1/Yfsだから、) |
Ω |
C |
ソース側の合計インピーダンスは、 (rsとRSが直列だから、) |
Ω |
D |
入力信号電圧viは、 |
mVP−P |
E |
ゲート信号電圧vgは、 |
mVP−P |
F |
ソース信号電流isは、 (CとEから、) |
μAP−P |
G |
ドレイン信号電流idは、 (ID=ISだから、) |
μAP−P |
H |
負荷抵抗の両端信号電圧vrlは、 |
mVP−P |
I |
出力信号電圧vooは、 (極性に注意して、) |
mVP−P |
J |
回路の電圧増幅率は、 |
倍 |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
直流検討からIDは、 |
1.6mA |
A |
IDは1.6mAであるから、ID−Yfsグラフから、Yfsの値は、 |
2.2mS |
B |
ソース等価インピーダンスrsの値は、 (1/Yfsだから、) |
450Ω |
C |
ソース側の合計インピーダンスは、 (rsとRSが直列だから、) |
780Ω |
D |
入力信号電圧viは、 |
1mVP−P |
E |
ゲート信号電圧vgは、 |
1mVP−P |
F |
ソース信号電流isは、 (CとEから、) |
1.3μAP−P |
G |
ドレイン信号電流idは、 (ID=ISだから、) |
1.3μAP−P |
H |
負荷抵抗の両端信号電圧vrlは、 |
2.5mVP−P |
I |
出力信号電圧vooは、 (極性に注意して、) |
−2.5mVP−P |
J |
回路の電圧増幅率は、 |
−2.5倍 |
ゲート抵抗RGの値は、ゲート漏れ電流IGSSから決めます。2SK30の場合IGSSは1nAですから、RGを10MΩとしてもRGの両端電圧は10mVで回路の動作には影響を与えません。
このように、FETを使用した増幅器は極めて高い入力インピーダンスを得ることができますが、トランジスタを使用した増幅器よりも増幅率が小さくなる傾向があります。
FETではPN接合を作って(逆電圧を加えて)ゲートを絶縁していましたが、下図のように、絶縁体の薄い膜を作ってゲートを絶縁したトランジスタがMOSFETです。
トランジスタと似たNPNの接合に隣り合って、絶縁膜で隔てたゲート電極が設けられています。トランジスタではコレクタに相当するドレインにプラスの、エミッタに相当するソースにマイナスの電圧を加えると、上図右側の接合面は電流が流れますが、左側の接合面は空乏層ができて電流が流れません。
ここで下図上側に示すようにゲートにプラスの電圧を加えると、このプラスの電圧に引かれてゲートの下に電子が集まります。
上図下側の図の示すように、ゲートの下に集まった電子が、左向きに移動することでソースからドレインに向かって電子が移動できるようになります。
別の見方では、ゲートの下は最初はP型半導体でしたが、上図のように電子が集まったため、電子が豊富なN型半導体に変化したと考えます。このように最初の極性(P型)とは逆の極性(N型)になってしまった範囲を「反転層」と呼びます。反転層が生じた結果、上図下側に示すように左右のN型領域が反転層を介して一つに繋がり、電流が流れるという見方です。
MOSFETはゲートに電圧を加えるだけで(電流を流し続けなくても)ドレインに電流が流れます。しかし、ゲートの電圧を上げるためには、コンデンサと同様にゲートを充電する必要があります。一般に大電流のMOSFETはゲートの容量が大きいので、充電のための電流も大きくなります。
40. MOSFETによるスイッチング回路
MOSFETは一旦ゲートを充電すれば、ゲートに電流を流し続けなくても大きなドレイン電流を流せるため、トランジスタより楽に大電流を流すことができます。
ただし、ゲートに加える電圧が不足するとON損失(導通損失、伝導損失)が発生し、また、ゲートの充放電が遅いとスイッチング損失が発生して、思わぬ激しい発熱が生じるため、トランジスタとは別の注意が必要です。
MOSFETがONして、VDSが低くなったときの消費電力(発熱)がON損失です。VDSが十分に小さくならないために発生する損失です。
下図は2SK2232のID−VDS特性です。ドレイン電流は定電流特性を持っており、その電流はVGSで決まります。例えばグラフの最も下の曲線が示すように、VGSが2.5Vなら、IDは約3Aです。このような定電流状態でMOSFETを使用すると、VDSが大きいため発熱も大きくなります。通常MOSFETはこのような定電流状態では使用しません。
通常、MOSFETはONにして(VDSを0Vに近付けて)IDを流して使用します。そこで上図グラフでIDが8Aの場合のVDSに注目すると、VGSが3VならVDSは0.7V、4Vなら0.4V、8Vなら0.3Vと、VGSが大きくなるとVDSが小さくなります。
つまり、MOSFETを十分にONにする(VDSを十分に小さくする)ためには、VGSをある程度高くする必要があります。逆にVGSが低いとドレインに電流は流れるものの、VDSが大きく発熱が大きくなります。
MOSFETを十分にONできるVGSは品種によって異なります。低いVGSでも十分にONになるように設計された品種もあり、データシートに「低電圧駆動」「4V駆動」「低電圧ゲートドライブ可能」等と記載されています。
下図は2SK4017(4V駆動可能)のID−VDS特性で、VGSが4Vあれば、数Aの電流を流してもVDSがかなり低くなる(ONになる)ことが分かります。
下図は3Vで動作するCMOSロジックで2SK4017のゲートを直接駆動した回路です。上図のグラフを使用して、下図の回路がONしているときのMOSFETの消費電力PDを、下表に書き込みながら検討してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
MOSFETがONしているとき、VDSは、 |
V |
A |
負荷抵抗の両端電圧VRLは、 |
V |
B |
ドレイン電流IDは、 |
A |
C |
VGSは、 (COMSロジックの出力が3Vだから、) |
V |
D |
上のグラフから、CのVGSで、BのIDの場合の、ドレインソース間電圧VDSは、 |
V |
E |
MOSFETの消費電力PDは、(BとDから、) (DのVDSがVRLやIDに与える影響を無視して、) |
W |
F |
パッケージの(放熱器なしの)熱抵抗を125℃/Wとすると、チップの温度上昇は、 (温度上昇=消費電力×熱抵抗 だから、) |
℃ |
G |
気温が40℃のとき、チップの温度は、 (チップ温度=気温+温度上昇 だから、) |
℃ |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
MOSFETがONしているとき、VDSは、 |
0V |
A |
負荷抵抗の両端電圧VRLは、 |
12V |
B |
ドレイン電流IDは、 |
2A |
C |
VGSは、 (COMSロジックの出力が3Vだから、) |
3V |
D |
上のグラフから、CのVGSで、BのIDの場合の、ドレインソース間電圧VDSは、 |
0.55V |
E |
MOSFETの消費電力PDは、(BとDから、) (DのVDSがVRLやIDに与える影響を無視して、) 0.25V×2A=0.5W |
1.1W |
F |
パッケージの(放熱器なしの)熱抵抗を125℃/Wとすると、チップの温度上昇は、 温度上昇=消費電力×熱抵抗 =1.1W×125℃/W=138℃ |
138℃ |
G |
気温が40℃のとき、チップの温度は、 チップ温度=気温+温度上昇 =40℃+138℃=178℃ |
178℃ |
このように、4V駆動可能なMOSFETを3Vで駆動すると、VDSが大きくなり、この例では1.1Wの電力が消費され、放熱器を付けなければチップは178℃となり(150℃で壊れますから)素子は熱で破壊します。
下図は既に練習した回路の駆動電圧を3Vから5Vに高めた回路です。既出のグラフを使用して、下図の回路がONしているときのMOSFETの消費電力PDを、下表に書き込みながら検討してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
MOSFETがONしているとき、VDSは、 |
V |
A |
負荷抵抗の両端電圧VRLは、 |
V |
B |
ドレイン電流IDは、 |
A |
C |
VGSは、 (COMSロジックの出力が5Vだから、) |
V |
D |
上のグラフから、CのVGSで、BのIDの場合の、ドレインソース間電圧VDSは、 |
V |
E |
MOSFETの消費電力PDは、(BとDから、) (DのVDSがVRLやIDに与える影響を無視して、) |
W |
F |
パッケージの(放熱器なしの)熱抵抗を125℃/Wとすると、チップの温度上昇は、 温度上昇=消費電力×熱抵抗 |
℃ |
G |
気温が40℃のとき、チップの温度は、 チップ温度=気温+温度上昇 |
℃ |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
MOSFETがONしているとき、VDSは、 |
0V |
A |
負荷抵抗の両端電圧VRLは、 |
12V |
B |
ドレイン電流IDは、 |
2A |
C |
VGSは、 (COMSロジックの出力が5Vだから、) |
5V |
D |
上のグラフから、CのVGSで、BのIDの場合の、ドレインソース間電圧VDSは、 |
0.15V |
E |
MOSFETの消費電力PDは、(BとDから、) (DのVDSがVRLやIDに与える影響を無視して、) 0.25V×2A=0.5W |
0.3W |
F |
パッケージの(放熱器なしの)熱抵抗を125℃/Wとすると、チップの温度上昇は、 温度上昇=消費電力×熱抵抗 =0.3W×125℃/W=75℃ |
75℃ |
G |
気温が40℃のとき、チップの温度は、 チップ温度=気温+温度上昇 =40℃+75℃=115℃ |
115℃ |
5Vで駆動することでVDSが0.15Vに低くなり、発熱は300mWに、チップ温度は115℃に下がります。チップ温度が高く寿命の短縮もありますが、即座に壊れることは無くなります。小さな放熱器を付ければチップ温度が下がり、実用出来ます。
高い電圧で使用できるMOSFET(VDSの最大値の大きな品種の)は、ON時のVDSが大きくなる傾向があります。従って、無闇にVDSの最大値の大きな品種を使わない方が、ON損失を減らすことができます。
MOSFETはON時だけではなく、下図に左右方向の矢印で示す、OFFからONに変化する瞬間と、ONからOFFに変化する瞬間にも発熱します。この発熱をスイッチング損失と呼びます。
MOSFETの損失PDを、上図に灰色で示します。VDSが電源電圧の半分になったとき、最大の電力が消費されるため、上図中の2つの山がスイッチング損失を示します。山と山の間の平らな灰色の部分は、すでに練習したON損失(導通損失)による発熱です。
下図(a)のように、スイッチングがゆっくりであると、山の横幅が広がってスイッチング損失が増加します。また、下図(b)のように、スイッチングの頻度が高くても、スイッチング損失が増加します。
ですから、スイッチングを素早く行い、スイッチング頻度を適度に抑えることでスイッチング損失を小さくします。
下図にMOSFETのON/OFF時のゲート電圧VGS(実線)と、ドレイン電圧VDS(点線)を示します。
MOSFETをONにするときは、ゲートを充電します。MOSFETのゲートには大きな容量があるので、ゲートに電流を流すとCISSが充電されて、@電圧が上昇を始めます。ゲートの電圧が上昇して、ドレイン電流IDが増え始めると、VDSが低下を始め、CRSSを介して(上がろうとしている)ゲートの電圧を引き下げる(トランジスタと同様「ミラー効果」と呼びます)ため、Aゲートの電圧は上昇を止めます。MOSFETがONになりVDSの低下が止まると、ミラー効果なくなり、CISSの充電が再開されてBゲート電圧が再び上昇を始めます。
また、MOSFETをOFFにするときは、ゲートを放電します。ゲートから電流を吸い出すと、CISSが放電されて、C電圧が低下を始めます。ゲートの電圧が低下して、ドレイン電流IDが減り始めると、VDSが上昇を始め、CRSSを介して(下がろうとしている)ゲートの電圧を引き上げるげる(トランジスタと同様「ミラー効果」と呼びます)ため、Dゲートの電圧は低下を止めます。MOSFETがOFFになりVDSの上昇が止まると、ミラー効果なくなり、CISSの放電が再開されてEゲート電圧が再び低下を始めます。
スイッチングを素早く行うためには、大きな電流でゲートを充放電して、@ABCDEの時間、とりわけADの時間を短くする必要があります。
下図はコンプリメンタリエミッタフォロアを利用して素早くゲートを充放電する回路です。ゲートの出力がHの場合は、下図(a)に示すように上側のトランジスタが電流を流してhFE倍の電流でゲートを充電します。また、ゲートの出力がLの場合は、下図(b)に示すように下側のトランジスタが電流を流してhFE倍の電流でゲートを放電します。
上図の回路の欠点はトランジスタのVBEの影響で、ON時のVGSが4.3Vまでしか上昇しないことです。この影響で、ON時のVDSが大きくなり、ON損失が大きくなる場合があります。
下図の回路は高いVGSを加えてON損失を減らし、かつ大電流で素早くゲートの充放電を行いスイッチング損失を減らす回路です。
下図のようにローサイドドライバICを使用すると、簡単な回路で素早くゲートをON/OFFできます。
誘導負荷(コイル成分のある負荷)をON/OFFする場合は、MOSFETもトランジスタと同様にスナバ回路を取り付けます。
MOSFETのドレインソース間にはツェーナダイオードに似た性質があり、この性質を利用してフライバック電圧を抑えられる品種もあります。
下表は2SK4017のデータシートの一部ですが、ドレインソース間降伏電圧(VBR)は(VGSが0Vの場合)60Vと記載されています。つまり、フライバック電圧は60Vで抑制されます。
ただし、あまり大きな電流を吸収させるとMOSFETが破損します。下図の絶対最大定格によれば、アバランシェ電流は5Aで、アバランシェエネルギーは2mJです。
フライバック電流は負荷の最大電流とほぼ等しくなりますから、最大電流を5Aより十分小さくする必要があります。
アバランシェエネルギは、
アバランシェ電流 × ドレインソース間降伏電圧 × 電流の流れる時間 ÷ 2
で求めます。(2で割る理由は、電流波形が三角形になるため、三角形の面積でエネルギを求めるからです。)
例えば、2Aで60Vのフライバックが5μ秒流れる場合は、=2*60*5E-6/2と計算して、0.3mJと求めることができます。
オペアンプにエミッタフォロアを追加する事で、出力電流を大きくすることができます。出力電流を増強(ブースト)するので、電流ブースタと呼ばれます。
例えば、TDA2030(オーディオパワーアンプと呼ばれてますが、実は3A20Wのパワーオペアンプです)のように大きな電流を出力できるオペアンプも安価になっているため、オペアンプの出力電流を増強する回路は以前ほど重要ではありません。
とはいえ、手持ちのオペアンプとトランジスタで、手軽に出力電流を増やすことができれば便利ですから、ここでは電流ブースタについて説明します。
電流を吐き出すか、吸い出すか、いずれか一方だけの動作をする回路をシングルブースタと呼びます。
さて、下図(a)はオペアンプを利用した10倍の非反転増幅回路です。下図(b)のように、この回路にエミッタフォロアを追加すると、出力電流を大きくすることができます。この回路は、電流を吐き出すことはできますが、吸い込むことはできません。
上図を参考に、下表に書き込みながら回路の動作を確認してください。
番号 |
質問 |
値 |
|
上図(a)で、オペアンプだけの非反転増幅回路について考えます。 |
|
@ |
入力電圧VIは、 |
V |
A |
出力電圧VOは、 |
V |
B |
このオペアンプは2mAまでの電流を出力できるとします。 |
2mA |
C |
9kΩに流れる電流I9kは、 (入力に電流が流れず、9kと1kで10kだから、) |
mA |
D |
外部に出力できる電流IO2は、 (BとCからキルヒ則で、) |
mA |
E |
負荷抵抗RLの最低値は、 (AとDから、) |
kΩ以上 |
|
上図(b)で、エミッタフォロアを追加した反転増幅回路について考えます。 |
|
F |
入力電圧VIは、 |
V |
G |
出力電圧VO2は、 |
V |
H |
電流が流れているトランジスタのVBEは、 |
V |
I |
オペアンプの出力端子のVO1は、 |
V |
J |
このオペアンプは2mAまでの電流を出力できるとします。 |
2mA |
K |
コレクタ電流ICは、 (hFEが100だから、) |
mA |
L |
9kΩに流れる電流I9kは、 |
mA |
M |
外部に出力できる電流IO2は、 (KとLからキルヒ則で、) |
mA |
N |
負荷抵抗RLの最低値は、 (GとMから、) |
Ω以上 |
番号 |
質問 |
値 |
|
上図(a)で、オペアンプだけの非反転増幅回路について考えます。 |
|
@ |
入力電圧VIは、 |
1V |
A |
出力電圧VOは、 |
10V |
B |
このオペアンプは2mAまでの電流を出力できるとします。 |
2mA |
C |
9kΩに流れる電流I9kは、 (入力に電流が流れず、9kと1kで10kだから、) |
1mA |
D |
外部に出力できる電流IO2は、 (BとCからキルヒ則で、) |
1mA |
E |
負荷抵抗RLの最低値は、 (AとDから、) |
10kΩ以上 |
|
上図(b)で、エミッタフォロアを追加した反転増幅回路について考えます。 |
|
F |
入力電圧VIは、 |
1V |
G |
出力電圧VO2は、 |
10V |
H |
電流が流れているトランジスタのVBEは、 |
0.7V |
I |
オペアンプの出力端子のVO1は、 |
10.7V |
J |
このオペアンプは2mAまでの電流を出力できるとします。 |
2mA |
K |
コレクタ電流ICは、 (hFEが100だから、) |
200mA |
L |
9kΩに流れる電流I9kは、 |
1mA |
M |
外部に出力できる電流IO2は、 (KとLからキルヒ則で、) |
199mA |
N |
負荷抵抗RLの最低値は、 (GとMから、) |
50Ω以上 |
このようにエミッタフォロアを追加することで、出力電流を概ねhFE倍に拡大できます。(上表M)その結果、オペアンプ単体では10kΩまでの負荷しか接続できませんでしたが(上表E)、エミッタフォロアを追加すると50Ωまでの負荷を接続できます(上表N)。
さらに、エミッタフォロアで生じる、入出力の電圧差(0.7V)をオペアンプが吸収して、正確に入力電圧を増幅した電圧が出力されます。(上表GHI)ただし、出力できる最高の電圧は、0.7V(VBEの分)低くなります。
下図は、最大250mAを出力できる電流ブースタです。使用しているオペアンプは、最高13.5Vを出力できます。この回路が出力できる電圧の最大値を、下表に書き込みながら検討してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
回路の最大出力電流は250mAです。 |
− |
A |
コレクタ電流ICは、 |
mA |
B |
ベース電流IBは、 (hFEが50だから、) |
mA |
C |
オペアンプの最大出力電圧は13.5Vです。 |
− |
D |
ベース抵抗の両端電圧VRBは、 |
V |
E |
VBEは、 |
V |
F |
出力電圧は、 |
V |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
回路の最大出力電流は250mAです。 |
− |
A |
コレクタ電流ICは、 |
250mA |
B |
ベース電流IBは、 (hFEが50だから、) |
5mA |
C |
オペアンプの最大出力電圧は13.5Vです。 |
− |
D |
ベース抵抗の両端電圧VRBは、 |
0.5V |
E |
VBEは、 |
0.7V |
F |
出力電圧は、 |
12.3V |
このようにRBを追加すると、最高出力電圧が低くなります。RBはオペアンプの出力を保護し、また、高い周波数でのオペアンプやトランジスタの動作を安定させるために挿入しています。電源電圧が5V程度なら必要ありませんが、電源電圧が高い場合は必要です。
下図のように、オペアンプにコンプリメンタリエミッタフォロアを追加することもできます。出力電流を大きくできるだけではなく、下図の左右に示すように、電流を吸い込むことも、吐き出すこともできます。
単純なコンプリメンタリエミッタフォロアは、下図(a)に示すように、クロスオーバー歪みを発生します。
しかし、エミッタフォロアをオペアンプと組み合わせることで、上図(b)の中央の波形に示すように、オペアンプがVBEの電圧を補って動作し、上部(b)の右側の波形に示すように、クロスオーバー歪みを小さくすることができます。
このとき、上図(b)に矢印で示すように、オペアンプは−0.7V〜+0.7Vまで一瞬で立ち上がる(立ち下がる)必要があります。しかし、現実には「一瞬」とは行かないため、ここでオペアンプの動作が後れた分が歪みになります。
この回路はモーダ等を駆動するなら十分な性能ですが、良好な音質でスピーカーを鳴らすには力不足です。
下図のコンプリメンタリ電流ブースタ回路の各部の電圧・電流を、下表に書き込みながら検討してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
負帰還が掛かっているから、+入力と−入力の間の電圧は、 |
V |
A |
1kΩの両端電圧V1kは、 |
V |
B |
1kΩに流れる電流I1kは、 |
mA |
C |
オペアンプの入力端子に流れる電流は、 |
mA |
D |
5kΩに流れる電流I5kは、 |
mA |
E |
5kΩの両端電圧V5kは、 |
V |
F |
出力電圧VOは、 |
V |
G |
上側(NPNトランジスタの)VCEは、 |
V |
H |
負荷に流れる電流IRLは、 |
A |
I |
コレクタ電流ICは、 (I5kを無視すると、) |
A |
J |
ベース電流IBは、 (hFEを100とすると、Iから、) |
mA |
K |
コレクタ損失PCは、 (GとIから、) |
W |
L |
電流の流れているトランジスタのVBEは、 |
V |
M |
RBの両端電圧VRBは、 |
V |
N |
オペアンプの出力端子の電圧VO2は、 |
V |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
負帰還が掛かっているから、+入力と−入力の間の電圧は、 |
0V |
A |
1kΩの両端電圧V1kは、 |
1V |
B |
1kΩに流れる電流I1kは、 |
1mA |
C |
オペアンプの入力端子に流れる電流は、 |
0mA |
D |
5kΩに流れる電流I5kは、 |
1mA |
E |
5kΩの両端電圧V5kは、 |
5V |
F |
出力電圧VOは、 |
6V |
G |
上側(NPNトランジスタの)VCEは、 |
6V |
H |
負荷に流れる電流IRLは、 |
1A |
I |
コレクタ電流ICは、 (I5kを無視すると、) |
1A |
J |
ベース電流IBは、 (hFEを100とすると、Iから、) |
10mA |
K |
コレクタ損失PCは、 (GとIから、) |
6W |
L |
電流の流れているトランジスタのVBEは、 |
0.7V |
M |
RBの両端電圧VRBは、 |
0.3V |
N |
オペアンプの出力端子の電圧VO2は、 |
7V |
上表のように多くの場合、出力電圧が電源電圧(12V)の半分のとき(6Vのとき)エミッタフォロアの発熱が最大になります。今回の回路は6Wの発熱がありますから、それに耐えるトランジスタと、その熱を処理できる放熱器が必要です。
さてこのように、オペアンプとコンプリメンタリエミッタフォロアを組み合わせても、クロスオーバ歪みは多少発生します。
クロスオーバ歪みを減らす最もお手軽な方法を下図に示します。下図の回路では、ベースエミッタ間に22Ωの抵抗を追加しています。
単純なコンプリメンタリエミッタフォロアの入出力電圧特性は、下図右側に灰色線で示すように、入力が−0.7V〜0.7Vの間は出力が変化しません。つまりこの電圧範囲では、オペアンプは出力電圧を制御できません。このため、歪みを抑えることもできません。ここで22Ωを追加すると、この電圧範囲で僅かではありますがオペアンプが出力を制御できるようになります。このため、回路が簡単な割には、意外と歪みが少なくなります。
この回路では、トランジスタが動作しない、−0.7V〜0.7Vの間は、22Ωを通じてオペアンプが直接負荷に電流を流しますから、出力電流の大きなオペアンプが必要です。また、−0.7Vから+0.7Vまで素早く立ち上がって歪みを抑えられるように、スルーレイトの高いオペアンプが適します。ここでは、NJM2114を使用しています。
クロスオーバー歪を減らす、より効果的で、一般的な方法を下図に示します。同図(a)に示すように、コンプリメンタリエミッタフォロアのベースに(VBEに相当する)バイアス電圧を(既に説明した方法で)ダイオードによって加えます。
これにより、上図(b)に示すように、オペアンプの出力電圧(い)に対して、上側トランジスタのベース電圧は0.7V高く(ろ)、下側トランジスタのベース電圧は0.7V低く(は)維持されます。この結果、出力電圧(に)は0V付近でも滑らかに変化し、クロスオーバ歪がなくなります。
ところが(書籍でも良く紹介される)上図の回路は、RBが原因となって、あまり大きな出力電流を流すことができません。
上図の回路では、RBがベース電流を供給しますから、RBが大きいと出力電流が小さくなってしまいます。ですから、出力電流を大きくするためには、RBを小さくしなくてはなりません。ところが、RBはオペアンプの負荷となっているため、RBを小さくすると、オペアンプは大きな電流を出力しなくてはなりません。しかし、汎用オペアンプの出力電流は数mA〜数十mAと小さいので、RBを小さくすることはできません。
そこで、下図(a)に示すような、RBの代りに(両端電圧にかかわらず)一定の電流を流す「定電流ダイオード」を使用した回路が良く利用されます。
上図(b)のように、定電流ダイオードの代りに、接合型FETやカレントミレーを使用することもできます。接合型FETの場合は電流に個体差があるので選別が必要で、カレントミラーは部品点数が多くなりますから、上図(a)のように、定電流ダイオードを用いる方法が楽です。
下図の電流ブースタの最大出力電流を、下表に書き込みながら求めてください。ただし、電源電圧±9Vでのオペアンプの最高/最低出力電圧を±7Vと、オペアンプは最大出力電流を10mAで使用すると考えます。
番号 |
質問 |
値 |
|
オペアンプが最高出力電圧7Vを出力している場合を考えます。 |
|
@ |
CRD1の電流が全てQ1のべースに流れたとすれば、ベース電流IB1は、 |
mA |
A |
電流ブースタの出力電流IO、つまりQ1のコレクタ電流IC1は、 (hFFが100だから) |
A |
B |
CRD2の両端電圧VCRD2は、 (オペアンプの最高出力電圧と、ダイオードの順電圧から、) |
V |
C |
CRD2に流れる電流ICRD2は、 |
mA |
D |
CRD2の消費電力PCRD2は、 |
mW |
E |
オペアンプの出力電流IOOPは、 |
mA |
番号 |
質問 |
値 |
|
オペアンプが最高出力電圧7Vを出力している場合を考えます。 |
|
@ |
CRD1の電流が全てQ1のべースに流れたとすれば、ベース電流IB1は、 |
10mA |
A |
電流ブースタの出力電流IO、つまりQ1のコレクタ電流IC1は、 (hFFが100だから) |
1A |
B |
CRD2の両端電圧VCRD2は、 (オペアンプの最高出力電圧と、ダイオードの順電圧から、) |
15.3V |
C |
CRD2に流れる電流ICRD2は、 |
10mA |
D |
CRD2の消費電力PCRD2は、 |
153mW |
E |
オペアンプの出力電流IOOPは、 |
10mA |
上表で分かるように、CRDの電流のhFE倍が、電流ブースタの最大出力電流となり、また、CRDの電流はオペアンプの最大出力電流となります。
つまり、(発熱も含めて検討し)オペアンプが10mA流すことができれば、CRDは10mAの品種を選び、電流ブースタは10mA×100=1Aの電流を出力できます。逆に、1A出力したい場合は、1A/hFE=10mAのCRDを選び、オペアンプは10mAの出力電流が必要です。
また、最高電圧を出力したときに、CRD2の消費電力が最高になります。小形CRDの最大定格は300mW程度ですから、上表の153mWは気温が高いと厳しい状態です。このような場合、上図(b)のように、5mAのCRDを並列に接続することで、素子1つあたりの電力を減らすことができます。
下図を参考に、下表に書き込みながら、回路が0Vを出力しているとき、アイドリング電流(0V出力時のエミッタ電流)が30mAとなるよう、REの値を決定して下さい。また、そのときのQ1の消費電力(コレクタ損失)を求めて下さい。ただし、ダイオードの順電圧を0.7Vと、Q1は発熱により(約50℃温度上昇して)VBEが0.6Vに低下したと考えてください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
回路の出力電圧とオペアンプの出力電圧は共に、 (ここでは、0V出力時を考えるから、) |
V |
A |
常温のダイオードD1の順電圧VF1は、 |
V |
B |
Q1のベース電圧VB1は、 |
V |
C |
発熱したQ1のVBE1は、 (約50℃温度上昇しているから、) |
V |
D |
エミッタ抵抗の両端電圧VRE1は、 |
V |
E |
Q1のエミッタ電流IE1は、 (アイドリング電流を30mAとするから、) |
mA |
F |
エミッタ抵抗REの値は、 (DとEから、) |
Ω |
G |
このときのQ1のVCEは、 (DとVCC9Vから、) |
V |
H |
このときのQ1のコレクタ損失PC1は、 |
mW |
I |
同様に考えてQ2のコレクタ損失PC2は、 |
mW |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
回路の出力電圧とオペアンプの出力電圧は共に、 (ここでは、0V出力時を考えるから、) |
0V |
A |
常温のダイオードD1の順電圧VF1は、 |
0.7V |
B |
Q1のベース電圧VB1は、 |
0.7V |
C |
発熱したQ1のVBE1は、 (約50℃温度上昇しているから、) |
0.6V |
D |
エミッタ抵抗の両端電圧VRE1は、 |
0.1V |
E |
Q1のエミッタ電流IE1は、 (アイドリング電流を30mAとするから、) |
30mA |
F |
エミッタ抵抗REの値は、 (DとEから、) |
33Ω |
G |
このときのQ1のVCEは、 (DとVCC9Vから、) |
8.9V |
H |
このときのQ1のコレクタ損失PC1は、 |
270mW |
I |
同様に考えてQ2のコレクタ損失PC2は、 |
270mW |
下図を参考に下表に書き込みながら、回路が最大電流(1A)を出力しているときの、最大出力電圧を求めてください。但しオペアンプの最大出力電圧を7Vとします。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
Q1の最大エミッタ電流IE1は、 |
A |
A |
オペアンプの最大出力電圧VOOPは、 |
V |
B |
ダイオードD1の順電圧VF1は、 |
V |
C |
Q1のベース電圧VB1は、 |
V |
D |
Q1のVBEは発熱していると考えて、 |
V |
E |
エミッタ抵抗の両端電圧VRE1は、 (@とエミッタ抵抗の値から、) |
V |
F |
回路の出力電圧VOは、 |
V |
G |
回路に接続できる負荷抵抗RLの最低値は、 (@とFから、) |
Ω |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
Q1の最大エミッタ電流IE1は、 |
1A |
A |
オペアンプの最大出力電圧VOOPは、 |
7V |
B |
ダイオードD1の順電圧VF1は、 |
0.7V |
C |
Q1のベース電圧VB1は、 |
7.7V |
D |
Q1のVBEは発熱していると考えて、 |
0.6V |
E |
エミッタ抵抗の両端電圧VRE1は、 (@とエミッタ抵抗の値から、) |
3.3V |
F |
回路の出力電圧VOは、 |
3.8V |
G |
回路に接続できる負荷抵抗RLの最低値は、 (@とFから、) |
3.8Ω |
このように、REの値が大きいと、最大出力電圧が小さくなります。ダイオードとトランジスタの熱結合をしっかり行うことで、両者の温度を近づけることができ、REの値を小さくすることができます。
VCE1が電源電圧VCCの半分となったとき、Q1のコレクタ損失PC1が最大になります。下図を参考に下表に書き込みながら、Q1の最大のコレクタ損失PCMAX1を求めてください。但し、回路の負荷として3.8Ωの抵抗を接続したと考えます。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
Q1のコレクタエミッタ間電圧、VCE1は、 (VCCの半分だから、) |
V |
A |
Q1のエミッタ電圧VE1は、 (VCCと@から、) |
V |
B |
RE1とRLの直列合成抵抗は、 |
Ω |
C |
Q1のエミッタ電流IE1は、 (AとBから、) |
mW |
D |
Q1の最大損失PCMAX1は、 |
W |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
Q1のコレクタエミッタ間電圧、VCE1は、 (VCCの半分だから、) |
4.5V |
A |
Q1のエミッタ電圧VE1は、 (VCCと@から、) |
4.5V |
B |
RE1とRLの直列合成抵抗は、 |
7.1Ω |
C |
Q1のエミッタ電流IE1は、 (AとBから、) |
630mW |
D |
Q1の最大損失PCMAX1は、 |
2.8W |
優れた性能の3端子レギュレータが安価に出回っているため、安定化電源を手作りする必要は殆どありません。ここでは回路構成を解説する目的で、安定化電源を説明します。
下図(a)の回路は、9Vの安定化電源回路です。既に説明した、電流ブースタ付の3倍の非反転増幅器に、ツェーナダイオードで発生させた3Vを入力し、安定した9Vを出力します。つまり、安定化電源回路とは、一定の電圧を出力する大出力の増幅器です。
上図(b)は、実は上図(a)と全く同じ回路で、書き方が変わっただけです。オペアンプ回路を電源回路に利用するときは、上図(b)のように書く場合が殆どです。なぜなら、通常の回路では省略されるVCCが、電源回路では「回路の入力」となるので、VCCの配線を具体的に示したいからです。
安定化電源回路の出力電圧は一定ですから、上図のCOUTを取り付けてもトランジスタの負担は増さず、逆に、急に電流が流れたときに、COUTが放電してその電流を供給してくれるので好都合です。ただし、中途半端な容量のCOUTを取り付けると、オペアンプが充放電を繰り返して回路が不安定になるため、十分大きな容量のコンデンサを使用します。
下図はツェーナダイオードの代りに、より安定な基準電圧用IC(LM431)を利用して、ボリウムで出力電圧を可変にした電源回路の例です。Q1とQ2はダーリントン接続で大きな出力電流を流すことができます。
図に点線で示す回路は簡易保護回路で、0.7Ωの両端電圧が0.7Vを超えると、Q3がONになり、Q1のベース電圧を下げて、出力電流がそれ以上増えないようにします。上の回路では約1Aで保護が掛かります。保護が掛かっているとは言え、1Aの電流が流れ続けますから、大きな発熱があります。ですから、保護の掛かった状態で連続使用することはできません。(過って、出力をショートさせた瞬間にトランジスタが壊れないためのものです。)
この回路構成で0Vに近い電圧を出力するためには、−電源電圧(ここでは0V)付近の入力電圧で正常動作するオペアンプが必要です。LM358このような目的で利用できる安価なオペアンプで、設計は古いですがまだまだ使えます。
安定化電源回路は、様々な負荷を繋いで使用するため、発振する場合があります。このような場合、COUTを大きくするか、増幅器の増幅率を上げます。たとえば、上図の回路では5.7倍ですが、20倍、30倍、というように増幅率を上げれば(その分+入力端子の電圧を下げます)発振は治まります。
下図はオペアンプで正確さを高めた定電流回路です。また、入力電圧で電流を変化させることもできます。
上図の回路の動作を下表に書き込みながら確認してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
この回路は負帰還が掛かっていますか。 (選んで下さい) |
掛かっている 掛かっていない |
A |
+入力と−入力の間の電圧は、 (@から、) |
V |
B |
100Ωの両端電圧は、 |
V |
C |
100Ωに流れる電流は、 |
mA |
D |
コレクタ電流(出力電流)は、 |
mA |
E |
ベース電流は、 (hFEが100だから、) |
mA |
F |
ベース抵抗の両端電圧は、 |
V |
G |
VBEは、 |
V |
H |
オペアンプの出力電圧は、 |
V |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
この回路は負帰還が掛かっていますか。 (選んで下さい) |
掛かっている 掛かっていない |
A |
+入力と−入力の間の電圧は、 (@から、) |
0V |
B |
100Ωの両端電圧は、 |
1V |
C |
100Ωに流れる電流は、 |
100mA |
D |
コレクタ電流(出力電流)は、 |
100mA |
E |
ベース電流は、 (hFEが100だから、) |
1mA |
F |
ベース抵抗の両端電圧は、 |
1V |
G |
VBEは、 |
0.7V |
H |
オペアンプの出力電圧は、 |
2.7V |
単一電源で上図の回路を動作させる場合は、0V付近の電圧を入出力できる単一電源用オペアンプ(LM358やLM2904等)を使用します。
下図(a)のように単電源用オペアンプ(あるいは、レールトゥレイルオペアンプ)を用いれば、マイナス電源に向かってアースから電流を吸い込む動作ができます。ただし、入力電圧はマイナス電源を基準として加える必要があります。
上図(b)のように、PNPトランジスタとレールトゥレイルオペアンプを用いれば、プラス電源からアースに向かって電流を吐き出す動作もできます。ただし、入力電圧はプラス電源を基準として加える必要があります。
下図に示すように、MOSFET(Nチャネル)を用いれば、オペアンプの出力電流が小さくても、大きな電流を制御できます。
大型のMOSFETのゲートには大きな容量があるので、オペアンプでは素早く充電できません。そのため動作が遅れて発振する場合があります。この場合、上図に点線で示すように1kΩと0.001μFを追加して、高い周波数では、オペアンプの出力が直接−入力に負帰還されるようにします。(2N7000等の小形MOSFETでは、このCRは必要ありません。)
下図のようにPチャネルMOSFETを用いれば、電流を吐き出す定電流回路を作ることができます。
下図は「ホーランド回路(ホーランドの電流ポンプ:Howland Current Pump)」という定電流回路で、大きな電流は流せませんが、電流を吐き出すことも、吸い込むこともできます。また、入力端子の電圧で、流す電流を自由に変更できます。
ホーランド回路は、入力端子の電圧で決まる電流を、(出力端子に加わる電圧や、接続する負荷に関係なく)出力端子に流すことのできる定電流回路です。
下図を参考に下表に書き込んで、入力端子に3V、出力端子に1Vを加えた場合の、ホーランド回路の出力電流を確認してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
出力端子の電圧は、 (1Vの電池が接続されているので、) |
V |
A |
入力端子の電圧は、 (3Vの電池が接続されているので、) |
V |
B |
R1の両端電圧は、 (@とAから、) |
V |
C |
R1に流れる電流は、 |
mA |
D |
−入力の電圧は、(@から、) |
V |
E |
+入力の電圧は、 (Dと、R4で負帰還が掛かっているから、) |
V |
F |
R2の両端電圧は、(Eから、) |
V |
G |
R2に流れる電流は、 |
mA |
H |
R3に流れる電流は、 (入力端子には電流が流れないから、) |
mA |
I |
R3の両端電圧は、 |
V |
J |
オペアンプの出力端子の電圧は、(FとIから、) |
V |
K |
R4の両端電圧は、(DとJから、) |
V |
L |
R4に流れる電流は、 |
mA |
M |
出力端子から流れ出す電流は、 (CとLから、) |
mA |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
出力端子の電圧は、 (1Vの電池が接続されているので、) |
1V |
A |
入力端子の電圧は、 (3Vの電池が接続されているので、) |
3V |
B |
R1の両端電圧は、 (@とAから、) |
2V |
C |
R1に流れる電流は、 |
2mA |
D |
−入力の電圧は、(@から、) |
1V |
E |
+入力の電圧は、 (Dと、R4で負帰還が掛かっているから、) |
1V |
F |
R2の両端電圧は、(Eから、) |
1V |
G |
R2に流れる電流は、 |
1mA |
H |
R3に流れる電流は、 (入力端子には電流が流れないから、) |
1mA |
I |
R3の両端電圧は、 |
1V |
J |
オペアンプの出力端子の電圧は、(FとIから、) |
2V |
K |
R4の両端電圧は、(DとJから、) |
1V |
L |
R4に流れる電流は、 |
1mA |
M |
出力端子から流れ出す電流は、 (CとLから、) |
3mA |
下図を参考に下表に書き込んで、入力端子に3V、出力端子に−2Vを加えた場合の、ホーランド回路の出力電流を確認してください。(電圧・電流は矢印の向きをプラスとして記入してください)
番号 |
質問 |
値 |
@ |
出力端子の電圧は、 (−2Vの電池が接続されているので、) |
V |
A |
入力端子の電圧は、 (3Vの電池が接続されているので、) |
V |
B |
R1の両端電圧は、 (@とAから、) |
V |
C |
R1に流れる電流は、 |
mA |
D |
−入力の電圧は、(@から、) |
V |
E |
+入力の電圧は、 (Dと、R4で負帰還が掛かっているから、) |
V |
F |
R2の両端電圧は、(Eから、) |
V |
G |
R2に流れる電流は、 |
mA |
H |
R3に流れる電流は、 (入力端子には電流が流れないから、) |
mA |
I |
R3の両端電圧は、 |
V |
J |
オペアンプの出力端子の電圧は、(FとIから、) |
V |
K |
R4の両端電圧は、(DとJから、) |
V |
L |
R4に流れる電流は、 |
mA |
M |
出力端子から流れ出す電流は、 (CとLから、) |
mA |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
出力端子の電圧は、 (−2Vの電池が接続されているので、) |
−2V |
A |
入力端子の電圧は、 (3Vの電池が接続されているので、) |
3V |
B |
R1の両端電圧は、 (@とAから、) |
5V |
C |
R1に流れる電流は、 |
5mA |
D |
−入力の電圧は、(@から、) |
−2V |
E |
+入力の電圧は、 (Dと、R4で負帰還が掛かっているから、) |
−2V |
F |
R2の両端電圧は、(Eから、) |
2V |
G |
R2に流れる電流は、 |
2mA |
H |
R3に流れる電流は、 (入力端子には電流が流れないから、) |
2mA |
I |
R3の両端電圧は、 |
2V |
J |
オペアンプの出力端子の電圧は、(FとIから、) |
4V |
K |
R4の両端電圧は、(DとJから、) |
1V |
L |
R4に流れる電流は、 |
2mA |
M |
出力端子から流れ出す電流は、 (CとLから、) |
3mA |
このように、ホーランド回路は出力端子の電圧が変化しても、出力端子には一定の電流が流れます。
下図は実用的な(高精度の)ホーランド回路です。ホーランド回路は抵抗の比率が、あ:い = う:え の時に正確に動作します。このため半固定抵抗で う:え の比率を調節できるように工夫されています。5pのコンデンサは発振防止です。(精度の必要ない場合は調整を省略できます)
半固定の調整方法は次のとおりです。@半固定を「え」の方向に一杯回します。A入力を0Vに接続し、出力には何も接続しない状態で、オペアンプの出力電圧を測定します。(電圧は0Vです)B半固定を「う」の方向に回して行くと、オペアンプの出力電圧が急に上昇(あるいは、降下)する位置があります。その寸前が正しい設定位置です。
下図は改良型のホーランド回路で「い」の抵抗を大きくできるため、入力端子に流れ込む電流が僅かで済みます。また「お」の抵抗を小さくできるので、出力に効率良く電流を流すことができます。
上図の回路も、抵抗の比率が あ:い=う:え のとき正確に動作し、出力電流は(あ=う、い=えの場合)
出力電流=(入力電圧÷お)×(う÷え)
です。上の例では、入力電圧が1Vのとき、Excelで=(1/1E3)*(100E3/100E3)と計算して、約1mAです。
たとえばフォトダイオードが発生する電流(光電流)は、真昼と暗闇で1万倍以上変化します。このため、測定にはレンジ切り替えが必要です。また、AD変換してマイコンに取り込む場合も、ビット数の多い高価なADCが必要になります。
しかし、下図の回路で光電流を処理すると、この例(2N3904を使用)では、光電流が10倍になるごとに、出力電圧が60mVずつ低下するため、0.1μA〜10μAの2桁の変化を−0.6V〜−0.72Vの変化に圧縮できます。(後に示すように、10nA〜10μAの6桁の変化であっても、−0.36V〜ー0.72Vの変化に圧縮できます)
このようにして、一旦信号を圧縮してしまえば、レンジ切り替えが不要になりますし、ビット数の少ないADCでもマイコンに取り込むことができます。
上に説明したような、数桁にわたって変化する入力を(例えば、10倍で60mVといった規則で)圧縮する回路を「ログアンプ」あるいは「対数圧縮回路」と呼びます。
下図左側の対数圧縮回路は、下図右側のグラフに示すように(例えば2N3904では)ICが10倍に増えると、VBEが60mV大きくなる現象を利用しています。(ICとVBEの関係は品種や個体差があります)
上図の回路の動作を、下表に書き込みながら確認してください。
番号 |
質問 |
値 |
値 |
値 |
@ |
フォトダイオードの光電流が 0.1μA〜10μAまで 100倍変化した場合を考えます。 |
0.1mA |
1mA |
10mA |
A |
−入力に流れる電流は、 |
mA |
mA |
mA |
B |
コレクタ電流ICは、 (上図右のグラフから、) |
mA |
mA |
mA |
C |
ベースエミッタ間電圧VBEは、 |
V |
V |
V |
D |
ベース電圧VBは、 |
V |
V |
V |
E |
出力電圧VOは、 |
V |
V |
V |
番号 |
質問 |
値 |
値 |
値 |
@ |
フォトダイオードの光電流が 0.1μA〜10μAまで 100倍変化した場合を考えます。 |
0.1mA |
1mA |
10mA |
A |
−入力に流れる電流は、 |
0mA |
0mA |
0mA |
B |
コレクタ電流ICは、 (上図右のグラフから、) |
0.1mA |
1mA |
10mA |
C |
ベースエミッタ間電圧VBEは、 |
0.6V |
0.66V |
0.72V |
D |
ベース電圧VBは、 |
0V |
0V |
0V |
E |
出力電圧VOは、 |
−0.6V |
−0.66V |
−0.72V |
上図右のグラフには記載されていませんが、左側に延長しても特性は直線のまま(60mVで10倍の状態を保って)続いています。ですから下表のように、さらに広い範囲の電流で対数圧縮を行うことができます。
入力電流 (IC) |
出力電圧 (VBE) |
10nA |
−0.36V |
100nA |
−0.42V |
1μA |
−0.48 |
10μA |
−0.54V |
100μA |
−0.6V |
1mA |
−0.66V |
10mA |
−0.72V |
このように大変便利な対数圧縮回路ですが、上図の基本回路のままでは、(VBEが温度で変化するため)温度で出力電圧が大きく変化してしまいます。下図は既に掲載したIC−VBEのグラフです。
上図から、コレクタ伝優雅1mAであっても、温度が−40℃、25℃、125℃、と変化すると、VBEが、0.79V、0.66V、0.47V、と大きく変化することが分かります。そこで下図のように、温度の影響を打ち消す工夫をします。
上図では、対数圧縮回路1はVBE1を出力し、対数圧縮回路2はVBE2を出力します。VBE1もVBE2も(既に説明したように)温度で変化します。そこで、差動増幅回路でVBE1とVBE2の差を求めて出力します。ここでQ1とQ2を熱結合して(同じ温度に保って)おくと、(気温が変化しても)VBE1とVBE2が同じ変化をしますから、両者の差を求めた出力電圧は温度の影響を殆ど受けなくなります。
そのうえで、対数圧縮回路1にだけ入力電流I1を入力し、対数圧縮回路2には常に一定の電流I2を入力します。これによって、差動増幅回路の出力には、入力電流I1に対応した電圧が出力されます。
このように、入力に対応したVBEから基準のVBEを引く方法(差を求める方法)で、VBEの温度変化が出力に与える影響をかなり小さくできます。出力電圧が温度で10〜20%変化しても気にならない場合は、この方法が利用できます。
さて、上記の「差を求める方法」でも多少の温度変化が生じる理由は、上図のグラフの傾きが、温度が高い程大きくなるためです。このため、出力電圧は絶対温度に比例して変化します。たとえば、絶対温度300度K(27℃)で10Vが出力されているとき、絶対温度が330度K(57℃)に上昇すると、11Vが出力されます。
そこで、下図のように、30℃で10%抵抗値が高くなる抵抗(温度係数3300ppm/℃の抵抗)を使って温度による出力の変化を打ち消します。
上図の回路ではオペアンプの使用個数が多いですし、(今は殆ど販売されていませんが)2つの特性の揃ったトランジスタを1つのパッケージに入れた「デュアルトランジスタ」は2つのトランジスタのエミッタが繋がっている場合が多いため、下図のように工夫した回路が良く使われます。下図の回路はかなり凝った構成になっていますから、直ちに理解できなくても問題ありません。
上図の回路では、U1はQ2をエミッタフォロアのように動作させてQ1のエミッタ電圧を制御し、Q1に入力電流@IC1を流してCVBE1を発生させます(つまり、U1の入力電流IC1にはVBE1が対応します)。U2はQ2のエミッタを制御して、一定の電流AIC2を流します(つまり、U2の入力電流I2にはVBE2が対応します)。
上図の回路の出力電圧を、下表に記入して確認してください。
番号 |
質問 |
値 |
@ |
入力から流れ込む電流を1C1とします。 |
− |
A |
抵抗から流れ込む一定の電流を1C2とします。 |
− |
B |
Q1のベース電圧は、 (アースに接続されているから、) |
V |
C |
Q1のVBEはIC1に対応したVBE1です。 |
− |
D |
Q2のエミッタ電圧は、(選んで下さい) (BとCから、) |
−VBE2 −VBE1 |
E |
Q2のVBEはIC2に対応したVBE2です。 |
− |
F |
Q2のベース電圧は、(選んで下さい) (DとEから、) |
VBE1−VBE2 VBE2−VBE1 |
G |
出力端子の電圧は、(選んで下さい) (10kと1kから、) |
11×VBE2−VBE1 11×VBE2−VBE1 |
番号 |
質問 |
値 |
@ |
入力から流れ込む電流を1C1とします。 |
− |
A |
抵抗から流れ込む一定の電流を1C2とします。 |
− |
B |
Q1のベース電圧は、 (アースに接続されているから、) |
0V |
C |
Q1のVBEはIC1に対応したVBE1です。 |
− |
D |
Q2のエミッタ電圧は、(選んで下さい) (BとCから、) |
−VBE2 −VBE1 |
E |
Q2のVBEはIC2に対応したVBE2です。 |
− |
F |
Q2のベース電圧は、(選んで下さい) (DとEから、) |
VBE1−VBE2 VBE2−VBE1 |
G |
出力端子の電圧は、(選んで下さい) (10kと1kから、) |
11×VBE2−VBE1 11×VBE2−VBE1 |
このように出力には2つのVBEの差が出力されます。また、Q2のベースに接続された+3300ppm/℃(+0.3%/℃)の抵抗で絶対温度に比例した出力電圧の上昇も防いでいます。Q1、Q2、1kΩは熱結合しておきます。
デュアルトランジスタは今や入手が困難になっていますから、2つのトランジスタを密着して接着(変性シリコーン接着剤等)し、アルミや銅箔の粘着テープを巻きつけて熱結合します。
この回路に(フォトダイオード等を接続して)電流を入力するのではなく、電圧を入力する場合は、下図に示すように、U1の入力に抵抗を追加します。
下図の回路を使用して、対数圧縮した電圧を元の電圧に戻すこともできます。このような回路をアンチログアンプ(逆対数増幅器)と呼びます。
上図のU2は、一定のコレクタ電流IC2をQ2に流して、一定のVBE2を発生させます。入力電圧は10kΩと1kΩで分圧されてQ2のベースに加えられ、その結果Q2のエミッタはVB2(分圧された入力電圧)より、VBE2だけ低い電圧になります。Q1はベースが接地されているため、Q2のエミッタ電圧(VB2−VBE2)に対応したコレクタ電流IC1が流れます。U1はIC1を10kΩで電圧に変換して出力します。
さて、ここまで説明した対数圧縮回路では、トランジスタのIC―VBE特性に対数の関係があることを利用しました。ところで下図に示すように、ダイオードのIF―VFにも(トランジスタと同様の)対数の関係があります(1N4148の例)。グラフから、広いIFの範囲で、IFが10倍になるとごとに、VFが約120mVずつ上昇するという関係が維持されていることが分かります。
このため下図(a)のようにダイオードを使用した回路で対数圧縮を行うこともできます。しかし、ダイオードを使った回路には次のような弱点があります。
つまり、トランジスタを使用した回路(b)では、ベースがアースに接続されているため、オペアンプのオフセット電圧に関係なく、正確にVBEが出力されました。しかし、ダイオードを使った回路では、オペアンプの入力オフセット電圧が出力に現れてしまいます。
上図(a)(b)の各回路で、オフセット電圧の影響を確認してください。
番号 |
質問 |
値 |
|
(a)の回路について考えます。 オペアンプにオフセット電圧が10mVあるとします。 |
− |
@ |
+入力の電圧は、(オフセット電圧の影響を考えて、) |
mV |
A |
+入力と−電圧の電圧差は、 (ダイオードで負帰還が掛かっているから、) |
V |
B |
−入力の電圧は、 |
mV |
C |
ダイオードの両端電圧を0.7Vとします。 |
− |
D |
出力電圧は、 (BとCから、) |
V |
|
(b)の回路について考えます。 オペアンプにオフセット電圧が10mVあるとします。 |
− |
E |
+入力の電圧は、(オフセット電圧の影響を考えて、) |
mV |
F |
+入力と−電圧の電圧差は、 (トランジスタで負帰還が掛かっているから、) |
V |
G |
−入力の電圧は、 |
mV |
H |
トランジスタのVBEを0.7Vとします。 |
|
I |
ベース電圧は、 |
V |
J |
出力電圧は、 (HとIから、) |
V |
番号 |
質問 |
値 |
|
(a)の回路について考えます。 オペアンプにオフセット電圧が10mVあるとします。 |
− |
@ |
+入力の電圧は、(オフセット電圧の影響を考えて、) |
10mV |
A |
+入力と−電圧の電圧差は、 (ダイオードで負帰還が掛かっているから、) |
0V |
B |
−入力の電圧は、 |
1mV |
C |
ダイオードの両端電圧を0.7Vとします。 |
− |
D |
出力電圧は、 (BとCから、) |
0.71V |
|
(b)の回路について考えます。 オペアンプにオフセット電圧が10mVあるとします。 |
− |
E |
+入力の電圧は、(オフセット電圧の影響を考えて、) |
10mV |
F |
+入力と−電圧の電圧差は、 (トランジスタで負帰還が掛かっているから、) |
0V |
G |
−入力の電圧は、 |
1mV |
H |
トランジスタのVBEを0.7Vとします。 |
|
I |
ベース電圧は、 |
0V |
J |
出力電圧は、 (HとIから、) |
0.7V |
このように電流を出力する(フォトダイオードのような)素子を入力に接続して「電流を入力」して使用する場合は、(オペアンプのオフセット電圧の影響を回避できるので)トランジスタを用いた回路が有利です。
逆に、入力に抵抗を追加して「電圧を入力」して使用する場合は、トランジスタを用いてもオフセット電圧の影響が(入力側で)発生しますから、ダイオードを用いた回路でもさほど不利ではありません。ただし、温度の影響を無くすために2つのVFの差を求めて、さらに絶対温度の補償を行うとなると、下図のように意外と複雑な回路となり、逆にトランジスタを使った回路の方が簡単になります。
正弦波を発振する回路は数多くあります。下図はその一例で「ウィーンブリッジ発振回路」と呼ばれています。
下図(a)のバンドバスフィルタは中心周波数が約1kHzで、1kHzの信号が3分の1に弱まる特性を持っています。そこで、フィルタの出力を下図(b)の増幅回路で3倍に増幅して元の振幅に戻し、再びフィルタに入力(正帰還)します。これによって1kHzの信号が回路の中をいつまでも回り続け、発振します。
上図の基本回路は、同図(b)の増幅率が3倍より少しでも大きいと、下図(a)のように、波は次第に大きくなり、上下が歪んでしまいます。逆に増幅率が、3倍より少しでも小さいと、下図(b)のように波が次第に小さくなり、止まってしまいます。ですから、机の上にボールペンを(先端を下にして)立てるのが無理なのと同様に、上図の基本回路では、出力を一定の振幅を保つことはできません。
下図の回路は、3本の10kΩで増幅率を3倍に設定し、ボリウム(5kΩから、50kΩまで、いずれの値でも使用可能)と100kΩで増幅率を微調整できるように工夫しています。しかし、たとえ増幅率を微調整しても、波は次第に大きくなり歪むか、次第に小さくなって無くなります。ですから、下図の回路では、抵抗と並列にダイオードを接続しています。出力振幅が大きくなると、ダイオードに電流が流れ(抵抗が小さくなったのと似た効果を生じて)増幅率が下がり、大きく歪むことを防いでいます。
上の回路ではボリウムを調整すると出力振幅が変化します。振幅が大きい程、ダイオードが導通して波形が歪みますから、ダイオードに微かに電流が流れる程度、つまり出力が1VP−P程度になるよう、ボリウムを調整します。
上の回路の発振周波数はバンドパスフィルタの中心周波数で決まり、抵抗をR1、コンデンサをC1とすれば(2つのコンデンサと抵抗は同じ値にします)発振周波数は
=1/2/PI()/C1/R1
で求めることができます。
周波数を可変する場合は、下図のように2連ボリウムを使います。下図の場合周波数を1:10程度に可変できます。オペアンプにCMOSタイプやFET入力タイプを使用すれば、2連ボリウムに100kΩの品種を使用して、周波数を100倍可変することもできます。
2連ボリウムで周波数を大きく可変したとき、(2連ボリウムやコンデンサの性能によっては)回路図右側のボリウム(5〜50kΩ)も、多少調節する必要が生じる場合があります。
下図の回路は「ファンクションゼネレータ」と呼ばれ、三角波と矩形波を同時に発生できます。積分回路と非反転シュミットトリガを接続した回路です。
ファンクションゼネレータは、既に練習した「無安定マルチバイブレータ」のCR積分回路の代りに、オペアンプによる積分回路を使用しているため、綺麗な三角波が出力されます。動作の仕組みは無安定マルチバイブレータと良く似ています。
上図を参考に下表の選択肢を選びながらファンクションゼネレータの動作を確認してください。
番号 |
質問 |
選択肢 |
@ |
非反転シュミットトリガはVOH(10V)を出力しているとします。 |
ー |
A |
シュミットトリガの出力が積分回路に入力されているから、このとき積分回路のコンデンサに流れる電流の向きは、 |
右向き 左向き |
B |
上のAの向きに電流が流れるため、積分器の出力電圧は、 |
上昇 低下 |
C |
積分器の出力が下のスレッショルドに達すると、非反転シュミットトリガの出力は、 |
VOHに反転 VOLに反転 |
D |
積分回路のコンデンサに流れる電流の向きは、 (シュミットトリガの出力が積分回路に入力されているから、) |
右向き 左向き |
E |
上のAの向きに電流が流れるため、積分器の出力電圧は、 |
上昇 低下 |
F |
積分器の出力が上のスレッショルドに達すると、非反転シュミットトリガの出力は、 |
VOHに反転 VOLに反転 |
G |
このようにして、再び@の状態に戻って繰り返します。 |
ー |
番号 |
質問 |
選択肢 |
@ |
非反転シュミットトリガはVOH(10V)を出力しているとします。 |
ー |
A |
シュミットトリガの出力が積分回路に入力されているから、このとき積分回路のコンデンサに流れる電流の向きは、 |
右向き 左向き |
B |
上のAの向きに電流が流れるため、積分器の出力電圧は、 |
上昇 低下 |
C |
積分器の出力が下のスレッショルドに達すると、非反転シュミットトリガの出力は、 |
VOHに反転 VOLに反転 |
D |
積分回路のコンデンサに流れる電流の向きは、 (シュミットトリガの出力が積分回路に入力されているから、) |
右向き 左向き |
E |
上のAの向きに電流が流れるため、積分器の出力電圧は、 |
上昇 低下 |
F |
積分器の出力が上のスレッショルドに達すると、非反転シュミットトリガの出力は、 |
VOHに反転 VOLに反転 |
G |
このようにして、再び@の状態に戻って繰り返します。 |
ー |
ファンクションゼネレータの発振周波数は、出力が低下するのに必要な時間と、出力が上昇するのに必要な時間を求め、両者を合計して周期を求めて計算します。
まず、出力が低下するのに必要な時間は、ボリウムを最大(最も高い周波数)に設定した場合、今回例のように、上のスレッショルドと下のスレッショルドの差(VHY)が10Vなら、
出力が低下するのに必要な時間 = 10V × 330k × 1000p / VOH
Excelで、=10*330E3*1000E-12/10と計算して、0.33m秒
(= VHY × RIN × CF / VOH)
同様に
出力が上昇するのに必要な時間 = 10V × 330k × 1000p / VOL
Excelで、=10*330E3*1000E-12/10と計算して、0.33m秒
(= VHY × RIN × CF / VOL)
と計算することができます。ですから(ボリウムを最大にした場合の)発振周期は0.66m秒で周波数は、1500Hzと分かります。低下時間と上昇時間は同じなので、次のように計算することもできます。
発振周波数 = VOH / 2 / VHY / RIN / CF
下図のようにファンクションゼネレータの回路を改造すると、鋸歯状波を発生させることができます。
上図の回路で、非反転シュミットトリガがVOLを出力すると、ダイオードが(順電圧で)導通して、灰色太線で示す経路で330Ωを通じて大きな電流が流れ、一瞬で積分器の出力が上昇して、シュミットトリガはVOHに反転します。
シュミットトリガがVOHを出力すると、ダイオードは(逆電圧で)電流を流さなくなり、灰色点線で示す経路で、330kΩを通じて流れる僅かな電流で、ゆっくりと積分器の出力が低下して行きます。積分器の出力が下のスレッショルドに達すると、シュミットトリガは再びVOLを出力します。
これを繰り返して、素早く上昇し、ゆっくりと低下する鋸歯状波が出力されます。この発振回路は、入力端子の電圧で周波数を広範囲に可変できる特徴もあります。
発振周波数は次のように計算できます。
発振周波数 = 入力電圧 / 2つのスレッショルド電圧の差 / 入力抵抗 / 積分コンデンサ
= VIN / VHY / RIN / CF
例えば1Vを入力した場合は、
= 1V / 10V / 330k / 1000p
Excelで =1/10/330E3/1000E-12 と入力して、303Hzと計算できます。10Vを入力すると、3030Hzで発振します。このように電圧で発振周波数を変更できる発信機を「電圧制御発振器(VCO)」と呼びます。
パルスの幅は下図に示すように、デューティサイクル(1周期の中で、電圧が高い(H:ハイ)期間の割合)で表します。デューティサイクルが20%なら、下図(a)に示すように、1周期中の20%がHの期間で、50%なら、下図(b)に示すように、1周期中の半分がHの期間です。
パルス幅変調(PWM)回路とは、周波数を変えずにパルスの幅だけを変更する回路です。下図上側はすでに説明した三角波発生回路で、同図下側に点線で囲って示す部分がパルス幅変調回路です。
パルス幅変調回路の正体は、「パルス幅入力」と「波形入力」を比較するコンパレータで、下図に示すように、三角波がパルス幅入力電圧より高いときはHを、低いときはLを出力します。
下図(a)のように、パルス幅入力の電圧が、三角波の最低電圧より低い、あるいは、(b)のように、三角波の最高電圧より高い場合は、パルスが出力されません。ですから、常にパルスが出るようにしたい場合は、パルス幅入力端子に加える電圧を、三角波の最低電圧〜最高電圧となるようにします。
上図の回路はコンパレータの+入力と−入力を逆に接続しても動作します。この場合、出力波形の上下が逆になります。
波形入力端子に、下図(a)のように三角波ではなく鋸歯状波を加えても動作します。また、下図(b)のように、正弦波を加えても動作しますが、この場合、パルス幅入力端子の電圧とデューティサイクルが比例しなくなります。
既に説明した1次のフィルタのように、周波数によって利得が変化する回路をフィルタと呼びます。不要な周波数の信号を取り除いたり、希望の信号だけを選択するなどの用途で使われます。
フィルタの教科書には、沢山の種類の回路や、チェビチェフ、バタワース、ベッセル、ガウシアン等の多くの名前と数式が登場する上、謎めいたグラフも多いため、フィルタは難しいと思い勝ちです。
実はフィルタには2種類しかなく、その2種類の設定の組み合わせで様々なフィルタができています。その2つとは、上図左の1次のフィルタと、2次のフィルタです。例えば5次のフィルタは、上図右側のように、1次のフィルタ1つと、2次のフィルタを2つを繋いだものです。
ここで言う「1次のフィルタ」は、既に1次のフィルタの項で取り上げた「組み合わせフィルタ」のような複雑な1次のフィルタではなく、CとRが一組だけ働く(周波数特性の折れ曲がりが一箇所しか無い)単純な1次のフィルタです。
ですから、この2つのフィルタを理解できれば、それを接続して殆どのフィルタを作ることができます。
2つのフィルタのイメージは下図の通りです。
1次のフィルタは上図左のように、ヌルヌルする床とバネのイメージです。入力を動かすと出力が遅れて付いてきます。2次のフィルタは上図右のように、ヌルヌルする床と、バネとオモリのイメージです。入力を動かすと出力は遅れて動きつつ、ユラユラと揺れます。つまり1次のフィルタは「揺れる」(共振する)性質はありませんが、1次のフィルタは(床のネバリが緩いと)揺れが持続する(共振する)性質があります。
Excelが無いときは、「フィルタの正体を目で見る」ことは至難の業でした。フィルタの性質は、言ってみれば「地形」のようなもので、それを南北に切った断面に、周波数特性が現れるのです。ところが、昔はこの「地形」を立体的に見ることができず「ここに山がある筈だから…この辺が盛り上がって…」等と平面的な地図を見て地形を頭の中で想像していた訳です。
ところが今日では、下図のようにフィルタに対応する地形をExecelを使って立体的に見ることができます。ですから、それを南北に切れば、どのような周波数特性になるのか、簡単に理解することができます。
上図は2次フィルタの周波数伝達関数を立体地図に描いたものです。このグラフは、伝達関数を=20*LOG(IMABS(IMDIV(1,IMSUM(IMPRODUCT(1,IMPOWER(Sheet1!B2,2)),IMPRODUCT(0.5,Sheet1!B2),1))),10)と、Excelに入力して、等高線グラフを指定すれば表示されます。(具体的な手順は後で説明します)
さて、この地形が示す周波数特性は、中央で南北に切れば、下図に白線で示すように断面に現れます。
つまり、フィルタの設計とは、地形上で山の位置を様々に変化させて、自分の希望する周波数特性を実現することです。この「山」のことを「ポール」と呼んでいます。
実際には実用性の高い周波数特性毎に、最適な山の配置が既に分っているので、その配置になるようにCやRの値を決めることでフィルタが設計できます。
デシベルは極めて小さい比率から、極めて大きい比率まで、手短に書くことができて非常に便利です。あまりに便利なので「比率しか表さないのは勿体無い」「Wと同様に電力の大きさも表したい」という熱烈なファンが現れます。
そこでとりわけ高周波の世界では、下表に示す、電力1倍(0dB)を1mWと決めたdBm(デシベルミリ)と、1μWと決めたdBμが使われます。
dBm(デシベルミリ) |
dBμ(デシベルマイクロ) |
||||
基準の電力 |
表す電力 |
dBmの値 |
基準の電力 |
表す電力 |
dBμの値 |
1mW |
0.001mW |
−30dBm |
1μW |
1μW |
0dBμ |
0.01mW |
−20dBm |
10μW |
10dBμ |
||
0.1mW |
−10dBm |
100μW |
20dBμ |
||
1mW |
0dBm |
1mW |
30dBμ |
||
10mW |
10dBm |
10mW |
40dBμ |
||
100mW |
20dBm |
100mW |
50dBμ |
dBmの値に30を加えるとdBμの値になります。そんな事なら、どちらか一方あれば良い筈ですが、mWを良く使う人も居れば、μWを良く使う人も居るので、両方が存在しています。
dBmやdBμの値は次のように計算できます。
dBmの値=10×log10(電力W÷1mW)[dBm]
エクセルでは、dBmの値=10*LOG(電力W/1E-3,10)
dBμの値=10×log10(電力W÷1μW)[dBμ]
エクセルでは、dBμの値=10*LOG(電力W/1E-6,10)
逆にdBmやdBμから電力を求める場合は、
電力W=1mW×10dBmの値÷10[W]
エクセルでは、電力W=1E-3*10^( dBmの値/10)
電力W=1μW×10dBμの値÷10[W]
エクセルでは、電力W=1E-6*10^( dBμの値/10)
様々な電力を、mW、μW、dBm、dBμで示した下表の空欄を埋めて完成してください。
デシベル |
電力 |
ヒント |
23dBμ |
200μW |
20+3dB⇔100×2倍 |
dBμ |
5000μW |
30+7dB⇔1000×5倍 |
dBm |
2000mW |
30+3dB⇔1000×2倍 |
16dBμ |
μW |
|
46dBm |
mW |
|
答
デシベル |
電力 |
考え方 |
23dBμ |
200μW |
20+3dB⇔100×2倍 |
37dBμ |
5000μW |
30+7dB⇔1000×5倍 |
33dBm |
2000mW |
30+3dB⇔1000×2倍 |
16dBμ |
40μW |
10+6dB⇔10×4倍 |
46dBm |
40000mW |
40+6dB⇔10000×4倍 |
本来電力を表すdBですが、人気はさらに高まり「dBで電圧も表したい」という熱狂的なファンさえ現れます。そこで、とりわけ高周波の世界では、1mVを基準にしたdBmV、1μVを基準にしたdBμVが使われます。
ただし、下表のように、電圧が10倍になると、電力が100倍になるので、10倍で20dB大きくなる点に注意が必要です。
dBmV(デシベルミリボルト) |
dBμV(デシベルマイクロボルト) |
||||
基準の電力 |
表す電力 |
dBmVの値 |
基準の電力 |
表す電力 |
dBμの値 |
1mV |
0.001mV |
−60dBmV |
1μV |
1μV |
0dBμV |
0.01mV |
−40dBmV |
10μV |
20dBμV |
||
0.1mV |
−20dBmV |
100μV |
40dBμV |
||
1mV |
0dBmV |
1mV |
60dBμV |
||
10mV |
20dBmV |
10mV |
80dBμV |
||
100mV |
40dBmV |
100mV |
100dBμV |
dBmVの値に60を加えると、dBμVの値になります。dBmVやdBμVの値は次のように計算できます。
dBmVの値=20×log10(電圧÷1mV)[dBmV]
エクセルでは、電圧dBmV=20*LOG(電圧/1E-3,10)
dBμBの値=20×log10(電圧÷1μB)[dBμV]
エクセルでは、電圧dBμV =20*LOG(電圧/1E-6,10)
逆にdBmVやdBμVから電力を求める場合は、
電圧[V]=1mV×10dBmVの値÷20
エクセルでは、電圧[V]=1E-3*10^( dBmVの値/20)
電圧[V]=1μV×10dBμVの値÷20
エクセルでは、電圧[V]=1E-6*10^( dBμVの値/20)
様々な電力を、mV、μV、dBmV、dBμVで示した下表の空欄を埋めて完成してください。
デシベル |
電圧 |
ヒント |
26dBμV |
200μV |
26÷2=13 10+3dB⇔10×2倍 |
dBmV |
200mV |
20+3dB⇔100×2倍 |
6dBμV |
μV |
6÷2=3 |
66dBmV |
mV |
|
dBμV |
20mV |
|
Excelで計算する場合は、dBmやdBμ(電力)と間違わないように、dBmVやdBμV(電圧)の計算式を入力します。
暗算で概算する場合は、dBmVとdVμVは、電圧を示す単位ですから、通常のdBなら1000倍が30dBmですが、電圧の場合は、1000倍で60dBmV(2倍)となる点に注意が必要です。このため、電圧のdBは「求めてから2倍する」あるいは「まず2で割ってから処理する」と考えると良いです。
つまり、例えば46dBmVを概算で電圧に戻すときは、最初に2で割って23dBと考え、20+3dB⇔100×2倍と考えて、200mVと求めます。逆に、電圧の200倍を(仮に電力の200倍率と考えて)23dBに直した後で、2倍することで、46dBと答えます。
デシベル |
電圧 |
考え方 |
26dBμV |
20μV |
26÷2=13 10+3dB⇔10×2倍 |
46dBmV |
200mV |
20+3dB⇔100×2倍 23×2=46 |
6dBμV |
2μV |
6÷2=3 3dB⇔2倍 |
66dBmV |
2000mV |
66÷2=33 30+3dB⇔1000×2倍 |
86dBμV |
20mV |
40+3dB⇔10000×2倍 43×2=86 |
開ループ制御と閉ループ制御
PID制御
Excelと制御
現代制御
微分先行型制御
フィードフォアード制御
比例値フィードフォアード制御
比例値フィードフォアード制御
外乱オブザーバー制御
自分で白紙から考えなくても、データシート等に紹介された様々な応用回路を組み合わせるだけでも、結構楽しい工作ができるものです。ところが、それぞれの応用回路がどういう筋道で動作しているかという説明が少ないので、紹介された回路をアレンジするとなれば、急にハードルが上がります。
もちろん、工学書を引っ張り出して読み解くことで、いつかはそれらの回路の動作を理解することができるでしょう。でも、楽しい電子工作のために、つまらない工学書を読むというのは、何か違うように思えます。
応用の利く、ちょっとは根源性のある理屈を、多少の誤解を覚悟した上で分り易く説明するのは(それほど困難では無いとしても)非常に面倒で、(まともな本にして出せるような話でもないので)見返りの無い分野です。本書ではその「面倒で見返りの無い部分」に焦点をあてて物好きな解説を展開しました。
ですから、巷に多く紹介されている基本的な応用回路等はあえて割愛しています。部品メーカーのサイトを探せば、アプリケーションノート等として面白い応用回路が沢山紹介されていますから、ぜひ参照してください。