完全密閉型ヘッドフォン(インナーイヤ)
概要  電車の中でウォーキングステレオを聞く場合、通常のヘッドフォンでは、外部の音も聞こえるので、それに負けないように、相当に再生音を大きくしないと、明瞭に音楽や音声を楽しめません。

 そのため、つい、音量を大きくしすぎて、シャカシャカという音が外部まで聞こえて、周囲の人々に迷惑をかけたり、耳に悪影響を与えたりします。

 しかし、外部の騒音が聞こえなければなければ、小さな再生音量でも十分明瞭に楽しめる筈です。

 このように考えて、外界の音が一切入りこまない完全密閉型のインナーイアーヘッドフォンを作って10年来使っています。

 ようするに、イヤホンのように、耳穴に挿入して使用するのですが、ダイアフラムの裏側が密閉されていて、耳栓と同様に耳穴を塞ぐため、外部の音は完全に遮断されます。結果として、再生音声は非常に明瞭に聞こえ、小さな音量でも十分満足できます。

 一度このヘッドフォンを使うと、他のヘッドフォンは外界音がうるさくて、使う気になりません。

 致命的な欠点は、外部の音が一切聞こえなくなるので、車内のアナウンスさえも聞こえなくなる事です。

※重要な警告

 ドクはこのヘッドフォンの使用を推奨していません。本コンテンツは技術的な可能性を紹介したものです。メーカーがこのようなヘッドフォンを発売しないのには訳があります。それは、極めて危険だからです。このヘッドフォンを歩行中、運転中には決して使わないで下さい。再生音以外の音が聞こえないので、非常に危険です。また、自宅や電車の中であっても、外部の音が聞こえないことにより、危険な事態に至る可能性があります。


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全体
 通常のインナーイヤ式のヘッドフォンを改造して作ります。ミニプラグと比較するとわかりますが、装着部は小さなものです。

装着部
 下へ出ているのがケーブルで、根元のみ熱収縮チューブで補強しています。
 右側が耳に装着する部分で樹脂系のゴムのキャップを取りつけています。


本体
 ゴムキャップを外すと、基本構造が良くわかります。
 通常のダイナミックドライバにドライバの直径程度の熱収縮チューブを掛けて、両端を切断した構造になっています。
 ダイアフラムの各ポイントから鼓膜までの距離がそれぞれ異なるので、高音程減衰してしまします。ダイアフラムの前にイコライザを付けるのも一案ですが、ここでは、バックキャビティーの面積を減らして、過剰な低音を減衰しています。

電線取りつけ部
 電線はホットメルト接着剤で取りつけ、同時にバックキャビティーを封止しています。
 電線の付け根は良く傷む部分なので、2段に熱収縮チューブを掛けます。また、内部の銅線が抜けてしまわないように、引き出し部にミシン糸を数回強く巻き、瞬間接着剤で固めておきます。
 このあたりの工夫が、長持ちの秘訣です。

圧力調節機構
 耳栓を挿入すると、耳穴内の圧力が上昇して不快です。しかし、耳穴の空気を逃がす穴を開けると、そこから、外界の騒音が入ってきます。
 そこで、ダイアフラム全面から、バックキャビティーに向かって糸を通し、その糸の繊維を通って、余分な空気がゆっくりと抜けるようにしています。
 写真に移っている黒い糸がそれです。