Quasi Class-A Amp
オペアンプとパワートランジスタによる
擬似A級オーディオパワーアンプの製作
ご案内
小さな擬似A級アンプ
MP3プレーヤー等に接続して、小型スピーカーでちょっと聴く程度のアンプが必要になったので製作しました。秋月のB基板のサイズ(手のひらサイズ)です。D級アンプが花盛りですが、創意工夫の余地があるアナログアンプとしました。
さて、B級動作は発熱が少ないものの、クロスオーバー歪が発生し易いので、高忠実度を標榜するアンプでは発熱を覚悟してA級動作が採用される場合も多いようです。
しかし、A級動作はB級の何倍も熱が出ますので、コンパクトに作って、お手軽に使うには無理があります。
そこで、出力トランジスタはOFFさせずにA級動作させ、別の素子でON/OFFを行なう「擬似A級動作」が一時メーカー製のミニコンポ等に利用されました。
擬似A級はいかにも回路が複雑になりそうで、作ろうとは思わなかったのですが、安易な回路を思いついたので、早速試してみました。出力は数ワット程度です。
回路
回路図
(2012/06/13)入力保護のためR17,R18を追加
+側を例に説明します。−側も同じです。トランジスタはエミッタがD1→R3→R11の経路で−電源に接続されており、常に電流が流れてA級動作します。出力端子から電流が流れ込んでくるとトランジスタがOFFしますから、ダイオードD3〜D7がこの逆流を阻止しています。
ダイオードには1N4148を使用していますので、4n秒程度でON/OFFします。このため、トランジスタのように大きなクロスオーバー歪を発生しません。(ショットキ整流ダイオードなら一本で済みそうですが、1N4148は「100本いくら」の部品なので、手持ちが多量にありますし、D1R3の電圧が、D3R5等とバランスするのが好都合です…)
D1R3に流れるアイドリング電流は、電源電圧とR11で決まり、ここでは約10mAです。出力側にも同じダイオードとエミッタ抵抗が(D3〜D7、R5〜R9)が並列に並んでいますし、U1Aの働きでD1R3の両端電圧と、D3R5の両端電圧は同一に制御されていますから、それぞれの電流はほぼ同じとなり、合計すると60mA程度のアイドリング電流が流れます。R5〜R9の抵抗の作用と、ダイオードの熱結合(端子を最短距離ではんだ付け)によって、各ダイオードに流れる電流は、均一化されます。(1Ωはちょいと小さすぎるか?)
R3の下側の電圧はオペアンプによる負帰還によって、Q1がA級動作していることもあいまって、U1Aの+入力端子と全く同一の波形で変化します。出力端子であるR5〜R9の下側もこれとほぼ類似の変化をしますが、スピーカーに供給する電流によってダイオードと抵抗に電圧を生じ、僅かな電位差を生じます。
そこで、U2が出力端子の電圧と入力端子の電圧を比較して、U1の+入力端子を制御し、出力電圧を正確に入力電圧と相似な波形に保ちます。
この回路では、U1によって出力トランジスタの非直線性を取り去った上で、さらにU2によって残った僅かな非直線性を取り除いています。
電源は、±2出力の非安定化のACアダプターで、7.5V400mAと書かれているものを使用しています。(デジットで50円だった)容量性負荷を繋ぐ事はないので、出力のスヌーバ回路やインダクタが省略されていますが、場合によっては必要となります。
構造
背面
背面にはスピーカー端子があります。ステレオミニジャックにも出力信号が出ています。
側面
トランジスタはお辞儀した形で上面パネルにネジ止めして放熱しています。アイドリングが多めなので、上面パネルはちょっと熱くなります。パネルを貫通している電解の寿命は短いでしょう。
配線
部品配置(部品面)
配置はページの作例と多少異なります
基板上の部品配置はこんな感じ。ボリュームや端子は記載してません。
基板(部品面)
(写真の基板はページで解説しているものと多少異なります)
基板(半田面)
(写真の基板はページで解説しているものと多少異なります)
C1(3pF)はチップ部品しか手持ちが無かったので、基板の裏に付いてます。
性能
矩形波応答(上:入力、下:出力)(100kHz)
前述のように上面パネルは熱い目ですが、熱暴走する様子もありませんし、発振やリンギングもありません。多少鈍りますが上の様に矩形波も通ってます。
上下のトランジスタの電流(1kHz)
上図の通り、上下のエミッタ抵抗の電流はどんな周波数でも滑らかに繋がってます。私のオシロではダイオードがON/OFFする時間は見ることも測ることもできませんでした。発熱が以外と多いので、R11を大きくしてアイドリングを多少減らした方が良いとは思いますが、電気的動作はひとまず合格のようです。とはいえ、一つ作っただけですから、10個が10個うまく動くかどうかは分かりません。
そして音質は!…作った本人はたいがい良く思うものです。どちらかというと、視聴のために久しぶりにMP3じゃないWAVの音楽を聴いたので、それが鮮烈でした。
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